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2013年6月22日 土曜日

2007年2月14日(水) HAM患者会が難病指定を求めるが・・・

HAMという病気をご存知でしょうか。

 HAMの正式名称は「HTLV-1関連脊髄症」といいます。HTLV-1はウイルスの名前で、人の血液、母乳、精液などに含まれており、血液感染、母子感染、性感染などでヒトからヒトに感染します。

 HAMは発症すると、足のしびれや痛み、歩行障害、排尿障害などの症状が進行し、患者さんの多くは車イスや寝たきりの生活を強いられます。

 2月13日の共同通信に、このHAMの患者団体「アトムの会」を設立し、国に難病指定を求めている49歳の女性の声が報じられています。

 この女性は、輸血によってHTLV-1に感染し、33歳のときHAMと診断されたそうです。この女性は言います。

 「人生が突然裏返るような体験で若い人が苦しんでほしくない。難病に指定し、国が主導して治療法の研究を進めてほしい。原因が分かっていても治療法がなければ、患者の苦しみは同じ・・・」

 HAMは原因がウイルス感染であることが判っているために、国が指定する”難病”には該当しません。このため公費などの援助を受けることもできないのです。

 HTLV-1のキャリア(このウイルスを持っている人)は、日本全国で120万人と推定されています。HAMを発症するのは、キャリア10万人に対し年間3人の割合で、患者数は約1,500人と言われています。

 しかし、このウイルスをもっていると、HAMを発症しなくてもATL(成人型T細胞白血病)という白血病を発症することもあり、こちらも有効な治療法がありません。

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 HTLV-1に感染しているかどうかは血液検査で簡単に分かります。輸血、危険な性交渉(unprotected sex)などの経験のある方は一度調べてみてはいかがでしょうか。

参考:HTLV-1感染症

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2013年6月22日 土曜日

2007年2月11日(日) アジア渡航者はデング熱にご用心

デング熱という病気をご存知でしょうか。

 この感染症は主に東南アジアでよくあるもので、ネッタイシマカと呼ばれる蚊がデングウイルスを人から人に媒介することによって発症します。

 最近は、東南アジアの急速な都市化もあってなのか、デング熱が東南アジアで流行しています。2月9日のチャンネル・ニュース・エイジアによりますと(報道はバンコクポスト)、現在この感染症が急増しているそうです。

 このデング熱の大幅な減少に成功しているのがシンガポールです。シンガポールの2005年のデング熱罹患者は14,200人でしたが、昨年(2006年)は3,100人にまで減少しています。

 先週は、シンガポールでWHOの地域会議があり、シンガポールの公衆衛生学者が、「デング熱の対策は国ごとではなく東南アジア一体で取り組むべきだ。シンガポールはネッタイシマカの棲息地域を明らかにすることによってこの感染症の減少に成功している。今後はこの対策を東南アジア全体でおこなうことが必要である」、と述べました。

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 デング熱は感染してから数日から2週間くらいの間に、高熱、皮疹などが出現します。(ときに患者さんは急性HIV感染症を疑って医療機関を受診します)

 特別な治療法はなく、点滴と解熱薬のみで経過をみるのが標準的な治療です。感染者のなかには、いったん解熱してから体中から出血がおこり危険な状態になる場合があるので(これを「デング出血熱」と言います)、入院治療をおこなうのが原則です。

 日本にはネッタイシマカが棲息しておらず、感染者のほぼ全員がアジアの旅行から帰った後に発症しています。インドやネパールで発症したという話も聞きますが、私の経験で言えば、特に多いのが、サムイ島やプーケットといったタイのリゾート島です。

 デング熱はワクチンもなく、ときに致死的な状態になりますから、予防対策をしっかりとおこなわなければなりません。アジアのリゾート地に行くときは、蚊よけのクリームや蚊取り線香を忘れないようにしましょう。

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2013年6月22日 土曜日

2007年2月10日(土) 普及しない後発医薬品

最近はテレビコマーシャルもおこなわれており、「後発医薬品(ジェネリック薬品)」という言葉が随分浸透してきているように思われます。後発医薬品とは、特許の切れた先発医薬品と同じ主成分のものでつくられている安価な薬剤です。

 しかし、実際は、普及しているのは言葉だけで、処方はそれほどされていないことが厚生労働省の調査で明らかとなりました。

 2月8日の共同通信によりますと、医師が処方箋に「後発品への変更可」と記載しても、実際に薬局で後発品が出されるケースは、このうち5.7%しかないことが分かりました。

 調査対象となった549の全国の保険薬局では、合計969,365枚の処方せんのうち、「変更可」と医師が記載していたものが17.1%に相当する165,402枚で、実際に後発品が出されたのはわずか9,452枚だったそうです。さらに調査対象となった全国549薬局のうち、4割弱にあたる210の薬局では後発品への変更を一切していなかったことも分かりました。

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 すてらめいとクリニックでは、薬を処方する際に、クリニックでお渡しするか、院外処方とするかを患者さんに選択してもらっています。オープンしておよそ1ヶ月が過ぎますが院外処方を希望された方はひとりもおらず、全員がクリニックでの処方を望まれます。

