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2013年7月15日 月曜日
2010年4月30日(金) 「人口減少社会」が本格的に
4月16日、総務省は、2009年10月1日現在の日本の推計人口を発表しました。推計人口は国が5年ごとに実施する国勢調査を基に、出生や死亡、出入国などその後の増減を加味して算出されます。
定住外国人を含む総人口は1億2,751万人で、前年に比べて18万3,000人(0.14%)減ったことになります。減少は2年連続で、減少幅は過去最大となります。女性については、初めて死亡者数が出生者数を上回る自然減少になっています。男性は5年連続での自然減となり、総務省は「本格的な人口減少時代に入った」と分析しています。
国外への流出が国内への流入を上回る人口の「社会減」は12万4,000人となっています。外国人は出国者が入国者を47,000人上回り、1994年以来、15年ぶりの社会減となるそうです。ブラジル人など自動車関連企業などで勤務していた多くの外国人が帰国したことが最たる要因と分析されています。
全国47都道府県のうち、人口が増加したのは沖縄、神奈川、千葉、埼玉、東京、滋賀、愛知の7都県です。沖縄県は、前年比で大幅に人口が増加した唯一の県ですが、これは沖縄移住ブームが続いているからと考えられます。それ以外は都市部への人口流入であり、過疎化と過密化の進行が依然として進行していることを示しています。
推計人口では、65歳以上の老年人口が総人口に占める割合が22.7%に達し、過去最高を更新しました。老年人口の伸びを前年比でみると、埼玉県(4.9%)が最も高く、千葉県(4.7%)、神奈川県(4.3%)と続きます。一方、秋田県や鳥取県などの地方は低い伸びにとどまっています。埼玉、千葉、神奈川では、75歳以上の人口の伸びも5%を超えており、全国平均の3.7%を大幅に上回っています。
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都市部ではもともと、総人口に占める高齢者の割合が地方より低いのが特徴でした。都会は若者の街だったのです。しかし、ここにきて1960年代前後に仕事を求めて都市部に集まった世代(当時の若者)が高齢化し、高齢者の割合が上昇しているのです。
都市部の高齢者は一人暮らしの割合が多いのが特徴です。今後、「孤独死」の問題がさらにクローズアップされることになるでしょう。
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年4月30日(金) リポ酸で低血糖症、重症例も
α(アルファ)リポ酸という物質をご存知でしょうか。体脂肪を減らしダイエットに効果があり、さらに老化防止に効果があるなどと謳われ、数年前より健康食品として市場に出回っています。
このαリポ酸が原因で、動悸や震えなどを引き起こす「自発性低血糖」が相次いで報告されています。
「自発性低血糖」とは、血糖値を下げる薬を使っているわけではないのに低血糖になる病態のことを言い、症状としては動悸や手の震えなどが出現します。重症化すると、意識を失い昏睡状態となります。
厚生労働省の調査によりますと、全国の主要病院207施設で、2007年から3年間に自発性低血糖と診断された患者187人のうち、サプリメントとの関連が報告されたのは19人で、そのうち17人がαリポ酸だったそうです。摂取した量や期間は不明ですが、服用を始めてから1~2ヶ月で震えや動悸などの症状が出現し、受診するケースが多いとのことです。
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なぜαリポ酸で自発性低血糖が発症するのかについては少しむつかしいのですが、かみくだいて説明したいと思います。
まず、物質を分子レベルでみたときに「SH基」と呼ばれる構造をもったものが薬やサプリメントには存在し、αリポ酸にもSH基があります。そして、ある特定の白血球を持っている人が(これはおそらく遺伝的に決まっています)、このSH基を含む物質を服用すると血糖値が大きく下がるのです。この特定の白血球を持っている日本人は全体のおよそ8%程度であることが分かっています。
そんな危険性のあるSH基を持っている物質をサプリメントにしてもいいのか、と感じる方もいるでしょう。実際、αリポ酸は、以前は医薬品の扱いでしたが、2004年の基準改正でサプリメントとして販売されることになったのです。
