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2013年7月22日 月曜日

2009年10月8日(木) 酒飲みの女性は乳ガンになりやすい

 酒を多く飲む女性ほど乳ガンになりやすい・・・

 このような調査結果を愛知県がんセンターが発表し話題を呼んでいます。(報道は10月6日の共同通信など)

 研究者らは、愛知県がんセンター病院で乳ガンと診断された1,754人と、乳ガンと診断されなかった女性3,508人を比較分析しています。全般的に、酒量が増えるにつれて、乳ガンの発症率が高くなっていることが分かりました。この傾向は50歳前後の閉経の後で著しく、閉経前の女性では、はっきりしなかったようです。

 閉経後の乳がん発症率を数字でみると、酒を飲まない女性を1としたとき、少し飲む女性は1.24倍、時々飲む女性は1.39倍、日本酒換算で週に7合以上飲む女性は1.74倍との結果がでています。

 乳ガンは女性で最も多いガンで日本でも近年急増しています。研究者のひとりは「酒と乳ガンの関連は欧米で指摘されていたが、今回の研究で、閉経後の日本女性でも明白になった。乳ガンを予防するには、大酒を控えた方がよい」と話しているようです。

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 なぜ(閉経前にはなくて)閉経してから飲酒量と発ガンの間に関係があるのかは分かりませんが、閉経したから「じゃあ飲酒量を減らしましょう」と言ってすぐに実行できるわけではないでしょう。しかも、日本酒換算で週に7合というのは「1日1合」ですから、この程度の量で「大酒飲み」とは言えないのではないでしょうか。

 ストレス解消ができたり、コミュニケーションがスムーズに進んだり、といったお酒の長所を考えたときに、今回の調査結果だけを重視して飲酒を控えるというのも短絡的すぎるように思えます。

 乳ガンが日本で増加しているのは食生活が欧米化したからだと言われることがよくあります。しかし食生活の見直しは口で言うほど簡単ではありません。まずすべきことは、定期的な乳ガン検診ではないかと私は考えています。

(谷口恭)

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2013年7月22日 月曜日

2009年10月13日(火) 「太りすぎ」が長生き?

 以前も、「太っている人はやせている人よりも長生きする」という一見常識から矛盾したような研究を紹介しましたが(下記ニュース参照)、またもや同様の研究結果が発表されました。

 東北大学公衆衛生学教室の研究グループが発表しています。(報道は10月10日の日経新聞)

 研究グループは、宮城県内の40~79歳の男女約44,000人を1995年から2006年まで追跡調査し分析しています。

 その結果を厚生省が2009年6月に発表したデータと比較してみたいと思います。(下記の数字は40歳時点での平均余命です。例えば、厚生省のデータでBMI18.5未満の男性は、40歳の時点で平均余命が34.54年となります)

BMI       厚生省のデータ(男/女)  東北大学のデータ(男/女)
18.5未満  34.54 /  41.79  33.8 / 41.1
18.5~25     39.94  /  47.97   38.7 / 46.3
25~30  41.64  /  48.05  40.5 / 47.0
30以上  39.41  /  46.02  37.9 / 44.9

 どちらのデータも同じように、男女ともBMIが25~30のグループが最も長生きとなっています。

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 BMIが25以上30未満のグループを、厚生労働省は「太り気味」と呼び、東北大学は「太りすぎ」と呼んでいます。「太り気味」と「太りすぎ」では随分イメージが異なるように思われますが、東北大学があえて「太りすぎ」と命名したのは何か理由があるのでしょうか。

 どう呼ぶかはいいとして、両者ともBMIが25~30が最も長生きと結論づけていることはやはり注目に値します。

 これら2つの研究はいずれも宮城県を対象としています。他の地域の研究も待ちたいと思います。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
 2009年6月11日「やはり長生きするのは太り気味か…」
 2009年4月30日「太った方が長生きする!?」

