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2019年8月29日 木曜日
2019年8月29日 43歳以上の飲酒は翌日眠くなる
「酒は百薬の長」、「少量の飲酒は健康にいい」、などと以前から言われていますが、果たして本当に正しいのでしょうか。過去に紹介したようにこれを否定する研究もあります(下記「医療ニュース」参照)。
今回紹介したいのは「43歳以上の飲酒は翌日の眠気をもたらせる」というもので注目に値する研究です。医学誌『Occupational Medicine』2019年7月号に掲載された「ドライバーにおける日中の眠気とアルコール消費(Excessive daytime sleepiness and alcohol consumption among commercial drivers)」というタイトルの論文です。
研究の対象者は全日本トラック協会(Japan Trucking Association)に登録されている20~69歳の男性ドライバー1,422人で結果は次の通りです。飲酒翌日の日中の眠気が飲酒でどのように変わったかが算出されています。
〇43歳未満の場合
軽度飲酒者:非飲酒者と比べて眠気は19%減少
中等度飲酒者:7%減少
大量飲酒者:39%減少
〇43歳以上の場合
軽度飲酒者:非飲酒者と比べて眠気は42%上昇
中等度飲酒者:53%上昇
大量飲酒者:337%上昇
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私が知る限り、この研究これまでに一般のメディアで紹介されていないようですが、驚くべき結果です。43歳以上で大量飲酒をすれば、翌日の眠気のレベルが3.37倍(337%)になるというのです。そして、興味深いことに43歳未満なら大量飲酒で逆に眠気が4割も低下するのです。
43歳まではたっぷりと飲んで、43歳の誕生日がくるとお酒をやめましょう、というような単純な話ですが、この結果をよく考えるべきでしょう。「酒は百薬の長」は43歳未満の場合だけかもしれません。
参考:
医療ニュース
2017年6月26日 「少量の飲酒でも認知症のリスク!?」
2011年10月26日 「女性は中年期の適量の飲酒で高齢期が健康に」
2011年1月9日 「飲酒→睡眠→運転はキケン!」
2010年5月21日 「飲酒によりリンパ系腫瘍のリスクが低減」
2010年8月23日 「飲酒が関節リウマチに有効?」
2010年4月8日 「適度な飲酒は女性の体重増加を抑制」
2009年9月10日 「 自殺者の4人に1人がアルコール問題」
マンスリーレポート
2012年6月号 「酒とハーブと覚醒剤」
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|2019年8月20日 火曜日
第192回(2019年8月) 「夜勤」がもたらす病気
それは私が研修医の頃の深夜の救急外来。立て続けに搬送されてきた重症例の治療を終えて一息ついた後、当時50代前半のベテランの内科医の先生と世間話をしていました。患者からもスタッフからも人気があったその先生のことを、私はまだまだその病院で活躍されるだろうと思っていただけに、その言葉は意外でした。
「3月でこの病院を退職して特養(特別養護老人ホーム)で働くことにした……」
この言葉だけなら、私も「まあ、高齢者にも人気のある先生だし、きっとご自身で取り組みたい医療があるのだろう」と思えたわけですが、転職の理由が「もう夜勤はできない」だったのです。正直に言うと私は少し寂しい気持ちになりました。私はその先生から救急の”心得”のようなものをいくつも学んでいたからです。そして、このときに思ったのが「自分は(この先生とは違って)いくつになっても<夜勤はできない>などとは言わないぞ!」ということでした。
それから数年たったある日、その頃にはすでに太融寺町谷口医院を開業していたわけですが、ふとその先生の言葉が蘇りました。その日の前日の午後10時から明け方まで、大阪市の夜間救急診療所で外来をしていました。終了後2時間ほど仮眠をとって、谷口医院の外来を開始したところ、いつものように頭が回転しないことに気づきました。身体も重く椅子から立ち上がるのにワンテンポ遅れます。身体がついてこず、脳のキレも悪くなっているのです。それを自覚した瞬間、一気に疲労感に襲われました。
私が初めて”老化”を感じたのがその日でした。それでもまだしばらくの間は、深夜の救急外来をやってもなんとか翌日の仕事をこなせていましたが、次第にその夜勤を億劫に感じてしまっていることに気づきました。それまでも「歳をとると夜勤が辛い」という話はいろんな医師や看護師から繰り返し聞いていましたが、「自分は大丈夫」と何の根拠もない自信がありました。しかし、いつしか「先輩たちは正しかったんだ…」と認識するようになりました。そして、冒頭で紹介した50代前半まで救急外来で活躍されていた先生に対し「寂しい」気持ちになった自分を恥じ、そして今も現役で深夜の救急や、夜勤をされている医療者に対する敬意がでてきました。
ですが、「頑張っている先生や看護師もいるんだから自分も身体にムチを打ってでも深夜に働くんだ」と言う気持ちにはもはやなれませんでした。医療の現場では深夜に働く医療者は絶対に必要なわけですが、これは若い者が担うべきではないか、というのが私の考えです。無責任な理屈であるという非難の声があるでしょうが、仕事には「適正」を考えるべきです。ある程度年をとった者は、深夜勤務という強烈に体力を奪う仕事は可能な限り避けるべきです。そして、これはもちろん医療職に限ってではなく、すべての仕事について言えることです。
私のこの意見は「しんどい仕事は体力のない中高年には向かない」ということだけではありません。しんどくても休めば回復するならそう問題はないでしょう。問題は「中高年の夜勤はいくつもの病気のリスクを増やし寿命も縮める」ことです。まずはこういったことを社会に周知してもらい、社会全体で中高年の夜勤を減らすことを考えていくべきだと思います。
中高年の夜勤やシフト勤務がいくつかの疾患のリスクになるという研究はこのサイトですでに何度か紹介しています。今回はまだ紹介していないものも取り上げ、深夜勤務のリスクの総復習をしたいと思います。
まずは少し古い研究から紹介しましょう。2001年に発表されたこの研究は世界中の、特に医療者に注目されました。研究の対象が女性看護師であり、結果は「シフト勤務は乳がんのリスクを上昇させる」だったからです。この研究は医学誌『Journal of the National Cancer Institute』2001年10月17日号(オンライン版)に「看護師健康調査からわかったシフト勤務と乳がんのリスク(Rotating Night Shifts and Risk of Breast Cancer in Women Participating in the Nurses’ Health Study)」というタイトルで紹介されています。
この研究のエビデンスレベルが高い(信用度が高い)のは、「Nurses’ Health Study」という信頼度の高い健康調査のデータが解析されているからです。回答しているのがきっちりと労務管理されている看護師であり、しかも対象者は78,562人、調査期間は10年間の前向き研究(注1)です。
結果は、「1~29年間、夜勤のシフト勤務をしていた看護師は、していない看護師に比べて乳がんのリスクが1.08倍上昇する」です。シフト勤務が長くなればそれだけリスクも上昇するようで、30年間以上夜勤をしていた女性のリスクは1.36倍になることが分かりました。もちろん、夜勤をすれば必ず乳がんになるわけではないので、他の乳がんのリスク、例えば喫煙、肥満、低用量ピルの使用などを考慮し、さらに定期的な乳がん検診を実施しながら夜勤をすることはかまわないとは思いますが、リスクが上昇すること自体は知っておくべきでしょう。
他の研究もみてみましょう。疾患で言えば、夜勤をするシフト勤務は心筋梗塞などの心疾患のリスクが上昇するという研究があります。また、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低下し、中性脂肪が増加し、糖尿病のリスクも増加するという研究もあります。夜勤をすると肥満になりやすい、とする研究もあれば、夜勤明けは交通事故を起こしやすいとする報告もあります。
ここで太融寺町谷口医院の患者さんのデータを紹介しましょう、と言いたいところですが、残念ながら(私が億劫なこともあり)そういったデータをまとめる作業をする気になれません。なぜなら、日ごろ患者さんを診ている私の経験から、夜勤をやめれば健康的になっていくのは自明であり、わざわざ数字を出さなくてもいいと思えるからです。
体重過多の人は体重を落とすことに成功し、肌の調子がよくなり、月経不順が改善します。乳がんのリスクが下がったかどうかは検証していませんが、健診のデータ(中性脂肪や血糖値)は多くの例で改善しています。それに、精神状態が良くなり、見た目が若くなります。つまり、夜勤を止めればいいことばかりなのです!
