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2017年7月23日 日曜日
第167回(2017年7月) 卵アレルギーを防ぐためのコペルニクス的転回
2017年6月16日、日本小児アレルギー学会理事長が異例の記者会見を開き、「アトピー性皮膚炎が改善していれば加熱鶏卵を早期に食べさせるべき」という発表をおこないました(注1)。これはそれなりに大きなニュースであり、一部のマスコミでは取り上げられていましたが、さほど大きな扱いではなく、またSNSなどでの大きな拡散もなく、実際、太融寺町谷口医院の乳児をもつ患者さん数人に尋ねてみましたが、知っているという人はいませんでした。
ですが、この会見は従来言われてきたことを覆す大変重要なものです。これまでは、乳児に、あるいは母親にアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎(以下「アトピー」)があると、無条件に卵を制限することが一般的でした。これは保護者の自己判断で、という場合もありましたが、医療機関で医師にそのような指導を受けて、というケースが多かったのです。今回の発表はそのような方針を180度転換することになるわけです。
つまり、従来の考えが間違っていた、というわけです。間違ったことを教えられていたのか、じゃあ罪を認めて責任を取ってくれ、と感じる人もいるかもしれませんが、これまで卵を禁止されていたことにも理由があります。また、今後は手放しで卵を食べていいのか、というとそういうわけではまったくなくて、むしろ自己判断で食べるのはとても危険です。今回はこれらを整理したいと思います。
まず、なぜこれまでは喘息やアトピーがあると卵を避けるように指導されていたかというと、実際に卵で食物アレルギーが生じる例があったからです。しかもアレルギーの最重症型であるアナフィラキシーショックを起こし生死をさまようようなこともあったのです。こういった「事実」があれば、当然卵を避けるのが先決、と考えたくなります。
では、なぜ「卵を積極的に食べさせるべき」といったいわば「コペルニクス的転回」がおこったのでしょうか。私個人の考えとしては「二つの大きな事実」が関係していると思います。
ひとつめの事実は過去にこのサイトで紹介した「ピーナッツを早期から食べた方がピーナッツアレルギーを起こしにくい」ことを証明した大規模調査です(注2)。ピーナッツアレルギーは日本よりもヨーロッパで深刻ですから、この調査結果はヨーロッパでは大きなニュースとして捉えられ、一般のマスコミでも報道されました。
私が考えるもうひとつの事実は、これまたこのサイトで繰り返し訴えている「二重アレルゲン暴露仮説(Dual allergen exposure hypothesis)」です(注3)。食物アレルギーは、アレルゲンとなるものを口から食べれば「免疫寛容」が起こりアレルギーにならずに、皮膚から侵入すると「経皮感作」が成立しアレルギーを発症し、その後口から食べても症状がでる、というものです。茶のしずく石ケンによるコムギアレルギーもこの機序で説明できますし、魚アレルギー、カンパリアレルギー、ココナッツアレルギーなどもあてはまります(注4)。
これらふたつの事実を勘案したとき、今まで無条件に禁止すべきとされていた乳幼児の卵アレルギーももしかすると…、と考えたくなります。そして、大規模調査がオーストラリアでおこなわれました。しかしながら、その結果(注5)は、残念ながら、「卵を早期に食べさせても卵アレルギーを減らすことはできない」というものでした…。しかも、卵を食べて重症のアレルギーを起こしたケースもあったのです。
研究者たちは、調査を開始する前には「ピーナッツと同じように食べた方が良いという結果が出るに違いない。そうすればこれまでの概念を覆す発表をすることになる」と意気込んでいたに違いありません。ですが結果は”失敗”とも呼べるもの。また、この研究と同じように卵を早期から食べてもらう効果を調べた研究は世界にいくつかありますが、やはりすべて”失敗”しています。なぜでしょうか。オーストラリアのこの研究の対象者は「アトピーを有する乳児」で、生後4か月から週に1個あたりの鶏卵を食べてもらい12か月の時点で卵アレルギーがあるかどうかが調べられています。
鍵はアトピーにあるに違いない。アトピーがあれば皮膚バリアが障害されるわけだからそこから卵の粒子が侵入してアレルギーが起こるはずだ…。そう考えた(と思います)国立成育医療研究センターの研究チームは、湿疹(アトピー)のコントロールをしっかりおこなうという条件をつけて、乳児を対象とした研究をおこないました。生後6か月(注6)から微量(50mg)の加熱全卵粉末を開始し、生後9か月から少量(250 mg)の加熱全卵粉末を毎日摂取してもらいました。すると、1歳の時点で、卵を除去したグループでは37.7%に卵アレルギーが発症したのに対し、卵を食べていたグループでの発症率は8.3% と大幅に減らすことに成功したのです。しかも調査期間中、先述したオーストラリアの調査とは異なり、有害なアレルギー症状の発症はありませんでした。
しかしこの日本の研究でも8.3%は卵アレルギーを予防できていません。これはどう考えればいいのでしょうか。実は、卵アレルギーの発症を阻止できなかった乳児は、調査期間中アトピーなど湿疹のコントロールがうまくいかなかったそうです。やはり、卵を早期から食べてもらいアレルギーを予防するには「アトピーを含む湿疹のコントロールをしっかりとおこなう」というのが大前提になるのです。
ここでもう一度日本小児アレルギー学会が発表した要旨をみてみましょう。いくつかのポイントがありますが重要なのは次の2点です。
・鶏卵アレルギー発症予防を目的として、医師の管理のもと、生後6か月から鶏卵の微量摂取を開始することを推奨する
・鶏卵の摂取を開始する前に、アトピー性皮膚炎を寛解させることが望ましい
「望ましい」という控えめな表現がとられていますが、分かりやすく言えば、「しっかりと皮膚の炎症を治して経皮感作を防がなければ卵アレルギーが起こってしまう」ということです。そして経皮感作が生じるのは、アトピーだけではありません。アトピーという言葉のイメージがよくないためか、保護者のなかには「この子の湿疹はアトピーですか。アトピーじゃない湿疹ですか?」と執拗に尋ねる人がいます。こういう質問をされたときの私の答えは「病名に関係なく湿疹を治しましょう」ということです。アトピーであっても他の湿疹であったとしても(特に乳児の場合は)治療法に差があるわけではありません。
どのような治療法が正しいのかと言えば、ステロイドの「短期外用」及び「プロアクティブ療法」(注7)です。しかし、ここをきちんと理解していない人が大勢います。特に、ステロイドの危険性に敏感な人ほど正しく使用できていません。最近は大きく減りましたが、数年前まではステロイドをまるで”毒”のように考える「ステロイド恐怖症」の人たちがいました。こういう人たちのステロイドの使い方は1回量または1日量が少なすぎます。それで、結局ダラダラと使い続けることになり、そのうちステロイドの副作用に苦しむことになります。それでさらにステロイド嫌いが増悪して…という悪循環に入っていくのです。
程度にもよりますが、通常ステロイドは1週間程度でステップダウン(弱いものに替える)またはリアクティブ療法(注8)を終了してプロアクティブ療法に移行します。こういう正しい使用法を守っている限りステロイドの重篤な副作用に悩まされることはありません。
この機会にステロイドの正しい使い方を理解して、そして卵アレルギーを防ぐために早期からの卵摂取をすべての保護者に考えてもらいたい、と私は思います。