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2013年7月22日 月曜日

第119回 VPDを再考する 2013/7/22

 VPDという言葉を聞いて、その意味がすぐに分かる人はまだそれほど多くないかもしれません。しかし、それでも今から10年前に比べれば随分と社会に浸透してきているのではないでしょうか。

 VPDとは、Vaccine Preventable Diseasesの略で、日本語にすると「ワクチンで防げる病気」となります。このサイトで以前から何度も指摘しているように、日本は「ワクチン後進国」であり、世界からは奇異な眼で見られています。見られている、というよりは「世界に迷惑をかけている」と言った方が適切かもしれません。

 例えば、2007年に修学旅行でカナダへ行った日本人の高校生が麻疹(はしか)を発症し、学生と教師160人がホテルへ隔離された、という事件がありましたし、同じ2007年には米国でも似たような事件がありました。米国に遠征試合に出掛けた日本の少年野球の12歳の男子が麻疹の感染源になっていたことを米国CDC(疾病対策センター)が発表しています。

 また、最近では2013年6月、米国CDCが、日本(及びポーランド)では風疹が流行しており、妊婦や妊娠の可能性のある女性は日本へ渡航する場合は事前に医師への相談が必要という事実上の渡航制限をおこなっています(注1)。また、ヨーロッパでも、欧州疾病対策センター(ECDC)が、6月27日発行の報告書で、日本の風疹流行をトップ扱いで紹介し、やはり事実上の渡航制限をおこないました。

 このように、世界的にみて日本がワクチン後進国であるのは事実ですが、それでもVPDという言葉が少しずつ普及し、ワクチンを積極的に接種する人が多少は増えてきているのもまた事実です。これは、現場の医師がきちんと説明するようになってきたからであり、また『KNOW・VPD!』(注2)のようにすぐれたウェブサイトができたからだと思います。

 一方、マスコミや市民団体の力も大きな影響を与えています。子宮頸がんのワクチンがその代表です。子宮頸がんのワクチンはメーカーだけでなく市民団体も活動をおこない、タレントがテレビCMでPRもおこない、世論が動いた結果、ついに定期接種にまで組み入れられることになりました。

 しかし、その子宮頸がんのワクチンについて、2013年6月、厚生労働省は「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」というタイトルの注意勧告を出しました。PDFで2ページのこの勧告(注3)には、赤の背景に白色の大きな字で「現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません」と記載されています。

 積極的に勧めていない、という日本語が分かる人はそう多くないでしょう。もしも私が接種対象者の父兄なら、「接種すべきなのかすべきでないのかはっきりしてくれ!」と言いたくなります。

 そもそも子宮頸がんのワクチンは、ヒブ(Hib)ワクチン、(小児用)肺炎球菌ワクチンと並んで2013年4月1日から「定期接種」に組み入れられたばかりのワクチンです。それが3ヶ月もしないうちに「積極的に勧めていない」とはどういうことなのでしょうか。

 これはつまり、ワクチンの副作用として、失神がおこったり、長期間続く痛みが残ったり、といった報告が増えてきており、それを重要事項と認識した厚労省が、「そんな副作用があるかもしれないことをあらかじめ言っておきますね。だから副作用がでても文句を言わないでね」と言いたいのがホンネなわけです。

 これに対し、子宮頸がんのワクチン接種を積極的に推奨している人たちは、「世界では多くの国で公的接種となっている」「WHO(世界保健機関)も接種を推奨している」「失神や痛みはワクチンのせいではなく、小さな女の子にうつからその痛みやショックで生じた副作用だ」などと言って、ワクチン接種の必要性を引き続き訴えています。

 ここで私の考えを述べておくと、結論としては「子宮頸がんのワクチンは、そんなに急いで接種しなくてもいいんじゃないの?」というものです。

 そもそも子宮頸がん予防ワクチンのターゲットであるHPV(ヒトパピローマウイルス)は性交渉でしか感染しないものです(注4)。風疹や麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)やおたふく風邪は、”普通に”生活していても感染者に近づくだけで感染します。しかし、HPV(のハイリスク型)は、性交渉をしない限りはうつりません。

