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2022年11月27日 日曜日

2022年11月27日 便秘が認知症のリスク

 アルツハイマー病や軽度認知障害(これをMCIと呼びます)があって、便秘があれば認知機能低下のスピードが早くなる……。

 これは日本の研究で、医学誌「CNS Neuroscience & Therapeutics」2022年8月8日に「アルツハイマー病の進行に対する便秘の影響:後ろ向き研究(Impact of constipation on progression of Alzheimer’s disease: A retrospective study)」というタイトルで掲載されました。

 研究の対象者は2015~2020年に東北大学病院加齢・老年病科を受診した合計84人(年齢の中央値77.4歳、女性が57.1%)の患者です。アルツハイマー病は45.2%(38人)、残りがMCIです。便秘があった人が20人で、なかった人が64人です。認知機能の評価は複数のツール及びMRIでもおこなわれています。

 認知機能を評価する方法に「ADAS-Cog」と呼ばれるテストがあります。これは医師や心理師が時間をかけて様々なテストをおこない認知機能の評価をします。便秘があってもなくてもこのテストの成績は低下していきましたが、便秘があるグループはないグループに比べて低下する速度が2.74倍も速かったのです。

 またMRIの評価においても差がでました。脳が老化すると「白質病変」と呼ばれる変化がMRI上に現れます。これが拡大していけば認知機能が低下すると考えられています。その低下スピードが、便秘があれば1.65倍速いことが分りました。

 この研究では便秘以外の要素も調べられています。心疾患、糖尿病、脂質異常症の有無などで認知機能の進行に差があるかどうかが検討されています。結果は「ない」でした。この研究では「便秘の有無」のみが認知機能低下の速度に関連していたのです。

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 考えねばならないのは「便秘があるから認知症が進行した」のか「認知症が進行したから便秘が悪化した」のかですが、研究の開始時点で便秘がなくてその後起こったという記載が論文にありませんから、「元々便秘がちな人は認知症にならないように注意すべき」と言えます。

 認知症は長生きすれば多くの人に起こるわけですから、若いうちから便秘対策をすべきということは言えるでしょう。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2022年11月24日 木曜日

第231回(2022年11月) 誤解だらけの慢性疲労症候群(ME/CFS)

 「慢性疲労症候群」という言葉を当院の患者さんから、あるいは未受診の人からのメール相談で聞く機会が増えています。

 谷口医院では開院した2007年から「慢性疲労症候群ではないでしょうか」といって受診する人が少なくありませんでした。当院は元々「他で診断がつかなかった人」を積極的に診ていましたから、どこの医療機関からも見放されたという人がかなり遠方からも受診されていました。

 今年(2022年)の年明けあたりから、慢性疲労症候群に関する問い合わせが急増しています。原因は新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」)です。コロナに感染し、後遺症が残ったとき、それが目安として半年を超えると、あたかも従来の慢性疲労症候群そっくりになります。このことに私が気付いたのが2020年の後半、その後次第にそのように思われる患者さんを診る機会が増え、「長引いたコロナ後遺症は慢性疲労症候群そのもの」と確証したのは21年の終わり頃です。

 そして、これを文章にまとめて公開したのが、毎日新聞「医療プレミア」でのコラム「新型コロナ 後遺症の正体は「慢性疲労症候群」か」、日経メディカル「ポストコロナ症候群とME/CFSの共通性」です。本サイトの「はやりの病気」でも紹介しました。尚、慢性疲労症候群は、最近、筋痛性脳脊髄炎 / 慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome:ME/CFS)と呼ばれることが多くなってきため、ここからはME/CFSで統一します。

 「長引くコロナ後遺症がME/CFSではないか」と考えたのは、私の純粋な思いつきというわけではありません。なぜなら、以前からいくつかの感染症では、その感染症が治ってしばらくしてからも、倦怠感や抑うつ感が持続する事例が認められていたからです。それについては、上述の「はやりの病気」で紹介しましたから、ここでは繰り返しません。

 今回は「間違ったME/CFSの診断」について述べたいと思います。これは、「患者さんは自身をME/CFSだと思っているけれどそうではない」という事例のことで、このような患者さん(ほとんどは初診)が急増しています。

 まず、ME/CFSには「診断基準」というものがあるのですが、これを理解されている人がほとんどいません。どのような疾患であっても、きちんと診断をつけることは非常に大切で、診断基準をなおざりにするわけにはいきません。

 「厚生労働省(旧厚生省)慢性疲労症候群診断基準」というものがあり、ウェブサイトでも公開されています。残念ながら、後述するように、このページはちょっと見づらいので、ここで分かりやすく解説していきます。

 まず、ME/CFSであることを示すには2つの「大基準(大クライテリア)」を満たさなくてはなりません。以下の2つです。

A:生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)

B:病歴、身体所見。検査所見で表2に挙げられている疾患を除外する

 このページが分かりにくい理由の一つが「表2に挙げられている疾患」がどこにも書かれていないことです。ただ、これら「疾患」をひとつひとつ挙げることにはあまり意味がないので、ここは端折りたいと思います。

 Aを確認しましょう。症状を有する期間は「少なくとも6ヶ月」です。よって、例えば「コロナ感染後2ヶ月たっても倦怠感が続く」は基準を満たしません。もちろん、その倦怠感が6か月以上持続する可能性もあるわけですが、この時点では(後述するように)ME/CFSだと思い込むべきではありません。「50%の期間」というのは、「その6か月のうち、元気になる日や週があってもME/CFSの可能性はある。ただしトータルでみれば6か月のうち3か月以上は症状がなければならない」という意味です。

 Bをみてみましょう。「病歴」というのは、他の病気でないことを示さなければならない、という意味です。倦怠感と抑うつ症状をもたらす疾患は多数あります。甲状腺機能低下症、膠原病、アジソン病、悪性腫瘍、結核、HIV感染症などが相当します。尚、結核やHIV感染症は「感染後、倦怠感や抑うつ症状が続く」には合致しますが、これらは「感染中」であって、「治療後も症状が持続」とは異なりますからME/CFSには含めません。また、うつ病や統合失調症も除外する必要があります。

