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2013年7月14日 日曜日
2010年6月7日(月) 外で遊んでいた子供は大学進学率が高い?
子供時代に外で活発に遊んだ人ほど、本を読む割合や大学進学率が高い・・・
これは、国立青少年教育振興機構が5月24日に公表した調査結果です。(報道は5月26日の読売新聞)
この調査は、2009年末、全国の20~60歳代の男女5,000人と、小中高生11,000人を対象に実施されています。「川や海で泳いだ」「友達と相撲をした」など30項目をもとに、外遊びの体験豊かなグループとそうでないグループとに分けています。
その結果、「体験豊か」という大人のグループは、1か月に本を1冊以上読む人の割合が71%にのぼり、「体験少ない」グループ(47%)より24ポイント上回っていました。最終学歴が大学以上は、「体験豊か」が50%で、「体験少ない」グループより5ポイント多かったそうです。
同機構は、「学校や家庭は、子供が外で遊ぶ機会をもっと増やす努力をすべきだ」と指摘しています。
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この報道をみて、「もっともだ・・・」と感じられる一方で、「子供が外で遊ぶ機会を・・・などと言われても、昔と今では時代が違うんだからそこを考えるべきでしょう」と言いたくなります。
昔をなつかしむ大人たちは、「昔は川で泳いで相撲をしたもんだ」などと自慢っぽくいいますが、今の時代に都会で生まれていたら「放課後に運動場で相撲をとって、週末に電車やバスに乗って川で泳ぐ」、といったことをするでしょうか。おそらく、外では遊ばずに今の子供と同じようにゲームやインターネットに夢中になるのではないでしょうか。
肝腎なのは、昔をなつかしむことではなく今この時代には何をすべきか、です。私が医師として若い世代から高齢者まで診ていて感じるのは、社会で成功するためには(外で遊んでいたかどうかには関係なく)コミュニケーション能力が必要、ということです。
外でも中でも、あるいはインターネットを通してでもいいから、できるだけいろんな人と交わってコミュニケーションをとり、子供の頃から多様な価値を学ぶ。私はこのことが(外で遊ぶことよりも)大切だと思っています。
(谷口恭)
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|2013年7月14日 日曜日
2010年6月10日(木) HIVの「検査数」が大幅減
厚生労働省は5月28日、HIV/エイズ関連のデータを公表しました。
まず、2009年1年間で、新たにHIV感染が判った人(まだエイズを発症していない感染者)は1,021人で前年より105人減少しています。一方、エイズ発症者は431人で、この数字は前年(2008年)とまったく同じです。
しかしながら、全国の保健所などでおこなっている検査件数はおよそ15万件で、これは前年から15%の減少ということになります。検査件数は2002年以降増加の一途でしたが、2009年に一転して大幅減少に転じたことになります。
さらに、それだけではありません。実は昨年(2009年)にHIVの検査件数が減少したのは新型インフルエンザのパニックがあったからと予想されていました。行政のHIV担当者は、新型インフルエンザの騒ぎのない今年(2010年)は再び検査件数は増えるだろうと予想していたそうなのですが、今年の1~3月の検査件数は全国で29,455件、これは前年同期の64%という少なさです。
さらに、さらにです。この3ヶ月間で検査件数が減り、その結果新たにHIV感染がわかった人(まだエイズを発症していない感染者)は227人と前年同期から244人減少しているのですが(これは検査件数が減っているので当然です)、エイズを発症した人は94人とこれは前年同期の84人から10%以上も増加しているのです。
これが何を意味するかというと、「自らのHIV感染に気付いておらずエイズを発症して初めて知る感染者が急増している」、ということです。
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上記の検査件数は保健所など公的機関によるもののみです。医療機関で検査を受けた人は含まれていません。
しかし、検査件数が減っているのは医療機関でも同様です。太融寺町谷口医院でも、「症状はないけれどもHIVが気になって・・・」と言って受診する人は、2008年がピークで2009年は減少し、今年はさらに減少しています。