αリポ酸について及び自発性低血糖について詳しいことを知りたい方は下記URLを参照ください。「α-リポ酸の安全性・有効性情報」として国立健康・栄養研究所が情報提供をしています。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail471.html
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月1日(土) 両親のDV目撃が子供の脳に悪影響
最近、児童虐待のニュースがマスコミを賑わせていますが、児童を虐待するだけではなく、両親のDV(家庭内暴力)を見るだけで、子供の脳の発達に悪影響がでるという研究が発表されました。
熊本大学医学の友田明美准教授らが研究をおこない、4月23~25日に盛岡でおこなわれた日本小児科学会で発表されたようです。(報道は4月23日の読売新聞)
この研究は米国ハーバード大学と共同でアメリカ人を対象に実施されています。3~17歳時に、「自身は虐待を受けなかったけれども日常的に父親が母親に殴る蹴るなどの激しい暴力をふるう姿を目撃した」18~25歳の男女15人と、虐待のない家庭で育った33人を選び、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の様子を比較しています。
その結果、虐待を目撃していたグループでは、視覚の情報を処理する右脳の「視覚野」の容積が、目撃していないグループに比べて、20.5%も小さかったそうです。
また、視覚野の血流量を調べると、目撃経験者の方が8.1%多く、これは神経活動が過敏になっていることを示しています。学力や記憶力についても、目撃を経験していたグループの方が低い傾向となったそうです。
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これはショッキングな報告だと思います。今回の研究を、言葉を変えて端的に言えば、「両親の仲が良いと子供は優秀になり、仲が悪いと落ちこぼれるかもしれない」ということになります。
ただ、この研究では対象者数が少ないようにも思えます。今後の研究報告を待ちたいところです。しかし、待つまでもなくDV防止対策については本腰を入れて取り組まなければなりません。行政に頼るのではなく、身近にDVの被害者がいないかどうか、ひとりひとりが注意を払うべきでしょう。
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月10日(月) A型肝炎と手足口病が流行中
A型肝炎と手足口病(てあしくちびょう)、どちらも一度は聞かれたことのある病気だと思いますが、この2つの病気の共通点が分かりますでしょうか。
それは、これら2つの感染症が、どちらもエンテロウイルスというウイルス属に属する病原体が原因となっているということです。
A型肝炎は、今年(2010年)の3月以降急増しており、すでに昨年(2009年)1年間の患者数を超えています。国立感染症研究所が4月29日に公表しています。
同研究所によりますと、3月29日から4月4日までの1週間に18人の報告があり、これは2007年以降では最多となります。その後も増加傾向が続き、4月18日までの合計(速報値)は121人で、昨年(2009年)一年間の115人を超えたことになります。
A型肝炎ウイルスは、一部には性交渉による感染もありますが、大半は不衛生な水や食べ物から感染します。子供の場合は感染しても不顕性感染といって、感染したことに気づかずそのうちに治っているというケースも多いのですが、成人してからの感染は発症することの方が多いと言えます。通常は、1~2ヶ月間の入院を要しますが、それ以上慢性化することはありません。しかし、A型肝炎はときに劇症化することがあります。今シーズンの報告では、2例が劇症化し、そのうち1例は死亡にいたっています。
一方、手足口病は過去11年間で最多となっていることを同研究所が5月2日に発表しました。同研究所によりますと、全国約3千の小児科定点医療機関から報告された患者数は、4月18日までの1週間の平均が0.55人と3週連続で増加しています。これは昨年同時期の7倍に相当します。通常、手足口病は夏に流行しますから、今後さらに急増する可能性もあります。
手足口病は、名前が示すとおり、乳幼児の口の粘膜や手、足に水疱ができる病気です。放置しておいても治ることが多いのですが、ときに髄膜炎やさらに脳炎を起こすこともあり、こうなると命に関わることもあります。幸にも今のところ重症患者の報告はありません。
