医療ニュース

2012年11月3日(土) マルチビタミン摂取でわずかながらもガン減少

 最近のビタミン剤に関する研究は、有害性の報告が多く、身体に良いとされるものはほとんど目にしないのですが、マルチビタミンの有益性についての報告がありましたのでお知らせいたします。

 医学誌『JAMA』2012年10月17日号に掲載された論文(注1)によりますと、男性がマルチビタミンを摂取した場合、わずかではあるもののガンのリスクが低下するそうです。

 この研究は米国ハーバード大学の研究者J. Michael Gaziano氏らによっておこなわれています。米国の男性医師を対象とした「the Physician’s Health Study(PHS)Ⅱ」と命名された対照試験(RCT)の解析がおこなわれています。

 この調査では、50歳以上の男性医師14,641人(平均年齢は64.3歳)が登録され、7,317人が毎日マルチビタミンを服用し、7,324人がプラセボ(偽薬)を内服しています。1997~2011年の期間に合計2,669例のガンが確認されています。そのうち約半数の1,373例は前立腺ガンだそうです。

 分析の結果、ガン発症率(1年当たり、人口1,000人に対し何人発症するか)は、マルチビタミン摂取群で17.0、プラセボ群で18.3でした。これを統計学的に解析すると、マルチビタミン群でのリスク低下がわずかに認められることになるそうです。しかし前立腺ガンと大腸ガンでは有意なリスク低下は認められなかったそうです。

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 この結果をどうみるか、ですが、発症率が17.0と18.3ではそれほど大差があるようには思えません。この研究はアメリカのものですが、日本にはビタミン剤で発ガンリスク上昇とする研究もあります(下記医療ニュース参照)。

 確実にいえることは、ガンを予防したいならサプリメントよりもまずは生活習慣の見直しをすべき、ということです。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは、「Multivitamins in the Prevention of Cancer in Men The Physicians’ Health
Study II Randomized Controlled Trial」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1380451

 
参考:医療ニュース
2011年11月14日 「ビタミンEの発ガンリスク」  
2011年8月26日 「ビタミン剤で発ガンのリスク上昇」

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