その一方で、「別の訴えで受診してそこからHIV感染が判った。患者さんはまさか自分がHIVに感染しているとは思っていなかった」、というケースが昨年後半あたりから増えてきています。
検査に対する関心が薄れることが問題となる理由は主に2つあります。1つは、他人に感染させる機会が増えること、もう1つは、HIV感染の発見が遅れエイズを発症してしまえば薬が効きにくくなる可能性が生じ寿命を縮ませかねない、ということです。
気になる人は早めに検査を受けましょう。
(谷口恭)
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|2013年7月14日 日曜日
2010年6月11日(金) 2009年のガンによる死亡数が過去最多
日本人の死因の第1位が「ガン」というのはもはや常識になっていますが、2009年の死亡者数が過去最多を記録したことが厚生労働省により発表されました。
同省の「2009年人口動態統計月報年計」によりますと、2009年の死亡数は 1,141,920人(前年より487人の減少)で、死因原因の1位であるガンによる死亡数は、343,954人(前年比991人増)となっています。ガンによる死亡数/全体の死亡数は、30.1%となります。
男女ごとのガンの部位をみてみると、男性で最多は「肺」で49,022人です。「胃」32,764人、「大腸」22,748人、「肝」21,631人と続きます。女性は最多が「大腸」で19,659人。「肺」18,546人、「胃」17,236人、「乳房」11,914人、「肝」11,083人、「子宮」5,523人と続いています。
前年と比べ減少したのは、男性の「胃」「大腸」「肝」、女性の「肝」「子宮」です。このうち、2年連続の減少となったのは男性の「胃」だけです。
また、上昇傾向が著しいのは男性の「肺」です。女性の「大腸」「肺」も上昇傾向にあります。
2007年に策定された国の「がん対策推進基本計画」では、放射線療法、化学療法の推進や、これらを専門的に行う医師などの育成、がん予防やがんの早期発見に向けた施策の推進などにより、がんによる死亡者を減少させることを目標に掲げています。今後ますますガン対策の議論が活発におこなわれることになるでしょう。
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ガンは1981年以降、一貫して死因順位の第1位となっています。
詳しくは、厚生労働省のホームページに掲載されています。(下記URL参照)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai09/index.html
ガンはこれからも増えることは間違いないでしょう。なぜ間違いないかというと、ガン以外の疾患の減少が予想されるからです。感染症が減り、例えば肺炎や結核で亡くなることが減り(抗生物質の効かない肺炎が問題になっていますが)、喫煙率の低下で循環器系疾患による死亡が減ることが予想されます。
ガンの治療は抗がん剤にしても放射線にしても高額な治療費がかかります。今後、増加し続ける医療費をどのように捻出するかという問題がさらにクローズアップされることになるはずです。
(谷口恭)
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|2013年7月14日 日曜日
2010年6月17日(木) 75歳未満のガン「死亡率」は順調に減少
今月(2010年6月)上旬に、厚生労働省が疾患別の死因を公表し、2009年のガンによる死亡数は過去最多となったことを各マスコミが報道しました。例えば、医療情報を専門に配信しているキャリアブレインは、「昨年のがんによる死亡数、過去最多」というタイトルで6月8日にこれを報じています。(下記医療ニュースも参照ください)
ところが、それから1週間後、今度は各マスコミが、ガン死亡者が減少しているというニュースを発信しています。例えば日経新聞は、「がん死亡者、3年で6%減」というタイトルの記事を6月16日に報道しています。
これらニュースのタイトルだけをみていると、日本のガン患者は減っているのか増えているのか分からずに混乱してしまいます。混乱を整理するために、順を追って説明していきたいと思います。