 ME/CFSを疑って受診した患者さんに「あなたの病状はME/CFSではありません」と伝えねばならない最大の理由は、上記Bのなかの「検査所見」です。診断基準は次の3つを満たしていなければなりません。これは自己評価ではなく、必ず医師が確認しなければなりません。しかも2回以上確認することが必要です。

#1 微熱
#2 非浸出性咽頭炎
#3 リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)

 #1の「微熱」とは一般的には37.5度前後の熱を指しますが、患者さんのいくらかは36度台後半くらいでも「自分の平熱は低いんです。だからこれは微熱なんです!」と自身の主張を譲らない人がいます。私の場合、これは患者さんの考えを尊重するようにしています。

 #2の「非浸出性咽頭炎」は、喉が赤く腫れていれば該当します。「非滲出性」というのは咽頭(及び扁桃)に、白い苔みたいなものや膜がないことを意味します。「非浸出性咽頭炎」を他覚的に判定するのはときに困難で、見た目がまったく赤くなくても、患者さんが「痛いんです」と言われれば否定はできません。

 #3の「リンパ節の腫大」は客観的に評価することが可能です。それなりに経験のある医師が触診すれば分かります。もしも医師の触診では異常がなく、患者さんが「腫れています」と主張するときには、超音波検査をすれば簡単に証明することができます。超音波検査を実施して腫大していないことがはっきりしても、「そんなはずはありません。腫れているんです」という人がときどきいますが、超音波検査でも認めなければリンパ節腫大があるとは言えません。尚、診断基準にはリンパ節の部位として「頸部、腋下リンパ節」と書かれているだけで、これが両方腫れている必要があるのか、片方だけでいいのかは記載されていません。私の場合は、どちらかに腫脹が認められれば「腫大あり」と判断しています。

 長々と説明してきましたが、私が言いたいのは「リンパ節腫大が認められなければME/CFSではない」ということです。これが、世間にはほとんど知られておらず誤解がはびこっています。もっとも、そんな細かい診断基準が広く知れ渡っている方が不自然であり、一般の方が知らないのは当然です。ただ、自称「ME/CFS」の人たちが急増しているのは異様な事態です。「医師によるリンパ節の評価なくしてME/CFSの診断はできない」という点は非常に重要です。

 なぜならME/CFSの診断がつくのとつかないのでは生活上の注意点が大きく異なるからです。ME/CFSの診断がつけば(もしくは疑われれば)、規則正しい生活は重要ですが、散歩程度の運動もすべきでなくなります。他方、ME/CFSでなければ(あるいはない可能性が高ければ)むしろ、できる範囲で身体を動かしていくことが治療につながります。

 ちなみに、ME/CFSで身体を動かすと余計に倦怠感が強まることをpost-exertional malaise (PEM/運動後倦怠感)と言い、身体を動かして出現する倦怠感を「crash」「relapse」「collapse」などと呼びます。そして、SNSやネットで情報が飛び交っているからなのか、まだコロナに感染して1~2ヶ月程度しか経っていないのに「昨日はクラッシュが起こりました」などと主張する患者さんが最近目立っています。

 どのような病気でも正しい「診断」をつけることは極めて重要です。医師がいつも正しいわけではなく、自分自身で病名を推測するのは大切なことではありますが、診断基準に基づいた医師による客観的な評価は不可欠なものです。そして、正しい診断をつけることにより、結果として早く回復する可能性が高まるのです。

 ただ、ME/CFSの場合、効果的な治療法がほとんどないのが現状なのですが……。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2022年11月11日 金曜日

2022年11月 人類はもうすぐ確実に滅ぶのだから

 私が1つ目の大学に通っていた頃、どの先生の講義だったのかはもはや記憶にないのですが、「宇宙船地球号」という言葉を学びました。

 「宇宙船地球号」とは、もともとは「地球上にある資源は限られているが故に無計画に資源を開発してはならない」という趣旨を表現した言葉だったはずです。しかし、私の記憶が正しければ、講義のなかでその先生は「我々は同じ人類であり、戦争などしている場合ではなく、仲良くしなければならない」というようなことを話されていたように記憶しています。ただ、私の記憶はいい加減ですから、その後「宇宙船地球号」というこの言葉だけが脳内を駆け巡り、私が自分の記憶に対して勝手な解釈をしているだけかもしれません。

 さて、世界史あるいは日本史を振り返り、「戦争」というものを改めて考えてみたときに、私が最も重要だと思う2つの「戦争の原則」があります。ひとつは「人類にとって、平和が正常なのではなく、むしろ戦争しているのが”自然”である」、もう1つは「敵の敵は見方」という原則です。

 そしてこの2つの原則から「地球上から戦争をなくす方法」を導くことができます。それは「地球外生命体に地球を攻撃してもらう」です。もちろんそんなことはあり得ませんが、地球外生命体を「人類を滅ぼす脅威」と置き換えれば、その「脅威」が他にないわけではありません。

 例えば「核」は「人類を滅ぼす脅威」に相当します。「核抑止力」には様々な議論がありますが、核の保持の良し悪しは別にして、「世界で核がいくつも使われれば地球が滅びる」のは事実です。だから、どれだけ非道な国家のリーダーであっても、人間を標的とした核のボタンはそう簡単には押せないわけです。

 しかし、世界のいくつかの国が核を持っているのにもかかわらず、現実世界には一向に平和が訪れません。なぜなのでしょう。それは「誰も核のボタンを押すことはないから」という暗黙の前提で世界の人々が暮らしているからです。もしも、数千発の核を持つX国が、1か月後に、世界の大都市に一斉に核ミサイルを放つことが決定したとしましょう。すると、X国以外の大国は必ず一致団結します。「マスクを外していいか」「コロナワクチンをうつべきか」などに気を使っている場合ではなくなります。

 実際には、自国以外のすべての国を亡ぼすことを考えるX国は存在しませんから、こういった心配をする必要はなく、戦うことが大好きな人類は”安心して”戦争に勤しんでいるというわけです。人間同士が仲良くなることを諦めている人たちは、街で「マスク反対!」と叫び、「反ワクチン派」と「ワクチン肯定派」はSNSで激しい言葉で罵り合っています。

