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2013年6月22日 土曜日

2007年1月17日(水) 次々にインフルエンザで学級閉鎖 -東大阪も-  谷口 恭

インフルエンザでの学級閉鎖が相次いでいます。1月16日の毎日新聞によりますと、東大阪市の中学1年生、三重県内の小中学校合計3校、山口県の幼稚園、熊本県の小学校などが次々と学級閉鎖や学年閉鎖をしたと発表しています。

 例年より約1ヶ月遅くインフルエンザのシーズンが到来したという感じです。ワクチン接種は流行が始まった近くに住んでいる人はすでに遅すぎるかもしれません。まだ流行が始まっていない地域の人も来週では間に合わないでしょう。(インフルエンザの予防接種は効果が出るのに2週間程度かかります)

 これからは、うがい・手洗いをしっかりおこないましょう。

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2013年6月22日 土曜日

2007年1月13日(土) 広島でインフルエンザ流行開始   谷口 恭

1月12日の毎日新聞によりますと、広島県では年末の1週間(12月25日から31日)に県内115箇所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数が130人となり、県の保健対策室は「インフルエンザの流行シーズンに入った」と発表しました。

同対策室によりますと、県の流行開始から1~3週間後には「インフルエンザ注意報」が発令され、5~6週間後には「インフルエンザ警報」が発令されることが例年の傾向から推測されるそうです。

関西ではまだ本格的な流行の兆しが見えていませんが、流行開始は秒読みの段階に来ていると考えるべきでしょう。

ワクチンは来週までなら間に合うかもしれませんが、おそらく再来週になると遅すぎると思われます。まだ接種していない人はお急ぎを・・・

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2013年6月22日 土曜日

2007年1月12日(金) みずぼうそうを難病と勘違いして自殺   谷口 恭

みずぼうそうと言えば、誰もが知っている子供の感染症ですが、子供のときにかかっていなければ、大人になってから発症することがあります。よく言われるように、大人になってからみずぼうそうに罹患すると、ときに重症化することがあり入院を強いられることもあります。

 しかしながら、みずぼうそうは決して”難病”ではありません。そのみずぼうそうを難病だと勘違いして自殺を図った男性(タイ人)がいます。

 1月11日のバンコク週報(日本語でタイの情報を伝えるメディア)によりますと、タイのサケオ県で26歳の男性が森林でわらに火をつけ炎の中で拳銃自殺をしました。

 この男性は工場で働くために医師に診断書作成を依頼したところ、診察の結果、軽度のみずぼうそうに感染していることが判ったそうです。

 ところが、この男性は医学の知識が乏しいせいもあってなのか、みずぼうそうを”難病”と勘違いし遺書を残し自殺を図りました。

 遺書には次のような記載があったそうです。

「お母さん、ごめんなさい。僕は火の中で死にます。いつまでも愛しています」

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 みずぼうそうは”難病”でもなんでもなく、成人になってから感染したとしても、薬を数日間飲めば治ります。ワクチンもありますから、最近は罹患すること自体も減ってきています。

 この事件は自殺した患者さんに非があるわけではなく、きちんと説明をしなかった医師に責任があると言えるでしょう。日本で同じようなことが起こるとは考えにくいでしょうが、医師が患者さんに正しい知識を伝える義務を再認識させられる事件だと言えます。

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2013年6月22日 土曜日

2007年1月11日(木) ノロウイルスによる感染性胃腸炎がピークに   谷口 恭

国立感染症研究所が12月28日にまとめた全国約3000の小児科の定点調査結果によりますと、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者報告数は、12月11日からの1週間で6万8950人に上り、1施設当たり22.8人と、1981年の調査開始以来過去最多だった前週(22.2人)をさらに上回っています。ただ、同研究所は、感染性胃腸炎の流行は「ピークを迎えつつある」とみています。

 私自身も、今シーズンは感染性胃腸炎が例年に比べて多いなという印象があります。

 よく患者さんに聞かれるのは、「この胃腸炎はノロウイルスによるものですか」というものです。患者さんによっては、「ノロウイルスの検査をしてほしい」、との希望をもたれていますが、現在のところ、ノロウイルスの検査は保険適用がなく、自費診療でおこなうと1万円以上もするため、私は原則として検査をすすめていません。

 ノロウイルスの感染性胃腸炎は、たしかに死亡例も出ており危険な印象がありますが、健常人であれば、それほど重症化することはなく、大半は外来の点滴か、入院が必要となったとしても2~3日で元気になります。