まず、ガンの総数が増えているのは事実です。日経のいう「3年で6%減」というのは、ガン死亡者の総数ではなく、①75歳未満のガンによる死亡率であり、なおかつ、②6%というのは、単純な死亡率(これを「粗死亡率」と呼びます)ではなく、「年齢調整死亡率」のことです。
「年齢調整死亡率」という言葉は少し専門的ですが、わかりやすく言えば「年齢の影響を除いた死亡率」と考えてもらえばいいかと思います。(それでも分かりにくいですね・・・)
数字をあげて説明すると、75歳未満の2005年のガンによる死亡者は164,553人、2008年が160,192人です。これを単純に計算すると2.65%しか減少していませんが、「年齢調整死亡率」という観点から算出すれば、5.6%(約6%)の減少となるというわけです。
さて、問題はこの5.6%という数字が評価されるべきかどうか、ですが、2007年に制定された「がん対策推進基本計画」の中に記載されている基本計画では「10年で20%減」が目標となっています。厚生労働省は、この目標は「達成できるペース」と考えているようです。
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75歳以上のガン死亡者数は、2005年から2008年にかけて約2万人が増えています。これをどう評価するかというのは議論の分かれるところでしょう。「がん対策推進基本計画」がガン死亡率の減少目標の対象を「75歳未満」としているということは、「75歳までは生きましょう」と考えられているのかもしれません。
75歳までは生きなさい、とお上から言われているようで気分が悪い、と感じる人もいるかもしれませんが、ガンの治療が発達したおかげで適切な治療を受ければ長生きできることが多くなったのは事実です。
逆に75歳以降のガン死亡者も減らすよう目標を定めるべきだ、と考える人もいるかもしれません。将来的には75歳以上のガン死亡率減少も目標に入れられるかもしれませんが、人間はいつか必ず死ぬ運命にありますから、上限なくガン死亡率減少を目標とするというのは非現実的です。
「がん対策推進基本計画」には、未成年者の喫煙率を「3年以内でゼロ」にすることを目標としていますが、2008年の高校3年男子の喫煙率は12.8%だそうです。こちらの対策を急ぐべきでしょう。
(谷口恭)
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|2013年7月14日 日曜日
2010年6月20日(日) 白米→玄米で糖尿病のリスクが低下
白米は糖尿病のリスクとなり、もしも白米をすべて玄米に替えると糖尿病のリスクは16%減少する・・・
これは、米国ハーバード大学公衆衛生学教室のQi Sun氏らの研究結果で、医学誌『Archives of Internal Medicine』2010年6月号に論文が掲載されています。(下記参照)
研究者らが今回おこなったのは、過去の疫学データを検証するという方法です。米国の32~87歳の男性医療従事者を対象とした研究(HPFS)と、米国の37~65歳及び26~45歳の女性看護師を対象とした研究(NHS Ⅰ及びⅡ)のデータを検証しています。今回の研究の対象者は、これらの過去の研究の対象者から、元々糖尿病のあった症例、心血管障害やガンの罹患者、1日当たりのカロリー摂取量が極端に低い例や高い例を除いた合計197,228人で、14~22年間追跡調査をおこない、糖尿病を発症したかどうかを調べています。
その結果、追跡期間中に糖尿病を発症したのは合計2,648例で、白米及び玄米の摂取量から糖尿病の発症率を算出すると、1日50グラムの白米を玄米(brown rice)に切り替えると糖尿病発症のリスクを16%下げることができるという結果が導かれています。また、白米を精白されていない穀物(whole grains)に切り替えることで36%下げることができるとされています。
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この研究は米国人を対象としています。当然ながら、米国人は日本人ほど米を食べません。この研究では、「1日50グラムの白米を・・・」という仮定で試算されていますが、白米1合でだいたい150グラムです。ということは、この研究を悲観的に捉えると、「毎日白米を大量に食べている日本人はそれだけで糖尿病のリスクを抱えている」、ということになってしまいます。実際、日本を含むアジアでは白米の高量摂取が糖尿病やメタボリックシンドロームと関連するという研究が発表されたこともあります。
