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2013年7月24日 水曜日
2009年6月8日(月) 日本脳炎新ワクチン、勧奨中止は継続
副作用の恐れから従来の日本脳炎ワクチンが使いにくくなっていたなかで、新しいワクチンがようやく承認されたというニュース(下記参照)は以前お伝えしましたが、依然「勧奨中止」が継続されることになりました。
新ワクチンによる予防接種は6月2日から始まっています。日本脳炎は夏に流行しますからタイミングとしてはちょうどいいといえるでしょう。4年ぶりの再開というかたちとなります。当初は30万人分が製造され、生後6ヶ月から7歳半までの未接種者のなかで希望者を対象とすることになっています。
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「勧奨中止」の措置が継続されるという点が気になります。厚生労働省はこの理由として「副作用のリスクが皆無ではない」としています。しかし、そもそも従来のワクチンが勧奨中止となったのは副作用が発生したからであり、新しいワクチンも副作用の可能性があり勧奨中止となるならば、いったいどこがどう違うの?と疑問に思ってしまいます。
ワクチンの副作用は完全にはゼロにできませんが、従来のワクチンと新しいワクチンのリスクがどのように違うのかについては何らかの説明がほしいように思います。
しかし、ワクチンのリスクが強調されすぎてしまい、日本脳炎ウイルスの危険性が軽視されるようなことがあってはなりません。
(谷口恭)
参考:
はやりの病気 第63回 「日本脳炎を忘れないで!」
医療ニュース 2009年2月27日「日本脳炎の新ワクチンがついに承認」
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月11日(木) 職場のストレスで「心の病」が過去最多
職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり、2008年度に労災認定を受けた人は269人・・・。
これは6月8日に厚生労働省が発表した報告です。2007年は268人で過去最多でしたから、最多を更新したことになります。
このうち、過労自殺(未遂も含む)は66人で、こちらは2007年度より15人減少していますが、依然高い水準を維持しており喜んではいられません。
精神疾患で労災認定を受けた人を年代別でみてみると、最多が30代の74人、20代は70人、40代は69人で、20~40代で全体の約8割を占めることになります。
職種でみてみると、SE(システムエンジニア)や医師などの「専門的・技術的職業」が69人で最多で、工場で働く労働者など「生産工程・労務作業者」が51人、「事務」45人と続きます。
精神疾患を理由とした労災申請者数は927人で、こちらは前年度比25人減となっています。
また、過労が原因として労災認定されたのは377人で、前年度比15人の減少です。過労死は前年度比16人増!の158人で、これは2002年度の160人に次いで多い数字となります。申請者数は889人で、前年度比42人減です。
労災認定された377人のうち、長時間労働が主因とされたのは361人です。厚生労働省では、1ヶ月間の時間外労働が80時間以上のケースを「過労死ライン」として認定基準にしていますが、100時間以上が207人にものぼり、さらに160時間以上も24人となっています。
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精神疾患が理由の労災申請も、過労が原因の労災申請も前年度比減となっています。これは実態を反映しているのでしょうか。それとも、過酷な労働を強いられているのに申請できない人が大勢いることを示しているのでしょうか・・・。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2008年5月26日「過労自殺は過去最悪、精神疾患は3割増」
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月11日(木) やはり長生きするのは太り気味か…
成人後に太ると長生きし、やせると早死にする!、という従来の概念をくつがえすような研究が発表されたことを以前お伝えしました。(下記医療ニュース参照)
その結果を裏付けるような別の研究が厚生労働省より発表され話題を呼んでいます。(報道は6月10日の読売新聞)
この調査は、宮城県内の40歳以上の住民約5万人を対象とし、12年間健康状態などを調べています。過去の体格も調べ、体の太さの指標となるBMI(下記注)ごとに40歳時点の平均余命を分析した結果、普通体重(BMIが18.5以上25未満)が男性39.94年、女性47.97年なのに対し、太り気味(同25以上30未満)は男性が41.64年、女性が48.05年と長命という結果がでています。しかし、さらに太って「肥満」(同30以上)に分類された人は男性が39.41年、女性が46.02年と、普通体重の人よりわずかに短い数字となっています。