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注1(2019年11月15日変更):同学会は2017年6月16日の発表を現在はウェブサイトから削除しています。2017年10月12日に新たな文書を発表しています。
注2:下記を参照ください。
医療ニュース2015年6月29日「ピーナッツアレルギー予防のコンセンサス」
医療ニュース2015年3月30日「変わってきたピーナッツアレルギーの予防」
注3:下記を参照ください。イラストの右が経口摂取による「免疫寛容」、左が皮膚から侵入する「経皮感作」です。
http://www.stellamate-clinic.org/images_mt/child.pdf
注4:下記を参照ください。
はやりの病気第157回(2016年9月)「最近増えてる奇妙な食物アレルギー」
注5:下記論文を参照ください。
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(13)00762-8/fulltext
注6:オーストラリアの研究は生後4か月で卵摂取を開始しているのに、どうして日本の研究では6か月なの?と疑問に思う人もいるかもしれません。これはおそらく「離乳食」に対する見解が、現在WHO(世界保健機構)は6か月から、日本の厚労省は5~6か月からとしていることを受けての判断だと思われます。下記を参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0314-17c.pdf
http://www.who.int/nutrition/topics/complementary_feeding/en/
注7:プロアクティブ療法については下記を参照ください。
http://www.stellamate-clinic.org/atop/#nuri
注8:リアクティブ療法とは炎症がある部位にステロイドを1日数回たっぷりと塗ることです。これに対するのがプロアクティブ療法で炎症が消失した部位に1日1回薄く塗ります。
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|2017年7月23日 日曜日
第174回(2017年7月) なぜ「再診代」でなく「初診代」が請求されるのか
一般の人が医療機関を受診した感想を語る、読売新聞の「わたしの医見」は人気があり、すでに700回を超えているようです。受診してよかった、とする「医見」も多いのですが、その逆のもの、つまり医師に否定的なものも少なくなく、こういうものは医師のポータルサイトなどでよく話題になります。(過去のコラムでも取り上げたことがあります)
今回は最近掲載されたある読者からの「医見」を紹介したいと思います。これは医師のなかでも意見が割れて大変盛り上がりました。今回はなぜこのような問題が起こるのかについて解説し、さらに解決策について述べたいと思います。
2017年7月10日に「「再診」のはずが「初診」、もうけ主義の名医」というタイトルの投稿が掲載されました。投稿したのは札幌の50代の男性です。内容を簡単にまとめると次のようになります。
扁平苔癬と呼ばれる湿疹が下半身に生じ受診し治療を受けた。その後、背中にかぶれが生じ受診した。2回目の受診は「再診」になると思っていたら「初診」の請求をされた。医療機関に質問すると、「前者の症状は完治した。後者は別の病名になるので初診で算定した」と回答された。
この投稿をめぐって医師のポータルサイトでは議論が分かれています。この医師のやり方に問題がないと考える医師は、『保険診療の手引き』という書物に書かれている「第1病が治癒した後であれば第2病が短時日後の診療開始でも初診料は算定できる」という文言を根拠としています。(尚、この「初診・再診問題」は過去のコラムにも書いていますので合わせて参照してください)
これを文字通りに解釈すれば、前者の疾患が治っていれば次の診察のときは「初診」で問題がないということになります。問題は「治っている」かどうかの判定をどうするか、です。今回の投稿については、医師の意見も「初診ではなく再診にすべきでは」という見方の方が多かったようです。しかし、例えば次のような例であればまた変わるはずです。
症例1:7月1日に風邪で受診。7月15日に湿疹で受診。
こうなると風邪は普通は数日で治りますから、先述した『保険診療の手引き』に従えば「初診」となります。ですが、現実はそう簡単ではありません。実際、太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)では、この場合も「再診」としていますし、他の多くの医療機関でも同様だと思います。
なぜなら、7月15日にこの患者さんがやってきたとき、通常は「この前の風邪はどうでしたか? 何日くらいで良くなりましたか? 今は完全に症状がとれていますか?」と言ったことを尋ねるからです。これは問診と言えなくもありません。それに患者さんの心理としてもメインの訴えが湿疹であったとしても、風邪の報告もしなくちゃ…、という気持ちがあるでしょう。
ここで、この逆バージョンを考えてみましょう。これは「わたしの医見」の札幌の男性と同じ条件になります。
症例2:7月1日には湿疹で、15日には風邪で受診
通常、扁平苔癬を含む慢性の湿疹はすぐには治りませんし、治ったとしても再発の可能性があり、さらに再発を防ぐために生活上の注意を説明しなければなりません。2回目の受診理由が風邪であったとしても1回目の湿疹の様子を確認し助言をおこなうのが普通だと思います。では次のケースはどうでしょう。
症例3:7月1日に湿疹で受診。8月1日にも湿疹で受診。
このパターンについては過去のコラムでも紹介したように『保険診療の手引き』の解釈の仕方によっては「初診」になります。ですが、患者さんの心理としては「再診」でしょうし、医師の方も、「経過をみせてほしいので1か月後に再診してください」ということはよくあります。(初診の次の再診が1か月後というのはあまりありませんが、何度も通院しているうちに1か月後や2か月後の再診になることはよくあります) では次はどうでしょう。
症例4:7月1日に湿疹で受診、翌年の7月1日に湿疹で受診。
これはいったん治った、または治ってなくても患者さんの方が治療を自己判断で中断したと考えて「初診」となると思います。谷口医院でもこのケースは初診にすることがほとんどです。つまり、1年後というのは「再診」として認められないと考えられるのです。ですが、では2か月後なら? 4か月後は? 半年後は?…、という問題がでてきますからどこかで区切りをつけなければなりません。
そこで、谷口医院の場合は「風邪など急性疾患なら1か月、慢性疾患なら6カ月」というルールを決めています。例えば、7月1日に風邪で受診し、8月1日にも風邪で受診した場合、風邪は短期間で治りますから8月1日には「初診」となります。(ただし、7月1日の風邪が治っていない場合はもちろん「再診」です) 慢性の湿疹で7月1日に受診した場合、次の受診が半年後の1月1日になれば「初診」になりますが、12月31日なら「再診」です。
一応、これですっきりしますが、問題がないわけではありません。それはこのルールは谷口医院独自のものであり、絶対的に正しいわけではないからです。もしも件の札幌のクリニックが谷口医院の近くにあれば、同じような理由で受診するのに2つのクリニックで診察代が異なる、という矛盾がでてきます。一般のサービス業なら値段が変わってもいい(というより自由経済下では値段が一緒であることがおかしい)わけですが、保険診療は全国どこにいっても価格が同じでなければなりません。医師の判断で値引きができないのと同じ理由で、本来は「初診・再診」のルールも全国で統一されていなければならないのです。