 ではなぜ、HPVワクチンは中学1年生になれば接種しなければならないことになっているのでしょうか。(推奨年齢は小学6年生~高校1年生とされていますが、定期接種になってからは原則中学1年生になっています) HPVは性交渉を介して感染するわけですから、初めて性交渉を行う前にワクチン接種をしておけば感染を防げると考えられるからです。

 しかし、この理屈に疑問を感じる人も少なくないのではないでしょうか。私は以前ある患者さん(40代女性、娘が中学生)から「うちの娘はそんなこと(性交渉)を中学の間にするなんてことはありません。高校を卒業してからじゃ遅いんですか?」という質問を受けたことがあります。

 これはもっともな意見でしょう。現実的には、親が「うちの子に限って・・・」と思っていたのに中学生で性交渉の経験がある、なんてことはよくあります。しかし、だからといって、「あなたの娘さんは中学生の間に性交渉を開始する可能性がありますからワクチンは中学生になったら打ってください。成人してから接種するのは勝手ですが、今じゃないと無料で打てませんよ。成人してから自費で打つとおよそ5万円もかかりますよ。今打った方がいいでしょ」、と言うのは問題です。もちろん行政は実際にこのような乱暴な言葉を使っているわけではありませんが、「中学1年生で打てば無料、成人してからだと有料、さあ、どちらにしますか?」、と言っていることに変わりはありません。

 子宮頸がんについてポイントを整理すると次のようになります。

・原因のウイルス(HPV)は性交渉を介して感染する
・ワクチン接種をしても子宮頸がん全体の7割程度を防げるだけで、接種していても子宮頸がんになることもある
・ワクチン接種をしてもしなくても定期的な子宮頸がんの検査は必要
・定期的に検査を受けていれば子宮頸がんは早期発見できて完全に治すことができる

 私自身はHPVのワクチンは医学史に残る大変すぐれたワクチンだと思いますし、多くの人が接種すべきだと考えています。しかし、中学生の女子がどうしても接種しなければならないのか、と問われれば、そうではないでしょ、と言いたくなります。

 その理由として、ひとつめには、先に例にあげたお母さんのように「娘に性交渉をさせない」という考え方があってもいいと思いますし、もっと言えば、保護者ではなく中学生の女子自身が自分で判断すべき、と私は考えています。これに対して、「中学生に性に関する適切な判断ができない」という反論はあるでしょう。しかし、女子中学生の立場からすると、「あたしは高校生になるまで(高校を卒業するまで)好きな人ができてもプラトニックラブを通すつもりなのに、なんで中学1年でそんなワクチンをうたないといけないの? あたしがいい加減なやつだとでもいいたいわけ?」となるのではないでしょうか。

 では、どうすべきかというと、中学1年生(あるいは小学生の間でもいいと思います)になると、「性交渉と性感染症、子宮頸がんについてきちんと学校で授業をして正しい知識を持ってもらう。HPVワクチンについては接種するかどうかを自分で考えてもらう」、とするのがいいでしょう。そして、原則としてワクチンは、いくつになっても(その人が性交渉を開始するようになるまで待って)無料で接種できるようにすべきです。ワクチン積極推奨派の人たちは、失神や痛みを「まだ幼い少女だから注射そのものの痛みが原因で・・」と言いますが、それならば接種する年齢を上げればいいわけです。

 もうひとつ、私が子宮頸がんのワクチンを「そんなに急いで打たなくても・・・」と感じる理由があります。それは、「他に急ぐものがあるでしょ」というものです。

 風疹が2回接種する必要があることはかなり周知されてきましたが、麻疹については2007年のブームが去ってから関心が薄くなっているように思われます。また日本では水痘(みずぼうそう)のワクチンが未だに定期接種に組み入れられておらず、任意接種のままです。(ちなみに水痘ワクチンは日本人が開発しています) みずぼうそうはたいしたことがないと思っている人もいますが、重症化することもあり毎年10人程度は死亡しています。成人してから罹患すると、死に至ることはないにしても瘢痕がかなり長期に渡り残ることがあります。

