医療ニュース
2016年10月31日 認知症予防にはコーヒー?それとも緑茶?
認知症の予防にはこれさえやっておけばOK、というものはありません。運動、禁煙、栄養のある食事などは必要でしょうが、これらを続けていても必ず防げるわけではありません。しかし、少しでもリスクを下げられるものがあるなら検討することに価値はあるでしょう。
今回紹介したいのは、カフェインと緑茶についての2つの研究です。どちらも「効果あり」という結果がでています。
65歳以上の女性を対象とした研究で、カフェインをたくさん摂取すれば認知症(dementia)及び認知機能障害(cognitive impairment)の発生率を下げられることがわかった・・・。
医学誌『The journals of gerontology』2016年9月27日号(オンライン版)にこのような論文(注1)が掲載されました。研究は、米国の65歳以上の女性を対象とした調査「The Women’s Health Initiative Memory Study」に協力した6,467人を解析することにより行われています。
認知症に関連する危険因子である喫煙やアルコール、生活習慣病などの影響を調整し、カフェイン摂取量と認知症/認知障害のリスクを検討したところ、カフェインを中央値よりもたくさん摂取する女性は、中央値以下の女性と比べて、認知症、認知障害のリスクが共に0.74倍(26%のリスク減)に低下していることがわかったそうです。
もうひとつの研究は日本のものです。
毎日緑茶を5杯以上飲めば認知症のリスクが低下する・・・。
医学誌『The American journal of geriatric psychiatry』2016年10月号(オンライン版)にこのような研究結果(注2)が報告されました。
研究は東北大学でおこなわれ、対象者は65歳以上の日本人男女13,645人、追跡期間は5.7年間です。この研究は「前向きコホート研究」と呼ばれる方法でおこなわれています。これは疫学調査では最も信頼性が高い研究方法です。
結果、5.7年間で認知症の発症率は8.7%。緑茶を1日に5杯以上飲む人は、1日1杯未満の人に比べると発症率が0.73倍(27%のリスク減)であることがわかったそうです。
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米国人は通常緑茶をあまり飲みませんから、米国の研究でいうカフェインはコーヒーまたは紅茶と考えていいでしょう。比較的同時期に発表された日米2つの研究がほぼ同じ数値(米国のものは0.74倍、日本のものは0.73倍)を示したところが興味深く感じられます。
緑茶にもカフェインは含まれますから、これら2つの研究は同じようなことを言っているのかもしれません。カフェインは摂取しすぎると中毒性もありますから、認知症予防目的であっても過剰摂取するのは危険ですが、適度に楽しむのは有効でしょう。少なくとも、炭酸飲料や清涼飲料水のコーヒーや紅茶への置き換えは検討すべきです。ファストフードのセットメニューを注文するときにこのことを思い出せればいいのですが・・・。
注1:この論文のタイトルは「Relationships Between Caffeine Intake and Risk for Probable Dementia or Global Cognitive Impairment: The Women’s Health Initiative Memory Study」で、下記URLで概要を読むことができます。
注2:この論文のタイトルは「Green Tea Consumption and the Risk of Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study」で、下記URLで全文を読めます。
http://www.ajgponline.org/article/S1064-7481(16)30177-4/fulltext
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