では、この「初診・再診問題」、抜本的な解決法はないのでしょうか。現時点で「ある」とは言えませんが、期待できるものが登場しそうです。それは「レセプト審査自動化」です。現在厚労省はAIなどを駆使してレセプト(診療明細書)をコンピュータが医療機関の算定が適切かどうかを判断することを検討しています(注1)。これが実現化すると「このケースは初診か再診か」と悩む必要はなくなります。なぜなら自動化するということはルールも明確化されるからです。
そもそも、現在のレセプト審査は審査員によって基準が異なることが一番の問題です。保湿剤の処方数が審査員や地域によって異なるのはおかしいということを過去のコラムで述べましたが、これらも自動化によりクリアになれば、患者さんからみても透明化しますし、我々医師はストレスが軽減しますし、これまで審査をしていた人の人件費が削れますから行政としても好ましいわけです。
利点はまだあります。レセプト審査自動化が実現化すれば、ルールが明確化しますから、おそらくそのルールが電子カルテに組み込まれるでしょう。そうすれば医療機関でも自動で初診か再診かを電子カルテが判断するようになります。今回の札幌のような問題は金輪際起こらなくなるはずです。
最後に私の「医見」を述べておきます。それは、「その医療機関をまったく初めて受診するときだけ「初診」とし、その後は何年たっていたとしても「再診」とすべきだ」というものです。初診時には、患者さんから多くの情報を収集して、また医師は患者さんのキャラクターを見極めていかねばなりませんから相当の時間がかかります。一方、再診のときは数年間のブランクがあったとしても、初診のときほど長い時間がかかるわけでは通常はありません。
レセプト審査自動化が始まらなくても、この方法が一番すっきりすると思うのですが、残念ながらこの私の「医見」に賛成してくれる人は今のところ見当たりません…。
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注:下記を参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170011.html
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|2017年7月10日 月曜日
2017年7月 「やりたい仕事」よりも重要なこと~中編~
ひとつめの大学(関西学院大学)時代に先輩たちから「コミュニケーションの重要さ」について学ばせてもらった私は、就職活動をする頃には対人関係力を武器に社会で勝負しようと思うようになっていました。前回は旅行会社でのアルバイトのことに触れましたが、19~20歳のときにおこなっていたディスコでのアルバイトもその考えに拍車をかけることになりました。
ディスコでアルバイトを始めた動機も不純なもので「プロのDJから音楽の話を聞きたい」というものでした。お金がないと言いながらも週に1~3回程度は欠かさずディスコやクラブ(と80年代当時は呼べるところはほとんどありませんでしたが)に遊びに行っていた私は、プロのDJと話をしたかったのです。才能のないことに気づきながらも、DJになれれば…と当時思っていた私は自宅にターンテーブル2台とミキサーを置いてDJの真似事をしていました。自分でミックスしたテープをよく友達に聞いてもらっていて、褒めてもらうこともあったのですが、音楽に詳しい友人(彼は「絶対音感」があり現在も音楽活動をしています)から、「単にテンポを合わせてもダメ。お前の合わせ方では不協和音を作り出しているだけだ」とダメ出しをされ断念することになりました…。
話を戻します。ディスコでのアルバイトで結果として私が最も学べたこと。それは「接客」のむつかしさと面白さです。水商売の世界というのは奥が深く、才能と経験が重要になります。当時、私が最も尊敬していた先輩はなんと17歳。その先輩は中学のときから水商売の世界に入っていて「貫禄」が違います。昼間に外で会えば当時19歳の私より若く見えますが、いったん制服を着て店に入ればまるで別人です。姿勢、歩き方、お客さんの前で跪くポーズ、声のトーンや話し方。まさに「水商売」という感じでした。他にも尊敬すべき先輩が多数いましたが、私はこの先輩から積極的に教えを乞うようにしていました。私の情熱が伝わったのか、午前3時の閉店後、トレーの持ち方から水割りの作り方、話し方まで「授業」をしてもらえることもありました。
中年以降の2歳の差ならほとんど無視できますが、17歳と19歳の差は小さくありません。19歳の私が2歳年下の”先輩”を崇めるように接していたのですから、水商売の世界を知らない人には不審に思われていたかもしれません。このときの体験で「年齢なんて関係ない。大切なのは経験と実力だ」ということを学びました。まだ仕事もできないのに、自分の方が年上だという理由だけで、若い看護師にため口で偉そうに話す研修医を見るとついつい私は説教してしまうのですが、これはそのときの体験が大きいのです。
水商売の世界にどっぷりとつかっていたその頃の私に欠けていたのは「謙虚さ」だったと思います。大阪ミナミのディスコでアルバイトをしていると、水商売の世界で有名な男女の知り合いがどんどん増えていきます。心斎橋筋を地下鉄心斎橋から難波の駅まで歩いただけで何人もの知り合いに会い、ある程度有名な飲食店ならたいていは知っている従業員がいる、という感じで、まだまだ世間を知らなかった当時の私は、生意気で自信過剰でした。
そんな私が就職先を探すときに重要視したのは「自分の力でどれだけ大きいことができるか」です。逆に初めから考えなかったのが「大企業」です。大企業の歯車になるのがイヤで、同期で競争するなど馬鹿らしく不毛で無駄なことだと考えていました。また、名刺がなければ何もできないような男には絶対になりたくありませんでした。過去にも述べたように「大企業〇〇会社の谷口恭」と思われたくなかったのです。
私が目指していたのは「企業内起業」です。会社の中にいながら、新規事業の部署を立ち上げることを考えていたのです。実は私が就職活動をおこなっているときIさんという「師匠」がいました。Iさんは元リクルートの社員で、私が知り合った頃にはすでに自身の会社を立ち上げていました。当時の私は大企業にはまったく興味がなく、会社で人を判断するようなことはしませんが、リクルートは別格でした。何しろ、当時知り合った(元)リクルートの社員の人たちは、ほぼ全員が魅力的だったのです。後にリクルート社の基本方針が「長期雇用を前提としておらず何年後かには一人前になって辞めてもらう」ということだったことを知り納得できました。リクルートに入る人たちは会社にしがみつくことなど頭にないのです。
師匠のIさんにも勧められた会社に就職を決めた私は、早く仕事を覚えるために、大学卒業前からその会社でアルバイトを始めることにしました。扱っている商品を覚えることよりも私が重要視したことは、社内の雰囲気を知り、入社前から社内のネットワークをつくっておくことです。何しろ私がその会社でやりたかったことは「企業内起業」です。早い段階で社内の人間関係を把握し、〇〇を相談するなら□□課の△△さんが詳しい、などといった情報を集めておくことは、入社前から開始した方がいいだろうと考えたのです。
ところが、です。満を持して入社したその会社で私が配属されたのは、なんと海外事業部。英語がまったくできなかった私はまるで使い物にならず最低ラインに立たされることになりました。学生時代にお世話になった先輩達には到底かないませんが、それでも当時の私は誰とでもコミュニケーションを取れることに自信を持っており、社内外の人脈を築いていずれ新しい部署を立ち上げるんだ…、と意気込んでいました。しかし、海外事業部では英語ができなければ挨拶すらできません。今考えれば、生意気で世間知らずの私は、一度頭を打つ必要がある、と人事部で判断され、最も行きたくなかった海外事業部に配属されたのだと思います。