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エンテロウイルスには多数の種類(サブタイプ)があり、A型肝炎の原因ウイルスはエンテロウイルス72型です。手足口病の原因ウイルスはエンテロウイルス71型が最も有名ですが、コクサッキーウイルスA10型、A16型も原因となります。(話が複雑ですが、コクサッキーウイルスもエンテロウイルスの仲間です)
「エンテロ(entero)」というのは「腸内の」という意味の接頭語です。つまり、A型肝炎の72型も手足口病の71型も、共に腸内に生息するのです。ということは、手洗いの励行や排せつ物の適切な処理が人から人への蔓延化を予防するのに重要ということになります。
それからもうひとつ。A型肝炎は成人の場合、ときに命を奪う重篤な感染症となりますが、ワクチンを接種していれば防ぐことができます。今回の流行は国内によるものとみられていますが、最近は中国やインド、その他アジア諸国での感染が急増しています。海外渡航される方は早めにワクチン接種をしましょう。(もちろん私も接種済みです)
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月13日(木) 米国西部、致死的な真菌が蔓延する可能性
クリプトコッカス症という病気をご存知でしょうか。
クリプトコッカスという真菌による感染症で、この真菌は通常、土壌や鳥(ハトが多い)の糞中に生息しています。土や糞が乾燥すると、空気中に真菌が飛散して、ヒトが口から吸い込んで肺炎などを起こします。
しかし、一部には健常人にも発症することがあるものの、大半は免疫不全にある人に起こる感染症で、エイズの合併症としても有名です。
そのクリプトコッカス症が、米国オレゴン州で流行し死亡例もでています。医学誌『PLoS Pathogens』4月22日号(オンライン版)によりますと、死亡率は25%にも上るそうです。研究者によりますと、従来のクリプトコッカス症が免疫不全者に起こりやすいのに対して、現在流行しているタイプは、特に病気をもっていない健康な人にもかかりやすいようです。
そして、この真菌は空中に浮遊し、まもなくカリフォルニア州に拡大する可能性があることを研究者らは警告しています。
症状が出現するのは、真菌が感染してから数カ月後に現れることもあり、数週間続く咳や胸の痛み、息切れ、頭痛、体重低下などが起こりえます。治療薬はありますが、現在ワクチンはありません。
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まだ分かっていることが少なく、今後の研究結果を待ちたいところです。
クリプトコッカスには様々なタイプがあり、従来ヒトに感染しやすいとされているのは、Cryptococcus neoformansというものですが、今回流行しているのは、Cryptococcus gattiiというタイプだそうです。現在のところ、適切な治療をおこなえば治癒しうるようですので、渡米する人で風邪症状が出た人は疑ってみるべきかもしれません。
この論文のタイトルは、「Emergence and Pathogenicity of Highly
Virulent Cryptococcus gattii Genotypes in the Northwest United
States」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://www.plospathogens.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.ppat.1000850
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月18日(火) うつ病と喫煙の深い関係
うつ病を持っている人には喫煙者が多くて、うつ病でない人に比べると禁煙が難しい・・・。
これはほとんどの医療者が持っているうつ病と喫煙の関係のイメージですが、これを科学的に実証した研究結果が報告されました。
CDC(米国疾病管理予防センター)管轄のオンライン版医学誌『National Center for Health Statistics(NCHS)Data Brief 』2010年4月号にその論文が掲載されています。
この研究では、2005~2008年に実施された全米健康栄養調査(NHANES)の情報を分析することによって、うつ病と喫煙の関連性が検討されています。