 では核以外に「人類を滅ぼす脅威」はないのでしょうか。

 それはあります。というよりも、人類が滅びるのは絶対に避けられない真実です。ともすれば、我々はこの世界が未来永劫続くような錯覚に陥りがちですが、人類、そして地球がいずれ滅びるのは確実です。

 では、人類が滅びるのはいつなのでしょうか。Wikipediaによると、「楽観的な推測」として、哲学者のジョン・レスリーが「500年後に人類が存続している可能性は70パーセントという予想を出している」としています。

 楽観的な推測でこれなら、100年程度で消滅する可能性もあるのでしょうか。地球温暖化を研究するIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)の2018年の報告では、「早ければ、2040年前後までに地球は壊滅的な状態になる」とされています。The New York Timesによると、2040年までに大気が産業革命前のレベルより1.5℃上昇し、その結果、海岸線が水没し、干ばつと貧困が激化します。

 IPCCは世界中の地球温暖化を研究する第一人者からなる組織です。ただ、社会ではこの報告はあまり注目されていません。その証拠に、「死ぬまでの残りの20年をどのように過ごそうか」という声がほとんど(というよりまったく)聞こえてきません。

 では人類が滅びるのはいったいいつなのでしょうか。これを正確に予測するのが困難なのは不確定要素が多いからです。例えば、今後核を使う国がでてくるか否か、地球温暖化に効果的な対策をとることができるかどうか、世界全体での人口抑制に成功するか、といった問題に加え、医療問題も関わります。マラリアのワクチン開発は成功するか、多剤耐性結核に有効な抗菌薬は開発されるか、新型コロナウイルスのようなパンデミックが再び起こるか、耐性菌を克服できるか(2050年には薬剤耐性菌で1000万人が死亡し、世界の死因の第1位になると予測されています)などによって結果が大きく異なってきます(注)。

 1000年後には人類は滅亡しているでしょうか。『シルクロード全史』が世界的ベストセラーとなった英オックスフォード大学の歴史学教授ピーター・フランコパンが、最近、英紙The Economistに寄稿したコラム「ピーター・フランコパンが考える3022年の姿What Peter Frankopan thinks 3022 will look like)」が興味深いので紹介します。

 フランコパンによると、パリ協定で定めた気温上昇の抑制目標が達成できる可能性はわずか0.1%です。すると、海面が数十メートル上昇し、海底に沈む地域が増え、2500年までにアマゾンは不毛の土地になります。熱帯地方の居住者は住む場所を失くし、高緯度の地域へと移動せざるを得なくなると予測しています。

 そして、フランコパンはその兆候は現時点ですでに現れていると言います。2022年の世界の気象をみてみると、イギリスでは気温が40度を超え、中国では観測史上最も厳しい熱波が記録されました。パキスタンでは例年の8倍近くもの雨が降り、洪水で国土の3分の1が水没しました。南米では気温が45度を超え、南極大陸の一部の地域の気温は平均より40度近くも高くなりました。アメリカ東部のデスバレーではわずか3時間で年間平均降水量の4分の3が降りました。

 フランコパンは感染症の脅威についても言及しています。21世紀末には世界人口の90%がマラリアとデング熱のリスクにさらされるとの予測があり、森林破壊が進行すれば、未知の感染症が出現するリスクが高まることも指摘しています。

 また、フランコパンによると、核兵器が使用されれば、たとえ限定的な使用であっても、大量の煤煙が大気中に放出され、広範囲で農業ができなくなるそうです。

 すでに日本でも、毎年台風は未曾有の被害をもたらし、洪水で死亡者を出し、熱中症での死亡が珍しくなくなっています。「これらはすでに地球滅亡に向かっている証だ」と言えば言いすぎでしょうか。

 「できるだけ人類を永らえさせるべきだ」という主張は、哲学的に正しいかどうかは簡単に答えがでませんが(「生まれてこない方がよい」という考えもあります)、「子孫を残して明るい未来を築く」のは我々人間の使命ではなかったでしょうか。ならば、今この時点で人類滅亡のリスクとなるいくつもの脅威をしっかりと認識し、人類全員が”宇宙船地球号”に乗り込み、共に知恵を出し合い、全員でその脅威に立ち向かっていくべきではないでしょうか。

 そう考えると、戦争をしたり、マスクをするしないで言い合いをしたり、SNSでつまらない罵り合いをしたり、といったことに時間を費やしている暇はないはずです。

注:詳しくは下記を参照ください。
医療プレミア2019年1月6日「「あなたと家族と人類」を耐性菌から守る方法」(無料で読めます)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2022年11月8日 火曜日

2022年11月8日 日本小児科学会は6か月以上5歳未満にもコロナワクチンを「推奨」

 2022年の年明けごろから、「コロナワクチンは本当に必要か」という声が増えてきています。谷口医院には相変わらず「ワクチンをうつべきか否か」という質問が多数寄せられていますが、春頃からは相談内容の傾向がかなり変わりました。

 以前は「うつべきですよね」という声が多かったのですが、最近では「うたなくてもいいですよね」が過半数近くとなり、18歳未満でいえば、当院で相談された結果「うたない(うたせない)」と結論を出すケースが多数を占めます。

 そして、各自治体で10月24日から始まった生後6か月以上5歳未満の小児に対するコロナワクチンの相談を受け、「うたせます」と答えた保護者はいまだに(11月7日の時点で)ゼロです。

 しかし、厚労省の見解は6か月以上のすべての日本人に対して「努力義務」を課しています。この言葉の定義がよく分かりませんが、そのまま解釈すれば「義務」と付くものであれば、「日本国民なら守りなさい」とお上から言われているような気がします。

 厚労省は行政的な視点から見解を出します。では、医学的にはどうでしょうか。日本小児科学会はすでに5歳以上の小児に対して「推奨」としています。

 そして11月2日、同学会は、6か月以上5歳未満の小児に対し、「日本小児科学会は、生後6か月以上5歳未満のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」との見解を発表しました。