主に経済的な事情から中高年になってから夜勤をせざるを得ない人もいます。また、人手不足から深夜も働かざるを得ないという人も少なからずいます。職種で言えば目立つのが介護職の人たちです。看護師の場合も、病院勤務なら通常は夜勤がありますし、診療所勤務の場合でも訪問看護をやっていれば深夜に電話がかかってくることがあります。
医療者から「夜勤がしんどい」という話を聞くと、現在夜勤から離れている私は申し訳ない気持ちになるのですが、先述したように、だからといって「自分も再び深夜に働く」とは言えません。ですが、私の場合40歳になるまでは深夜勤務にほとんど疲れを感じませんでしたし、夜間の救急外来は様々な”ドラマ”がありますし、それに夜間の仕事は給与が高い!のです。実際、私の年収が最も高かったのは谷口医院を開業する前の一年間で、このときは週に3~5回は深夜も働いていました。その年の年収はちょっとここには書きにくいほど高いものでした(開業してからは一気に収入が減りました)。
社会全体で深夜勤務のリスクを認識し、体力のある若者に働いてもらい充分な給与を支払う。一方、中高齢者は深夜勤務を避けることで様々な病気のリスクが減り、元気に長生きできる。すると、社会としては医療費が抑制できる。若者は深夜の世界で社会を学ぶ。いいことばかりではありませんか! こういうことを言い訳にして私自身は今も深夜勤務から遠のいています……。
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|2019年8月8日 木曜日
2019年8月 ”怒り”があるからこそできること
ここ数年「アンガー・マネージメント」がブームです。太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の勉強会でも講師に来てもらってスタッフ全員で勉強したことがあります。アンガー・マネージメントを実践している人はますます増えていると聞きます。たしかに瞬発的に怒りを表明すると結果的に後悔することが多いのは事実ですし、怒りが蔓延しているような職場で働きたいと思う人はいないでしょう。
ですが、怒りにはネガティブなことしかないのでしょうか。実は、私は以前から「怒りを遠ざける」という考えに疑問を持っています。「日本アンガー・マネージメント協会」のトップぺージには「ちょっとした習慣・考え方を身につけるだけで、不要なイライラや怒りとは無縁の生活を送れます!」と書かれています。あるビジネス系のポータルサイトでは「「アンガー・マネジメント」とは?怒りを抑える3つのテクニック」という記事が紹介されていました。つまり、アンガー・マネージメントは常に「いかに怒りを抑制するか」という観点から語られるのです。けれども、人は本当に怒りと「無縁」の生活をし、いかに怒りを「抑制」するかを考え続けなければならないのでしょうか。
アンガー・マネージメントがブームにあるなか、「怒りを表明せよ」などと言うのは奇をてらった意見に思われるでしょうが、私はいつも”怒り”と共に生きているような気がしています。怒りがあるから頑張る気になり努力ができているのです。つまり私にとっての怒りは行動の原動力ともいえるのです。数年前から、こういうことをどこかで発言してみたいけど相手にされないだろうな、と思っていたところ、先日ノンフィクション作家の河合香織さんが日経新聞のコラムで興味深いことを書かれていました。
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翻って考えれば、私にとっては原稿が書けないことはいいことかもしれない。書くことがないということは、心が平穏な証左だからだ。ノンフィクションを書く動機の奥底には、人生の不条理に対する悲しみがある。そろそろ落ちついて怒りから解放された晴れやかな文章を書きたいとも思っているが、まだまだ怒りの玉を手放すことができない。(日経新聞2019年6月13日夕刊)
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つまり、「怒りがあるから文章を書かねばならなくなる。書くことがないときは心が平穏で怒りがない」ということを言われているわけです。私は川合氏のこの言葉がふっと腑に落ちました。
私は作家ではありませんが、本を上梓したこともありますし、このサイトも含めて複数のサイトでコラムを書いています。そして、その原動力の源は怒りであることが多いのです。
私が初めて自分の文章を世間に発表したのは1987年、高校を卒業した直後です。偏差値が40しかなくても2カ月の勉強で志望校(関西学院大学)に合格できたことをある本で発表しました。これは自慢がしたかったわけではなくて怒りが源です。その文章には、「お前の行ける大学はない」と言われた教師に対する怒りや、私よりも成績がいいのに教師の忠告に従って本当は望んでいない大学に行くことに決めた同級生に対するもどかしさが刻まれています。
次に文章を公表したのも受験勉強のことで、医学部入学時の1996年に書きました。さらに怒りを表明したいと考えた私は、医学部を卒業してから2002年に出版社に原稿を送り『偏差値40からの医学部再受験』を上梓しました。この本のオリジナルの原稿には、いかに高校教師が生徒をダメにしているか、そしてその教師の言いなりになってはいけないかを延々と書いたのですが、残念ながらその大部分は編集で大幅にカットされてしまいました。
その次に書いたのは『医学部6年間の真実』という本で、これはやる気のない医学生や既存の医療体制の問題点を指摘しています。これを書こうと思ったのもやはり、そういったものに対する怒りです。特に、医学部の試験でカンニングをする学生に対する怒りがおさえられなかったことが執筆動機のひとつです。
『今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ』という本を書いたのは2006年頃で、これはタイで見てきたHIV/AIDSに関する怒りを表明したかったというのがきっかけです。この本を書く前からNPO法人のGINAでいくつかのコラムを書いていました。書こうと思った動機は、HIVに感染したことで食堂から追い払われたり、乗ろうとしたバスから引きずり降ろされたり、住民から石を投げられたり…、ということが当時のタイでは頻繁にあり、さらには病院でも門前払いされ、行き場をなくしている人たちがいたことです。こんなこと許されていいはずがありません。ちなみに、現在のタイではHIVに関連する問題がすべて解消されたわけではありませんが、かつてのようなひどい状況にはありません。現在は日本の方がはるかにHIV陽性者に対する差別が根強いことは間違いありません。
谷口医院のサイトでもコラムを書き、さらにメール相談を随時受け付けているのは、きちんと治療すれば治るのに誤ったことを教えられて悪化させているような人(例えば悪徳な民間療法)や、きちんと説明を受けておらず無益なドクターショッピングを繰り返している人たち(前医を安易に批判してはいけないのですが、前医が別の言い方をしていれば患者さんはこんなに悩まなくても済んだのに…、という例は決して少なくありません)の力になりたいという思いがあり、これも一種の怒りがベースになっています。