 患者さんからみたときには、同じ薬をもらうにしても院外処方の方が高くつきますし、すてらめいとクリニックでは後発医薬品中心の処方をおこなっていますから、当然と言えば当然なのでしょうが、医薬分業の利点を考えると院外処方を希望される方が少しくらいはおられてもいいのではないかと思います。

 院外処方を希望する人がいないことと、今回の調査結果は関係があるのかもしれません。

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2007年2月9日(金) ピロリ菌初感染は5万年以上前

多くの胃潰瘍や胃がんにはヘリコバクター・ピロリ菌が関与していることが分かったのは比較的最近のことですが、この菌は5万年以上も前から人類を苦しめていたことが日米欧合同チームの研究で明らかとなりました。

 この共同チームは6年がかりで、世界51民族、769人の胃からピロリ菌を集め、菌の遺伝子の違いを分析しました。結果は科学誌「ネイチャー」の2月7日号で紹介されています。

 5万年以上前というと、人類がまだアフリカにとどまっていた頃であり、人類と同様、ピロリ菌も東アフリカを起源に進化(変化)してきたということになります。

 研究者のひとりは、「ピロリ菌は、人類史初期のアフリカ時代から人類を胃炎で悩まし、まるで遺伝のように受け継がれているらしいことが分かった。菌の感染経路や、国や地域によって胃がんの発生率が違う原因の解明などにもつながるはず」と述べているそうです。

 尚、ヘリコバクター・ピロリ菌は日本人の間で広く普及しており、2人に1人はこの菌を保有していると言われています。ピロリ菌を持って入れば必ず胃潰瘍や胃がんを発症するというわけではなく、生涯にわたり無症状の人が大半ですが、早期に除菌をおこなうべきとの考えもあります。

 最近は人間ドックでの検査も一般化してきました。すてらめいとクリニックでもヘリコバクター・ピロリ菌の検査目的で受診される方が増えてきています。

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2007年2月7日(水) コレステロールの判断基準が変更

日本動脈硬化学会は、2月3日福岡市で開かれた同学会の理事会で、コレステロールの判断基準を変更することを決定しました。

 従来、コレステロールの一般的な判断基準は「総コレステロール」で、およその上限は220mg/dL程度とされてきました。しかし、「総コレステロール」には、いわゆる「善玉コレステロール(HDL)」も含まれており、実際に心筋梗塞や脳梗塞などをおこしやすい「悪玉コレステロール(LDL)」で判断するべき、と変更されたというわけです。

 新しい判断基準は、「悪玉コレステロール(LDL)が140mg/dL以上」、です。(ただし、実際には、この140mg/dLという数字を絶対視するのではなく、年齢、性別、肥満度、高血圧の有無、喫煙の有無などを合わせて考えていく必要があります)

 今までコレステロールが高くて困っていたという人は、一度「悪玉コレステロール」の値を計ってみればいかがでしょうか。もしかすると、善玉コレステロールだけが高くて、心配する必要がないかもしれません。

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2007年2月6日(火) 女性の飲酒はC型肝炎をより悪化させる

C型肝炎のある人が大量に飲酒をすると肝硬変や肝臓ガンになりやすいということは、多くの医者が経験上気付いていることですが、女性ではその傾向がより顕著であるとの研究発表が米国でおこなわれました。

 「Clinical and Experimental Research」という医学誌の2007年2月号にこの研究が報告され、2月1日のロイターヘルスが報道していますのでご紹介いたします。

 この研究は2000年から2002年の間に米国のデータベース機関に登録された132,468人のC型肝炎ウイルス(HCV)を保有している人を対象におこなわれました。

 C型肝炎ウイルスに感染している女性で大量に飲酒をしない人の平均寿命が61.0歳だったのに対し、大量飲酒をする人は49.1歳でした。

 一方、C型肝炎ウイルスに感染している男性の間では、飲酒をする、しないで平均寿命にそれほど大きな差はなく、大量飲酒をしない人、する人の平均寿命はそれぞれ50.0歳、55.1歳という結果が出ました。

 この研究が強調しているのは、飲酒がC型肝炎ウイルスに影響を与えるということだけではなく、男女差があるということです。また、今後は人種ごとの差異や、HIVと重複感染している場合の研究をおこなう必要のあることが述べられています。

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 C型肝炎は米国よりもむしろ日本で問題になっている感染症です。割合では血液製剤や輸血によるものが多いのですが、最近では性感染やタトゥー、薬物の静脈注射によるものも増えてきています。感染に気付いていない人も含めると、日本では200万人もの人がこのウイルスを保有していると言われています。心当たりのある人は一度検査を受けるようにしましょう。

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2007年2月3日(土) セレウス菌集団感染、病院は因果関係を否定せず   谷口 恭

昨年(2006年)の春から夏にかけて、栃木県のある大学病院でセレウス菌の院内集団感染が起こりました。合計24人が感染し、そのうち2人が死亡、1人が失明しています。2月2日の共同通信によりますと、この集団感染に関して、大学病院は「感染と死亡との因果関係が否定できない」とし、遺族に謝罪をおこないました。