 また、ウイルス感染ですから、抗生物質は効果がありません。点滴のなかに入れるのは、せいぜい胃薬か吐き気止め程度で、点滴の主目的は水分補給です。

 医学の教科書には「ノロウイルスはカキによるものが多い」と書かれていますが、実際はカキで感染した人よりも、感染している人の近くにいる人が感染していくケースの方が圧倒的に多いといえます。

 ノロウイルスに限らず、感染性胃腸炎や風邪にもっとも効果があるのは、”うがい”と”手洗い”であることを再認識することが大切です。

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2013年6月22日 土曜日

2007年1月10日(水) 鳥インフルエンザの診断キット、開発に成功   谷口 恭

大阪府立公衆衛生研究所が、世界で初めて鳥インフルエンザの検査キットの開発に成功しました。鳥インフルエンザを検出するには、特殊な遺伝子診断をおこなう必要があり、これまでは特別な機関でのみ実施され、結果が出るまでに2日ほどかかっていました。

 今回、同研究所によって開発された迅速診断キットは、わずか10分で結果が得られるようです。まだ一般の病院やクリニックで使用される目途はたっていませんが、近いうちに市販される可能性もあり期待がもたれています。

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2013年6月22日 土曜日

2007年1月8日(月) ホワイトカラー・エグゼンプションに過労死の遺族が反対表明   谷口 恭

ホワイトカラー・エグゼンプションという言葉がマスコミをにぎわせるようになりました。ホワイトカラー・エグゼンプションとは、ホワイトカラー労働者に対する労働時間規制を適用免除(exempt)することで、これが施行されると、事実上、雇用者は従業員に対して労働時間の制限なく働かせることが可能となります。

 ホワイトカラーは、その働き方に裁量性が高く、労働時間の長さと成果が必ずしも比例しない部分があるため、労働時間に対して賃金を支払うのではなく、成果に対して賃金を支払う仕組みが必要、というのがこの制度の趣旨です。

 たしかに、効率をあげずにダラダラと仕事をして残業時間を稼ぐ従業員に高額を支給するのはおかしいという考え方は筋が通っています。雇用者の立場からすれば、ダラダラと残業をおこなう従業員よりも、むしろ効率よく仕事をおこないテキパキと仕事をこなす従業員に高額を支払いたいと考えるでしょう。

 したがって、この制度を推進する者のなかには、この制度により労働時間が全体として減少すると考えている者もいます。しかしながら、成果主義を取り入れすぎることにより、一部の者は不当に長時間労働を強いられてそれが過労死につながるのではないかとみる向きもあります。
  
 12月28日の共同通信によりますと、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を求める労働政策審議会分科会の報告書に対し、過労死の遺族らからは27日、「若い人の過労死も増える」との批判が相次いだそうです。

 過労死の遺族のひとりは次のようにコメントしています。

 「過労死は当時、中高年の問題だったが、最近は20代にも広がっている。(ホワイトカラー・エグゼンプションの導入により)過労死や自殺の増加を加速させるのではないか」

 労働政策審議会の報告書には、「自由度が高い」や「104日の休日取得」などの文言が並んでいます。これに対し、父親を過労死で亡くした遺族のひとりは、「働く人に優しい言葉にみえるが、父のことを思うと本当にそういう働き方があるのか疑問」と話しています。

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 医師の立場からこの制度をみたときに懸念するのは、残業や休日出勤をすべて「自由」とすることにより、自殺も含めた過労死が起こったときに、その原因を「仕事」や「会社」と特定することができにくくなるのではないかということです。

 過労死や自殺までいかなくても、過酷な労働のせいで、様々な身体症状や精神症状が出現している人は少なくありません。もしもあなたに思い当たることがあるなら、ひとりで悩まずに、気軽に医療機関に相談するようにしましょう。

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2013年6月22日 土曜日

2007年1月7日(日) インフルエンザ発症者がチラホラ   谷口 恭

12月28日の毎日新聞によりますと、札幌市地域衛生課は27日、市内の医療機関を受診した1歳女児と10代男性の計2人から、北海道では今冬初のA香港型インフルエンザウイルスを検出したと発表しました。全国では岐阜県に次いで2番目で、今年は全国的に発生が少ない冬になっています。

