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2013年7月15日 月曜日

2010年5月13日(木) 米国西部、致死的な真菌が蔓延する可能性

 クリプトコッカス症という病気をご存知でしょうか。

 クリプトコッカスという真菌による感染症で、この真菌は通常、土壌や鳥(ハトが多い)の糞中に生息しています。土や糞が乾燥すると、空気中に真菌が飛散して、ヒトが口から吸い込んで肺炎などを起こします。

 しかし、一部には健常人にも発症することがあるものの、大半は免疫不全にある人に起こる感染症で、エイズの合併症としても有名です。

 そのクリプトコッカス症が、米国オレゴン州で流行し死亡例もでています。医学誌『PLoS Pathogens』4月22日号(オンライン版)によりますと、死亡率は25%にも上るそうです。研究者によりますと、従来のクリプトコッカス症が免疫不全者に起こりやすいのに対して、現在流行しているタイプは、特に病気をもっていない健康な人にもかかりやすいようです。

 そして、この真菌は空中に浮遊し、まもなくカリフォルニア州に拡大する可能性があることを研究者らは警告しています。

 症状が出現するのは、真菌が感染してから数カ月後に現れることもあり、数週間続く咳や胸の痛み、息切れ、頭痛、体重低下などが起こりえます。治療薬はありますが、現在ワクチンはありません。

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 まだ分かっていることが少なく、今後の研究結果を待ちたいところです。

 クリプトコッカスには様々なタイプがあり、従来ヒトに感染しやすいとされているのは、Cryptococcus neoformansというものですが、今回流行しているのは、Cryptococcus gattiiというタイプだそうです。現在のところ、適切な治療をおこなえば治癒しうるようですので、渡米する人で風邪症状が出た人は疑ってみるべきかもしれません。

 この論文のタイトルは、「Emergence and Pathogenicity of Highly
Virulent Cryptococcus gattii Genotypes in the Northwest United
States」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.plospathogens.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.ppat.1000850

(谷口恭)

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2013年7月15日 月曜日

2010年5月18日(火) うつ病と喫煙の深い関係

 うつ病を持っている人には喫煙者が多くて、うつ病でない人に比べると禁煙が難しい・・・。

 これはほとんどの医療者が持っているうつ病と喫煙の関係のイメージですが、これを科学的に実証した研究結果が報告されました。

 CDC(米国疾病管理予防センター)管轄のオンライン版医学誌『National Center for Health Statistics(NCHS)Data Brief 』2010年4月号にその論文が掲載されています。

 この研究では、2005~2008年に実施された全米健康栄養調査(NHANES)の情報を分析することによって、うつ病と喫煙の関連性が検討されています。

 その結果、2005~2008年では20歳以上の米国成人の約7%にうつ病が認められ、調査時にうつ病を認めた55歳未満の成人の43%が喫煙者でした。一方、同年齢のうつ病のない人では喫煙者は22%にとどまっています。20~39歳の女性でみてみると、うつ病の女性の50%が喫煙するのに対し、うつ病でない女性は21%のみでした。

 臨床的にうつ病と診断されない軽度の抑うつ症状が認められる成人においても、症状のない人に比べて喫煙する可能性が高いという結果もでています。また、うつ病が悪化するにつれて、喫煙者の割合が増大する傾向も認めました。さらに、喫煙量は、うつ病の人の方がうつ病でない喫煙者よりも多く、うつ病で喫煙する成人はうつ病でない喫煙者に比べて禁煙する可能性が低いという結果も出ています。

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 今回の研究結果は、我々医療者が日頃抱いているイメージとほぼ完全に一致します。すなわち、うつ病(もしくはうつ状態)があれば、うつがない人に比べて喫煙者であることが多く、1日のタバコの本数も多く、禁煙に成功しにくい、というものです。