2015年7月から毎日新聞の「医療プレミア」で連載を持たせてもらっています。総合診療医の私が感染症を取り上げているのは、感染症はほんのわずかな知識で完全に防ぐことができるのに(コラムのタイトルは「実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-」です)、きちんと教育されていない、あるいはネットなどからウソやインチキの情報をつかまされて不幸になる人が少なくないことなどから、本当のことを伝えたい!という強い気持ちがあるからで、これもやはり一種の怒りが原動力です。
2018年7月から始めた「日経メディカル」での連載コラムは医療者向けのものです。そして、ここでも現在の医療体制の問題や、ときには他の医療機関や医療者の悪口を怒りに身をまかせて書いています。
このように改めて自分が書いているものを振り返ってみると、多くの文章の執筆動機が怒りです。そして、その怒りの強度が強ければ強いほど文章は一気に書けます。ときどき、よくそんなにたくさんの文章が書けますね、と言われますが、これは私に文章を書く能力があるからではなく、怒りに身を任せると書かずにはいられない気持ちになる、というのが正直なところで、文章を書くことで私の怒りが整理できているのです。ならば、私は文章を書くことによってストレス発散ができてその怒りが解消されるのかというと、そういうわけではまったくありません。むしろその怒りが鮮明になり増強されることの方が多いのが事実です。
今この文章を書いているのも既存の「アンガー・マネージメント」に対する一種の怒りがあるからと言えなくもありません。ただし、アンガー・マネージメントに完全に反対しているわけでもありません。私が言いたいのは、怒りを「抑制」するのではなく、怒りと「無縁」の生活を望むのでもなく、自然にわきでてくる”怒り”を原動力に行動してもいいのでは、ということです。
それが私流の”アンガー・マネージメント”(怒りの管理)というわけです。
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|2019年7月29日 月曜日
2019年7月29日 筋肉増強やダイエット目的のサプリメントはこんなにも危険
太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)の患者さんは比較的若いということもあり、サプリメントの相談のなかでは動脈硬化予防やがんの予防よりもむしろ、筋肉増強やダイエットに関したものの方が多いという特徴があります。「〇〇を飲もうと思っているんですけど…」という相談をされる方もいますが、多くはすでに飲みだしてから不安になった人たちです。あるいは、これは相談ではありませんが、健診で肝臓や腎臓の数値が悪いことで受診され、問診からその原因がサプリメントであることが判ったということもよくあります。
では、どの程度の割合で健康被害がでるのでしょう。これについては我々は漠然と”多い”という感覚がありますが、具体的な数字はよく分かっていませんでした。薬の場合は発売前から「〇%の使用者に△という副作用がある」ということが分かっていますが、サプリメントの場合はほとんど情報がありません。過去に東京都福祉保健局が実施した「サプリメントの副作用は全体の4.2%」という調査結果がありますが、これは自覚症状に限ってのことであり、無自覚の肝機能障害、腎機能障害などを加えるともっと高くなるはずです。
これを検証した研究が発表されました。医学誌『Journal of Adolescent Health』2019年6月5日(オンライン版)に「小児から若い世代でのサプリメントの弊害(Taking Stock of Dietary Supplements’ Harmful Effects on Children, Adolescents, and Young Adults)」というタイトルの論文が掲載されました。さらに、一般向けの医療情報サイト「Health Day」では「10代にとっての多くのサプリメントは危険(Many Dietary Supplements Dangerous for Teens)」というタイトルで紹介されています。
この研究では、FDA(米国食品医薬品局)の有害事象報告システムが用いられています。2004年1月~2015年4月に報告された米国の0~25歳の小児から若年成人が内服したサプリメントによる有害事象が解析されています。その結果、調査期間中に合計977件の有害事象が認められ、そのうち(なんと)40%もが「重篤な健康被害」だったというのです。重症例には入院例、救急受診例、さらに死亡例も含まれています。
この研究では若者が好むサプリメントがビタミン剤に比べてどれくらいリスクが大きいのかが検討されています。結果、筋肉増強を目的としたサプリメントでは2.7倍、性機能増強などのエネルギーアップを目的としたものでは2.6倍、体重減少(ダイエット)を目的としたものでは2.6倍リスクが上昇していることが分かりました。
上記「Health Day」の記事では、ハーバード大学公衆衛生学部教授のオースティン(Austin)氏の言葉を紹介しています。氏によれば、サプリメントが野放しのこの現状は「アメリカの若者にロシアンルーレットをさせているようなもの」だそうです。
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たしかに、死亡例も出ているわけですから「ロシアンルーレット」という表現も大げさではないかもしれません。
参考までに谷口医院で診断がついた最も多いサプリメントの被害は、男性の場合、プロテインによる腎機能障害、次いでクレアチンによる腎機能障害です。女性は、ダイエットのサプリメントでの動悸、嘔気、肝機能障害です。これらについては過去のコラム(マンスリーレポート2018年11月「サプリメントや健康食品はなぜ跋扈するのか」も参照してください。
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|2019年7月26日 金曜日
2019年7月26日 ライチを食べて子供が死ぬ理由
過去1ヶ月で、患者さんから受けた質問で最も多いひとつが「ライチは毒って本当?」というものです。主にネットニュースで「インドでライチを食べた子供が次々と死んでいる」という趣旨の報道がおこなわれているようです。
実はこれは今に始まったことではなく、インドでは過去にも同様の”事件”が報道されています。ここでは、なぜライチで子供が死んでしまうかについて解説したいと思いますが、まずは最近の報道を振り返ってみましょう。