 おたふく風邪のワクチンもいまだに任意接種のままです。おたふく風邪も軽症と思われていますが、重症化すると生涯治らない重症の難聴になることがあります。

 B型肝炎ウイルスのワクチンについてはこのサイトで何度も述べていますのでここでは繰り返しませんが、集団発生(注5)もあり、年間数百人もが感染後数ヶ月で劇症肝炎で死亡しています。また、太融寺町谷口医院で最近発覚するB型肝炎ウイルスには慢性化するタイプのものが多く、こうなれば極めて長期間(あるいは生涯にわたり)高価な薬を飲まなければなりません。

 一方、ロタウイルスのワクチンは任意接種ではありますが、なぜか最近とても有名になりワクチンが足りなくなることもあるようです。費用は2回接種のタイプでも3回接種のタイプでも合計3万円近くもするのに、です。

 誤解のないように言っておくと、私はHPVワクチンやロタウイルスワクチンを「打つ必要がない」と言っているわけではありません。その逆に「積極的に接種すべき」と考えています。しかし、どのワクチンが優先順位が高いか、ということと、いつ接種すべきか、についてはよく考えなければなりません。

 VPDという言葉がもっと普及し、そして行政が決める「定期接種」「任意接種」ではなく、本当に必要なのはどのワクチンで、優先順位はどのように捉えるべきか、多くの人にこのことを考えてもらいたいというのが私の願いです。

 

注1:New York Timesが「Rubella Epidemics in Japan and Poland」というタイトルで報道しています。下記URLを参照ください。

http://www.nytimes.com/2013/06/25/health/rubella-epidemics-in-japan-and-poland.html?_r=1&

注2:『Know・VPD!』については下記を参照ください。

http://www.know-vpd.jp/index.php

注3:厚生労働省のこの注意勧告は下記URLで閲覧することができます。
 
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034kbt-att/2r98520000034kne.pdf

注4:ただし、だからといって子宮頸がんを「性病」のように捉えるのは適切ではありません。これについては以前述べたことがあるのでここでは言及しません。興味のある方はNPO法人GINAのホームページ「子宮頚ガンとHPVワクチン」(http://www.npo-gina.org/tuite/#a39)を参照ください。

注5:B型肝炎ウイルス(HBV)の集団感染は、格闘技系のクラブ活動での集団発生がありますし、最も有名なものとして、2002年4月に発生した「佐賀保育所HBV集団発生事件」があります。この事件は、園児19名、職員6名の合計25名がHBVに集団感染したもので、感染源は元職員であったことが推定されています。詳しくは、佐賀県の下記ホームページを参照ください。

http://kansen.pref.saga.jp/kisya/kisya/hb/houkoku160805.htm

参考:
はやりの病気第97回(2011年9月)「新しいHPVワクチンと尖圭コンジローマ」
はやりの病気第77回(2010年1月)「子宮頚ガンのワクチンはどこまで普及するか」
メディカルエッセイ第89回(2010年6月)「日本は「ワクチン後進国」の汚名を返上できるか」
NPO法人GINAウェブサイトより「悩ましき尖圭コンジローマ」

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月20日(火) 「働く人の電話相談」昨年の倍に

 日本産業カウンセラー協会は、9月の自殺予防週間に合わせ3日間にわたり「働く人の電話相談室」をおこないました。その結果、合計1,093件の相談が寄せられたと発表しています。これは昨年(2008年)の535件の倍以上となっています。(報道は10月16日の読売新聞)

 電話相談は9月10~12日(「自殺予防週間」は10~16日)の3日間にわたり、全国13支部で行われました。相談者の内訳は、男女ほぼ半々で、40歳代が236人、50歳代が232人と全体の4割以上を占めます。本人の問題だけでなく、家族や知人についての相談もあったそうです。

 相談内容をみてみると、「経済的な問題」や「転職・退職」などが昨年に比べ増加しているようです。担当したカウンセラーによりますと、「今年は苦しい経済状況を反映した相談が目立った」そうです。