 「現時点では有効性・安全性に関するデータが限られている」としながらも、基礎疾患の有無に関わらず健康な小児も含めて「推奨する」とのことです。

 理由についても詳しく述べられています。次の3つが強調されています。

#1 小児患者数の急増に伴い、以前は少数だった重症例と死亡例が増加している

#2 オミクロン株BA.2流行期における発症予防効果について、生後6か月~23カ月児では75.8%、2~4歳児では71.8%の有効性が報告されている

#3 安全性については、米国の調査で「重篤な有害事象はまれ」と報告されている

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 厚労省が(行政が)「努力義務」とし、日本小児科学会が「推奨」としているワクチンの接種率が極めて低い事態は”異常”と呼んでもいいでしょう。

 では、なぜ小児へのワクチン接種が普及しないのでしょうか。谷口医院の例で言えば、我々は「ワクチンを勧めない」とはまったく言っていませんが、「大阪府の第7波での全年齢の死亡率は0.1%であること、小児の場合インフルエンザの方が重症化しやすい報告があること」などを示すと、「そもそも小児の予防にワクチンは不要じゃないですか」というコメントが返ってきます。

 中学生・高校生で積極的に受けたいと考える男子・女子はいますが、谷口医院の例でいえば「留学先で求められているから」「同居する祖父母を守るため」といった理由が目立ちます。

 日本小児科学会は推奨しているのにもかかわらず「小児科医からうたなくていいと言われた」という声がかなりあります。日本小児科学会には「全国のどれだけの小児科医が推奨しているのか」のデータを出してほしいと思います。

 

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2022年10月27日 木曜日

2022年10月27日 週に一度以上の睡眠薬の使用で死亡リスクが1.3倍

 睡眠薬を使えばぐっすり眠れて翌日からは元気いっぱい!、というわけにはいきません。睡眠薬に頼らざるを得ない人の多くは、日中も倦怠感がとれず、食欲は不振で(または過食に走り)、精神状態が悪化していきます。

 では、睡眠薬の長期使用で寿命は縮まるのでしょうか。最近、日本人を対象にそれを調べた研究が発表されました。医学誌「Sleep Medicine」2022年12月に掲載された論文「睡眠薬が必要な不眠症の性別・年齢別の全死因死亡率:日本多施設共同コホート研究からの知見(Sex- and age-specific all-cause mortality in insomnia with hypnotics: Findings from Japan multi-institutional Collaborative Cohort Study)」です。

 結論からいえば、睡眠薬(ここではほとんどがベンゾジアゼピン系睡眠薬)を使用すると死亡リスクが1.3倍に上昇することが分りました。男性は1.51倍、60歳未満では1.75倍にもなります。

 本研究の対象者は92,527人の日本人(35~69歳)で、平均追跡期間は8.4年です。この間に合計1,429人が死亡しました。睡眠薬の使用率は4.2%でした。

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 太融寺町谷口医院では、2007年の開院以来、睡眠薬(及び抗不安薬)については「ゆっくりでいいからできるだけ減らしていきましょう」と助言してきました。最近は、初診時から「睡眠薬をやめたいんですが……」という相談が増えています。

 この研究が周知されて睡眠薬を断ち切りたいと考える人が増えることを期待したいと思います。ただし、「ベンゾジアゼピン依存症からの脱却」は決して簡単ではありません。谷口医院の経験でいえば、覚醒剤よりはましだけど(谷口医院では覚醒剤依存症のハームリダクションとしてベンゾジアゼピンを用いることがあります)、タバコよりは依存症からの解脱がはるかに困難です。

 ではどうすればいいか。不眠を自覚しても安易にベンゾジアゼピンに手を出さないことです。依存症の最善の治療は「初めから手を出さない」です。この研究の対象者が使用している睡眠薬はおそらく大部分がベンゾジアゼピンです。不眠で悩んだときは、ベンゾジアゼピンではなく他の方法で治せばいいのです。

参考:不眠を治そう・依存症を治そう

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2022年10月13日 木曜日

2022年10月13日 鼻うがいで新型コロナ感染後の重症化リスク低減

 私が「谷口式鼻うがい」を初めて実施したのが約10年前の2012年12月末です。そして、その後風邪は一度も引いていません。

 新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」)の流行が始まっていた2020年2月、当時の私は診察室でさえもマスクをしていませんでした。マスクにはコロナを防ぐ効果がありませんし(ただし「感染させない」効果があることがその後分かりました。よって当時の私は間違っていました)、ましてコロナより粒子の小さいインフルエンザやライノウイルスにはほとんど効果がありません。

 しかし、私はコロナが始まったときから「自分はコロナに感染しない」という自信がある程度あり、実際一度も感染していません。毎日、発熱外来を実施していても、です。「絶対にかかりません」とまでは言えませんが、なぜ、そこまで強気なことが言えるかというと、鼻うがいを初めてから一度も風邪をひいておらず、その記録がもうすぐ10年になるからです。

 しかし、鼻うがいはコロナどころか風邪に有効とする研究もほとんどありません。そんななか、ついに有効性を示した論文が登場しましたので紹介します。

 生理食塩水を用いた1日2回の鼻うがいで、入院および死亡リスクが1/8に低下する

 医学誌「Ear, Nose & Throat Journal」2022年8月25日に「重症化リスクのある新型コロナウイルス感染者のリスクを軽減するために生理食塩水による鼻うがいを実施(Rapid initiation of nasal saline irrigation to reduce severity in high-risk COVID+ outpatients)」にこのような研究が報告されました。

 また、米国の医療メディア「Health Day News」はこの論文をわかりやすく解説しています。結論からいえば、「鼻うがいをしていなかった人はしていた人に比べて入院または死亡のリスクが8.57倍も高くなる」となり、2021年11月の米国で言えば、「鼻うがいにより入院を要する高齢者が100万人以上減る」ことを意味します。

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 「谷口式鼻うがい」はとても簡単で、生理食塩水すら不要です。必要なのは10mLか20mLのシリンジ(プラスティック製の注射器)1本です。これはAmazonで買えます。