過去にも述べたように、「退社」か「英語の勉強」の二者択一を迫られた私は「英語」を選択しました。最初の一年はひたすら英語の勉強と輸出業務の事務仕事に苦しんだ、という感じでしたが、二年目の途中からは、上司の許可を得た上で、自分のアイデアでいろんな国の商工会議所宛てに自社製品を売り込む手紙(90年代前半当時、メールはもちろん、FAXもない国が多く、そういった地域にはもっぱら手紙かテレックスしかありませんでした)を書いてみました。すると、アラブ首長国連邦のある企業から注文の手紙が…。この嬉しかった気持ちは今も覚えています。
3年目からは輸入部門に移り、今度は輸入品を国内に売り込む仕事となりました。この頃の仕事はただただ楽しかったという感じです。自分でキャンペーン企画を考案し、チラシをつくり、景品を探してくるのです。入社前にアルバイトをしていた頃の社内人脈もいきてきて、さらに就職活動時の師匠Iさんの会社とも協力できるようになり、入社前に私がイメージしていた「企業内起業」に近づいていることを実感しました。
けれども、最高に楽しい!と思ったとき、同時にある懸念もでてきました。そしてそれが次第に抑えきれなくなっていることを認めざるを得ませんでした。その懸念とは、「これでいいのだろうか…。10年後も同じことをやっているのだろうか。これが生きる意味なのだろうか…」。そんな思いがときおりふと脳裏をよぎると、言いようのない虚しさが私を襲います。
実は英語や貿易実務に少し慣れだした頃、学生時代に読みたくてそのままにしていた社会学関連の本を少しずつ読むようにしていたのです。私は成績は良くありませんでしたが、大学3回生からは勉強が嫌いではなくなっていました。仕事の傍らに社会学の本を読めば読むほど、きちんと勉強したい、という気持ちが強くなってきました。
大学時代の恩師、遠藤先生に連絡をとり、考えていることを話すと、君がやりたいことなら高坂先生にお世話になるのがいい、と助言をいただき、さっそく高坂先生に挨拶に伺い、その後数か月に一度は高坂先生の研究室を訪れるようになりました。論文や教科書を紹介してもらい、社会学部の大学院受験の意思が固まりつつありました。
社会学の面白さにとりつかれた私は、次第に仕事よりも社会学関連の本を読むことに時間を割くようになりました。これまでの人生で私が「どうしてもこの職業につきたい!」と最も強く思ったのはこのときで、端くれでもいいから社会学の研究者になりたかったのです。私が研究したかったのは人間の行動、感情、思考といったものです。そしてこういったテーマに興味を持てば自ずと生命科学にも感心が向きます。
そこで私が考え付いたのが「まずは医学を勉強してから社会学に戻る」という道です。こうして私は医学部受験を決意することになります。しかし、合格したのはいいものの、入学後早くも挫折を味わうことになります…。
(続く)
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|2017年7月9日 日曜日
2017年7月9日 鎮痛剤は心筋梗塞のリスク
鎮痛剤(痛み止め)は安易に飲むべきでない、ということはこのサイトでも繰り返し訴えていますし、日々の診察室でも毎日伝えています。世の中には、痛み止めを安易に使いすぎる人が少なくなく、初診時にはすでに「薬物乱用頭痛」を起こしている人もいます(注1)。
なぜ鎮痛剤を飲みすぎてはいけないのか。たくさんの理由があります。まずは「依存性」があることを自覚すべきです。重症化するとベンゾジアゼピン系睡眠薬と同じかそれ以上にやめることに苦労することもあります。次に臓器への障害があります。特に腎臓の障害を起こすことは珍しくなく、短期間であっても急性腎不全になり入院が必要になることもあります。長期的には心血管系病変のリスクがあります。
今回紹介したい研究は「鎮痛剤の使用で心筋梗塞のリスクが顕著に増加する」というもので、特筆すべきなのは「最初の1ヵ月が最もリスクが高い」ということです。以前から長期使用での心血管系疾患のリスクは指摘されていましたが、短期間でも危険性があることになります。
医学誌『British Medical Journal』2017年5月9日号(オンライン版)に件の論文が掲載されています。研究は過去に発表された論文を総合的に分析する方法がとられています。研究の対象者は合計446,763例で、このうち61,460例が急性心筋梗塞を発症しています。
今回検討されているのは「イブ」や「ロキソニン」などのNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)と呼ばれる鎮痛剤です。驚くべきことに調査対象となったすべてのNSAIDsで心筋梗塞のリスクが増加しています。使用量は多いほど高リスクとなっています。内服開始1週間でリスク上昇が認められ、1カ月でリスクがピークとなります。各NSAIDsのリスクは次の通りです。
・イブプロフェン(イブ、ナロンエース、バファリンルナなど) 1.48倍
・ジクロフェナク(ボルタレン) 1.50倍
・ナプロキセン(ナイキサン) 1.53倍
・セレコキシブ(セレコックス) 1.24倍
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各NSAIDsの特徴を簡単に記しておきます。きちんとしたデータは見たことがありませんが、おそらく日本で最も使用されているNSAIDsはイブプロフェンだと思われます。理由は薬局で簡単に買えるからです。商品名で言えば、「イブ」の各シリーズ、バファリンプレミアム、バファリンルナ、ノーシンピュア、ナロンエース、フェリア、リングルアイビーなど多数あります。「ブルフェン」という名称の処方薬もありますが、医療機関ではあまり処方されず他のNSAIDsが好まれる傾向にあります。
医療機関で処方量の多いNSAIDsとしてロキソプロフェン(先発の商品名は「ロキソニン」)が挙げられます。これはなぜか日本で特に処方例が多く、海外ではさほど用いられていません。ですから、今回紹介したものも含めて海外の論文にはあまり登場しません。ロキソプロフェンはイブプロフェンと性質が似ていますが、胃腸への副作用がイブプロフェンよりも少ないという特徴があります。ですが、まったくないわけではなく、ロキソプロフェンで胃に穴があいた、という症例も珍しくはありません。(ロキソプロフェンについては下記メディカルエッセイ(注3)も参照ください)
ここ数年、使用量が増えているのがセレコキシブです。これは他のNSAIDsに比べて胃腸障害が少ないのが特徴で、そのため慢性の疼痛のために長期間鎮痛薬が必要な人に好まれます。ですが、今回の研究で明らかになったのは、胃腸障害が軽減されたとしても心筋梗塞のリスクはあるということです。
どのNSAIDsも内服開始後1週間から1か月くらいの間に心筋梗塞のリスクが上がることは覚えておいた方がいいでしょう。また、NSAIDsは血圧をあげるという副作用も忘れてはいけません。
注1;薬物乱用頭痛については下記コラムを参照ください。
はやりの病気第96回(2011年8月)「放っておいてはいけない頭痛」
注2:この論文のタイトルは「Risk of acute myocardial infarction with NSAIDs in real world use: bayesian meta-analysis of individual patient data」で、下記URLで全文が読めます。
http://www.bmj.com/content/357/bmj.j1909
注3:下記を参照ください。
メディカルエッセイ第97回(2011年2月)「鎮痛剤を上手に使う方法」
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|2017年6月30日 金曜日