 私が知りたいのはこの先です。つまり、タバコを吸うからうつ状態になりやすいのか、あるいはうつ状態になると人はタバコに手を出しやすくなるのか、そして、うつ+喫煙がある人の治療は、うつの治療が先なのか、禁煙治療が先なのか、あるいは双方同時に始めるべきなのか・・・、などです。もちろん、実際には個々の症例によって変わってくるでしょうが、こういった点に関する大規模調査の結果を待ちたいと思います。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Depression and Smoking in the U.S. Household Population Aged 20 and Over, 2005?2008」で、下記URLで全文を読むことができます。

http://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db34.pdf

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2013年7月15日 月曜日

2010年5月21日(金) 飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減

 酒は百薬の長。そう言われる割には、アルコールに関する報告は有害とするものが圧倒的に多いように感じます。しかし、アルコールによって病気のリスクが、それも悪性腫瘍のリスクが低下するという研究結果が発表されました。

 厚生労働省の研究班は、5月10日、「飲酒によってリンパ系腫瘍のリスクが低くなる可能性が示された」と発表しました。

 この研究は、1990年と1993年に岩手県二戸、秋田県横手、茨城県水戸、新潟県柏崎、長野県佐久、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部・宮古の10保健所管内に住んでいた40~69歳の男女約96,000人を、2006年まで追跡調査し、飲酒と悪性リンパ腫(以下ML)及び形質細胞性骨髄腫(以下PCM)の発生率との関係を調べています。平均追跡期間13.6年の間に、 MLが257人、PCMが89人確認されています。

 調査開始時のアンケートをもとに、お酒を「飲まない(月に1回未満)」、「時々飲む(月に1~3回)」、「毎週飲む(週あたりのエタノール換算量1~149グラム)」「毎週飲む(同150~299グラム)」、「毎週飲む(同300グラム以上)」に分け、その後のMLとPCMの発生率を比較しています。(エタノール換算量については下記参照ください)

 MLとPCMを合わせたリンパ系腫瘍発生のリスクは「時々飲む」に比べると、「毎週飲む」のアルコール摂取量が多いグループで低くなっています。MLとPCMに分けた場合は、統計学的に有意ではないものの、どちらもリスクは、「時々飲む」と比べ、アルコール摂取量が多いグループで低下する傾向が認められています。

 お酒を飲むと、どうしてこれら悪性腫瘍のリスクが低下するのでしょうか。研究班は、飲酒によるリンパ腫抑制作用のメカニズムとして、「適度なアルコール摂取により免疫反応やインスリン感受性が改善されることなどが知られている」と説明しています。さらに、今回の研究では、「かなり摂取量が多いグループでリスクの低下が見られたので、それらとは別のメカニズムが働いているとも考えられる」としています。

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 エタノール換算量とは、例えば「週に300グラム」というのは、ビールなら大ビン14本(1日2本)、日本酒なら14合(1日2合)、ワインならグラスで28杯(1日4杯)となります。

 この調査結果が注目に値するのは、「飲酒の量が多いほど疾病のリスクが低下する」となっている点です。「適度な量」ではなく「飲酒の量が多いほど」なのです。大酒飲みには一見嬉しい結果にみえますが、他の多くの悪性腫瘍では、大量飲酒はリスクを高めると考えられていることは忘れないようにしましょう。

(谷口恭)

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2013年7月15日 月曜日

2010年5月24日(月) 捻挫は重症でなければ早期からの運動が有効

 脳梗塞で倒れたり、手術を受けたりした後には、いつまでも安静にしているのではなく、できるだけ早期にベッドから起き上がりリハビリをすべき、ということが近年盛んに言われるようになってきています。

 そして、早期の運動療法は捻挫の場合にも有効なようです。

 受傷直後から運動療法を行ったグループでは、「冷却・湿布・安静」を中心とする従来の治療に比べて機能回復が優れていた・・・

 これは英国Ulster大学のChris M. Bleakley氏らがおこなった研究結果です。詳細は、医学誌『British Medical Journal』2010年5月10日号に掲載されています。(下記参照)