 ただし、どこでもできるわけではなく「場所」は選びます。その場所とは風呂場です。この方法は簡単で痛くもないのですが、周囲が(不潔な水の)水浸しになります。私は風呂場にシリンジを置いておいて、1日2回この鼻うがいを実施しています。

 これから私の「風邪をひかない記録」がどこまで更新できるのか、自分でも楽しみです。

参考:毎日新聞医療プレミア(すべて無料で読めます)
鼻にいるコロナは喉の1万倍 対策は「うがい」
うがいの”常識”ウソ・ホント
新型コロナ 「うがい薬推奨」は問題

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2022年10月13日 木曜日

第230回(2022年10月) ポストコロナワクチン症候群~2022年版~

 治験(臨床試験)の期間が充分でないことが分っていながら世界中で接種が開始された新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」)のワクチンを受けた後で、「倦怠感(だるさ)が取れない」、「痛みが消えない」といった副作用が続くという訴えが少なくなく、「コロナワクチンは他のワクチンとは異なる」ことを確信し、このサイトではちょうど1年前の2021年10月に「ポストコロナワクチン症候群」というタイトルで紹介しました。

 その後多くの方から相談を受け、それは今も続いています。谷口医院の患者さんのみならず、私が主催するメルマガの読者や、私が連載するメディアの記事を読まれた人からも相談メールが届きます。

 コロナに感染して生じる「ポストコロナ症候群」(後遺症)の患者さんも少なくなく、訴えられる症状は多岐に渡ります。多くの患者さんを診ているうちに、一言でコロナ後遺症といっても実に様々で、中には本当にコロナに感染したのか疑わしい例もあります。よって、そういった事例もひっくるめて「症候群」と呼ぶのがふさわしく、それらを分類した上で治療を進めるべきだというのが私の考えです。

 今回は、感染後の後遺症ではなく、ワクチン接種後の後遺症(=ポストコロナワクチン症候群)について述べます。まずは私の「5分類」を紹介します。

短期軽症型:接種1週間程度で消失するすべての症状を含む。発熱、倦怠感、疼痛、リンパ節腫脹など。たとえ1週間寝込んだとしても回復すればこのタイプに含まれる。

短期重症型:接種1~2週間以内に入院を余儀なくされ、肢体不自由などの重篤な後遺症を残す。または死亡する

中期型:接種後1週間以上たっても症状が持続し、最長6か月まで続く。頭痛、動悸、倦怠感が比較的多い訴え。

長期型:接種後6か月以上持続。倦怠感、抑うつ症状、食思不振、体重減少などが主症状となる。ときにME/CFS(後述します)を発症したと考えられる。

持病再発型:しばらく落ち着いていた持病がワクチン接種を契機に再び発症。頻度が多いのが、ヘルペス(口唇ヘルペス、性器ヘルペス、あるいは他の部位のヘルペスも)、頭痛(特に片頭痛)、じんましん。帯状疱疹(及び帯状疱疹後神経痛)もこの分類に入れる

 ではそれぞれを解説していきましょう。

 まず「短期軽症型」はほぼ全員に起こります。どれだけしんどくても1週間たてば後遺症なく社会復帰できるのであればOKと考えるべきでしょう。後述するようにコロナワクチンの有効性が高いのは間違いないからです。

 「短期重症型」の原因はワクチンの成分によるアナフィラキシーショックと、心筋炎(または心膜炎)が重要です。よって、アレルギーのエピソードがある人は充分な注意が必要で(接種前にかかりつけ医に相談しましょう)、まったく健康体の人であっても接種後1週間は激しい運動を控えるべきです。

 ちなみに、私自身は3回目のワクチン接種を終えて3日後にジョギングをして激しい胸痛と動悸に襲われ、その動悸は1週間くらい続きました。今だから言えますが、当時(2022年1月)はちょっと怖かったです。心筋炎/心膜炎が起こるのは「若い男性」とされていたために、「まさか53歳のおっさんには関係ないだろう」と高を括っていたのが失敗でした。このときの睡眠の記録を見ると(Fitbitで管理しています)、眠れはしたものの心拍数は90BPM(日頃は50BPM程度)前後の状態が続いていました。しかし、1週間程度で完治しましたから「短期重症型」ではなく「短期軽症型」に入ります。その程度だったので、今では心筋炎/心膜炎ではなかったと考えています(と思うようにしています)。

 「中期型」はそれなりの長期間、社会生活を制限されますからかなり辛いワクチン後遺症と言えます。頭痛、嘔気、食欲不振、めまい、関節痛、筋肉痛など症状は多岐に渡ります。不眠、抑うつ感などの精神症状も出現します。

 「長期型」はその大半がME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)と見分けがつきません。ME/CFSとは、一言で言えば、「日常生活が制限されるような激しい倦怠感が6か月以上続く」慢性の疾患です。以前は単にCFS(慢性疲労症候群)と呼ばれていましたが、最近では国際的にME/CFSが一般的です。

 ME/CFSは、周囲の人たちから(ときには家族からも)理解されないことが多く、ひどい場合は「単に怠けているだけだろ」とか「精神的なものやから精神科に行け」などと言われて傷ついている人もいます。たしかに、単純疲労やうつ病の場合も倦怠感は伴いますが、これらの場合、散歩など軽度の運動で改善することが多いと言えます。他方、ME/CFSの場合は、軽度の散歩程度であっても、その翌日あたりから体を動かせなくなるほどの激しい倦怠感が数日続くこともあります。これを「運動後倦怠感(post-exertional malaise, PEM)」と呼びます。

 ME/CFSの話をしだすとかなり長くなりますのでいずれ改めて紹介したいと思います。ここでは、ポストコロナワクチン症候群の「長期型」はME/CFSそのものかもしれない、ということだけ押さえておきましょう(といっても、これらはすべて私の「私見」ですが)。

 「持病再発型」は上に述べた通りで、いつ治るかは人それぞれですが、谷口医院の経験で言えば長くても6か月以内にはおさまります。

 では、なぜこのような副作用が起こるのでしょうか。はっきりしたことは分かりませんが、反ワクチン主義者の人たちがよく言う「スパイク蛋白が悪さをしている」というのはひとつの答えかもしれません。