しかし、我々日本人は白米なしで生きていくことはできないでしょう。(こう決めつけてはいけませんが私個人としては無理です・・・) 私は一度、健康のため、と考えて主食を玄米に替えてみたことがあるのですが、1週間で断念しました。その後、白米と玄米を半分ずつにして炊いてみたのですが、やはり1週間で断念しました。
マクロビオティックという健康法(というか食事法)がありますが、これを厳格にすれば白米は食べられなくなります。実際、マクロビオティックを本格的に実践している家庭で育てば、白米の味を知らないまま生涯を過ごすことになりかねません。私は以前ある雑誌で、マクロビオティックで育てられた子供が小学校の卒業文集に「白いご飯を食べたい」と書いた、という記事をみたことがあります。この小学生は現在成人していますが糖尿病は発症していないものの、いまだに白米は食べさせてもらえないそうです。
話がそれましたが、白米を食べ過ぎるのはよくないにしても、すべてを玄米や精白されていない穀物に替えるべき、という運動が起こらないことを祈りたいと思います・・・。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、
「White Rice, Brown Rice, and Risk of Type 2 Diabetes in US Men and Women」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=416025
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|2013年7月14日 日曜日
2010年6月22日(火) 5歳未満の子供の死亡数は世界で約880万人
日本では少子化が問題となっていますが、世界に目を向けると、5歳まで生きられない子供がいかに多いかということがわかります。
医学誌『Lancet』2010年6月5日号(注1)に掲載された論文によりますと、2008年に世界193ヶ国の5歳未満の子供の死亡数は8,795,000人とされています。1990年には、年間約13,000,000人の5歳未満の子供が死亡していましたから、18年間でおよそ3分の2に減少したことになります。
しかしながら、国連ミレニアム・サミットで採択された「ミレニアム開発目標4(MDG4)」では、「2015年までに5歳児未満の死亡率を 1990年の水準の3分の1に削減する」とされており、これを達成するのはむつかしい状況だと言わざるを得ません。
8,795,000人もの5歳未満の子供たちが亡くなっている状況を少し詳しくみてみましょう。まず、世界の5歳未満の子供の総数は、日本ユニセフ協会が発行している『世界子供白書』(注2)によりますと、約6億3千万人となっています。これを単純計算すると、世界の5歳未満の子供の約1.4%が1年間に死亡していることになります。
死因をみてみると、68%(5,970,000人)が感染症で、その内訳は、肺炎が18%(1,575,000人)、下痢が15%(1,336,000人)、マラリアが8%(732,000人)となっています。また、死亡した子供の41%(3,575,000人)が新生児(生後1ヶ月未満)であり、新生児だけで死因をみると、早産合併症が12%(1,033,000人)、新生児仮死が9%(814,000人)、敗血症が6%(521,000人)、肺炎が4%(386,000人)となっています。
死亡数の多い国トップ5は、インド、ナイジェリア、コンゴ、パキスタン、中国で、これら5ヵ国で5歳未満の子供の死亡数の49%を占めます。
********
『世界子供白書』によりますと、後発開発途上国に生まれた子どもが生後28日以内に死亡する確率は、先進工業国で生まれた子どものほぼ14倍になるそうです。
今回の論文では詳しく触れられていませんが、周産期医療を語るときには、妊産婦死亡率も考えなければなりません。5歳未満の子供の死亡が多いことに驚かされますが、それでも1990年から比べると3分の1は減っています。ところが、妊産婦の死亡数はほとんど減っておらず50万人を下回りません。
「少子化」が問題になっているわが国と世界の状況はまったく異なります。いかに子供を産むかだけでなく、いかに産まれた子供を大切にするか(主には感染症から守るか)、いかに妊婦に安心して出産してもらえるか、ということが世界的な観点から検討されなければならないというわけです。
