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2012年3月9日(金) 禁煙後も5年間は糖尿病のリスク

 喫煙者はタバコを吸わない人に比べて糖尿病になりやすいことはよく知られています。よく言われるのは、喫煙者が糖尿病になるリスクは、タバコを吸わない人に比べ、男性で1.3倍、女性で3倍になる、というものです。ですから、健康診断などで「糖尿病予備軍」などと言われたことのある人に対しては、我々は禁煙を特に強くすすめています。
 
 では、禁煙に成功すれば糖尿病のリスクは直ちに減るのか、という疑問がでてきますが、どうもそういうわけではなさそうです。

 禁煙をしてもその後5年間は糖尿病のリスクが高い・・・

 これは、国立保健医療科学院(National Institute of Public Health)のShino Oba氏らの研究結果で、医学誌『PLoS one』2012年2月13日号(オンライン版)に掲載されています(注)。
 
 この研究では、10都府県の40~69歳の男女およそ59,000人と対象とし、1990年~2003年の間、追跡調査がおこなわれています。

 結果は、男性の場合、禁煙後5年間で糖尿病になるリスクは、タバコを吸わない男性の1.42倍となっています。興味深いことに、禁煙前に比べ体重増加が少ない男性も、タバコを吸わない男性に比べて糖尿病の危険性が高まる、という結果が出ています。
 
 禁煙前に1日25本以上のタバコを吸っていた男性が糖尿病を発症する危険性は、タバコを吸わない男性の2.15倍と高く、本数が多いほど危険性が高くなることを示しています。ただし、禁煙5年後以降は、非喫煙者との差はほとんど認められていないようです。
 
 女性については、禁煙後の糖尿病のなるリスクは、タバコを吸わない女性の2.84倍という高い数字が出ていますが、こちらは調査対象者が少なく、信憑性は高くないと研究者はみているようです。
 
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 この論文を読んで私が感じたことは、禁煙後の生活指導を今よりも厳しくしなければならないかもしれない、というものです。

 というのは、禁煙は簡単ではありませんし、多くの人が禁煙後しばらくは体重増加が続くからです。私は、「禁煙という大変なことを実践しているんだから、好きなものを食べることには少々甘くなってもいいのではないですか」と話すことが多いのですが、禁煙後に糖尿病のリスクが上がるのであれば、そのような”のんきな”ことは言ってられない、ということになります。
 
 生活習慣からおこる糖尿病に罹患するのは若いときよりも年を重ねてからです。ということは、禁煙開始は早ければ早いほどいい、ということをこの研究は物語っています。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Smoking Cessation Increases Short-Term Risk of Type 2 Diabetes
Irrespective of Weight Gain: The Japan Public Health Center-Based Prospective Study」で、下記のURLで全文を読むことができます。
 
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0017061

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