2017年6月30日 咳止めの「コデイン」が12歳未満は禁止に
「コデイン」というのは咳止めの代表的な薬剤で、医療機関でよく処方されますし、また、多くの市販の風邪薬に含まれています。一般的に使用されるようになってからおそらく50年以上はたっているでしょう。
2017年6月22日、厚労省は12歳未満へのコデインの使用を原則禁止することを発表しました。具体的には、製薬会社に対し2019年中に添付文書を改訂するように指示するそうです。報道によれば、コデインが含まれる市販の風邪薬は600種類にものぼるそうです。
これまで普通に使われていたコデインをなぜ厚労省が禁止とするのか。どうやら米国FDA(米食品医薬品局)が2017年4月に12歳未満への処方を禁じたことを受けて、まったく同じ処置をとろうと考えたようです。
医師がコデインを処方するときは慎重に投与しますが、それでも副作用の報告があります。日本では2004年4月~2017年5月に、呼吸不全や意識障害などの子供の重篤な副作用が4例報告されています(毎日新聞2017年6月4日)。
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コデインは「劇薬」というよりは「麻薬」そのものと考えた方がよく、実際アヘンから抽出されるものです。大量摂取すればいわゆるダウン系の薬物と同様の作用があり、80年代には随分と問題になりました。アンプル剤の咳止め(製品名は伏せます)にコデインがそれなりに含まれていて、これを10~20本ほど一気に飲んで「トリップ」する遊びが流行したのです。しかもこのアンプル剤、同じく咳止めとして使われる「エフェドリン」もそれなりに含まれていて、こちらは大量摂取すると覚醒剤と同じような作用があります。つまり、ダウン系の麻薬とアッパー系の覚醒剤を同時摂取することになり、いわば「スピードボール」が作用したときと同じような状態になるのです。
そのような危険なものをなんで使うの?という声もあるでしょうが、適量をうまく使えば劇的に咳の苦しみから解放されることがあるのです。特に体力のない幼児が眠れないほどの咳をしているときは、短い日数を条件に少量を処方する(というか水薬に混ぜる)のです。今後、コデインが使えないとなると咳の対処に苦労しそうです。
もっとも、コデインを代表とした中枢性の咳止めは安易に処方すべきではありませんし、市販の咳止めも安易に飲むべきでないのは事実です。咳反射を司っている神経を無理やり抑え込むようなやり方ですから、使用はやむを得ない場合に限定すべきです。咳で最も重要なのは「原因究明」です。咳の原因は様々であり、これらを解明することが何よりも重要なのです。太融寺町谷口医院には昔から「長引く咳」で受診する人が大勢います。安易に「咳止めをください」という患者さんに私が毎回伝えているのは「まず咳止め」ではなく「まず原因」です。
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|2017年6月28日 水曜日
2017年6月28日 60歳未満の高血圧は認知症のリスク
少し前、高齢者の血圧低下は認知症のリスクになるという興味深い研究を紹介しました(注1)。今度はその逆で、若年者(60歳未満)の高血圧はアルツハイマー病のリスクになる、という研究です。
論文は医学誌『Alzheimer’s research & therapy』2017年5月31日号(オンライン版)に掲載(注2)されています。
研究はノルウェーの研究者によりおこなわれ、対象者は「HUNTスタディ」(Nord-Trondelag Health Study)と命名された研究に参加した合計24,638人です。そのうち579人が、アルツハイマー病、血管性認知症、または両者の混合型認知症と診断されています。
データが分析された結果、60歳以上では、収縮期血圧(上の血圧)が高ければアルツハイマー病および混合型認知症の発症リスクが低いことがわかりました。(血管性認知症には相関関係は認められませんでした)
一方、60歳未満で降圧薬を服用している人では、収縮期血圧が高いとアルツハイマー病とのリスクが上昇することがわかりました。
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最近の流れをまとめると、高齢者(何歳からかは議論がありますが)の場合は、血圧が下がるとアルツハイマー病のリスクが増えて、中高年者の場合は逆にリスクが上がる、ということになります。
こういった研究はすべての人に当てはまるわけではなく、自分の判断で薬を中断したり開始したりするのは極めて危険です。気になる人はかかりつけ医に相談してください。
注1:医療ニュース2017年4月7日「血圧低下は認知症のリスク」
注2:この論文のタイトルは「Association between blood pressure and Alzheimer disease measured up to 27 years prior to diagnosis: the HUNT Study」で下記URLで全文を読めます。
https://alzres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13195-017-0262-x
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|2017年6月26日 月曜日
2017年6月26日 少量の飲酒でも認知症のリスク!?
「酒は百薬の長」は昔からよく使われることわざですが、私の経験上、この言葉を述べる人のほとんどが「酒飲み」ですし、この言葉を考え付いたのも酒飲みでしょう。ですが実際に、少量の飲酒は血圧を下げ、生活習慣病を予防でき、寿命を延ばすという報告は多数あります。おそらくほとんどの医療者もこれを支持しています。
最近、一流の医学誌にこの「常識」を覆すかもしれない論文が掲載され医療者の間でも話題となっています。その論文とは『British Medical Journal』2017年6月6日号(オンライン版)に掲載されたもので、なんと「少量の飲酒でも認知症のリスクになる」と結論づけています(注1)。
研究の対象者は550人のイギリス人。公務員を対象とした「Whitehall II」と命名された大規模調査に参加した6,306人のなかから無作為に1,380人が選ばれ、その中で研究の趣旨に同意した人たちです。30年間にわたり1週間のアルコール摂取量が調べられ、認知機能が調査され、さらに脳MRIが撮影されています。550人の中からデータ不備などを除いた527人が分析されています。
結果、30年間のアルコール摂取量が多ければ多いほど海馬(脳の記憶をつかさどっている部分)の萎縮のリスクが上昇していることがわかりました。アルコールをほとんど飲まないグループ(週1未満単位、1単位はアルコール8g)と比べると、週30単位以上摂取しているグループのリスクは5.8倍と最も高くなっています。週に14~21単位であっても、右側海馬萎縮のリスクが3.4倍となっていました。さらに少量摂取(週1~7単位)であったとしても認知症の予防効果は認められていません。
アルコール摂取量が多ければ、言語を流暢に話す能力も低下していたようです。
************
この論文を読むときには「単位」に注意しなければなりません。アルコールの「単位」はいくつかの基準があり、日本のアルコール健康医学協会は純アルコール20gを1単位と決めています。この方式なら1単位が日本酒1合で(だから日本人にはわかりやすい)、ワインなら1単位が180mLとなりワイングラスに入りきらないくらいの量になります。一方、イギリス式の単位は、この論文ではワイン5杯で14単位と説明されています。以前紹介した論文(下記「医療ニュース」)では「ワイン1杯で3単位」と述べました。