(谷口恭)
注1 この論文のタイトルは「Global, regional, and national causes of child mortality in 2008:
a systematic analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960549-1/fulltext#article_upsell
注2 日本ユニセフ協会が発行している『世界子供白書』は下記のURLで読むことができます。
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|2013年7月14日 日曜日
2010年6月25日(金) 世界の飢餓人口は増加する一方
「ミレニアム開発目標(MDG)」という言葉をご存知でしょうか。
ミレニアム開発目標とは、簡単に言えば、世界の平和・安全・貧困・環境・人権などの問題に関して地球規模で取り組んでいきましょう、という、国連が主体となって掲げている目標のことで、2000年9月にニューヨークで開催された国連サミットで採択されました。(先日お伝えした医療ニュース「5歳未満の子供の死亡数は世界で約880万人」のなかでもミレニアム開発目標について触れています)
そのミレニアム開発目標のなかに「飢餓の撲滅」という項目があり、「2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる」という目標が掲げられています。
しかし、この目標達成は実現しそうにありません。6月23日にReuterが、同日に国連が発表したミレニアム開発目標の年次報告を報道しているのですが(注1)、2008年~2009年の食糧危機や金融危機のために、飢餓人口は増加傾向にあるようです。栄養不足の世界の人数が1990年~1992年に8億1,700万人だったのが、2005年から2007年に8億3千万人に増え、さらに2009年には10億人を超えたと試算されています。
ミレニアム開発目標には「貧困の撲滅」の項目もあります。1日1ドル25セント(注2)で暮らす人口の割合は、1990年には18億人でしたが、2015年には9億2千万人にまで減少すると国連は推測しています。ミレニアム開発目標では「2015年までに貧困者の割合を1990年の水準の半数に減少させる」としていますから、こちらの目標はもうひとがんばりで達成できそうな見込みです。Reuterは、この原因として中国やインドの経済成長を挙げています。
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最近、患者さんに対する食事指導に使う目的で、『外食カロリーブック』という本を購入しました。この本自体は大変わかりやすく実用的なのですが、外食するときに「食べ物をいかに残すか」という観点で書かれています。例えば、マカロニグラタンなら「1/2を残す」といった感じです。我々は、食べ物をいかに残すかを考えて健康管理をしなければならない、というわけです。
一方、世界に目を向けると飢餓人口は増加傾向に拍車がかかっています。10億人以上もの人が毎日食べるものがなくて苦しんでいるのが現実だというわけです。だからと言って、お金を途上国に送れ、と言いたいわけではありません。ただ、食べ物を残すときには、飢餓で苦しんでいる人たちが大勢いることを忘れてはならない、と私は感じています。
(谷口恭)
注1:このニュースのタイトルは、「Fight against hunger hit by economic crisis-UN」で、下記のURLで読むことができます。
http://www.reuters.com/article/idUSN23223467._CH_.2400
注2:Reuterの記事では、「1日に1ドル25セント未満」とされていますが、ミレニアム開発目標が設定されたときは、「1日に1ドル未満」だったはずです。実際、外務省のウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html)にはそのように書かれています。これは目標設定が変わったのでしょうか。ご存知の方おられましたら教えてください。
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|2013年7月14日 日曜日
2010年7月2日(金) ビタミンB6とメチオニンが肺ガンを予防する?