その結果、2005~2008年では20歳以上の米国成人の約7%にうつ病が認められ、調査時にうつ病を認めた55歳未満の成人の43%が喫煙者でした。一方、同年齢のうつ病のない人では喫煙者は22%にとどまっています。20~39歳の女性でみてみると、うつ病の女性の50%が喫煙するのに対し、うつ病でない女性は21%のみでした。
臨床的にうつ病と診断されない軽度の抑うつ症状が認められる成人においても、症状のない人に比べて喫煙する可能性が高いという結果もでています。また、うつ病が悪化するにつれて、喫煙者の割合が増大する傾向も認めました。さらに、喫煙量は、うつ病の人の方がうつ病でない喫煙者よりも多く、うつ病で喫煙する成人はうつ病でない喫煙者に比べて禁煙する可能性が低いという結果も出ています。
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今回の研究結果は、我々医療者が日頃抱いているイメージとほぼ完全に一致します。すなわち、うつ病(もしくはうつ状態)があれば、うつがない人に比べて喫煙者であることが多く、1日のタバコの本数も多く、禁煙に成功しにくい、というものです。
私が知りたいのはこの先です。つまり、タバコを吸うからうつ状態になりやすいのか、あるいはうつ状態になると人はタバコに手を出しやすくなるのか、そして、うつ+喫煙がある人の治療は、うつの治療が先なのか、禁煙治療が先なのか、あるいは双方同時に始めるべきなのか・・・、などです。もちろん、実際には個々の症例によって変わってくるでしょうが、こういった点に関する大規模調査の結果を待ちたいと思います。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Depression and Smoking in the U.S. Household Population Aged 20 and Over, 2005?2008」で、下記URLで全文を読むことができます。
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月21日(金) 飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減
酒は百薬の長。そう言われる割には、アルコールに関する報告は有害とするものが圧倒的に多いように感じます。しかし、アルコールによって病気のリスクが、それも悪性腫瘍のリスクが低下するという研究結果が発表されました。
厚生労働省の研究班は、5月10日、「飲酒によってリンパ系腫瘍のリスクが低くなる可能性が示された」と発表しました。
この研究は、1990年と1993年に岩手県二戸、秋田県横手、茨城県水戸、新潟県柏崎、長野県佐久、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県中部・宮古の10保健所管内に住んでいた40~69歳の男女約96,000人を、2006年まで追跡調査し、飲酒と悪性リンパ腫(以下ML)及び形質細胞性骨髄腫(以下PCM)の発生率との関係を調べています。平均追跡期間13.6年の間に、 MLが257人、PCMが89人確認されています。
調査開始時のアンケートをもとに、お酒を「飲まない(月に1回未満)」、「時々飲む(月に1~3回)」、「毎週飲む(週あたりのエタノール換算量1~149グラム)」「毎週飲む(同150~299グラム)」、「毎週飲む(同300グラム以上)」に分け、その後のMLとPCMの発生率を比較しています。(エタノール換算量については下記参照ください)
MLとPCMを合わせたリンパ系腫瘍発生のリスクは「時々飲む」に比べると、「毎週飲む」のアルコール摂取量が多いグループで低くなっています。MLとPCMに分けた場合は、統計学的に有意ではないものの、どちらもリスクは、「時々飲む」と比べ、アルコール摂取量が多いグループで低下する傾向が認められています。
お酒を飲むと、どうしてこれら悪性腫瘍のリスクが低下するのでしょうか。研究班は、飲酒によるリンパ腫抑制作用のメカニズムとして、「適度なアルコール摂取により免疫反応やインスリン感受性が改善されることなどが知られている」と説明しています。さらに、今回の研究では、「かなり摂取量が多いグループでリスクの低下が見られたので、それらとは別のメカニズムが働いているとも考えられる」としています。
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エタノール換算量とは、例えば「週に300グラム」というのは、ビールなら大ビン14本(1日2本)、日本酒なら14合(1日2合)、ワインならグラスで28杯(1日4杯)となります。
