医療ニュース
2016年11月18日 座りっぱなしはEDのリスクにも
このサイトでは2013年あたりから「座りっぱなし」は大変危険であり、がんや生活習慣病のリスクになるということを繰り返し紹介してきました。運動などでそのリスクが軽減するという意見もありますが、何をしてもリスクは低下しない、いわば「喫煙と同じようなもの」とする報告もあります。
座りっぱなしでED(勃起不全)のリスクが上昇する・・・。
このような日本人を対象とした研究結果が報告され話題を呼んでいます。愛媛大学の学者が「道後Study」と呼ばれる疫学研究のデータを分析しました。医学誌『Journal of Diabetes and its Complications』2016年10月18日(オンライン版)に掲載されています(注1)。
研究の対象者は、2型糖尿病(生活習慣の乱れから起こる糖尿病)の男性患者430人(平均年齢60.5歳)で、自記式質問紙調査を用いて、喫煙、飲酒状況、運動習慣、降圧薬の服用の有無、これまでの病気、歩行習慣などが調べられ、さらに過去1年間の1日あたりの「座りっぱなし」で過ごした時間が問診されています。座りっぱなしの時間は、①5時間未満、②5~7時間、③7~9時間、④9時間以上の4つに分類されています。
EDについては、その有無と重症度が調べられています。重症度は、「SHIM(Sexual Health Inventory for Men)」(注2)と呼ばれるED用の問診票で評価され、スコア8未満(1-7点)が「重症ED」、8-11点が「中等度ED」です。
これらを解析すると、④9時間以上座りっぱなしのグループでは「重症ED」になりやすいという結果になっています。オッズ比は1.84、つまり1.84倍「重症ED」になりやすい、ということです。一方、「中等度ED」と「座りっぱなし」には相関関係が認められなかったようです。尚、この調査では対象者の36.1%が「中等度ED」、49.8%が「重症ED」だったようです。
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もっと大規模な疫学研究にも期待したくなりますが、理論的に考えても、「糖尿病+座りっぱなし」でEDになりやすいのは理解できることです。糖尿病で血管が老化しているところに、座りっぱなしで下半身の血流が滞るのですから。
座りっぱなしがNGであるのはもはや疑いようがないと思います。私は以前から「健康のための10の週間」として「3つのEnjoy、3つのStop、4つのDataに注意して!」を提唱しています(注3)。「3つのStop」の1つが「Sitting too much」(座りっぱなし)です。
注1:この論文のタイトルは「Self-reported sitting time and prevalence of erectile dysfunction in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: The Dogo Study」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.jdcjournal.com/article/S1056-8727(16)30707-3/abstract
注2:SHIMは下記を参照ください。
http://www.njurology.com/_forms/shim.pdf
注3:詳しくは下記を参照ください。
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