2019年6月25日のBBCの記事「ビハール州の脳炎はインドの保健システムが原因(Bihar encephalitis deaths reveal cracks in India healthcare)」によると、2019年6月上旬頃よりビハール州のムザファルプル県で150人以上の子どもたちがライチを食べた後に死亡しています。BBCによれば、死亡した子供たちのほとんどがまともな医療を受けることができていません。
BBCは2017年にも同様の報道をしています。2017年2月1日の記事「インドの子供たちが空腹時にライチを食べて死亡(Indian children died after ‘eating lychees on empty stomach’)」で、毎年100人以上の子供が脳炎を起こして死亡していることを指摘し、その原因を医学誌『LANCET』から引用して紹介しています。
ここでその『LANCET』の論文を紹介しましょう。同誌2017年1月30日号(オンライン版)に「ムザファルプル県の脳炎のアウトブレイクと脳炎の関係(Association of acute toxic encephalopathy with litchi consumption in an outbreak in Muzaffarpur, India, 2014: a case-control study)」というタイトルで掲載された論文で、要旨は次のようになります。
・2014年5月26日から7月17日の間に390人の患者が入院し、うち122人(31%)が死亡した。
・この中からデータが残っている104人を選び、他の疾患で入院した同じ年齢の対照群コ(ントロール群)と比較した。
・発症24時間前のライチ消費量は対照群と比べて9.6倍だった。
・発症前に夕食を摂っていなかった割合は対照群と比べて2.2倍だった。
・ヒポグリシンA(hypoglycin A)もしくはMCPG(methylenecyclopropylglycine)の代謝物が、脳炎発症者73人の尿検体のうち48人から検出された。一方対照群からは検出されなかった。
・ムザファルプル県の36個のライチの殻を調べると、ヒポグリシンAの濃度は12.4μg/g~152.0μg/gの範囲で、MCPGは44.9μg/g~220.0μg/gの範囲だった。
ライチには2種の「毒素」が含まれており、その毒素が体内で糖を新生することを阻害することが分かっています。低栄養状態時にその毒素が体内に入ると急激に低血糖が進行し、糖の補給をおこなわなければ死に至る、というメカニズムです。
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BBCによると、この脳炎は現地では「急性低血糖脳炎(acute hypoglycemic encephalopathy) (AHE)」と呼ばれているそうです。過去20年以上にわたり毎年100人以上の子供が他界しており、かつては日本脳炎だと考えられていたそうです。しかし『LANCET』に報告されたことから、正確な診断と治療がおこなわれるようになり、患者数は減少傾向にありました。ところが、今年(2019年)は再び患者数が上昇し、その原因がBBCが指摘しているように脆弱な医療システムにあるというわけです。
日本人の場合、飢餓になるほどの状態でこの地を訪れることはまずないでしょうし、仮にライチの皮に含まれる毒素を摂取したとしてもすぐに糖分を摂れば問題ありません。むしろ、日本脳炎の方を注意すべきです。インド(のみならずアジア全域)に渡航するなら、日本脳炎のワクチン接種歴を確認しておくべきです。
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|2019年7月19日 金曜日
第191回(2019年7月) 複雑化する食物アレルギーと私の「仮説」
他のアレルギー疾患に比べると、食物アレルギーは患者数が増え、またどんどんと複雑化してきています。喘息は吸入薬の普及でもはやほぼ完全にコントロールできるようになり、夜間に救急車を呼ばなければならないようなケースは激減しています。アトピー性皮膚炎は、タクロリムスの普及などでかつてのようなステロイドを繰り返し塗らなければならない例が大きく減っています。スギ花粉症やダニアレルギーは大勢の人が罹患していますが、舌下免疫療法の普及で「すでに治った」という人も増えてきています。
一方、食物アレルギーは増加の一途を辿っているだけでなく、重症例も少なくなく(注1)、また「食べられないものがどんどん増えていく」という悲鳴も聞かれます。先日、あるLCCの客室乗務員から「搭乗拒否」を告げられたイチゴアレルギーのイギリス人女性について紹介しました(医療ニュース:2019年6月30日「イチゴアレルギーで搭乗拒否」)。このケースでは航空会社の対応に問題がありますが、実際に「乗ってはいけない」場合もあります。
例えば、谷口医院では過去に「新鮮な海鮮料理が毎晩ふるまわれる数日間のクルージングに参加したい」という重症のアニサキスアレルギーの患者さんに「許可できない」と伝えたことがあります。この女性は「なにかあればエピペン(食物アレルギーが重症化したときの治療薬)を自己注射するからどうしても参加したい」となかなか譲らなかったのですが、重症化すればエピペンを注射すればOKというほど単純なものではありません。エピペンという注射は使用後に直ちに救急車を呼び、しばらくの間は病院で経過をみなければならないのです。海上で重症化すれば病院までの搬送にはヘリコプターを要請しなければなりません。
増えている食物アレルギーとしてまず筆頭に上がるのが今紹介したアニサキスアレルギーです。「診断がついてないだけで昔から少なくなかった」という意見もあるのですが、私の印象で言えば重症化する例が増えてきています。このアレルギーは、重症化すればほとんどの魚介類が煮ても焼いても食べられなくなってしまいますので、可能な限り回避したいものです。
個人的な考えですが、アニサキスアレルギーを防ぐにはアニサキス症の予防と胃炎の治療をしておくべきです。これについては、過去に毎日新聞の「医療プレミア」で書いたことがあるのでそちらを参照してほしいのですが、結論だけを言っておくと「生きたアニサキスが寄生している可能性のある食べ物を極力避ける」と「胃炎があるときは特に注意する」という方法で、実際私はきずしなど可能性のあるものは極力食べないようにしています。
増えているアレルギーとして次に取り上げたいのが「ナッツアレルギー」です。このアレルギーが興味深いのは、ピーナッツやアーモンドなど1つだけがダメという人もれば、複数のナッツ類がダメという人もいることで、私が診てきた範囲でいえば一切の「法則性」がありません。例えば、カシューナッツが食べられない人のなかにもピーナッツはOKという人もNGという人もいます。ヘーゼルナッツもまた同様に、という感じです。ですから、これまでのエピソードをしっかりと問診して必要な検査を適宜おこない、今後どのナッツを食べるかを検討することになります。
尚、ピーナッツアレルギーは従来の考えと異なり、現在では「母親は妊娠中にナッツを積極的に食べるべきで、出生後は、早期に積極的にナッツを食べさせた方がアレルギーを起こしにくい」ことが分かっています(参照:医療ニュース2015年6月29日「ピーナッツアレルギー予防のコンセンサス」)。