 研究者は、救急外来もしくはスポーツ外傷クリニックを受診した16~65歳の比較的軽度の、足首に捻挫を負った患者101例を対象として、運動療法と従来の治療法(冷却・湿布・安静)の効果を比較検討しています。運動療法をおこなったグループは受傷1週目から運動を開始しています。

 その結果、治療開始から4週時点で足首の機能を評価すると、運動療法のグループで有意に優れていることが分かりました。また、運動療法のグループは、歩行時間、歩数、軽度活動時間のいずれにおいても、従来の治療法のグループよりも優れていたようです。

 一方、追跡期間中のどの時点においても、両グループ間で、安静時の痛みや腫れの程度に差は認められていません。

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 研究者によりますと、英国内では1日に5,000例の捻挫の新規患者が発生し、捻挫による救急外来の受診件数は30万2,000 件(年間)にのぼるそうです。捻挫で、会社や学校を休むことにより、経済損失が生じる可能性がありますし、また医療資源も使われます。もしも、従来は安静にしなければならなかった捻挫でも、会社や学校を休まなくてもよくなったとすれば、捻挫を負った患者さん自身も早く回復し、経済損失も防げるというわけです。

 しかし、実際には捻挫の重症度を的確に診断するのは必ずしも容易ではありませんし、患者さんによっては早期の回復を望む気持ちが強すぎて、ついつい無理な運動をしてしまう、というケースもあります。(特に、昔、激しい運動をしていたという人にこの傾向がみられます) 

 ですから、従来どおり安静を中心とする治療にするか、早期から運動をおこなう治療にするかというのは、主治医と相談してじっくりと検討すべきではないかと私は考えています。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Effect of accelerated rehabilitation on function after ankle sprain: randomised controlled trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://www.bmj.com/cgi/content/full/340/may10_1/c1964?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Effect+of+accelerated+rehabilitation&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT
2010

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2013年7月14日 日曜日

2010年5月24日(月) 妊娠中の飲酒、子供の白血病のリスク上昇

 最近、飲酒が(それも大量の飲酒が!)血液系の悪性腫瘍のリスクを低減させる、という(意外な!)研究結果をお伝えしましたが(下記参照)、今度はまったく正反対の研究結果が発表されました。

 妊娠中の飲酒で、産まれてくる子供の白血病のリスクが上昇する・・・

 これは、仏パリ大学栄養疫学研究部のPaule Latino-Martel博士らが調査をおこない、医学誌『Cancer Epidemiology, Markers & Prevention』2010年5月号(オンライン版)に掲載された研究結果(下記参照)です。

 研究者らは、「妊娠中の女性のアルコール摂取と2種類の白血病(急性骨髄性白血病と急性リンパ芽球性白血病)との関連」を検討したこれまでに報告されている21件のデータを分析することによって調査をおこないました。

 8,000人以上の飲酒をするグループと、10,000人以上の飲酒をしないグループで比較した結果、子供が急性骨髄性白血病に罹患するリスクが56%も高まっていたことが判りました。妊娠してどれくらいの期間がたってからの飲酒でリスクが上昇するかについては一定の傾向はなかったそうですが、アルコールの摂取量が多ければ多いほどリスクは高くなるのは明らかなようです。一方、急性リンパ芽球性白血病では飲酒による差は認められなかったとのことです。

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 妊娠中の飲酒の危険性は以前から指摘されていたことです。

 胎児アルコール症候群という病名を聞いたことがあるでしょうか。これは妊娠中に母親が飲酒することにより、生まれてくる子供に成長障害、知的障害などみられることを言います。有効な治療はなく、「妊娠中の飲酒を控える」以外に予防方法はありません。