 私の所属するプライマリケア医のメーリングリストでも、東京と奈良でのインフルエンザの発生が各1名ずつ報告されています。

 昨シーズンの第1号は11月30日でしたから、今年の流行は例年に比べて遅いようです。

 しかしながら、インフルエンザが今年も流行するのはほぼ間違いないでしょうから、うがい・手洗いが重要であることには変わりありません。

 例年であれば、今からワクチン接種というのは遅すぎますが、今年はまだ間に合いそうです。おそらく今月の終わりにはある程度の流行を迎えているでしょうから、まだワクチンを接種していないという人は、遅くとも今月中旬までに接種するようにしましょう。

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2013年6月22日 土曜日

これから始めます

よろしくおねがいします

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2013年6月22日 土曜日

第125回 肉をもっと食べろ、なんて誰が言った? 2013/06/20

私は産業医や労働衛生コンサルタントとしての仕事もしていることもあって、従業員の健康管理を担当している人の相談に乗ることがしばしばあります。私が面談をするのはたいてい小さな企業で、健康管理を担当している人はほとんどが人事部か総務部の責任者です。

 従業員が数十人程度の企業であれば、全員の健康診断の結果を見せてもらい、注意点をアドバイスするようなこともあります。

 そこでよく思うのが、30~50代の労働者(特に男性)の肥満率が大変高い、ということです。企業によってはBMI(注1)が25以上のあきらかな肥満が過半数を超えているようなところもあります。担当者に話を聞くと「ここ数年で喫煙者は減ったが肥満は一向に減らない」と言われます。

 また、健診の結果を見せてもらっても、高脂血症や高血圧、糖尿病(またはその予備軍)、あるいはおそらく脂肪肝からきている肝機能障害を有している人が非常に多いという印象があります。

 現在の日本人(特に中年男性が多いが女性も少なくはない)の多くは、エネルギーを摂りすぎているのは自明のように思われます。

 ところが、です。この私の印象とは正反対に、「日本人は必要な栄養素(カロリー)を摂っていない。もっと肉を食べなければ健康になれない」という肉食推進派が(科学者の中にも)けっこういます。私が日々診察している患者さんのことや、企業の担当者との話の内容を考えると、「日本人は高カロリーのあぶらっこいものを控えるように」と言いたくなるわけで、私と肉食推進派では大きく意見が食い違うことになります。

 今回は、なぜこのように見解が異なるのか、の謎を解き、「肉は摂りすぎるべきでない」という結論を述べていきたいと思います。

 まず、肉食推進派がよく言うセリフに、「戦後、欧米の食文化が入ってきて肉を食べるようになったおかげで寿命が延びた」というものがあります。しかし、だから「肉をもっと食べろ」とするのは乱暴すぎます。

 たしかにある程度の肉は必要だと私自身も考えています。しかし、ほとんど肉など口にすることができなかった時代と肉が自由に食べることができるようになった時代の比較は極端すぎて無理があります。平均寿命が延びたのは肉によるタンパク質を摂れるようになったから、というのは事実ですが、それは「必要最低限の肉を摂れるようになったから」と考えるべきです。

 戦後平均寿命が延びたのは肉のおかげだけではありません。まず、食事以外の要因がかなり大きいのは間違いありません。つまり医療技術の進歩です。なかでも感染症の治療は飛躍的に向上しています。アジア・アフリカの発展途上国が今も平均寿命が短いのは、何も肉を食べていないからではなく、最大の要因は感染症の適切な治療と予防ができていないからに他なりません。

 食事の内容が変わったことで平均寿命が延びているのも事実ですが、これは肉のおかげだけではありません。肉が自由に食べられるようになったことも重要ですが、それ以上に重要なのは塩分摂取量が大きく減少したことです。戦後間もない頃の日本人の食塩摂取量は1日あたり20グラムに近かったと言われています。東北地方に限って言えば30グラム近かったのでは、と指摘されることもあります。現在は国際的にはまだまだ塩分過多ですが、それでも平成23年度の「国民健康・栄養調査」(注2)では10.4グラムまで減少しており、この減少が脳血管障害のリスク減少に関連があるのは明らかです。

 ですから肉食推進派のよく言う「戦後欧米型の食事が入ってきたから寿命が延びた」というのはあまりにも乱暴な理屈なのです。

 次に、肉食推進派がよく言う「現代の日本人はカロリー摂取が少なすぎる」という点をみていきたいと思います。平成23年度の「国民健康・栄養調査」によりますと、日本人の平均エネルギー摂取は1,840Kcalと、これを見ると大変少ないことがわかります。私が日々肥満者が多いと感じている40代の男性だけをとりあげてみても2,090Kcal、20代の女性でいえば1,595Kcalしか摂取していません。