さて、週に14~21単位で海馬のリスクが3.4倍というのは大変ショッキングな結果です。ワインで言えば週にグラス5~7.5杯。ビールで言えば大雑把に行って週に中ジョッキ4~6杯程度です。毎日飲酒するから人からみれば「少量」になります。さらに、これら以下の摂取量であっても少なくとも認知症の予防効果はなかったということになります。
酒は百薬の長・・・、本当に正しいのか疑う必要がありそうです。
注1:この論文のタイトルは「Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/357/bmj.j2353
参考:医療ニュース
2015年9月29日 どのような人がお酒を飲み過ぎるのか
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|2017年6月25日 日曜日
第166回(2017年6月) 5種類の「サバを食べてアレルギー」
最近、アニサキス症について患者さんから質問を受ける機会が増えています。これはおそらくマスコミで頻繁に報道されるようになったからでしょう。(胃)アニサキス症は、魚に寄生するアニサキスという寄生虫が胃の粘膜に侵入しようとすることが原因ですから、内視鏡(胃カメラ)で寄生虫そのものを取り除けばそれで終了です。七転八倒するような激しい痛みが嘘のように消え、1時間もすれば食事が摂れるほどに回復します。
ですが、アニサキス症が怖いのはここからで、その後それなりの確率でアニサキスアレルギーを起こします。そうなればその後魚介類は煮ても焼いても一生食べられないことになります。だから「アニサキス症を甘く見ないで!」ということは多くの人に理解してほしいことであり、そういう気持ちもあって、毎日新聞「医療プレミア」にもそれを書きました。
私が「医療プレミア」で担当しているのは「感染症」であり、アレルギーは担当外となるために、アニサキスアレルギーについてはアニサキス症の「番外編」のようなかたちで少しだけ書きました。ただ、私としては「サバを食べてじんましん」には5種類あって、それぞれ原因や対処法が違うんですよ、というところまで言及したかったのですが、文字数の制限もありそれができませんでした。そこで、今回の「はやりの病気」で、「医療プレミア」の補足をしたいと思います。
実は過去にも関連のコラムを書いたことがあります。このときは魚介類の「アレルギー」には3種類あり、ひとつはその魚そのものに対するアレルギー、ふたつめはアニサキスサレルギー、3つめは実際にはアレルギーでないじんましんでこれは古い魚を食べたことが原因です。
今回は、それをさらに細分化したものを、最近学会などで議論されることも踏まえて「サバを食べてアレルギー」を5つに分類して紹介したいと思います。
①アニサキスアレルギー
アニサキスが寄生したサバを食べるとじんましんや呼吸苦が生じます。生のサバだけでなく煮ても焼いても起こりえます。詳しくは「はやりの病気第98回」や「医療プレミア」を参照してください。
②ヒスタミン中毒
古いサバを食べたときに出現するじんましんです。これは厳密には「アレルギー」ではありません。詳しくは「はやりの病気第98回」を参照ください。
③パルブアルブミンなどによるアレルギー
最近よく話題になるアレルギーです。パルブアルブミンというのは多くの魚に含まれる共通のタンパク質で、最も多く含まれるのが「アカウオ」のようです。私が経験した症例でいえば、ほぼ全例が小学生から10台後半の若者で、じんましんよりも、食後すぐに口の中に違和感を覚えて息苦しくなったというケースです。アカウオ以外にも多くの魚に含まれていてサバでの報告もあります。また、他のアレルギーの原因になる共通のタンパク質として「コラーゲン」があります。
④サバ摂取+運動によるアレルギー
サバを食べた直後に運動をすると全身にじんましんや呼吸苦がでるタイプで、正式名を「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー」と呼びます。これは過去の「はやりの病気」で紹介したことがあります。そのときは、「茶のしずく石ケン」が問題になっていたときで小麦を食べて運動して症状がでることを述べました。(「茶のしずく石ケン」の運動誘発性アナフィラキシーは、従来の小麦摂取後の運動誘発性アナフィラキシーとはメカニズムが異なるのですが、今回のコラムの本意から外れますのでこれ以上の言及は避けます)
これを発症するのは若い人に多いようですが、私の印象でいえば小学生未満の子供ではほとんどないように思えます。またサバに限らず他の魚介類でもでます。というより圧倒的に多い魚介類はカニやエビであり、サバは少数です。
⑤サバが原因のじんましん
かつてはサバそのもののアレルギーも多いと思われていましたが、現在では、実際には①~④というケースがかなり紛れ込んでいると考えられています。ただ、①~④のいずれでもないサバアレルギーがないのかと言えば、私は「ある」と考えています。それほど多いわけではありませんが、サバのIgE抗体が陽性であり、アニサキスのIgE抗体が陰性(①が否定できます)、サバ摂取直後に重症のじんましんがでたものの(②③は比較的軽症のため考えにくい)、運動をしていない(④を否定)、という症例があるからです。
さて、それぞれの対処方法について説明していきましょう。①はアニサキスのIgE抗体陽性が確認できればほぼ「確定」です。この場合、原則としてほぼすべての魚介類が食べられなくなります。(金輪際、まったく食べられないかと言われれば、そういうわけでもありません。興味のある人は「医療プレミア」の注釈を参照ください)
②は古いサバを避ければOKです。サバだけでなく他の魚でも出ますから鮮度の高いものを食べるようにすればいいのです。(とはいえ、素人に鮮度が高いかどうかは分かりません。私が発症したときに食べた「きずし」は絶品でした…)
③は経皮感作でアレルギーが成立するのではないかと言われています。「経皮感作でアレルギーが成立」のメカニズムはこのサイトで何度か述べています。英国の小児科医ラック氏が提唱している「二重アレルゲン曝露仮説」(図)に基づくもので、図の右のように食べ物が口から入ればアレルギーが起こらずに(これを「寛容」と呼びます)、食べ物が皮膚から侵入すればアレルギーが成立する(これを「感作」と呼びます)というメカニズムです。③がアトピー性皮膚炎など湿疹のある子供に多いことからもこの可能性が強く、対策としてはまず湿疹を治すことです。湿疹や傷がある場合は、魚を食べるときには十分に注意して皮膚に魚が触れないように気を付けなければなりません。
④についても経皮感作でのアレルギーが指摘されています。これも成人よりも20歳未満に多いという特徴があります。この場合は③と同様、湿疹や傷があるときに注意を要することと、一度でも発症したことがあるなら摂取後の運動を禁止しなければなりません。また、重症化した経験がある場合は、主治医と話をした上で魚介類を避けるという選択肢もでてきます。
⑤はサバを避けるしかありませんが、サバのみを避ければOKということになります。
以上みてきたように、一言で「サバを食べてアレルギー」と言ってもいろんな原因があり対処法も様々です。確定診断には検査も必要ですから、気になる人はかかりつけ医に相談してみてください。
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|2017年6月25日 日曜日
第173回(2017年6月) 長時間労働の是正よりも大切なこと