 今回の白血病のリスクが上昇するという研究結果も、広い意味では胎児アルコール症候群の1つの症状と言えなくもないでしょう。

 参考までに、どれくらいの妊婦が飲酒をしているかについて、この論文では、米国12%、フランス52%、ロシア60%、としています。日本のデータについては、厚生労働省の平成12年の報告書に18.1%とあります。(アメリカより日本の妊婦さんの方がよくお酒を飲むのですね・・・)

(谷口恭)

参考:医療ニュース2010年5月21日 「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」

注:上記論文のタイトルは、「Maternal Alcohol Consumption during Pregnancy and Risk of Childhood Leukemia: Systematic Review and Meta-analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
 
http://cebp.aacrjournals.org/content/19/5/1238.abstract

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2013年7月14日 日曜日

2010年5月24日(月) 紅茶で大腸ガンのリスクが上昇?

 1日に4杯以上紅茶を飲めば、飲まない場合に比べて大腸ガン(結腸ガン)のリスクが1.28倍に上昇する・・・

 これは米国ハーバード大学公衆衛生学教室の研究者Xuehong Zhang氏らがまとめた研究結果で、医学誌『Journal of the National Cancer Institute』2010年5月7日号に掲載されています。(下記参照)

 研究では、北米と欧州で行われた13件の調査をもとに分析をおこなっています。対象者は合計731,441人(男性239,193人、女性492,248人)で、コーヒー、紅茶,加糖炭酸飲料の摂取と大腸ガン(結腸ガン)のリスクとの関係を検討しています。6~20年の追跡調査の結果、全体の大腸ガン発症数は5,604例です。

 分析の結果、コーヒーと加糖炭酸飲料では摂取とガンの間に関連性が認められなかったのに対し、紅茶4杯以上摂取したときにはガンのリスクが1.28倍になるという有意な結果がでています。

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 この論文では「tea」となっており、言葉だけみると紅茶か日本茶か分かりませんが、研究の対象者が欧米人のみですから、ここで言う「tea」は「紅茶」で間違いないと思います。

 一般に、紅茶には健康にいいとされているポリフェノールが多量に含まれていますから、この研究結果は大変意外です。実際、動物実験ではポリフェノールや紅茶によるガンの抑制効果が認められているものもあります。

 以前紹介しました別の研究では、コーヒーをたくさん飲むことによって大腸ガンのリスクが低下するというものがありましたが、今回紹介した研究ではそういう効果は認められなかったようです。

 このように、この手の研究は大規模であったとしても結果がいつも同じとは限りませんから、あまり信じすぎないようにすべきかもしれません。

(谷口恭)

注:上記論文のタイトルは、「Risk of Colon Cancer and Coffee, Tea,
and Sugar-Sweetened Soft Drink Intake: Pooled Analysis of Prospective
Cohort Studies」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/djq107v1?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Xuehong+Zhang&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

参考:
はやりの病気第30回「コーヒー摂取で心筋梗塞!」
はやりの病気第22回「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
医療ニュース 2008年9月13日「子宮体癌の予防にコーヒーを」
医療ニュース 2008年6月30日「コーヒーはいいことばかり」

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2013年7月14日 日曜日

2010年5月31日(月) 携帯電話で発ガン性は一応認められず・・・

 携帯電話で長時間話をすると脳腫瘍になりやすいかもしれない・・・。これは以前から指摘されていたことですが、きちんと検証した調査はこれまでありませんでした。この問題に対する完全な答えになるかどうかは断定できませんが、過去最大規模の国際調査が発表されました。その結果は、

 5~10年程度の通常の使用ではリスクは上昇しない

 というものです。この研究は、国際共同研究グループ(INTERPHONE Study Group)が約10年の年月をかけて、日米欧など世界13ヶ国で脳腫瘍の患者(5,117例)と健康な人合わせて約13,000人を対象として調査をおこないました。

 その結果、日常的に携帯電話を使用している人の割合は、患者のグループよりも健康な人のグループの方でむしろ多く、携帯電話使用と脳腫瘍の間に相関関係は認められなかった、とされています。
              