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 相談内容をカウンセラーの判断で分類しているようですが、実際は様々な要因の複合であることが多いと言えます。例えば、上司からのパワハラ→うつ→休職→貧困→消費者金融→離婚→・・・、などです。

 この電話相談は、同協会の東京支部では月~金の午前3時から8時まで無料でおこなわれています。興味のある方は、http://www.counselor-tokyo.jp/service/soudan.htmlを参照ください。

 また、厚生労働省により開設された「こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」(http://kokoro.mhlw.go.jp/)も参考になるかと思います。

(谷口恭)

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月21日(水) 贋物のタミフルに要注意!

 FDA(アメリカ食品医薬品局)が、10月15日、緊急速報(Immediate Release)として、贋物(ニセモノ)のタミフルが出回っていることに注意を喚起しています。

 FDAは、タミフルとしてインターネット上で販売されているいくつかの製品を入手し分析しています。その結果、1つの製品からは,タミフルの成分がまったく検出されず、チョークやベビーパウダーに用いられるタルクと市販の風邪薬の主成分であるアセトアミノフェンが見つかったそうです。

 この贋物のタミフルを販売していたサイトは現在消失しているようですが,FDAでは他にも新型インフルエンザの診断、予防、治療ができると称する4つの製品を入手しています。これらは医薬品として認可されている用量以上のタミフルを含んでおり、いずれも認可されていないものです。

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 タミフルは優れた抗インフルエンザ薬ではありますが、重篤な副作用の報告もあります。もしも、医療機関で処方されたタミフルを服用した結果、副作用が起こったとすれば、「医薬品副作用被害救済制度」を利用できますが、インターネットなどで購入したものであればこういった制度の対象となりません。

 今のところ日本ではタミフルが入手できないという状態ではありませんから、待ち時間が長くなったとしても、発熱が生じインフルエンザを疑えば医療機関を受診するべきです。

(谷口恭)

参考:
はやりの病気第74回(2009年10月)「混乱する新型インフルエンザ」
はやりの病気第72回(2009年8月)「新型インフルエンザの対策は充分か」
はやりの病気第70回(2009年7月)「新型インフルエンザの行方」
はやりの病気第69回(2009年5月)「疑問だらけの新型インフルエンザ」

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月26日(月) タイ産やせ薬で相次ぐ死

 「ホスピタルダイエット」、「MDクリニックダイエット」、などと呼ばれるタイ産のやせ薬をご存知でしょうか。

 これらは、健康被害の報告が相次いでいる大変危険なやせ薬です。今月だけで、これらのやせ薬で死亡した事故が2例報告されています。

 厚生労働省は10月9日、「ホスピタルダイエット」を飲んでいた東京都内の40代女性が昨年死亡していたことを発表しました。「ホスピタルダイエット」による死亡例は2005年6月に神奈川県でも報告されています。(報道は10月13日の共同通信)

 さらに10月23日、今度は東京都が気管支喘息で死亡した都内の女性が「MDクリニックダイエット」を服用していた可能性が強いことを発表しました。(報道は10月24日の日経新聞)

 東京都は、「ホスピタルダイエット」と「MDクリニックダイエット」に含まれる薬品が同じ種類であるとみて、服用の中止や医療機関への受診を呼びかけています。

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 「ホスピタルダイエット」は兵庫や広島などで健康被害の報告が相次ぎ、厚労省はホームページで注意喚起をしています。下記URLを参照ください。

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/diet/jirei/030902-1.html

 このウェブサイトによりますと、これらのやせ薬には日本未認可のシブトラミンや服用には医師の処方せんが必要な甲状腺ホルモンなどが含まれています。

 実は太融寺町谷口医院にも、これらのやせ薬で動悸やめまい、吐き気がする、と言って受診される方がときどきおられます。

 輸入品のダイエット薬には、死亡例があるということはもっと注目されるべきでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース 
2007年3月23日「ダイエット用食品から未承認医薬品検出」
2007年6月11日「危険な輸入健康食品」
2008年12月15日「やせ薬「ソロスリム」で体調不良」