長時間労働と自殺の問題が大きく取り上げられるようになり、労務管理のあり方を見直す企業が増えています。過重労働が自殺の原因、という話題になると世間でよく取り上げられるのが、2015年のクリスマスに若い命を絶った東大卒の電通の女性新入社員ですが、我々医師の間では、その直後、2016年1月に自殺した新潟市民病院の37歳の女性研修医のことがよく話題に上がります。
この二人の自殺、共に入職して間もない若い女性であった、二人とも長時間労働が原因であった、という以外にも「共通点」があるように思えてなりません。今回は、そのあたりを分析し、真の原因は何だったのか、同じことを防ぐにはどうすればいいのか、といったことを考えてみたいと思います。
被害者の性格は報道からは本当のことがわかりませんし、余計な想像はすべきでありませんが、ふたりともある程度責任感が強く真面目な性格だったのは間違いないでしょう。そして真面目すぎるがゆえに上司や同僚からのプレッシャーを人一倍強く感じていたということは推測できます。一部の報道では「イジメ」「パワハラ」といった言葉も出ていますが、こういったことがあったのかどうかは司法に委ねるべきであり、私は言及すべき立場ではありません。
太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)にも、過重労働やパワハラが原因(または原因の一部になっている)と思われる患者さんは少なくありません。受診した患者さんが大企業勤務の場合は、「まず社内の産業医に話をすべき」という説明をします。薬はまったく処方しない、または最小限の処方とし、「今の状態は薬で治すようなものではない」と説明します。産業医に手紙を書くこともよくあります。産業医がしっかりしていればたいていこれで”とりあえずは”うまくいきます。産業医が患者さんの話を聞いてくれて、必要あれば休職制度などを利用してくれるからです。ですが、その後過重労働やパワハラがなくなり、安心して働けるようになるかというと、それはいろいろなケースがあります。
電通も新潟市民病院も大きな組織ですから社内(院内)に常勤の産業医がいるはずです。自殺した二人は産業医との面談はしていなかったのでしょう。していれば勤務時間が見直されていたはずだからです。そして、私が日々患者さんから相談を受けているようなかたちでは、二人は一般の医療機関を受診していなかったに違いありません。もしも受診していたら、私がしばしばおこなっているように診察医は産業医に連絡を取るはずだからです。
日ごろ、労働環境が原因で心身に不調をきたしている患者さんを診ている私としては、この二人の自殺の話を聞いたとき、「なんで私に相談してくれなかったの!?」と思わず叫びたくなりました。東京と新潟ですからそんなことできるわけがありませんし、もしも相談してくれたとしても救えた保証はどこにもないのですが、特に新潟の研修医のことは何度もそのようなことを考えてしまいます。
自殺した研修医は37歳。一方私が研修医だったのは33~35歳のときですから、私がその場にいれば…、とついつい考えてしまうのです。もちろん、私がいれば…、などと考えるのは単なる私の「傲慢」であり、実際にはまったく無力だったかもしれません。そもそも、この病院にも年はずっと若かったでしょうが同期の研修医はいますし、研修医でなくても医師は大勢いるわけですから、私が感じるよりももっと強く「なんで相談してくれなかったの」と感じている医師はたくさんいるに違いありません。
電通の社員も同じはずです。同期の社員というのは共通の悩みを抱えていますから、どこか”戦友”のような結びつきがあるのが普通です。私が会社員をしていた頃も、同期の悩みをよく聞いていました。もしも私が会社員時代に同期が自殺するようなことがあれば「できることがなかったのか…」と生涯にわたり後悔するに違いありません。また同じ部署の上司も同様の思いでしょう。一部の報道では「イジメ」などと言われているようですが、部下が困っていて喜ぶ上司などいるはずがありません。自殺した女性の保護者の方は電通を憎んでも憎み切れないという気持ちになられるでしょうが、一緒に仕事をしていた同僚や上司も深い悲しみに苦しめられているはずです。
ではどうすればよかったのか。〇〇さえしていれば…という「回答」はありません。そんな単純な話ではないのです。もしも同期の社員が話を聞いていれば…、上司が相談に乗っていれば…、産業医との面談を受けていれば…、体調不良から医療機関を受診していれば…、いろんなことが考えられますが、これは後から言えることですし、もしもこのうちの1つが実行されていたとしても悲劇が防げた保証はありません。
ですがこれだけは言えるということがあります。それは現在議論されているような「長時間労働を改善すれば防げた」という考えに固執すべきではない、ということです。たしかに、長時間労働と過労死や自殺を裏付ける報告は多数あります。最近では、長時間労働の実態が判れば、比較的簡単に労災の認定がおりるようになってきています。長時間労働が様々な心身疾患の危険因子であることは間違いありません。ですが、その影に隠れて「他の要因」が見過ごされるようになってはいけない、というのが私の考えです。
以前、研修医の過労死を調査していたジャーナリストから取材を受けたことがあります。当時は私自身が研修医を終了して間もない頃であり、現場の意見を聞きたい、と言われたのです。そのときに私が答えたのは、「研修医の場合、どこまでが勉強でどこからが仕事かという境界が非常にあいまい。事務仕事はあきらかに仕事だけれど、自分が診察している患者さんの関連の論文を読んだり、手術の前日に縫合の練習をしたりするのは<仕事>とは言い難い。どこまでが労働時間と言えない以上は、単に研修医の過重労働はNGといっても話が始まらない」というものです。
アメリカでは、研修医の勤務時間は週に80時間以内に制限されています。日本の労働法では週あたりの労働時間は40時間ですから、数字だけで考えるとアメリカの研修医は日本人の倍働いている、となりますが、日本の研修医というのはほとんど病院に入りびたりですから80時間どころではありません。私が研修医2年目の頃は、寮が病院の敷地内にあったこともあり、やっと深夜に戻って寝ようとするとポケベルですぐに病棟に呼ばれて、なんてことは日常茶飯事であり、24時間とまでは言いませんがプライベートなどほとんどありませんでした。
そのときの苦労があるから医師としての今がある、などというと過重労働を肯定することになってしまいますが、私が言いたいことは、過重労働は悪くないということではなく、過重労働を減らすべきことには同意しますが、それ以外の「心身をいい状態に保つ方法」があるということです。
私の場合、会社員時代も研修医時代もかなりの長時間働いていましたが「楽しいこと」あるいは「癒されること」が多数ありました。同期との語らいや先輩の助言などです。また、私の場合は自分が「おせっかい」な性格であることもあり、悩んでいる同期や後輩を放っておけずよく話を聞いていました。(なかには、おせっかいが度を越して嫌がられたことがあったかもしれませんが…)
自殺した若い二人の共通点。二人とも同期や先輩に腹を割って話すことができなかったのではないでしょうか。もちろん「何でも話さなければならない」わけではありませんし、人間関係には相性もあります。ですが、二人の近くにいた人たちは「あのとき声をかけていれば…」と後悔しているに違いありません。
同じような悲劇を防ぐために考えるべきこと。長時間労働の是正も重要ですが、それ以上に大切なのは周りに悩んでいる人がいないかどうか日ごろから気に掛けることではないでしょうか。もしも「話したくない」という性格の持ち主なら、産業医と面談できることや、体調不良があれば医療機関を受診するのもひとつの方法であることを伝えてあげてほしい。それが私の考えです。
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|2017年6月16日 金曜日