 コロナのmRNA型ワクチンが登場したとき、政府も学者も感染症専門医も「ワクチンで体内に入ったmRNAはすぐに分解され、スパイク蛋白が長期間体内に存在することはない」と言っていました。実際、厚労省のサイトには今もそう書かれています。

 ですが、最近はそうとも言えないことが分ってきています。ドイツの70代の男性がワクチン接種後に死亡し、大量のスパイク蛋白が脳と心臓から見つかったという事例が報告されています。また、ワクチン接種した妊娠中の女性11人のうち5人の母乳からワクチンのmRNAが検出されたという報告もあります。

 さて、ワクチンの副作用をこれだけ列記すると「そこまでして打たないといけないの?」という気持ちになる人も多いでしょう。その答えは「国民全体としては接種すべき」となります。国際的な研究では医学誌「The Lancet」に掲載された論文が有名で、この研究によればコロナワクチンのおかげで世界の1440万人が命を救われています。身近なところで言えば、大阪府が公表しているデータを見てもワクチンの有効性は明らかです。4回接種者と未接種者では重症化率、死亡率がまったく異なっているのがよく分かります。また、因果関係のはっきりとしている(と厚労省が言っている)重篤な副作用はごく僅かであるのも事実です。

 ただし、ワクチンが有効なのは「全体として」です。いくらそのように役人や偉い学者から言われたとしても、あなた自身やあなたにとって大切な人が重篤な副作用に苛まれるのならば接種したくないのは当然です。

 では、あなたやあなたの大切な人がワクチン接種を受けるべきかどうかはどのように決めればいいのでしょうか。答えは「かかりつけ医に相談する」です。谷口医院の場合、患者さんから相談されたとき「ではうちましょうか」となることも「今は控えておきましょうか」となる場合もあります。

 ちなみに私がメディアに記事を書くと、「ワクチン絶対肯定派」からも「ワクチン絶対反対派」からもクレームが来ます。「ワクチンに賛成なのか反対なのかはっきりしろ!」とお叱りの言葉をいただくこともあります。私の答えは「その人にとって受けるべきか否かは異なる。だからかかりつけ医が存在している」です。

 最後に最も大切なことを言っておきましょう。ポストコロナワクチン症候群はときに難治性となります。そのため「藁にもすがる思い」となり、高額な自費診療を受けさせられた被害者が続出しています(多いのは「グルタチオンの点滴を数千円で受けさせられた」、「イベルメクチンを高額で買わされた」、など)。時間がかかるのは事実ですが、あくまでも保険診療で治療をすべきだ、と私は言い続けています。

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2022年10月10日 月曜日

2022年10月 「我々はなぜ働くのか」、もうひとつの答え

 先日他界された稲盛和夫氏の著作に『働き方「なぜ働くのか」「いかに働くのか」』があります。個人的にはこの本も他の稲盛氏の著作と同様、できるだけ多くの人に勧めたいのですが、おそらく21世紀に生きる若者のなかには、こういう主張に馴染めない、あるいは反発する人も少なくないと思います。

 なにしろ、言葉だけを読めば「仕事は常に(ベストではなく)パーフェクトを目指せ」「一心不乱に寝食を惜しんで働け」「困難なことにも<できない>と言ってはいけない」などなど、昭和時代の「猛烈サラリーマン」を彷彿させるようなメッセージのオンパレードです。もしも長時間残業やパワハラの被害に遭っている人がこれを読めば、”猛烈に”反対するでしょう。

 そう思ってこの本のAmazonのレビューを見てみると、やはり私の予想通り、厳しいコメントが相次いでいました(もちろん絶賛するコメントも少なくありません)。たしかに(誰かが書いていたように)、自分の働く会社からこの本を渡されればぞっとするに違いありません。なにしろ、読み方によっては「他のすべてを犠牲にして死ぬまで働け」と言われているような気持ちになるでしょうから。

 私自身がこの本を初めて手にしたのは太融寺町谷口医院をオープンさせてからで、私の立場は「院長」ですから、経営者(というほどのものではありませんが)的な観点でも考えてしまいます。すると、この本は良書だけれど自分の立場で谷口医院の従業員に勧めるわけにはいかないなぁ、と感じたことを覚えています。

 しかしながら、それでもこの本のなかに出てくる「人間は自らの心を高めるために働く」という稲盛さんの言葉には説得力があります。特に医療機関では、「働く」ことが(職種によってある程度異なりますが)病気や怪我を患っている人や不安が強い人に対する直接的な「貢献」につながります。

 ちなみに、「ぐるなび」創設者の滝久雄氏は「自分を他者のために役立てたいという貢献心は<誰にもある本能>」と考え、「ホモコントリビューエンス研究所」を設立されています。「ホモコントリビューエンス」とは「貢献する人」という意味だそうです。

 さて、今回は私が考える「我々はなぜ働くのか」に対する私なりの「回答」を紹介したいと思います。それは「仲間をつくるため」です。「なんだ、当たり前のことじゃないか」と感じる人が多いでしょう。特に私と同世代以上であれば、多くの人が「そんなこと、言うまでもない」と思っているでしょうし、また仕事を通して「生涯の友」と呼べる友人を得たという人も大勢いるはずです。

 もちろん若い人のなかにも、「そんなの当然」と考えている人はいると思いますが、私と同世代以上のいわば「旧世代の人間」とはやはり異なると思います。旧世代の人間は、まだギリギリ「終身雇用」が当然の時代に生きていました。実際、私の1つ目の大学の同級生のなかには、入職以来30年以上同じ企業に勤務しているという人も少なくありません(ただし、その1回り上の世代に比べると、それほどの長期間勤務者は激減しているのは間違いありません)。

 いったん就職するとそこが「共同体」となり、共に働くのみならず、共に慰安旅行に参加し、会社が主催する社員とその家族が出場する運動会に参加し、半数以上が社内結婚をし、社員どうしは家族ぐるみの付き合いをするのです。それを「社畜」と非難する声がありますが、その一方、かけがえのない友情が築かれることが多いのも事実です。
 