このところ、ビタミンB6が心臓病や大腸ガンの予防に有効という研究報告が相次いでいますが(詳しくは下記参照)、今度は肺ガンを予防するかもしれないという研究が発表されました。
フランスの「国際ガン研究センター(International Agency for
Research on Cancer)」の研究者であるMattias Johansson氏が医学誌『JAMA』2010年6月16日号に研究結果を発表しています(下記注参照)。
1992~2000年にかけて10ヵ国519,978人が対象におこなわれたガンと栄養素の研究にEPICというものがあるのですが、Johansson氏らの研究チームは、このEPICの対象となり血液採取データが残されている385,747人について追跡調査をおこないました。
調査の結果、2006年までに肺がんを発症した人は899人でした。この899人の対象グループとして、国籍や性別、誕生日、血液採取日を合致させた1,770人を選び、両グループの血中の4種類のビタミンB(B2、B6、葉酸、B12)と、メチオニン、ホモシステイン濃度を比較し、肺がん発症率との関連を分析しています。
その結果、血中ビタミンB6の濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べ肺ガンを発症する確率が0.44となっています。(グループを血中ビタミンB6の濃度に応じて4つのグループにわけ、最も高いグループと低いグループを比較し、最も低いグループに100人の肺ガン患者がいるとすると、最も高いグループでは44人しかいない、という意味です)
また、血中メチオニンの濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べ肺ガンを発症する確率は0.52となっています。
肺ガンについての調査ですから、喫煙の有無が気になりますが、今回の調査では喫煙に関係なく有意差が認められています。つまり、喫煙者、過去の喫煙者、非喫煙者のいずれにおいてもビタミンB6、メチオニンの血中濃度が高いほど肺ガンにかかりにくいという結果がでています。
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ならばビタミンB6を積極的に摂取しよう、ということになりますが、以前もお伝えしましたように、ビタミンB6が含まれている食品というのは、玄米、ニンニク、ソバ、鶏肉、豚肉、魚、などで、いずれも比較的普段から食べているもの、もしくはあまり大量には食べられないものです。日本人が比較的よく食べるものとしてはタコがあり、広島大学がタコから健康食品をつくることを検討しているそうです。
メチオニンは必須アミノ酸の1種で、必須アミノ酸というのは人間が体内で合成することができず食品から摂らなければなりません。メチオニンには、血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素を取り除く作用があるとされ、そのため健康食品にはよく入れられています。
メチオニンを多く含む食べ物としては、ニンニク、ホウレンソウ、グリーンピース、トウモロコシ、ピスタチオ、カシューナッツ、インゲンマメなどが代表ですが鶏肉や魚にも含まれています。
やはり結局のところ、「バランスのよい食事を摂るのが一番」ということになると言えるでしょう。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは「Serum B Vitamin Levels and Risk of Lung
Cancer」で、下記のURLで概要を読むことができます。
参考:医療ニュース
2010年4月30日 「ビタミンB6、葉酸などで心血管疾患のリスク低下」
2010年4月3日「やはりビタミンB6は大腸ガン予防に有効か」
2008年6月1日「心疾患の予防にはビタミンB6」
2007年8月4日「大腸がんの予防、男性ビタミンB6、女性はコーヒー」
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|2013年7月14日 日曜日
2010年7月12日(月) 寝る前の携帯電話はNG
就寝前に毎日携帯電話を使う中高生は、使わない生徒と比べて睡眠障害になるリスクが約1.4倍高い・・・
これは、日本大学医学部公衆衛生学教室の研究結果で、7月1日から名古屋で開催されている日本睡眠学会第35回学術大会で発表されたそうです。(7月2日の読売新聞が報道しています)
この調査は、2008年10月から2009年3月にかけて、全国から無作為に抽出した合計92校の中学生40,151人と、合計80校の高校生55,529人を対象とし、アンケートに回答してもらうかたちをとっています。
その結果、「就寝前に毎日携帯電話でメールをする」と答えたのは男子で18.9%、女子で27.8%となっています。そして、このように答えた生徒は、そうでない生徒と比べて「入眠障害」、「中途覚醒」、「早朝覚醒」などの睡眠障害を発症するリスクが約1.4倍高いということが分かりました。
さらに、日中に過度の眠気に陥るリスクは、就寝前に毎日通話する生徒で1.17倍、就寝前に毎日メールする生徒では1.5倍も高くなっています。
今回の調査では携帯電話の使用時間も調べられています。1日の携帯電話使用時間(1ヶ月平均)が2時間以上、と回答したのは、高2男子で35%、高2女子で45.8%!、となっています。
*********
私自身は、携帯電話は持っていますが、現在は通話もメールもほとんどしていません。はっきり言って携帯電話は嫌いですし、携帯電話がなかった時代に戻りたいとさえ思うことがあります。この理由は、私が医師であることと無関係ではないでしょう。病院勤務の頃、いつ病院から呼び出されるかも分からないために携帯電話は常に持っていなければならず、また電波が届いているかどうかをいつも気にしていなければならなかったからです。まるで自分は携帯電話の奴隷のようだ・・・、と感じていました。今は、病院から呼び出されることはありませんから常にもっている必要はなく、基本的に私は携帯電話を携帯していません。
ですから、私のような人間からすると、これほどまでに中高生が携帯電話を使っているということが信じられないのです。しかも高2男子の3人に1人以上、女子にいたってはほぼ2人に1人が2時間以上も使用しているなどというのは、別の世界の人たちのようにすら感じます。
しかし、このような話をすると、中高生でなくても30~40代の大半の人たちからも、「信じられない・・・」という目で見られます。こと携帯電話に関しては、私は相当奇特な人間なのかもしれません。
ところで、年齢を問わず睡眠障害を訴えてクリニックを受診する患者さんは数多くいるのですが、中高生だけでなく、大人たちも携帯電話のせいで睡眠障害が起こっているのではないでしょうか・・・。
(谷口恭)
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|2013年7月14日 日曜日
2010年7月14日(水) 悪玉コレステロールが高い方が長生き!?