一方、やせた人(BMI18.5未満)は男性34.54年、女性41.79年にとどまっています。この調査では、病気でやせている例などを統計から排除しても傾向は変わっていません。
これらをまとめると、「やせた人」は「太り気味の人」より6~7歳も早く死ぬという結果になります。
この研究では医療費についても言及されています。「肥満の人」が40歳以降にかかる医療費の総額は、男性が平均1521万円、女性が同1860万円で、どちらも「やせた人」の1.3倍かかっていたことになります。
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「やせた人」の医療費がかからないのは、早く死ぬからでしょうか。それにしても、この調査結果は衝撃的です。
最も長生きする「太り気味」ではBMIが25~30とされています。仮に身長170cmの男性がいたとしてBMIが25~30ということは、体重が72.25~86.7kgとなります。身長160cmの女性であれば、体重が64kg~76.8kgということになります。このような体型の男女を想像したときに、やはり常識的には「もっとやせましょうよ」ということになるのではないでしょうか。
太融寺町谷口医院にも「減量しましょうね」と毎回のように助言している患者さんがたくさんいます。その患者さん達に対して、これから私は何と言えばいいのでしょうか・・・。
注:BMIはBody Mass Indexの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。例えば、体重88キログラム、身長2メートルの人であれば、88÷2の2乗=88÷4=22となります。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2009年4月30日「太った方が長生きする!?」
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月20日(土) 日本のHIV、増加傾向は変わらず
6月17日、厚生労働省のエイズ動向委員会は、2008年に新たに報告されたHIV感染者とエイズ発症者の確定値を公表しました。(速報値公表時のニュースは下記参照)
HIV感染者は1,126人(2007年は1,082人)、エイズ発症者は431人(2007年は418人)で、ともに過去最多を更新しています。さらに、6年連続で過去最多を更新していることになります。
2008年末までの国内感染者累計は10,552人、発症者累計は4,899人となります。
同委員会は、同日、今年(2009年)1月から3月までの国内で新たに報告された数値も公表しています。報告によりますと、新たにHIVに感染した人は249人(これは過去8番目となります)、エイズ発症者は124人でこれは過去2番目に多い数字です。
エイズ発症者の内訳をみてみると、同性間の性的接触が61人で最多、異性間の性的接触は39人となっています。年代では30代が51人、40代が30人といずれも前年同期より増加しています。
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最近の傾向として、感染や発症が確認されている人の年齢が上がってきています。50代で新規に感染が判るケースも増えており、検査の対象者を増やすことも検討すべきでしょう。
(谷口恭)
参考:医療ニュース
2009年2月24日「日本のHIV・AIDS、6年連続で過去最多」
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月25日(木) 謎の食中毒が増加
食後数時間で下痢や嘔吐をきたすものの、原因物質(病原体)が特定できない食中毒がここ数年間で増加しているようです。
この謎の食中毒はこれまでのところ、首都圏や瀬戸内海沿岸、北陸地方などで確認されており、地域の保健所は「(原因が分からないので)再発防止策の取りようがない」と対応に苦慮しているようです。(報道は6月22日の読売新聞)
この「謎の食中毒」をまとめてみましょう。
まず、主症状が下痢や嘔吐で、発熱や発疹などは出現しないようです。2つめに、食後、発症までに平均4~5時間程度だそうです。これは、一般の微生物による食中毒に比べると発症時間が短いと言えます。3つめに、この食中毒は軽症であり回復も早いようです。
これまで、保健所などが残飯や吐しゃ物を検査しても原因となる微生物や毒素は検出されておらず、未知の病原体の可能性を検討しなければならないかもしれません。
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症状が軽いために実際には届出をしていない人も少なくないでしょう。
