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2025年4月28日 認知症予防目的に帯状疱疹ワクチン

 「はやりの病気」第258回(2025年2月)「認知症のリスクを下げる薬」で、「帯状疱疹のワクチンが認知症のリスクを下げる」という話をしました。最近、それを補強する研究が公表されたこともあり、ここでもう少し詳しく掘り下げたいと思います。

 科学誌「Nature」2025年4月2日号に掲載された論文によると、生ワクチンの接種で女性の認知症のリスクが約2割下がります。

 この研究が興味深いのは英国ウェールズのワクチンプログラムに基づいているからです。通常「〇〇のワクチンを接種すると△△の発症リスクが下がる」と言われても、そのまま鵜呑みにはできません。なぜなら、そもそもワクチンを接種する人は日頃から健康意識が高いことが多く△△に対する予防行動もとっている可能性があるからです。

 今回の研究で使われたワクチンプログラムは(拒否しなければ)該当者は誰もが(たぶん)無料で受けられるものです。 2013年、ウェールズ政府は1933年9月2日以降に生まれた人々に対し、弱毒生帯状疱疹ワクチンの提供を開始しました。この日付の直前と直後に生まれた人々を比較することで認知症のリスクを検討することができます。この研究では1925年9月1日から1942年9月1日の間に生まれた28万人以上の認知症診断が追跡調査されました。

 女性については結果があきらかでした。研究者によると、認知症発症のリスクがおよそ2割減少しました。他方、残念ながら男性にはその効果が認められませんでした。

女性は生ワクチンを接種すれば認知症発症リスクが約2割低下する

 

男性は効果がない

 

 もう1つ研究を紹介しましょう。冒頭で紹介した「はやりの病気」でも紹介した2024年7月に「nature medicine」で発表された研究です。

 こちらの対象者は米国民です。米国では2017年に帯状疱疹のワクチンが生ワクチンから組換えワクチン(不活化ワクチンの一種)に全面的に変更されました。その前後で帯状疱疹の発生率のみならず、認知症の発症率がどの程度変化したかが調べられたのです。結果は下記グラフの通りです。

組換えワクチンに切り替わった2017年以降帯状疱疹発症率が低下した

 

 

2017年以降、認知症の発症も減少した

 

研究者によると、組換えワクチンは接種後6年間の認知症リスクが生ワクチン接種時よりも有意に低いことがわかりました。さらに女性の方が男性よりも効果が高かったとされています。

 ただし、帯状疱疹ワクチンがなぜ認知症のリスクを下げるのか、その理由はいまだ解明されていません。

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 なぜ、帯状疱疹のワクチンが認知症のリスクを予防するのか。ものすごく単純に考えれば「水痘帯状疱疹ウイルスが認知症の原因のひとつだから」となります。

 しかし、現在認知症の原因は「アミロイドβ蛋白、またはタウ蛋白の蓄積」とされています。「それは間違っている。実は感染症が認知症の原因だ!」などと言えば馬鹿にされるだけです。しかし、私自身は認知症の一部は感染症によるものではないかと本気で考えています。いずれその考えを公開したいと思います。 

 

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