この調査結果が注目に値するのは、「飲酒の量が多いほど疾病のリスクが低下する」となっている点です。「適度な量」ではなく「飲酒の量が多いほど」なのです。大酒飲みには一見嬉しい結果にみえますが、他の多くの悪性腫瘍では、大量飲酒はリスクを高めると考えられていることは忘れないようにしましょう。
(谷口恭)
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|2013年7月15日 月曜日
2010年5月24日(月) 捻挫は重症でなければ早期からの運動が有効
脳梗塞で倒れたり、手術を受けたりした後には、いつまでも安静にしているのではなく、できるだけ早期にベッドから起き上がりリハビリをすべき、ということが近年盛んに言われるようになってきています。
そして、早期の運動療法は捻挫の場合にも有効なようです。
受傷直後から運動療法を行ったグループでは、「冷却・湿布・安静」を中心とする従来の治療に比べて機能回復が優れていた・・・
これは英国Ulster大学のChris M. Bleakley氏らがおこなった研究結果です。詳細は、医学誌『British Medical Journal』2010年5月10日号に掲載されています。(下記参照)
研究者は、救急外来もしくはスポーツ外傷クリニックを受診した16~65歳の比較的軽度の、足首に捻挫を負った患者101例を対象として、運動療法と従来の治療法(冷却・湿布・安静)の効果を比較検討しています。運動療法をおこなったグループは受傷1週目から運動を開始しています。
その結果、治療開始から4週時点で足首の機能を評価すると、運動療法のグループで有意に優れていることが分かりました。また、運動療法のグループは、歩行時間、歩数、軽度活動時間のいずれにおいても、従来の治療法のグループよりも優れていたようです。
一方、追跡期間中のどの時点においても、両グループ間で、安静時の痛みや腫れの程度に差は認められていません。
********
研究者によりますと、英国内では1日に5,000例の捻挫の新規患者が発生し、捻挫による救急外来の受診件数は30万2,000 件(年間)にのぼるそうです。捻挫で、会社や学校を休むことにより、経済損失が生じる可能性がありますし、また医療資源も使われます。もしも、従来は安静にしなければならなかった捻挫でも、会社や学校を休まなくてもよくなったとすれば、捻挫を負った患者さん自身も早く回復し、経済損失も防げるというわけです。
しかし、実際には捻挫の重症度を的確に診断するのは必ずしも容易ではありませんし、患者さんによっては早期の回復を望む気持ちが強すぎて、ついつい無理な運動をしてしまう、というケースもあります。(特に、昔、激しい運動をしていたという人にこの傾向がみられます)
ですから、従来どおり安静を中心とする治療にするか、早期から運動をおこなう治療にするかというのは、主治医と相談してじっくりと検討すべきではないかと私は考えています。
(谷口恭)
注:この論文のタイトルは、「Effect of accelerated rehabilitation on function after ankle sprain: randomised controlled trial」で、下記のURLで概要を読むことができます。
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|2013年7月14日 日曜日
2010年5月24日(月) 妊娠中の飲酒、子供の白血病のリスク上昇
最近、飲酒が(それも大量の飲酒が!)血液系の悪性腫瘍のリスクを低減させる、という(意外な!)研究結果をお伝えしましたが(下記参照)、今度はまったく正反対の研究結果が発表されました。
妊娠中の飲酒で、産まれてくる子供の白血病のリスクが上昇する・・・
これは、仏パリ大学栄養疫学研究部のPaule Latino-Martel博士らが調査をおこない、医学誌『Cancer Epidemiology, Markers & Prevention』2010年5月号(オンライン版)に掲載された研究結果(下記参照)です。
研究者らは、「妊娠中の女性のアルコール摂取と2種類の白血病(急性骨髄性白血病と急性リンパ芽球性白血病)との関連」を検討したこれまでに報告されている21件のデータを分析することによって調査をおこないました。