 一方、会社が単に「お金を稼ぐ場」と考える人が多くなった21世紀の現代社会では、社員とその家族が参加する運動会の話はほとんど聞かなくなりました。慰安旅行でさえも、すでに新型コロナ流行前から激減していたと聞きます。社内恋愛は今でも(不倫も含めて)少なくないでしょうが、旧世代であれば大企業では半数以上が社内結婚だったのです。どこの企業だったか忘れましたが、私が就職活動をしている頃「〇〇社の社内結婚率は9割以上」と聞いたことがあります。

 「生涯の友は学生時代に見つけるべきで、就職後の友はしょせんライバルに過ぎない」と言う人がいます。実際にそういうこともあるのでしょうが、それでも仕事を一緒にがんばったという経験から深い友情が芽生えることもよくあります。

 太融寺町谷口医院では最近立て続けにスタッフが退職しました。退職の理由は「持病の悪化」「院内の人間関係」など様々ですが、突然辞めた職員もいたために仕事が回らなくなりました。少ない人数でまかなっている診療所でそのような複数のスタッフの突然の退職は困ります。求人を新たに出すことにしましたが、すぐにいい人が応募してくれる保証はありません。

 そこで、以前谷口医院で働いていた元スタッフに声をかけてみました。就職前に谷口医院にアルバイトに来てくれていた20代の頭脳明晰なMさんにダメ元で連絡をとってみると、偶然にも「新たな就職先が決まり、以前の会社は辞めたところ」だと言います。本当は充電期間に海外旅行をする予定だったそうなのですが、なんとそちらをキャンセルし谷口医院にアルバイトに来てくれたのです。しかも「谷口医院でのアルバイトは海外旅行よりも価値のある貴重な経験です」とまで言ってくれたのです。これほど嬉しいことがあるでしょうか。Mさんを友達と呼ぶのは変かもしれませんが、私にとってはかけがえのない恩人です。

 次に、過去に谷口医院に少しだけ働いていたAさん(名前のアルファベットがAではなく便宜上Aさんとします)が来てくれることになりました。Aさんは明るくて頼りがいのある女性なのですが、以前谷口医院に勤務していたときに、ある同僚からイジメとも呼べるような酷い対応を受けていたのです。私がそれをAさんから聞いたのは退職を決めた後でした。そのときには申し訳ない気持ちしかなかったのですが、こうして戻って来てくれることになりとても嬉しく思います。

 「女性の世界は難しい」とよく言われますが、それは谷口医院でも同様です。これまでも明らかなパワハラで辞めていった人が複数人います。そして、そういう人に限って被害に遭っていることを口にせず、最後まで笑顔を絶やさないのです。私にもっと早く言ってくれれば……、と思いますが、おそらく「告げ口」になると彼女らは考えたのでしょう。

 パワハラやイジメの加害者は、日頃から口調が強くよくしゃべるタイプもいれば、普段はほとんど何も話さない無口なタイプまで様々です。しかし共通点がひとつあります。それは加害者であることが発覚するとすぐに辞めていくことです。それならば、初めからそんなことしなければいいわけです。私にはこういう女性(だけではないかもしれませんが)の心理が理解できません。

 もうひとり、本稿執筆時点では未確定ですが、元スタッフのBさんも戻って来てくれるかもしれません。実はBさんも当時のあるスタッフからひどいパワハラの被害に遭っていたのです。Bさんのケースも、その被害報告を受けたのは退職を決意した後でした。

 ちなみに、谷口医院には過去にも、諸事情からいったん退職し、再び戻って来てくれたスタッフが何人かいます。元の職場に戻ったことがある人や退職した人を再び受け入れた経験がある人は少なくないと思いますが、いったん退職したスタッフが戻って来てくれるのは、迎え入れる側からすると格別の嬉しさがあります。昔話に花が咲き、別の職場で培った経験から一回り成長した姿を見ることができます。そして、何よりも「また一緒に患者さんに貢献しよう」という”絆”を確認することができるのです。

 稲盛さんはさほど触れられていなかったと思いますが、「なぜ働くのか」の答えのひとつは「仲間との絆を感じることができるから」だと私は信じています。

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2022年9月15日 木曜日

第229回(2022年9月) 疑問だらけの新型コロナの「新薬」

 2022年7月20日、厚生労働省の審議会で、コロナの特効薬となることが期待されていた塩野義製薬(以下「塩野義」)のゾコーバ(一般名:エンシトレルビルフマル酸)の緊急承認が見送られることが決まりました。

 ところが、9月2日、日本感染症学会日本化学療法学会(双方とも由緒ある大きな学会です)が、この決定を取り下げてゾコーバを緊急承認するよう求めた提言書「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」を厚労省に提出しました。

 さらに話は複雑になります。両学会の提言に対し、感染症専門医を含む複数の医療従事者がSNSなどに批判のコメントを載せたのです。つまり、「両学会の方針が間違っている=ゾコーバの承認を現時点で認めるべきではない」という意見が医師の間に多いのです。そんななか、埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科教授の岡秀昭医師が、医師のポータルサイト「m3.com」に、両学会の提言がいかに不適切かについてまとめた記事を上梓しました。また、毎日新聞「医療プレミア」は岡医師に取材をし、記事をまとめています。尚、岡医師は日本感染症学会の評議員も務める感染症の大御所です。

 岡医師の主張をまとめると以下のようになります。

・両学会の提言は決して感染症の専門家のコンセンサスではない

・この提言について、9月4日、自身が学会に異議申し立ての報告をおこなった

・学会員や評議員から民主的に意見を聞かずに学会の名前を用いてこのような提言が密室で作成されて発表されることは大変残念な事態だ

・まずは学会ホームページにおける提言掲載を止め、理事長は学会員にしかるべき説明を行う必要がある

 両学会は岡医師らの批判に応じるかたちで「「新型コロナウイルス感染症における喫緊の課題と解決策に関する提言」に関する補足説明」というタイトルの「補足」を発表(感染症学会化学療法学会)しました。そこには、「(両学会は)ウエブ会議を8月中に2回行うとともにメールでの意見交換を行いました。意見をふまえて作成した提言案を、さらに両学会の役員(理事・監事)全員にお示ししてご意見を伺いました。頂いたご意見はさまざまでしたが、提言を出すことに対して反対意見はありませんでした」と、役員全員で議論したと書かれています。岡先生らの主張と食い違っています。