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月26日(月) 新型インフル、過去の季節性感染で免疫獲得の可能性

 これまで、新型インフルエンザについては、過去に季節性インフルエンザに罹患していても免疫がついておらず、多くの人が重症化する可能性があると考えられてきました。

 ただし、1957年以前に生まれた中高年層(だいたい52歳以上に相当します)は免疫力を獲得している可能性をCDC(米疾病対策センター)が5月20日に記者会見で発表しています。これは、1957年以前に生まれた人は、1918年に大流行を起こしたH1N1型のスペイン風邪にさらされている可能性が高いからです。1957年にH2N2型のアジア風邪が流行したことによりH1N1型の流行が終息しており、その結果1957年以降に生まれた人は、H1N1型の免疫を持っていないと理論上考えられるというわけです。

 しかし、国立感染症研究所が最近おこなった分析によりますと、1957年以降に生まれた人でも、成人の多くはある程度の免疫を持つ可能性があることが分かってきました。(報道は10月23日の読売新聞)

 日本で新型インフルエンザが増えているのは圧倒的に未成年です。さらに、新型のワクチンの臨床試験では、1回の接種で成人の78%が充分な免疫を獲得できています。これらから、過去の季節性インフルエンザの免疫が、新型にもある程度は働くのではないかという解釈が成り立つというわけです。

 「1回の接種で効果が出るのは、過去の免疫が呼び覚まされたから。今回の新型は、過去に流行した季節性の『いとこ』か『はとこ』なのだろう」、国立感染症研究所はこのようにコメントしているそうです。

 しかし、このことは「成人が新型に感染しない」ということを意味しているわけではありません。米国でも当初は、10代で新型が流行しましたが、その後は上の世代にも広がり、最終的には入院患者の半数が18歳以上となっています。

 同研究所は、「今は、集団生活を送っている子供が感染の中心だが、時間をかけて成人に感染が広がっていく。成人の方が感染すれば重症化する危険性が高く、十分な注意が必要」と強調しています。

 
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 過去の季節性インフルエンザの感染で免疫力がある程度ついている可能性があるということは喜ばしいニュースではありますが、国立感染症研究所がコメントしているように、「成人の方が感染すれば重症化する危険性が高い」という事実は大変重要です。

 今回の発表で、成人のワクチン接種の回数が再度検討されることになるかもしれませんが、この発表を楽観視しすぎることなく慎重に状況を見極めていく必要があるでしょう。

(谷口恭)

参考:はやりの病気第74回(2009年10月)「混乱する新型インフルエンザ」

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月26日(月) 喫煙+高血圧+高コレステロール=寿命10年短縮

 喫煙、高血圧、高コレステロール血症、と聞けば、いずれも身体に悪そうなものばかりですが、この3つが重なることによって、寿命が10年も短くなるという研究が発表されました。

 『British Medical Journal』という医学誌の電子版2009年9月17日号に掲載された論文によりますと、イギリスのオックスフォード大学がおこなった研究で、これら3つのリスク因子がそろうと、1つもない人に比べて、寿命が10年も短縮されるとの結果がでています。

 研究では、1967~70年当時に40~69歳であった18,863人が登録され、38年間にわたって追跡調査がおこなわれています。1997年の時点で13,501人が死亡しており、4,811人が再調査を受けています。

 50歳以降の平均余命は、調査開始時にリスク因子がまったく見られなかった男性が33.3年(平均寿命83.3歳)であったのに対し、3つのリスク因子をすべて持っていた男性では23.7年(同73.7歳)であり、約10年の差があることになります。

 イギリスでは、1970年初頭をピークとして、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患に関する死亡が急速に低減し、その結果平均寿命は延長しています。その主な理由として、これら3つの要因が改善されたことと、治療法が進歩したことが、この論文で述べられています。