8,000人以上の飲酒をするグループと、10,000人以上の飲酒をしないグループで比較した結果、子供が急性骨髄性白血病に罹患するリスクが56%も高まっていたことが判りました。妊娠してどれくらいの期間がたってからの飲酒でリスクが上昇するかについては一定の傾向はなかったそうですが、アルコールの摂取量が多ければ多いほどリスクは高くなるのは明らかなようです。一方、急性リンパ芽球性白血病では飲酒による差は認められなかったとのことです。
**********
妊娠中の飲酒の危険性は以前から指摘されていたことです。
胎児アルコール症候群という病名を聞いたことがあるでしょうか。これは妊娠中に母親が飲酒することにより、生まれてくる子供に成長障害、知的障害などみられることを言います。有効な治療はなく、「妊娠中の飲酒を控える」以外に予防方法はありません。
今回の白血病のリスクが上昇するという研究結果も、広い意味では胎児アルコール症候群の1つの症状と言えなくもないでしょう。
参考までに、どれくらいの妊婦が飲酒をしているかについて、この論文では、米国12%、フランス52%、ロシア60%、としています。日本のデータについては、厚生労働省の平成12年の報告書に18.1%とあります。(アメリカより日本の妊婦さんの方がよくお酒を飲むのですね・・・)
(谷口恭)
参考:医療ニュース2010年5月21日 「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
注:上記論文のタイトルは、「Maternal Alcohol Consumption during Pregnancy and Risk of Childhood Leukemia: Systematic Review and Meta-analysis」で、下記のURLで概要を読むことができます。
http://cebp.aacrjournals.org/content/19/5/1238.abstract
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|2013年7月14日 日曜日
2010年5月24日(月) 紅茶で大腸ガンのリスクが上昇?
1日に4杯以上紅茶を飲めば、飲まない場合に比べて大腸ガン(結腸ガン)のリスクが1.28倍に上昇する・・・
これは米国ハーバード大学公衆衛生学教室の研究者Xuehong Zhang氏らがまとめた研究結果で、医学誌『Journal of the National Cancer Institute』2010年5月7日号に掲載されています。(下記参照)
研究では、北米と欧州で行われた13件の調査をもとに分析をおこなっています。対象者は合計731,441人(男性239,193人、女性492,248人)で、コーヒー、紅茶,加糖炭酸飲料の摂取と大腸ガン(結腸ガン)のリスクとの関係を検討しています。6~20年の追跡調査の結果、全体の大腸ガン発症数は5,604例です。
分析の結果、コーヒーと加糖炭酸飲料では摂取とガンの間に関連性が認められなかったのに対し、紅茶4杯以上摂取したときにはガンのリスクが1.28倍になるという有意な結果がでています。
********
この論文では「tea」となっており、言葉だけみると紅茶か日本茶か分かりませんが、研究の対象者が欧米人のみですから、ここで言う「tea」は「紅茶」で間違いないと思います。
一般に、紅茶には健康にいいとされているポリフェノールが多量に含まれていますから、この研究結果は大変意外です。実際、動物実験ではポリフェノールや紅茶によるガンの抑制効果が認められているものもあります。
以前紹介しました別の研究では、コーヒーをたくさん飲むことによって大腸ガンのリスクが低下するというものがありましたが、今回紹介した研究ではそういう効果は認められなかったようです。
このように、この手の研究は大規模であったとしても結果がいつも同じとは限りませんから、あまり信じすぎないようにすべきかもしれません。
(谷口恭)
注:上記論文のタイトルは、「Risk of Colon Cancer and Coffee, Tea,
and Sugar-Sweetened Soft Drink Intake: Pooled Analysis of Prospective
Cohort Studies」で、下記のURLで概要を読むことができます。
参考:
はやりの病気第30回「コーヒー摂取で心筋梗塞!」
はやりの病気第22回「癌・糖尿病・高血圧の予防にコーヒーを!」
医療ニュース 2008年9月13日「子宮体癌の予防にコーヒーを」
医療ニュース 2008年6月30日「コーヒーはいいことばかり」
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