 セレウス菌はそれほど強い毒性を持っていないため、通常は重症化することはありません。亡くなった2人は、もともと重い病気で免疫力が低下していたことがわかっています。今回のケースでは、大量のセレウス菌が患者さんの使っていたタオルやシーツから検出されており、これらを洗濯していたクリーニング業者の洗濯機が付着の原因とみられているようです。

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 セレウス菌は経口感染をします。要するに食べ物に付着している菌を口の中に入れることによって感染するのです。ですから、クリーニング業者の洗濯機にセレウス菌が付着しているだけでなぜ集団感染したのかが、新聞記事からはよく分かりません。

 参考までに、セレウス菌は下痢型と嘔吐型に分かれます。医学の教科書には下痢型が多いと書かれていることが多いのですが、日本では嘔吐型の方が多いと思います。原因の食べ物は、米、特に焼き飯が多いと思われます。ただ、ほとんどの場合は軽症ですので、下痢や嘔吐で外来を受診した患者さんのセレウス菌の検査は、集団感染を疑わない限りはおこないません。

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2007年1月31日(水) ALSのワクチン実用化の可能性   谷口 恭

ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病をご存知でしょうか。

 運動神経が侵され、感覚や知能ははっきりしたまま全身の筋肉が徐々に動かなくなり、進行すると食事や呼吸ができなくなります。重症化すると人工呼吸器が必要となることもありますが、現在のところ有効な治療法はありません。日本の認定患者は約7,300人で、イギリスの宇宙物理学者ホーキング博士が罹患していることでも有名です。

 ALSの1割は遺伝性で、日本とカナダのグループがこの遺伝性のALSのワクチンの開発に取り組んでいます。マウスを使った実験では延命効果が認められ、この結果は米科学アカデミー紀要電子版に1月30日に発表され、同日の共同通信が報道しています。

 研究グループによりますと、生後約11カ月でALSを発症し寿命が約13カ月のモデルマウスにワクチンとして使うと、使わないのと比べて寿命が約30日延びたそうです。研究グループは、「ヒトへの応用が可能で、早期治療が期待できる」としています。

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 私はこれまでALSの患者さんを何人かみてきましたが、呼吸管理が大変で長期入院を強いられるか、自宅療養の場合でも家族が相当大変な負担を強いられます。今回開発に成功したワクチンは遺伝性のALSのみに有効とのことですが、これからもこの難病の治療法が相次いで開発されることに期待したいと思います。

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2007年1月30日(火) 運動後の筋肉痛にはコーヒーを   谷口 恭

以前、コーヒーが生活習慣病やがんの予防になるという話をしましたが、コーヒーには運動後の筋肉痛が緩和する可能性もあるようです。

 「The Journal of Pain」という医学雑誌の2006年12月11日号によりますと、運動前にコーヒーを2杯飲むと、その後の筋肉痛を50%近く減らせることが新規の研究で示唆されたそうです。

 研究者らは、「コーヒーの筋肉痛緩和効果はアスピリンのような鎮痛薬で一般にみられる鎮痛効果より高い」、とコメントしています。 しかしながら、日頃からコーヒーやカフェイン飲料を飲んでいる人には効果がないそうです。「カフェインが最も効きやすいのは普段カフェインを摂らない人や運動しない人」と述べられています。

 ということは、普段はあまりカフェインを摂らない人が新たに運動を始めたような場合には、運動前にコーヒーを飲む価値がある、ということになります。

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 コーヒーの様々な効能について世界中で多くの発表が相次いでいます。最近は、「身体によい」とする報告が多く、コーヒーは身近なものであるだけに注目度も高いと言えます。 しかしながら、どんなものでも”摂りすぎ”は逆効果であるということは肝に銘じておくべきでしょう。

参考:
はやりの病気 第30回 コーヒー摂取で心筋梗塞!?
はやりの病気 第22回 癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!

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2007年1月28日(日) 人間の冬眠?遭難男性24日ぶりに生還   谷口 恭

1月24日の毎日新聞によりますと、六甲山で遭難し24日ぶりに救出された男性が奇跡的に生還していたことが分かりました。

 この男性は、昨年10月7日に六甲山のがけから転落し遭難しており、10月31日に発見されました。発見時の体温(直腸温)はわずか22度で、浅い呼吸と1分間に40-50程度の弱い心拍数が認められたそうです。その後搬送先の病院で一度は心停止に陥ったものの、院内の救命処置で一命をとりとめ、現在は後遺症もほとんどなく職場にも復帰しているそうです。

 この男性は3週間以上もの間、食べ物はおろか水すら口にしておらず、なぜ生還できたのか現在の医学的常識では説明がつきません。

 たしかに、「低体温療法」という治療法があり、脳の外傷などの際には用いられることがあります。これは、低体温下では脳細胞が死滅しにくくなるという理由に基づいていますが、内蔵の障害を起こしやすくなるという危険性が伴います。それに、低体温療法で推奨されている体温はせいぜい32から33度程度であり、22度などというのは常識的には考えられません。

 この記事を報道した毎日新聞によりますと、一部の専門家は「冬眠」ではないかとみているそうです。

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