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 喫煙、血圧、コレステロール、どれもが大切な健康を規定する因子であることは誰もが認めるでしょうが、これら3つが合わさることにより、寿命が10年も短くなる、というのは大変インパクトがあります。

 禁煙するのは易しいことではありませんし、高血圧や高コレステロール血症は自覚症状がありませんから、日頃から意識をしていないとついつい油断してしまいます。

 思い当たることがある人は、この研究結果をしっかり覚えておきましょう。

(谷口恭)

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月27日(火) はしかワクチン接種、目標に届かず

 はしか(麻疹)ワクチンの接種は、昨年度(2008年度)から13歳と18歳も対象となっています。厚生労働省は、95%の接種率を目標としましたが、残念ながらどちらの年齢でも目標に達していません。(報道は10月26日の毎日新聞など)

 厚労省のまとめによりますと、2009年3月末時点での18歳のワクチン接種率は、全国平均で77.3%、目標を達成した都道府県は1つもありませんでした。

 13歳では、全国平均は85.1%で、95%の目標を達成したのは、福井、富山、茨城のわずか3県にとどまっています。

 WHO(世界保健機関)は2012年までに、人口100万人当たりの患者数が1人未満で、予防接種率が95%以上の状態である「排除」を各国に求め、すでに97ヶ国で達成されています。

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 はしかは、途上国では多くの子供の命を奪う感染症ですが、ワクチンが普及した結果、世界の死亡率は2000年の約75万人から、2007年には19万7000人と大きく減少しています。

 一方、日本の状態は芳しくなく、先進国ではしかを「排除」していないのは日本だけであると言われています。そのため日本は「はしかの輸出国」と揶揄されることもあります。(お隣の韓国では2007年の5月に「排除」に成功しています)

 はしかはときに「死に至る病」となります。日本では、現在でも年間数十人がはしかで死亡していますし、成人してからもSSPE(亜急性硬化性全脳炎)という難治性の病に苦しめられることもあります。

 ワクチンをうたない人の何割かは、副作用を懸念されていると思いますが、ワクチンをうたなかったときのリスクもよく考えるべきでしょう。

(谷口恭)

参考:はやりの病気第46回(2007年6月)「はしかの予防接種率はなぜ低いのか」

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2013年7月21日 日曜日

2009年10月29日(木) 高血糖は胃ガンのリスク

 血糖値の高い人は胃ガンになるリスクが高い・・・

 これは九州大学の研究班が14年間にわたりおこなった研究の結果です。(報道は10月27日の読売新聞)

 この調査は、福岡県久山町で毎年健診を実施している40歳以上の男女約2,600人を対象に1988年から14年間にわたって実施されています。調査期間中に97人が胃ガンを発症しています。

 調査では、対象者全員のHbA1C(ヘモグロビンA1C)を検査しています。HbA1Cが高い人は血糖値も高いことが分っています。HbA1Cが正常値(5.0~5.9%)の人に比べ、6.0~6.9%の人の胃ガン発症率は2.13倍、7%以上の人では2.69倍という結果がでています。

 さらにこの調査では、血糖値とピロリ菌感染の有無によって4つのグループに分けて胃ガン発症率を分析しています。

 「HbA1Cが正常範囲でピロリ菌非感染」の人は578人で、このうち胃ガンを発症したのは11人で最もリスクが低い結果となっています。「高血糖で非感染」は1.35倍、「正常値で感染」は1.86倍、そして「高血糖で感染」は4.03倍と高い数字がでています。

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 高血糖が最も問題になるのは、心筋梗塞などの心疾患や脳卒中に対してですが、この研究は胃ガンのリスクにもなることを示しています。

 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)は、胃の粘膜に付着する細菌で、日本人では40歳以上の男性で約7割、女性で約6割が感染していると言われています。

 ピロリ菌の除去については保険診療上の制約もあり、「感染しているから直ちに除菌」というわけにはいきませんが、胃痛などの症状がある場合は胃潰瘍などに進行している可能性もありますから、症状のある方は医療機関を受診すべきでしょう。

(谷口恭)

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