 たしかにこの数字だけをみると、飢餓とは無縁の先進国だけで比べると、日本ほどエネルギーを摂っていない国民はいない、ということになります。しかし、この数字は本当に実態を反映しているでしょうか。

 入院したことがある人ならわかると思いますが、入院食というのは厳格にカロリーがコントロールされており、一番多いものでも2,000Kcal程度です。私は交通事故で1ヶ月近く入院していたことがありますが、一番多い2,000Kcalの食事を選択しても、全然足りませんでした。私には働き盛りの40代男性が、飲み会や接待でのアルコール摂取なども含めて1日2,090Kcalというのが信じられないのです。

 ここで具体的に何をどれくらい食べれば何Kcalくらいになるかを確認しておきましょう。厚労省の「肥満を防ぐ食事」のサイト(注3)によりますと、ハンバーガーセットが676Kcal、幕の内弁当が727Kcal、チャーハン755Kcal、春巻き358Kcal,ビール大ジョッキ320Kcalです。こんなに食べられないという人もいるでしょうが、このくらい毎日のように食べているという人もいるのではないでしょうか。これらの合計が2,836Kcalです。これにビールのおかわりをしたり、3時のおやつにドーナツ1つを食べたりすれば、3,000Kcalを超えます。

 私が厚労省の発表するエネルギー摂取量の数字を信じられない理由をもうひとつ挙げたいと思います。この数字が発表された平成23年度の「国民健康・栄養調査」では、肥満者の割合も報告されています。BMI25以上が肥満とされ算出されており、その肥満に相当するのが、男性の30.3%、女性の21.5%というのです。

 厚労省の調査にいちゃもんをつけるようですが、平均エネルギー摂取量が1,840Kcalで、女性の2割、男性の3割もが肥満、となるのはおかしくないでしょうか。つまり、カロリー摂取量が適切に算出されているのかどうか私には疑問に思えてならないのです。また、このカロリー摂取量が正しいとすれば、極端にエネルギーを摂っていない人(つまりやせている人)と摂りすぎている人の差が大きいということになり、これはこれで問題です。なぜなら、「やせ」は肥満と同様かそれ以上に健康上のリスクがあるからです。

 さて、肉食推進派が主張する別の意見を紹介したいと思います。それは、数年前から欧米でしばしば指摘される「少し肥満がある方が長生きする」という研究(注4)です。肉食推進派は「日本人はやせすぎだ。長生きするためにももっと肉を食べて体重を増やすべきだ」と言うときに、こういった研究結果を引き合いにだします。

 しかしこの見解を日本人に当てはめるのはあまりにも危険です。なぜなら、体質というか遺伝子が日本人(東洋人)と欧米人では異なるからです。つまり、欧米人は少々体重が増えても高血圧や高脂血症、糖尿病、あるいは肝機能障害を起こしにくく、日本人は簡単に起こしやすいのです。日本人のなかにも肥満があっても血圧や血液検査の数値に異常がない人がいるのは事実ですが、少しの肥満でもすぐに異常値を示す人がいるのもまた事実です。もちろん少しの異常値が出ただけで大騒ぎする必要はありませんが、「ちょっと太っている方が長生きする」というのを盲目的に信じるのはあまりにも危険です。

 今回の私の結論としては、「肉を食べ過ぎるのは危険であり、今一度自分の摂取しているカロリー摂取量を見直して肥満は防ぎましょう」というものですが、私は、菜食主義者でもなければ、厳格な食事療法をすすめているわけでもありません。むしろ肉は大好物です。

 次回は、肉を美味しく健康的に食べる方法についてお話したいと思います。

注1:BMIとはボディ・マス・インデックスの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った数字です。体重88キログラム、身長2メートルの人なら、88÷2の2乗=88÷4=22となります。

注2:平成23年度の「国民健康・栄養調査」については下記URLを参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002q1st-att/2r9852000002q1wo.pdf

注3:厚労省の「肥満を防ぐ食事」は下記URLを参照ください。 → 「現在は閲覧できません」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/himan/meal.html 