ピーナッツアレルギーは重症化することが多く、なんとキスだけで死亡した例もあります。2005年、カナダの15歳の少女がボーイフレンドにキスしたことでアナフィラキシーショックを起こし他界しました。ボーイフレンドは直前にピーナッツバタースナック(peanut butter snack)を食べていたそうです。この事故を報道した「Chicago Tribune」によると、全米では毎年50~100人がピーナッツアレルギーで死亡しているそうです。
この記事にはもうひとつ興味深いことが書かれています。それは、ピーナッツアレルギーが増加している理由として、ピーナッツオイルを含むベビークリームやローションが原因の可能性を指摘していることです。
ここでピンときた人もいると思いますが、これはまさに我が国で社会問題となった「茶のしずく石鹸」が原因のコムギアレルギーと同じメカニズムです。「茶のしずく」が問題となったのは 2010年頃ですから、その5年前から似たような事象が海外で起こっていたということになります。
このサイトで繰り返し指摘してきているように、これらは「食物アレルギーの機序についての二通りのアレルゲン曝露仮説」で説明することができます。イラストにあるように、食べ物が皮膚から侵入するとアレルギーが成立し、その後は食べると様々な症状が発症するという「仮説」です。
この「仮説」で説明できるこれまで本サイトで紹介してきた食物アレルギーは、コムギ以外には、魚(パルブミンやコラーゲン)、カンパリなどのコチニール、ビール、ココナッツ、牛肉やカレイ(ダニ及び一部の薬)、サーファーの納豆アレルギー(クラゲ)などがあります。ピーナッツも、唇や口の周りがあれているときにピーナッツバターが付着したというストーリーが考えられます。最近、オート麦のアレルギーが増えていて、これもオート麦エキス配合のスキンケア製品が原因ではないか、と私は疑っています。
ラテックスフルーツ症候群という疾患があり、風船や医療用グローブなどのラテックス製品にアレルギーがあると、キウイやアボカドなどの食物アレルギーが合併します。私の経験上、この疾患はアトピー性皮膚炎とよく合併します。これはすなわち、ラテックスの成分が炎症のある部位に侵入しラテックスアレルギーとなり、ラテックスとかたちが似ているキウイやアボカドにもアレルギーが生じたと考えられるのですが、その逆もありえます。つまり手荒れなどがあり、その手でキウイの皮をむいてキウイエキスが皮膚から、あるいは口内炎などがある部位から侵入したというストーリーです。
近年急速に増えているアレルギー疾患にPFAS(花粉食物アレルギー症候群)があります。目立つのが、ハンノキやシラカンバといった樹木の花粉症があると、様々な野菜や果物の食物アレルギーが起こる現象です。詳しくは過去のコラム「急増するPFAS(花粉食物アレルギー症候群)」をみてもらいたいのですが、これを起こすと実に多くの食べ物が食べられなくなってしまいます。特に目立つのが、リンゴやモモ、ナシ、ビワといったバラ科のフルーツが食べられなくなるケースです。
2019年6月、東京都大田区のビワを食べた11人の児童が救急搬送されたことが報道されました。この原因として私は、児童たちはハンノキやシラカンバといった樹木のアレルギーがありすでにPFASが成立していたのではないか、と考えています。実際、各公園の樹木を紹介している「公園情報センター」によれば、大田区の公園にはハンノキやシラカンバが植えられています。では、なぜ児童たちは樹木のアレルギーになったのか。まったくの推測ですが、風邪を引いて鼻粘膜や咽頭に炎症があり、そこから樹木の花粉が侵入したのではないでしょうか。
先述したように、私は、アニサキスアレルギーはアニサキスが(生きていても死んでいても)胃粘膜の炎症部位に触れて発症する可能性を考えています。胃粘膜の炎症部位からアレルゲン(死んだアニサキス)が侵入するなら、鼻粘膜や咽頭粘膜の炎症部位からアレルゲン(花粉)が侵入する可能性もあると思います。
つまり、私の「仮説」は、皮膚だけでなく、「鼻粘膜、咽頭、胃粘膜などにも炎症があればそこから食物もしくは花粉が侵入しアレルギーが成立する」というものです。突拍子もない考えかもしれませんが、可能性はあるのではないでしょうか。だとすると、すでにコンセンサスが得られている「食物アレルギーを回避するためにスキンケアをしっかりおこない湿疹を予防しましょう」という考えに加え、「風邪をひかないようにしましょう」「胃炎を起こさないようにしましょう」ということが言えます。
食物アレルギーはいったん起こすと、治らないことが多く、治る場合もかなり時間がかかります。エビデンスはありませんが、湿疹だけでなく日ごろから体調管理に気を使うべきだというのが私の考えです。
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注1:他界された症例として、2012年に東京都調布市の小学5年生の女子生徒がチーズ入りのチジミを食べてアナフィラキシーを起こしたことは記憶に新しいと言えるでしょう。日本では1988年に札幌の小学6年生の男子生徒が給食のソバを食べて下校時にアナフィラキシーが生じ他界した例もあります。
参考:はやりの病気
第157回(2016年9月)「最近増えてる奇妙な食物アレルギー」
第166回(2017年6月)「5種類の「サバを食べてアレルギー」」
第184回(2018年12月)「急増する「魚アレルギー」、寿司屋のバイトが原因?」
第173回(2018年1月)「急増するPFAS(花粉食物アレルギー症候群)」
第144回(2015年8月)「増加する野菜・果物アレルギー」
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|2019年7月8日 月曜日
2019年7月 医師にメール相談をしよう
過去にも述べたように、13年前に太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)をオープンさせるとき、「ウェブサイトはつくらない方がいいよ」と助言してくれた医師が何人かいました。その理由は「ネットで医療機関を探す患者は、ドクターショッピングを繰り返していることが多く診察に時間がかかるから」というものでした。そして、私の答えは「だからこそつくるんです!」でした。これまで医療機関でイヤな思いをしたという人にこそ受診してもらいたいと考えていたのです。
大学(大阪市立大学)の総合診療科の医師たちはこの私の考えに賛成してくれて、私のやろうとしている総合診療をウェブサイトで社会に知ってもらうべきだ、と励ましてくれました。ですが、「メール相談を無料でおこなう」という私の意見に賛成してくれた医師は(ほぼ)ゼロでした。そして、今も私は「メール無料相談を始めようよ」と他の医師に促すのですが、同意してくれる医師は少数です。つい最近開業した大学の総合診療科の若い先生もウェブサイトはつくっていますが、そのサイトからメール相談はできません。