 しかし、研究をよくみると、通話の累積時間が最も長い「1,640時間以上」使用した人でみると、神経膠腫(グリオーマとも呼ばれます)という脳腫瘍の発症率が1.4倍になっています。

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 この研究結果を受けて、WHO(世界保健機関)やFDA(米食品医薬品局)は一斉に「通常の携帯電話の使用では脳腫瘍のリスクは上昇しない」とコメントしています。

 しかし、本当にそうでしょうか。研究者らは、「累積1,640時間以上など現実的でない」というようなことを述べていますが、仮に、1日30分通話したとすると、1年間で182.5時間、約9年で1,640時間を越えてしまいます。

 実際、FDAは、「引き続き長時間の使用を避けるべきで、通話時のスピーカーモード、ヘッドセット使用などにより頭部と携帯電話の距離を保つべきである」、と勧告しています。

 携帯電話の歴史はそう古くないわけですから、引き続き今後の研究結果に注目したいところです。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Brain tumour risk in relation to mobile telephone use: results of the INTERPHONE international case?control
study」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.oxfordjournals.org/our_journals/ije/press_releases/freepdf/dyq079.pdf

参考:医療ニュース2010年1月23日「携帯電話がアルツハイマーを予防?」

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月2日(水) 年の離れた相手と結婚すると・・・

 7~9歳若い男性と結婚した女性は早死にする・・・
 年上の女性と結婚した男性も早死にする・・・ 
 一方、7~9歳若い女性と結婚した男性は長生きする・・・
 同年代の男性と結婚した女性は最も健康的・・・
 
 これらは、医学誌『Demography』2010年5月号に掲載された論文のなかで紹介されている調査結果です。

 この研究は、ドイツのMax Planck人口統計研究所が、デンマークの夫婦約200万組を対象としおこなったものです。

 女性からみたときには、冒頭で述べたように、大きく年齢が離れた若い男性と結婚すれば死亡リスクが上がり、また、大幅に年上の男性と結婚しても寿命が短くなるという結果がでています。つまり、女性からすれば、最も長生きする選択肢は、「年の近い男性と結婚する」ということになります。

 一方、男性からみた場合は、冒頭で述べたように、年上の女性と結婚した場合は死亡リスクが増大していましたが、7~9歳若い女性と結婚した場合は、逆にリスクが減り、長生きできるという結果になっています。

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 この結果を短い言葉でまとめてみると、女性は年の近い男性と結婚するのが最も健康で、男性は若い女性と結婚するのが最善、ということになります。

 さらに、若い男性と若くない女性の結婚は共に早死にし、その逆(若い女性と若くない男性)の場合は、男性は長生きするけど女性は短命となります。とすると、このカップル(若い女性と若くない男性)は、年は離れているけど死ぬのは同じ時期(で共に幸せ?)、となるかもしれません。

 この研究は、200万組という膨大なデータを解析していますから、それなりに信憑性がありますが、デンマークと日本では社会や文化が異なるでしょうから、日本でも同じ結果がでるとは限らないと思います。

 まちがっても、この論文に影響を受けて、パートナーを変えようなどとは思わないように・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、
「How Does the Age Gap Between Partners Affect Their Survival?」
で、下記URLで概要を読むことができます。

http://muse.jhu.edu/login?uri=/journals/demography/v047/47.2.drefahl.html

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月7日(月) 2009年の合計特殊出生率は横ばい

 厚生労働省が6月2日に人口動態計月報の年計(概数)を発表しました。

 2006年から2008年までの3年間、日本では合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと推定される子供の数)が上昇していましたが、2009年は2008年に比べて「横ばい」となりました。

 少し詳しくみてみると、2004年1.29、2005年1.26、2006年1.32、2007年1.34、2008年1.37と3年連続で増加していましたが、 2009年は前年と同じ1.37です。