注4:詳しくは下記医療ニュースを参照ください。
医療ニュース2012年8月27日「太っているだけなら早死にしない?」

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2013年6月22日 土曜日

第124回 予防接種の料金が同じで何が悪いのか 2013/05/20

  2013年4月23日、公正取引委員会は、埼玉県吉川市と松伏町を管轄する吉川松伏医師会(会員数約80人)に対して立ち入り検査を実施したそうです。

 インフルエンザ予防接種の料金でカルテルを結んでいた疑いがある、というのが立ち入り検査の理由であると報じられています。公正取引委員会は、2004年にも、三重県の四日市医師会がインフルエンザの予防接種の価格の下限を決めた、として排除勧告を出しています。

 公正取引委員会のこの立ち入り検査に対し、マスコミは一斉に医師会を非難しました。例えば、ある大手新聞紙は、「身近な予防接種にまつわる不正に市民からは憤りの声があがる」、としています。

 たしかに、決して安くはない予防接種の料金ですから、「カルテルで価格を不当に釣り上げられていた」などと言われると「憤りの声」は出てくるでしょう。しかし、「医師会=悪者」という前提で取材をするからこのような<声>があがるのではないでしょうか。

 私自身はこのような報道に違和感を覚えます。

 そもそも予防接種をカルテルの対象にすることに対して疑問を拭えません。公正取引委員会の存在は市場社会になくてはならないものです。しかし、それは自由に価格を設定できるマーケットに限ってのことであり、医療に市場原理主義を持ち込むのは誤りです。

 もしも医療行為に公正取引委員会が入ってくるなら、保険診療が日本全国どこで受けても料金が同じ、という現状の制度に対しても「カルテルではないのか」という意見が出てくることになりかねません。

 予防接種は自由診療だからカルテルの対象に、保険診療は対象にならない、という意見もあるかもしれません。しかし、どこからどこまでが自由診療であるべき、というのは理論的に決められるわけではなく恣意的なものにすぎません。

 予防接種で言うならば、例えば、怪我をして土が傷口についたときや野良犬に噛まれたときなどに破傷風を防ぐために破傷風トキソイドという一種の予防接種をおこないますが、これは医師が必要とみなせば保険診療でおこなうことが可能です。

 一方、インフルエンザが流行りだしたからインフルエンザの予防接種をおこなう、というのは保険診療が認められず自費診療になる、というのが現状の制度です。

 いま例にだした破傷風とインフルエンザについて、よく考えてみると疑問が出てこないでしょうか。破傷風のように土が傷口に入ったり、野良犬に噛まれたりというのは、不可抗力であることも少なくないでしょうが、気をつけていれば防げる場合も多いと言えます。そして人から人への感染はありません。一方で、インフルエンザウイルスというのは感染力が強く、他人の咳やくしゃみでうつりますから繁華街や駅など人の多いところで簡単に感染します。そして感染すると今度は他人へ感染させる可能性がでてきます。
 
 ということは、破傷風よりもインフルエンザのような感染症こそ、できるだけ多くの人がワクチンを接種して地域全体で感染者を減らしましょう、という理論が成立するわけです。

 実際、インフルエンザワクチンというのは、感染することを防ぐというよりも、重症化を防ぐことと、他人への感染を防ぐことを目的としています。ここは誤解している人が多いので念を押したいと思います。インフルエンザウイルスのワクチンは確かに接種していても罹患することがあります。この点を強調して、さらに稀な副作用のことを持ち出してインフルエンザワクチンに反対する人がいますが、たいていはそういう人たちの主張は論点がずれています。

 インフルエンザワクチンは接種していても罹患することがありますし、また重症化を防ぐことも100%できるわけではありません。しかし重症化する可能性が減るのは事実であり、他人へ感染させる確率も下がるのです。つまり、インフルエンザワクチンというのは自分の身を守るためというよりもむしろ「他人への感染を予防する」ことが目的なのです。

 一方、破傷風ワクチンというのは、土が傷口に入るとか、野良犬に噛まれるとか特殊な環境で生じることですから、インフルエンザに比べると予防しやすいものです。さて、インフルエンザと破傷風、公的なお金を使って防ぐことを考えるべきなのはどちらでしょうか。もちろん人から人に感染するインフルエンザとなるわけですが、破傷風トキソイドは保険診療で、インフルエンザワクチンは自費診療で、というのが現状なのです。

 もちろん私は破傷風トキソイドを保険診療から外せ、と言っているわけではありません。その逆で、インフルエンザも公費で、可能であれば全額公費で(つまり市民負担はゼロで)すべきではないか、ということを主張したいわけです。実際、市町村にもよりますが、高齢者と乳幼児は公費負担のある自治体が多いのです。