メール無料相談は患者側だけでなく医師側からみてもとても有用なものであることを私は確信しています。ですから、残りの医師としての人生をかけてでも、私と同じようなメール無料相談をする医師を増やしていきたいと考えています。
今回はメール相談にはどのようなものが多いかについて紹介していきたいと思います。しかしその前に、このようなメール無料相談をしている医師は私だけではないということを紹介しておきたいと思います。
過去のコラムで報告したように、私は自身が患者として2014年に脊椎の手術を受けました。その病院を受診する前、私はその病院のウェブサイトから医師に直接メールを書きました。驚いたのは同日に返事をいただいたことです。そして、その返事が励みとなり疾患に向き合う気持ちになり、その医師に手術をしていただきました。その後、私は医師として、自分が診ている患者さんが重度の脊椎疾患があればその医師に相談させてもらっていますが、翌日には返信メールが届きます。かなり多忙な医師なのにもかかわらず、です。
もうひとつ、私の身内の話をします。あるがんの末期で、大学病院で「手術不能で余命数ヶ月」と言われたのですが、ある病院の医師にその病院のウェブサイトからメールをしたところ同日に返答がとどき、とんとん拍子に話が進み、手術を受けられることになりました。それから数年が経ちますが、今も元気で再発がありません。この話はまさに”奇跡”で、もちろんその医師の技術が極めて高度だったからでありますが、メールがきっかけで手術が受けられるようになったのは事実です。
このようにメール相談を受け付けているのは決して私だけではないのですが「メール無料相談などやるべきでない」と考えている医師の方がずっと多いのが実情です。その理由として、「メールだと不正確な情報しか分からないからきちんとしたことが言えない」「誤ったことを伝えて後で訴えられたらどうするのだ」「長文メールが何通も届くと対応できない」などとよく言われて、それはそれで正しくはあるのですが、私からすれば「どこに行っていいか分からず苦しんでいる人はどうするんだ!」となるわけです。今、紹介した二人の医師は(私とは異なり)全国的に有名で多忙な医師です。その医師たちが患者からのメール相談を受けて、実際救われている患者(私も含めて)がいるのですから、他の医師にもやってもらいたいと私は言い続けているのです。
過去12年半の間に谷口医院に寄せられたメール相談は約9千です。メールが1通もこない日はほとんどなくて、多い日は10通近くが届くこともあります。そのひとつひとつに回答しているわけですから平均すると毎日1時間程度はメールの返信に費やしていることになります。メールを分類してみましょう。
〇当院を受診したことのある患者さん
「予想より早くよくなったから薬を中止してもいいか」「薬疹が出たかもしれない」「いったんよくなったけど再発したみたい」といった内容が多く、皮膚疾患の場合は写真を添付されることもあります。診察中は私は電話に出られませんし、夜間も(現在は)電話に出ませんから、このようなメールでの質問は非常に効果的です。患者さんは受診しなくてすみますし、私からみても受診不要な患者さんの見極めができれば、その分の時間を他の患者さんにあてることができるからです。
家族のことで相談される人も少なくありません。その家族は未受診であっても、メールをされている患者さんのことは分かっていますから(顔を思い浮かべて返信できますから)、ある程度詳しいことまで伝えることができます。受診してもらうこともありますが、「受診する必要はありません。悪化すればまた教えてください」で済ませられることも多々あります。
このように再診の方であれば、本人のことはもちろん、家族でも、あるいは友達のことでもメール相談はたいていスムーズにうまくいきます。
〇当院未受診の患者さん(どこも受診していない場合)
「健診で異常が出たが受診すべきか」「1か月前から〇〇の症状がある」「(私がメディアに書いた記事などを読んで)△△という病気が怖くなった」など、質問の種類は多岐に渡ります。顔を見たことのない人からの相談の場合、その人のキャラクターが分かりませんから、あまりつっこんだことまでは言えず、どうしても一般的なことのみの説明に限定されてしまいます。これでは答えになってないな、という場合も多いのですが、意外なことに「ようやく受診する決心がつきました。ありがとうございます」といったお礼のメールをいただくこともしばしばあります。このタイプのメールは遠方からも届きます。
〇当院未受診の患者さん(他院でイヤな思いをした場合)
長文メールが多いと言えます。医師やその病院の悪口を延々と書いてあるものもあります。ですが、たいていの場合よく読むと、その医師の人格を否定しているのではなく、「きちんと診てもらえなくて不安が強い」というのが本音であることが分かります。こういうケースでは、そのように思われたのも無理はないということを伝え、そして同時に「医療不信にならないで」ということを訴えます。その後も何度もメールが届くことが多いのですが、根気よく対応していると(途中で無視することはありません)、たいていは最終的には受診できる医療機関が見つかったとの連絡が来ます。このタイプは過半数が他府県(文字通り北海道から沖縄まで)です。
〇その他メール
私は受験や勉強の本を出版していることもあり「医学部受験や看護学校の受験を考えている」「資格を取ろうと思っている」というメールがときどき来ます。私が書いたり取材を受けたりしたメディアの記事を読んで感想を送ってくれる人もいます。また、「医師の彼氏に二股をかけられていた。復讐したい」とか「主治医に恋してしまった」というような相談(?)もときどきあります(なんで私に相談されるのか不明ですが…)。
過去のコラム(マンスリーレポート2019年5月「教科書を読めない人」はそんなに多いのか)で述べたように、2019年1月31日で谷口医院のスマホサイトを閉鎖したところ、メール相談が一気に減りました。そのコラムで述べたように、PCでなくスマホしか見ない人にも再びメールを活用してもらおうと考え結局スマホサイトを復活させることになりました。ウェブサイト作成会社からは「いったん閉鎖すると再びアクセス数が増えるまでに時間がかかる」と聞いていますが、メール相談の数は少しずつ再び増加してきています。
以前にも述べたように、当院未受診でメール相談をされる人が実際に谷口医院を受診するのは5%未満ですから、医療機関を運営(経営)の観点からみると「費用対効果が悪すぎる」と指摘されるのですが、そもそも医療機関は営利団体ではありませんし、メールだけで済ませることができれば他の患者さんに時間を取れますから双方にとって有益なわけです。「メール相談は医師のノブレス・オブリージュ」というのが私の考えです。
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|2019年6月30日 日曜日
2019年6月30日 乳幼児期に犬と過ごせば食物アレルギーを予防できる?