 出生数でみてみると、2009年は、1,070,025人で、前年(2008年)から21,131人減少したことになります。出生数を母親の年代別にみると、30~34歳が389,788人で最も多く、25~29歳が307,764人、 35~39歳が209,703人、20~24歳が116,807人と続いています。15~34歳ではいずれの年代も前年より減少していますが、35~49歳では増加しています。

 尚、統計からみると女性の平均初婚年齢は28.6歳(男性は30.4歳)、第1子出生時の母親の平均年齢は29.7歳となっています。

 死亡数は1,141,920人で、前年(2008年)より487人減少しています。出生数と死亡数の差を表す自然増減数はマイナス71,895人で、前年より20,644人減り、前年に引き続き過去最大の減少ということになります。

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 合計特殊出生率を都道府県でみると、沖縄(1.79)、宮崎(1.61)、熊本(1.58)など九州・沖縄地方で高く、東京(1.12)、北海道(1.19)、京都(1.20)など大都市圏で低くなっています。

 ということは、九州・沖縄では子供を育てやすい環境が整備されていて、逆に大都市圏では育てにくくなっているということなのでしょうか。数字だけでみる限り、大都市圏の若い世代が子供を産みにくくなっているといえそうです。

 しかし、九州・沖縄では数字が高いといっても、合計特殊出生率は2.08以上にならなければ人口は減少していきます。人口減少に歯止めがかからないのは自明です・・・。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2009年6月1日 「日本の出生率は3年連続上昇」
2008年6月6日 「出生率が2年連続上昇」
2007年2月24日 「出生率が大幅回復へ!」

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2013年7月14日 日曜日

2010年6月7日(月) 4時間以上の残業が心臓発作のリスク

 1日3時間以上の時間外労働をする人は、心臓疾患による死亡や心臓発作などのリスクが60%高い・・・

 これは、フィンランド労働衛生研究所のMarianna Virtanen氏らによる研究結果で、医学誌『European Heart Journal』オンライン版5月12日号に掲載されています。(下記参照)

 研究は、6千人以上の英国公務員を対象とし11年間にわたり追跡調査されています。この間、369人に心疾患での死亡、心臓発作などが確認されています。年齢、性別、配偶者の有無、職種などの因子を考慮した結果、1日に(1~2時間ではなく)3~4時間の時間外労働をしている人では心疾患のリスクが60%増加していることが判ったそうです。また、「時間外労働」以外の危険因子(リスクファクター)を検討したところ、心疾患のリスクは見つからなかったそうです。

 では、なぜ長時間の時間外労働をおこなうと心疾患のリスクが高くなるのでしょうか。

 この点について、研究者らは、「長時間働くことを選択する人は、攻撃的な性格であり、競争心が旺盛ないわゆるタイプAである」ということを述べています。また、「長時間労働が高血圧、睡眠不足、運動不足、抑うつ状態などと関連している可能性がある」とも述べています。

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 長時間労働→心筋梗塞などの心疾患、というのはイメージとしてつかみやすいと思います。おそらく日本人なら身の回りに1人や2人、このような人がいるのではないでしょうか。

 この研究では長時間の労働を3~4時間としており、「それ以上働いている人は?」と気になりますが、おそらくこれ以上働くのは日本人(韓国人も?)くらいであり、英国では充分なデータがないのでしょう。

 タイプAというのは、上に述べたように「攻撃的で競争心が旺盛」と表現できますが、少し言葉を変えると「真面目で責任感が強く努力家」とも言えるわけで、日本人には多い性格ではないかと考えられています。そして、タイプAは以前から心疾患のリスクの1つであることが指摘されていました。(念のために補足しておきますが、タイプAは血液型のA型とは何の関係もありません)

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Overtime work and incident coronary heart
disease: the Whitehall II prospective cohort study」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2010/05/04/eurheartj.ehq124.abstract?sid=260e2c9a-9c42-4b90-9e8d-5ebb21432b41

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