7月13日の読売新聞に驚くべき記事が報道されました。
同紙によりますと、日本脂質栄養学会は今年9月に、「LDL(悪玉コレステロール)が高い方が長寿に結びつく」との内容の指針を発表する方針だそうです。
また、「(総)コレステロール値が高く、高脂血症と診断された人の方が、そうでない人よりも脳卒中の死亡率が低く、症状も軽くなる」、という調査結果を、東海大の大櫛陽一教授がまとめた、とも報道されています。
今のところ、他のマスコミは同様の記事を報じていないようですし、この読売新聞の記事にしても論文に関する情報が述べられていないため、真偽の程を充分に検証することはできませんが、同紙はかなり断定的な表現を使っており、複数の専門家の声も載せているため、信憑性に高いのではないかと思われます。
同紙の報道をもう少し詳しくみてみましょう。
東海大の大櫛教授のグループは、動脈硬化が一因とされる脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)で入院した患者計16,850人を対象に、高脂血症の有無と死亡率、症状の強さを比較しています。
その結果、脳梗塞で入院した患者のうち、高脂血症でない9,851人が入院中に死亡した割合は約5.5%、一方、高脂血症の2,311人の死亡率は約2.4%にとどまっていたそうです。脳内出血や、くも膜下出血でも、高脂血症があるグループで、死亡率は半分から3分の1だったそうです。
また、脳卒中で入院した患者と患者でない人を比較した調査では、患者のほうが高脂血症の割合が低かったそうです。(高脂血症があれば入院しにくいという意味でしょうか・・・)
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コレステロールのなかでも、LDL(いわゆる悪玉コレステロール)が高ければ動脈硬化を起こしやすい、そして動脈硬化があれば脳卒中や心疾患をおこしやすく寿命を縮めやすい、というのは我々医療従事者からみれば<常識中の常識>です。今回の報道はそれを根底からくつがえすものですから、私はこの報道を見たとき、私が記事を読み間違えているか誤報に違いないと感じました。しかし、文章をよく読めば読むほど「総コレステロール(もしくはLDLが)高い方が長生き・・・」、とはっきりと述べられています。
しかし、これまで国内外でコレステロール(とりわけLDL)の危険性については何度も信頼性の高い研究が報告されています。メタボリック・シンドロームの診断基準で、高脂血症の指標になっているのは、HDL(善玉コレステロール)が低すぎないか、あるいはTG(中性脂肪)が高すぎないか、です。メタボの診断基準にLDLが入っていないのは、「LDLが高いとそれだけで動脈硬化のリスク上昇は自明だから」、です。
果たして今後、コレステロール、とりわけLDLについてはどのように解釈すべきなのでしょうか。現在、LDLが高い患者さんに処方している高脂血症の治療薬はやめてもらうべきなのでしょうか・・・。
今後の報告を待ちたいと思います・・・。
(谷口恭)
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