「猫好き女子は肺がんで死にやすい」「単身者が犬を飼えば長生きできる」「乳児期に犬や猫に接するとアレルギーになりにくい」(いずれも下記「医療ニュース」参照)など、ここ1~2年で犬・猫が健康に与える研究がよく発表されるようになってきました。それだけ世間の関心が高いということでしょう。
今回紹介するのは「乳幼児期に犬と過ごせば食物アレルギー発症率が90%低下する」という俄かには信じがたい研究で、医学誌『Allergy』2019年5月11日号(オンライン版)に掲載されています。タイトルは「Dog ownership at three months of age is associated with protection against food allergy」(生後3か月で犬を飼っていれば食物アレルギーが予防できる)です。
英国の研究者が対象としたのは、「Enquiring About Tolerance(EAT)」と呼ばれる食物アレルギーの無作為化試験(聞き取り調査のようなもの)に登録された生後3ヵ月の乳児1,303人です。犬飼育の有無とアレルギー発症との関連が検討されています。生後36ヶ月時に食物アレルギーが発症したかどうかが調べられています。
その結果、「食物アレルギー」の診断がついたのは全体の6.1%。犬猫の飼育と食物アレルギーの関連を調査したところ、犬と一緒に過ごしていれば食物アレルギーの発症率がなんと90%も低下していたのです! さらに、2匹以上の犬を飼育していた家庭の乳児49人では発症者がゼロであり、犬の数が多いほど食物アレルギーを防ぐ可能性が高いことをほのめかしています。
ただ、残念なことに犬を飼っていてもアトピー性皮膚炎発症の予防にはならなかったようです。
************
アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎など他のアレルギー疾患と比較すると、食物アレルギーは過去10~20年間で、世界中で急増しています。そして、他のアレルギー疾患に比べると重症化、あるいは死に至る確率も高いと言えます。いったん発症すると、治癒しないことも多く、また完全な食物除去は思いのほか大変ですから、予防できる方法があるならありがたい話です。
この研究ひとつだけで「将来の食物アレルギー予防のために犬を飼いましょう」とまでは言えないでしょうが、犬を飼うことには他にもいくつもの利点がありますから、今後は(猫よりも)犬がペットとして注目されることになるかもしれません。
参考:医療ニュース
2019年2月23日「乳児期に動物に接するとアレルギーを起こしにくい?!」
2019年4月25日「ネコ好き女子は肺がんで死にやすい?!」
2018年1月26日「単身者は犬を飼えば長生き 雑種より猟犬が良い?」
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|2019年6月30日 日曜日
2019年6月30日 イチゴアレルギーで搭乗拒否
少し古い話ですが、世界中で話題になっている事件なので報告しておきます。
2018年9月、英国のLCC「トーマス・クック」が19歳の英国人女性を「イチゴアレルギーがあるから」という理由で搭乗拒否しようとしました。英国の3つのタブロイド紙による報道から概要をまとめてみます(注)。
19歳の英国人女性とその恋人の21歳の男性が休暇を利用してギリシャのザンテ島(Zante)にバカンスに出かけました。往路は問題なく搭乗できたものの、帰りの便の搭乗間際に「問題」が起こりました。女性は二人の客室乗務員にイチゴアレルギーの話をし、客室乗務員は「イチゴの成分が含まれるマグナーズ(アイルランド製のイチゴ入りビール)やロゼ・ワインを機内サービスで他の乗客に提供しない」と約束しました。
ところが、上司の女性客室乗務員がこれに納得しませんでした。報道によればこの客室乗務員は「あなたのせいで200人以上の乗客に機内サービスができないのは不快だわ。あなたはどういうつもりなの?(I’m not happy not serving these products because we’ve got more than 200 guests and what do you expect them to do?)」と言い、女性の搭乗を拒否しようとしたのです。
すると、女性の恋人がこの客室乗務員に「乗客の安全を重視しないのか」と詰め寄り、また他の客室乗務員もこの女性の味方となり、最終的には搭乗拒否しようとした客室乗務員も渋々女性の搭乗を認めました。そして、「重度のアレルギー患者が同乗しているため、イチゴの含まれたものは供給できません。また、フライト中はイチゴの飲食を控えてください」と機内アナウンスしたそうです。
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帰国後、この女性は今回の事件をSNSなどで公表し世界中で話題になりました。さて、このケース、航空会社が他の乗客へのイチゴを含む飲料の供給を中止したのは正しかったのでしょうか。
たしかに空気中に浮遊するアレルゲンを吸い込むことによって生じるアレルギーはあり得ます。Mayo Clinicのウェブサイトによれば、例えばピーナッツオイルのクッキングスプレー(私はそのようなものを見たことがありませんが)を吸い込んでアレルギー反応が起こることがあるそうです。
ですが、イチゴ入りのアルコールを飲んだ他の乗客の呼気でアレルギー反応が起こるとは到底考えにくいのです。ただし、万が一にでも発症すれば命に関わる可能性がありますから、これは今後科学的に検証していくべきでしょう。
ところで、太融寺町谷口医院の12年半の歴史を振り返ると、イチゴアレルギーはどんどん増えているような印象があります。オープンした2007年の時点では「フルーツのアレルギーは次第に種類が増えていき、そのうちに食べられるものが減っていくかもしれません」という説明をするときに、「イチゴアレルギーは稀です」と話していました。
それが、年を追うごとにイチゴアレルギーの患者さんが増えています。もっとも、イチゴだけでなく、他のバラ科のフルーツのリンゴ、モモ、ナシ、ビワ、サクランボなども増えているのも事実です。ただ、昔からリンゴやモモ、ビワなどのアレルギーは珍しくありませんでしたが、以前は「イチゴだけはOK」という人も少なくなかったのです。
ちなみに、イチゴアレルギーを含むバラ科のフルーツにアレルギーがある人はハンノキやシラカンバなどの樹木の花粉症も併発していることが多いと言えます。これをPFAS(花粉食物アレルギー症候群)と呼び、最近増加しています。
いずれにしても食物アレルギーがある人が搭乗するときは、早い段階で航空会社に相談しておくべきでしょう。アレルギーが理由で断られることはないと信じたいのですが、トーマス・クックのことを考えると「LCCは避けた方が……」という声が出てくるかもしれません。
注:英国のタブロイド紙である『Express』、『The Sun』、『Mirror』の記事です。
参考:はやりの病気
第173回(2018年1月)「急増するPFAS(花粉食物アレルギー症候群)」
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|2019年6月13日 木曜日
第190回(2019年6月) 誤解だらけの膀胱炎の治療
太融寺町谷口医院はオープンした2007年から「どのような症状やどのような悩みでもお話ください」と言い続けています。もちろんどんな治療でもできるわけではなく、診断がつかなかったケースや入院や手術などが必要な症例は病院や専門クリニックに紹介しています。どれくらいの患者さんを紹介しているかというと、2018年を例にとると、1年間での総受診者数が15,080人、入院・手術・専門医の診察が必要で紹介したのがそのうち137人、「紹介率」は0.9%となります。