現在は、すっかり有名になった下痢・嘔吐をきたすノロウイルスは昨年(2008年)の食中毒の原因病原体で最多でした。しかし、ノロウイルスの検査方法が確立し統計に加えられるようになったのは1997年からです。では、ノロウイルスは1997年以前にはなかったのかというとそんなことはありません。
ということは、最近流行している「謎の食中毒」も、数年後には誰もが知っている感染症となっているかもしれません。
(谷口恭)
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月25日(木) 和歌山で野兎病感染
2008年7月、和歌山県内で初めての野兎病(やとびょう)の感染が確認されています。
和歌山県古座川町在住の60代の女性がダニにかまれ感染し、最初に診療にあたった診療所で採取した血液の検査から野兎病が発覚したようです。(報道は6月20日の毎日新聞)
女性は抗生物質の注射などで翌日には快方に向かったそうです。
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野兎病は、病気の名前から想像できるようにノウサギから感染します。以前の日本にはウサギを食べる習慣がありましたから、ウサギの血液に触れることによって感染することが多かったのです。北海道、東北、関東地方での報告が多いようです。
しかし、ノウサギを食べる人は現在ではほとんどいませんから、最近では、野兎病に罹患する人はあまり多くありません。(私も診察したことがありません)
感染経路はノウサギの血液などに直接接触する以外にも、今回の報道にあるようにダニに刺されることによる感染が考えられます。つまり、ダニが野兎病の病原体(野兎病菌)を吸血することで体内に取り込み、ヒトに刺すときにその菌をヒトの体内に注入しているというわけです。
しかし、以前(戦後あたりの時代)の野兎病が多かった時代ですら、和歌山での報告はなかったわけで、野兎病自体が減少しているこの時代に和歌山で発見されたということは注目に値します。
つまり、野兎病菌を保有しているダニが全国的に増殖している可能性があるのではないか、私はそう感じています。以前からこのサイトで何度か取り上げているようにダニに刺されることには注意を払わなければなりません。ライム病、日本紅斑熱、恙虫病、これらはいずれもダニに刺されることが原因になります。
参考:
医療ニュース 2008年5月19日「日本紅斑熱に注意」
医療ニュース 2008年8月7日「宮崎の女性がダニに刺されて死亡」
(谷口恭)
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月29日(月) 大阪、20代男性が結核で死亡
大阪市中央区の飲食店でアルバイトをしていた20代後半の男性が結核で死亡し、同僚や友人ら20~30代の男女9人も感染していることが発覚しました。
これは6月25日に大阪市が公表した情報で、各マスコミが報じています。
現在のところ、飲食店の客への感染は確認されていないようです。
大阪市保健所によりますと、死亡した男性は一人暮らしで、2004年頃からその飲食店の厨房で勤務を開始したそうです。昨年(2008年)の9月以降、たびたび体調を崩し、12月には勤務ができなくなるほど容態が悪化し退職となったとのことです。2009年2月、救急搬送された病院で結核と診断され治療を開始されましたが搬送13日後に死亡しています。
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今のところ、死亡した男性の同僚らで感染が発覚した9人は症状がないそうです。
結核は決して過去の病気ではありません。若い人にもみつかることがときどきあります。長引く咳、継続する倦怠感や疲労感、夜間の発熱や寝汗、・・・、気になることがあれば結核を疑ってみるべきかもしれません。
参考:
はやりの病気 第68回(2009年4月)「結核、大丈夫ですか?」
(谷口恭)
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|2013年7月24日 水曜日
2009年6月29日(月) HTLV-1が大都市で増加
HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)の調査を厚生労働省の研究班が約20年ぶりに実施し、その結果、大都市圏での感染者が増加していることが分かりました。(同省の発表は6月27日、報道は翌日の日経新聞など)
まず、HTLV-1の国内の感染者はおよそ108万人で、厚生省(当時)の1988年から1990年の調査時の120万人と比べ、大きな差はありません。
特筆すべきなのは感染者の居住地域です。以前は九州や四国の山岳地方に圧倒的に多く、そのため一部の医療者はこの感染症を「風土病」とみなしていたほどです。
感染者の地域別割合をみていくと、九州が前回調査の50.9%から41.4%に減少しています。一方、関東は17.3%(前回10.8%)、中部8.2%(前回4.8%)、近畿20.3%(前回17.0%)と大都市圏での増加が目立ちます。
