医療ニュース

2025年4月10日 ビタミンAの過剰摂取に注意

 2019年の国民健康・栄養調査では、日本人のビタミンAの摂取量は大幅に少ないことが明らかにされています。男性の摂取量の平均は552ugRAE/日、女性は518ugRAE/日です。必要量は、成人男性で850~900ugRAE/日、成人女性で650~700ugRAE/日ですから、男女ともかなり不足していることが分かります。

 では、サプリメントで補えばいいのか、と考えたくなりますが、現在米国では大変な事態となっています。報道によると、テキサス州ではサプリメントの過剰摂取で「ビタミンA中毒」を起こして治療を受けている子供が増えているのです。

 なぜ、このようなことが起こっているのか。麻疹(はしか)のワクチンをうたなくなったからです。ロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr)保健相の影響を受けて、ワクチンを拒否する人たちが増え、現在テキサス州を中心に麻疹が流行しています。そこで、その予防や治療にビタミンAを内服する人たちが急増し、その結果ビタミンA中毒が相次いでいるというわけです。

 たしかに、麻疹に感染するとビタミンAを治療に使います。ですが、摂取量が過剰になると、頭痛、吐き気、嘔吐、肝機能障害などが起こります。妊娠中に過剰摂取すると新生児の先天異常のリスクとなります(ビタミンAの外用薬が妊娠中に使えないのはそのためです)。

************

 栄養調査で「日本人は不足している」と言われ、「サプリメントなどで摂りすぎると危険」と忠告されればいったいどうすればいいのでしょうか。「適量を摂りましょう」とはよく言われるセリフですが、そもそも自身のビタミンAの摂取量は不足しているのか足りているのか、あるいは食事からすでに摂りすぎていないかなどについてはどうやって把握すればいいのでしょう。

 それを調べるには血液検査しかありません。しかし、ビタミンAの血中濃度測定は保険適用がなく自費で実施するしかありません。そして、費用は安くありません(当院の場合3,300円)。ですが、健康の意識が高い人は受けています。これからの時代、ビタミンDや亜鉛などと共に、日本人に不足しがちな栄養素はお金をかけても定期的に調べるべきなのかもしれません。

 

月別アーカイブ