 今のところ医療者も含めて、公正取引委員会が予防接種の料金を監視するのはおかしい、という意見を主張する人がいないのが私には不思議で仕方がないのですが、私には各医療機関で予防接種の料金が異なる方がよほど不自然に思えてなりません。実際、市民も混乱しています。「○○クリニックは水で薄めてインフルエンザワクチンを安くしているらしいですよ」、という言葉を私は患者さんから聞いたことがあります。

 マスコミは医師会を叩くのが大好きなようで、例えば下記はある大手新聞の記事の一部です。

 医療機関の中には、ワクチン接種を「来院経験がない人に営業する絶好の機会」と考え、接種料金を安く設定するケースもあるという。

 これを書いた人は医療のことをまったくといっていいほどわかっていません。そもそも医療機関に「営業」という概念はありませんし、医療機関としては「来院経験がない人にはあまりワクチンをうちたくない」と考えることが多いのです。特にインフルエンザのワクチンは、先に述べたように、接種しても感染しうること、重篤な副作用はほとんどないとはいえ接種部位の腫れや痛みが長引くことがあること、卵アレルギーのある人には充分な説明が必要なこと、もともと誤解の多いワクチンでありそのマインドコントロールを解くのに時間がかかること、などがありワクチン1本でも相当の時間を必要とします(注1)。

 お金の観点で言うなら、これだけ時間をかけて説明をおこない、副作用が生じたときの対処まで責任を持ち、徴収料金は3~4千円程度です。徴収料金から、ワクチンの仕入れコスト、注射器と注射針の仕入れ値、看護師の人件費、医師の人件費(問診は看護師でなく医師がしなければなりません)を差し引いた分が医療機関の利益になります。これが安くないという意見もあっていいと思いますが、一方で保険診療の初診代はそれだけで2,700円です。しかも診察代というのは医師の人件費以外のコストがかかりません。つまり、インフルエンザワクチンというのは経営的な観点からの利点は<ほとんどないに等しい>のです。それに、いったん安くしすぎると次の年から値上げします、というわけにもいきません。

 医療機関はサービス業ではありません(注2)。個人の病気を治療し予防につとめてもらうよう啓発するのが業務であり、また、公衆衛生に貢献する、つまり地域社会全体での疾病の罹患率を下げる、そしてそのためにワクチン接種をおこなう、というのもミッションのひとつです。つまり、医療機関とは、サービス業ではなく一種の「公的機関」のような存在なのです。

 ワクチンの料金が不当に高いのであればそれは問題でしょう。しかし、そうであるならば疑問を呈する矛先は、医療機関や医師会ではなく、ワクチンを製造している製薬会社や、インフルエンザワクチンを保険診療として認めない、あるいは公費負担をおこなわない行政であるはずです。

 マスコミにはそのあたりのことをしっかりと考えてもらいたいと思います。また、インフルエンザワクチンに関する報道をおこなうなら、先に述べたように、ワクチンの目的は自らが感染しないようにすることではなく重症化を防ぎ他人への感染を予防するということや、ワクチンのリスクはまったくのゼロではないものの有益性が高いこと、公衆衛生学的にはできるだけ大勢が接種すべきであること、そのためには行政がいくらかの負担をすべきであること、といった科学的・社会的に正しいことを市民にわかりやすく啓蒙してもらいたいものです。

注1 ちなみに太融寺町谷口医院では、インフルエンザのワクチン対象者は「過去に一度でも受診したことのある人、もしくはその家族のみ」とさせてもらっています。誤解を防ぐために付記しておくと、これは、儲けのないインフルエンザワクチンをやりたくない、と考えているからではありません。インフルエンザワクチンというのは数に限りがありますから、ひとつのクリニックにそれほど数が回ってこないのです。ひとり分が貴重ですから、日頃から当院にかかっている人(及びその家族)を優先させたいのです。ただし、他にかかりつけ医をもっていなくて、当院が自宅もしくは職場から近い方は個別に相談に応じています。

注2 我々医療を供給する側の者は医療行為をサービス業とはまったく考えていません。(そのように考えている医療者もいるそうですが) 一方、医療機関はサービス業、と考えている患者さんは少なくありません。このために生じる誤解やトラブルというものがあります。詳しくは、下記コラムを参照してみてください。

参考:メディカルエッセイ第68回(2008年9月)「「医療はサービス業」という誤解」

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