**********
HTLV-1は、HIVと同じように逆転写酵素を持つRNA型のウイルスです。HIVがこれだけ有名なのに、なぜHTLV-1が世間ではそれほど注目されていないのか、私はこのことが不思議でなりません。
HTLV-1は、感染経路としては母子感染が最多で、特に母乳からの感染が多いと言われています。しかしながら、血液感染や性感染でも感染しうるものであり、HIVと同じタイプのウイルスであり、発見はHIVよりも早く、感染者がHIVとは桁違いに多いわけですから(HIVの国内罹患者は15,000人程度、HTLV-1は100万人以上)、HIVと同じかそれ以上に注目されるべきではないでしょうか。
参考:
はやりの病気第47回(2007年7月)「誤解だらけのHTLV-1感染症(前編)」
はやりの病気第48回(2007年8月)「誤解だらけのHTLV-1感染症(後編)」
(谷口恭)
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|2013年7月23日 火曜日
2009年7月6日(月) 結核新規患者は9年連続の減少だが・・・
厚生労働省は6月29日、2008年に新たに結核患者として登録された人は24,760人であることを発表しました。これで9年連続の減少ということになります。
しかしながら、減少幅はこの9年で最も小さく、下げ止まりの様相を呈しています。
少し詳しくみてみましょう。まず、2008年の患者数は前年から551人の減少ということになります。罹患率(人口10万人あたりの年間患者発生率)も前年から0.4ポイントの減少となりますが、罹患率が減少に転じた2000年以降で、対前年比の減少幅は最も小さいことになります。
**********
つい最近も大阪の若い男性が結核で死亡していますし、医療現場にいれば結核は本当に減っているのかな、と疑問に感じることがあります。おそらく、感染していても気づいていない人が大勢いるのでしょう。
参考:
はやりの病気 第68回(2009年4月)「結核、大丈夫ですか?」
医療ニュース 2009年6月29日「大阪、20代男性が結核で死亡」
(谷口恭)
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|2013年7月23日 火曜日
2009年7月8日(水) 15%もの親が幼児にサプリメント
幼稚園や保育所に通わせている保護者の15%が健康食品のサプリメントを子どもに与えている・・・。
これは、国立健康・栄養研究所が実施した調査で分かったことです。(報道は7月6日の日経新聞他)
この調査は2007年5月から9月に、青森、山形、茨城、栃木、埼玉、千葉、香川の7県の幼稚園や保育所計21カ所で実施されています。子どもの年齢は6歳までで、保護者2,125人のうち1,533人から回答を得ています。
その結果、口の中で溶ける錠剤や粉末、カプセルなどのサプリメントを、全体の15%に当たる228人が子どものため利用したことがあると答えています。
利用者のうち68%の154人が「ビタミンやミネラルのみ与えている」と回答していますが、32%の74人は「そのほかも利用」と答え、33人は脳の発達に良いなどと宣伝されるドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する魚油系のサプリを利用していることが分かりました。また、プロテイン、キシリトール、ハーブなどの利用もあったようです。
この調査を実施した国立健康・栄養研究所は次のようにコメントしています。
「幼児への有効性や安全性などを検証したデータは乏しい。身体に必要な成分でも安易に与え続けると過剰摂取につながり、幼児に有害な作用が出る恐れがある」
*********
マスコミの報道をみてみると、「身体に害を与えるかもしれないものを安易に子供に与えすぎではないか」という観点から論じられているように思われますが、保護者の6割は「栄養補給」が利用目的と回答しています。つまり、日々子供に与えている通常の食事だけでは不十分と親が考えていることが分かります。
この理由として、(長時間働かなければならないから)料理をする時間がない、安心できる食材が手に入らない、などが考えられます。ということは、単に「サプリメントの過剰摂取に注意してください」と言うだけでは何も解決しないことになります。
一方、サプリメントを供給する側にも大きな問題があります。サプリメントは医薬品ではありませんからコンビニやインターネットで簡単に買えます。利益重視の企業のなかには、「体脂肪が減る」「がんに効く」「身長が伸びる」などと宣伝することもあるようです。
国民生活センターには、サプリメントの表示や販売手法をめぐって、昨年だけで約1,300件の相談や苦情が寄せられており誇大広告は増加しています。公正取引委員会も今年の2月、「体臭を消す」と謳っていたサプリメントの販売会社7社に「効果に根拠がない」という理由で排除命令を出しています。
(谷口恭)
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