2017年6月 「やりたい仕事」よりも重要なこと~前編~
「やりたいことを仕事にしなさい」とか「好きなことで稼ぎましょう」などと言われてもどこか空々しく感じてしまうのは私だけではないでしょう。そのようなセリフは成功者が言えることであって、一生懸命がんばったけど夢が叶わず挫折して、本意でない仕事に従事している人もたくさんいるからです。
ですから、こういったタイトルの本やブログを見つけたとしても実際に役に立つことはあまりない、というのが私の意見です。ひどい場合は成功者の「自慢話」を聞かされるだけです。
今回も前回に続いて「職探しの極意」について述べていきたいと思います。前回も指摘したように「受験」と「就職」はまったく異なります。受験は何といっても本人の努力がものをいいます。もちろん「運」も作用します。そもそも受験を許される家庭環境にいることが「幸運」ですし、たまたま知っている問題が出ることもあります。適当に選んだ選択肢が偶然当たることもあります。
ですが、受験は(難易度にもよりますが)努力なしでは絶対に合格することができません。それも他人よりもずっと努力をしなければなりません。そして、「努力できるかどうか」は、本当に大学でそれを勉強したいのか、その気持ちに比例する、というのが私の考えです。どうしてもその大学で勉強したいという気持ちが強ければ強いほど努力が苦にならずスランプから速やかに脱出できる、ということを拙書で述べました。私の場合、医学部の受験勉強をしていて調子が上がらなかったときは、医学部のキャンパスで勉強している自分の姿を想像したり、あるいは実際に志望校(大阪市立大学)まで出向いて、「このなかの研究室でいずれ働くことになるんだ…」という空想を楽しんだりしていました。こうすると再びやる気がみなぎってくるのです。
一方、就職はそうはいきません。ほとんど、とまではいいませんが、多くは「運」が左右するからです。就職したい会社の前に行って自分が働いているところを想像するようなことを繰り返せば、そのうち不審者として通報されるでしょうし、そもそも会社によっては縁故で大半が決まるところもあります。これがアンフェアだという意見もあるでしょうが、世の中とはそういうものです。賄賂が少ない日本はまだましな方です。また、多くの会社は認めないでしょうが、容姿の見栄えの良さや声の質といった個人の努力ではどうしようもない要因で採用が決まることは多々あります。
芸術やスポーツの分野では、求められる才能や能力も受験とは桁違いに厳しくなります。ある意味「勉強」で生きていく方がラクです。例えば、学年一ピアノが上手だったとして、さらに努力を重ねても将来ピアノだけで食べていける可能性は極めて低いのが現実です。学年一のストライカーがプロのサッカー選手になり、しかも選手時代に一生食べていけるだけ稼げるかというと、これも極めて困難でしょう。
その点「勉強」で勝負するなら、例えば小学生時代の算数の成績が上位3分の1くらいに入っていれば、その後の努力次第では、保護者の理解と支援は必要ですが、理系学部の大学院まで行くことも可能でしょう。そこまでいけばよほどの不景気でない限り、どこかの企業の研究職に就ける可能性は充分にあります。ただし、この会社しかイヤだ、というふうに考えると道はかなり険しくなりますから、どうしてもやりたいこと、を幅広く考えておかなければなりません。
さて、私が考える「職探しの極意」。「やりたい仕事」よりも重視しなければならないことがあるというのが今回の話です。それは、「今、目の前にある仕事が少しでも興味があるなら”卒業”できるまでがんばる」ということです。そしてこれは若ければ若いほど大切なことです。私自身のことを例にとって解説したいと思います。
私はひとつめの大学(関西学院大学)に入学して初めて、おもしろそうだな、と思って始めたのが旅行会社のアルバイトです。動機は極めて不純なもので「タダで沖縄に行きたい」というものです。ですが入ってみてすぐに「これは自分にはムリだ」と感じました。
当時の旅行業界というのは(すべてではありませんが)とても”いい加減”で、現地に着いたけど宿が取れていない、といったお客さんからのクレームは日常茶飯事でした。ここで私のような未熟者は怒っているお客さんの前であたふたするだけで、とてもその場をまとめることができません。しかし、仕事のできる先輩は怒り心頭のお客さんを上手にもてなし、笑いをとり、その後感謝の手紙をもらうのです。宿がなくても、旅館の宴会場に泊めたり、ひどい場合は場末のラブホテルに交渉に行ってそこに宿泊してもらうのです。常識的に考えてこんなことをされてお客さんは納得するはずがないのですが、当時の私の先輩たちはこれくらいのことを当たり前のようにやってのけていたのです。
このような先輩たちの「パワー」を目の当たりにすると、学校の勉強なんかしている場合じゃない、と思わずにはいられません。私はそのアルバイトを辞めるのではなく、こういった先輩たちのいわば「カバン持ち」をするようなつもりで、可能な限りプライベートの行動も共にさせてもらいました。
最初の頃は、そのような先輩たちと一緒にいればいるほど、自分は何もできない人間なんだ…、という劣等感を感じるだけでしたが、そのうちに単純に先輩の「マネ」をすればいいのかも、ということに気づきました。そこで先輩たちがいないところでは、話す中身のみならず、話し方や声の抑揚のつけ方なども真似るようにしてみました。そのうち、「こんなとき〇〇先輩ならこんなふうに言うに違いない。△△先輩ならひとつ”間”を入れてからこう言うかもしれない」などというように考えるようになったのです。
すると、百発百中とまではいきませんが、ある程度はその場で気の利いたことが言えるようになり、コミュニケーションの苦手意識がなくなってきたのです。これは「タダで沖縄に行きたい」と考えてアルバイトを始めた頃にはまったく予想もしていなかった私の「財産」となりました。相手が老若男女どのような人であったとしても、自分とはまったく異なる社会で生きている人であったとしても、初対面で苦手意識を持つことがなくなったのです。医師の多くは初めて接する患者さんと話すときに緊張するといいますが、私にはそれがほとんどないのはこの「財産」があるからです。
過去にも述べたように、大阪で深夜の救急外来をやっていると、泥酔者、暴力的な人、自殺未遂をした人などが次々とやって来ます。ときには「指をつめたから縫ってくれ」と言って受診する「そのスジの人」もいます。夜間の救急外来にやってくる人のいくらかは医療者に暴言を吐きますから、それが辛いと考える医師ももちろんいますが、私の場合、こういったことがほとんど苦痛になりません。これはちょっとマズイな…、と感じたときも旅行会社でのアルバイト時代を思い出し、「〇〇先輩ならどうするかな」というふうに考えます。
そのアルバイトを始めた頃は、百回生まれ変わっても先輩たちにはかなわないな…、と感じていて、それは変わっておらず、当時の先輩たちはいつまでも私の「永遠の先輩」であり、今も私など足元にも及びません。ですが、先輩たちから学ばせてもらった私の「財産」は、その後の人生で何度も私を救ってくれています。
もしも私がそのアルバイトをすぐにやめていれば、自分のコミュニケーション能力は低いままで、きっとまったく異なる人生を歩んでいたに違いありません。私が先輩たちから学んだことはいくら教科書を読んでもわからないことであり、「自分には向いてないから他にやりたいバイトを探そう」と諦めていれば身につかなかったことです。
しかし、その後の私の人生はこの「財産」でいいことばかり…、というわけではありません。関西学院大学を卒業し、満を持して入社したはずの会社で再び挫折を味わうことになります。
つづく。
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