では99.1%の患者さんにどのような治療をしているのかというと、原則として、どの疾患もガイドラインに従った治療をおこなっています。ガイドラインが存在しない疾患も多々ありますが、その場合も「エビデンスのある標準的な治療」を基本としています。つまり「独自の検査・治療」は原則としておこなっていません。
ただし「膀胱炎」は例外になると言えるかもしれません。といっても、私は膀胱炎に対して奇をてらった治療をおこなっているわけではなく、私の診断法及び治療法を感染症科の専門医、もしくは感染症に詳しい医師に話すと、ほぼ全員が同意してくれます。あえて喧嘩をふっかけるようなことはしたくありませんが、膀胱炎の治療についてはガイドラインの方が”過剰”なのです。
実は、このことは毎日新聞の「医療プレミア」で指摘したこと(注1)があり、読者の方からの反響もそれなりにありました。その頃はまだ「医療プレミア」はまだ月に5本までは無料で読めていたのですが、現在は1本読むのも有料化されてしまっています。そこで、今回はそのときに述べたことを簡単にまとめてみたいと思います。
まず、膀胱炎の前提として、原因のほとんどは細菌感染です。そして、次の2つが細菌感染の治療の原則です。
#1 細菌の種類を特定(または推定)し、重症度を判定する
#2 細菌の種類と重症度から抗菌薬の種類と投与量を決める
ときどき「膀胱炎になったから抗生剤をください」とか、もっとひどい場合は「膀胱炎です。クラビットを5日分ください」という患者さんがいますが、そもそも膀胱炎かどうかは少なくとも尿を調べないと分かりませんし、細菌性膀胱炎が確定した場合も、上記の原則に従って抗菌薬を検討しなければなりません。
今私は、「もっとひどい場合」とあえて失礼な言葉を使いましたが、このようなことを言い出す患者さんだけがおかしいのかといえば実はそうではありません。この患者さんの要望は、感染症の原理原則から完全に逸脱していますが、実はガイドラインに似たようなことが書いてあるのです。
膀胱炎について書かれた日本のガイドラインとしてはいくつかあり、ここでは「医療プレミア」でも引き合いに出した日本化学療法学会のガイドラインと標準医療情報センターのガイドライン、さらに日本産科婦人科学会のガイドラインを見てみたいと思います。
どのガイドラインにも共通しているのは、抗菌薬にニューキノロン系と第3世代セフェム系(注2)が推奨されていることです。これらの2つには共に小さくない問題があります。ここではニューキノロンの問題をみていきます。
まず、ニューキノロンというのは極めて強力な抗菌薬で安易に使ってはいけないものです。海外では、これらを使い過ぎた結果、薬剤耐性菌が多量に出現したことを反省し、現在はニューキノロンの使用は最重症例に限る方向にあります。英国ではニューキノロンの使用を控えることで耐性菌が減少したという報告もあります。
米国泌尿器学会の提言では「合併症のない女性の膀胱炎に、安易にニューキノロンを使ってはいけない」とされています。「合併症」というのは、悪性腫瘍や未治療のHIV、重症の糖尿病といった「重症の病気」です。つまり、そういった重症の病気がない日ごろは健康な女性にニューキノロンは簡単に使ってはいけません、と警告しているわけです。
これを受けて(かどうかは分かりませんが)日本化学療法学会のガイドラインにも「ニューキノロンは安易に使わない」と確かに書かれています。ですが、推奨する具体的な抗菌薬としてニューキノロンが書かれているのです! 問題はまだあります。ニューキノロンはそれだけ”強力な”抗菌薬(注3)ですから費用も高いのです。なかには1日あたり400円以上するものもあります。
太融寺町谷口医院の診断と治療の話をしましょう。治療の話で言えば1日あたり数十円ですみます。これはペニシリン系、もしくは第一世代セフェム系を中心としているからです。もちろん安いという理由だけでこれらを処方しているわけではありません。先述した#1のように正確に診断することが不可欠です。
そして、正確に診断するにはグラム染色をおこなえばいいのです。これにより細菌が大腸菌を代表とするグラム陰性桿菌なのか、ブドウ球菌などのグラム陽性球菌かが分かります。グラム染色の費用は3割負担で660円ほどです。しかも10分程度で結果が出ますし(当院を受診されたことのある方はお分かりだと思いますが)細菌と炎症細胞の様子をモニタで見てもらうことができます。
つまり、単純な膀胱炎なら、グラム染色で原因の細菌と炎症の程度が簡単に分かり、そこから適切な抗菌薬の種類と量が簡単に推測できるわけです。これでほぼ100%治ります。発熱や背部痛などがあり重症化している場合はニューキノロンや点滴の抗菌薬を用いることもありますが、基本的には下腹部痛や残尿感だけならニューキノロンは不要です。要するに、日本のガイドラインが”過剰”なのです。私が考える膀胱炎の治療の1つめの「誤解」が「日本のガイドラインに従わねばならない」です。
ちなみに、このグラム染色という方法は風邪(急性上気道炎)のときの抗菌薬の必要性を検討するときにも極めて有用ですし、怪我で皮膚に傷ができたときにもどのような細菌が感染したかを知る上で極めて便利です。私は医師になってから、このグラム染色の有用性を主張し続けています。ほとんどすべての医師が「それは有用だ」と同意はしてくれますが、残念ながらどこの医療機関でも実施しているわけではありません。その最大の理由はちょっと手間がかかる(といっても10分程度ですが)割に、保険点数が少ない(だから安い)からではないかと疑いたくなってきます。
2つめの膀胱炎の治療に対する「誤解」は「薬局に相談する」です。私は常々、困ったことがあればいつでも相談してくださいと言っていますが、それと同時に、セルフメディケーションも勧めています。つまり、病院でなく薬局で相談するということも推奨しているのです。しかし、こと膀胱炎に関してはそのせいで重症化してしまうことがよくあります。巷には「ボーコ・・・」といったいかにも膀胱炎に効きそうな市販薬がありますが、これらは抗菌薬ではありません。こういった薬を飲んで医療機関受診が遅れて膀胱炎が重症化してしまうケースは決して少なくありません。この点は薬剤師に対し文句を言いたいところです。
では今回のまとめです。
・膀胱炎のほとんどは細菌感染であり抗菌薬で治療する。したがって、薬局でなくかかりつけ医に相談する。(これを読んでいるあなたが薬局勤務の薬剤師なら、よほどの自信をもって細菌性が否定できなければ直ちに医療機関受診を勧めてください)
・膀胱炎が疑われれば、まずは細菌の種類と量を調べなければならない。
・細菌の種類と量を調べるには尿のグラム染色が最も有用。すぐに分かり、費用も安い。
・細菌の種類と量が分かれば適切な抗菌薬の種類と量が決められる。発熱や背部痛がなければほぼ100%安い抗菌薬で治療することができる。
・単純な膀胱炎で、日本のガイドラインで推奨されているニューキノロン(及び第3世代セフェム)が必要になることはほとんどない。
************
注1:3週連続で下記のコラムを書いています。
2017年9月10日「日米でこんなに違う 膀胱炎の治療方針」
2017年9月17日「膀胱炎は”研修医レベル”の治療でOK?!」
2017年9月24日「膀胱炎治療にサプリや漢方がNGの理由」
注2:以前から「なぜ海外ではほとんど用いられない第3世代セフェムの内服抗菌薬が日本では多用されるのか」は多くの識者が指摘しています。私は「医療プレミア」(「第3世代セフェムはなぜ「乱発」されるのか」)で書いたことがあります。はっきり言うと、第3世代セフェムの内服抗菌薬はほとんど用がなくて、最近では一切の処方をやめる医療機関が増えてきています。
注3:ニューキノロン系の抗菌薬の代表が、クラビット、タリビット、シプロキサン、オゼックス、グレースビット、スオード、アベロックス、ジェニナックなど(すべて先発の商品名)です。
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