 では、ゾコーバは新型コロナに無効なのでしょうか。それとも少しくらいは有効なのでしょうか。

 薬の有効性について審議する医薬品医療機器総合機構(PMDA)は「ゾコーバによりウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しないが、申請効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できず、当該試験の第3相パートの結果等を踏まえて改めて検討する必要がある」と報告しています。

 つまり、ウイルス量の減少は認めるが、承認するにはそれだけでは不十分で、薬として市場に出すには「有効性を実証できなければならない」と言っているわけです。普通、「薬」とは飲めば症状が改善することが期待できるものです。PMDAが言うように、「有効性がない」ものを承認するわけにはいきません。

 そこで、塩野義は”奇策”に出ました。データの取り方によっては「有効性がある」と主張したのです。

 ゾコーバは有効性の主要評価項目である12症状(倦怠感または疲労感、筋肉痛または体の痛み、頭痛、悪寒または発汗、熱っぽさまたは発熱、鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ〈呼吸困難〉、吐き気、嘔吐、下痢)の合計スコアでは、プラセボと比較して有意差はありませんでした。

 そこで、塩野義は「オミクロン株に特徴的な5症状でなら有効だ」と主張しました。1)鼻水または鼻づまり、2)喉の痛み、3)咳、4)息切れ(呼吸困難)、5)熱っぽさまたは発熱、の5症状に限って解析し直すと、有意差がでた(有効性があった)と訴えたのです。さらに、症状改善までの時間も早くなると言います。

 一般に、科学者は「データのこねくり回し」を嫌がります。というのは、いろいろと条件を変えて何度も解析し直せば、そのうち研究者に有利な数字が出てくるからです。というわけで、塩野義が(都合のいいように)解析し直した主張は認められず、7月20日の審議会で承認が見送られたのです。

 この決定に対し、2つの学会は「塩野義の希望を聞いて承認すべきだ!」と厚労省に抗議し、それに対し岡医師らは「有効性が認められないものを承認するのはおかしい」と学会を批判したというわけです。

 これからの調査によってはゾコーバの有効性が認められる可能性は残っていますが、医学的な常識に照らし合わせて考えると、両学会の提言には私自身も大きな違和感があります。科学的な裏付けがない新薬が承認されるのはあまりにも危険です。

 もしも「現在コロナの薬がひとつもなくて感染してもなす術がなく死亡率が高い」という状態なのであれば、「少しでも命が救われる可能性があるのならダメ元で認可すべし」という考えが出てきます。実際、2020年の春はそのような状態でしたからいくつかの薬が「特例」というかたちで、保険診療でコロナに使うことができました。その代表が「イベルメクチン」です。今も通称「イベラー」と呼ばれる「イベルメクチン信者」が少なくなく、実は太融寺町谷口医院(以下、「谷口医院」)にも(ほぼ)毎日イベラーからの問合せがあります。しかし、いくつもの大規模調査でイベルメクチンのコロナへの有効性は否定されています。

 話をゾコーバに戻しましょう。コロナの薬がまったく存在しない時代ならともかく、現在はゾコーバの立ち位置と同じ、つまり「感染初期に使用して重症化を防ぐ内服薬」にはラゲブリオ(モルヌピラビル)とパキロビッドパック(ニルマトレルビル・リトナビル)があります。そして、これらの有効性及び安全性は(かなりの程度)確立されています。しかし、供給が不安定で、扱っている薬局が少なく、感染者が増えるとすぐに品切れを起こします。特に、パキロビッドパックの流通は不充分で必要な人に処方できていません。

 ならば、ゾコーバの承認を急ぐ前に有効性と安全性が保証されているこれら2つの安定供給にこそ厚労省は力を注ぐべきではないでしょうか。もっと言えば、そもそもこれら2つの薬があるなかでゾコーバの「存在価値」はどれほどあるのでしょう。ここでこれら3つの薬を比較したいと思います。

 医学誌「The LANCET Infectious Diseases」2022年8月24日号に掲載された論文「香港のオミクロンBA.2株の入院時に酸素補給を必要としない新型コロナの入院患者における感染初期のラゲブリオまたはパキロビッドパックの実際の有効性(後ろ向き研究)(Real-world effectiveness of early molnupiravir or nirmatrelvir-ritonavir in hospitalised patients with COVID-19 without supplemental oxygen requirement on admission during Hong Kong’s omicron BA.2 wave: a retrospective cohort study)」では、ラゲブリオとパキロビッドパックが比較されています。結論を言えば、どちらも有効なのですが、パキロビッドパックの方がより有効性が高いと言えます。死亡率でいえば、そのリスクをラゲブリオは52%、パキロビッドパックは66%下げます。重症化リスクは、ラゲブリオが40%、パキロビッドパックは43%下げます。

 双方とも安全性では今のところ大きな問題はありません。ならば、ゾコーバが登場するには少なくともこれら2つの薬と最低でも同等の成績を示さなくてはなりません。

 2022年2月7日、塩野義はゾコーバの臨床試験で「ウイルス力価の陽性患者割合をプラセボ群と比較して約60~80%減少」と報告しました。この数字だけでは他の2種との比較はできません。では「使いやすさ」はどうでしょう。

 実は、ゾコーバのウイルスを抑制する作用メカニズムはパキロビッドパックと同じようなものです。パキロビッドパックは1日2回の内服が必要なのに対し、ゾコーバは1回だけです。さらにパキロビッドパックは他の薬との飲み合わせが複雑なのに対し、ゾコーバはあまり他の薬との相互作用を考える必要がないとされています。また、パキロビッドパックは腎機能が低下している場合に使いにくいというデメリットがあり、ゾコーバにはそれがないとされています。これらの特徴はゾコーバに有利と言えます。

 では、現在入手できるデータからゾコーバとパキロビッドパックの「有効性」を比較してみましょう。薬を評価するときに使われる指標のひとつに「EC50」と呼ばれるものがあります。これは、「50%効果濃度(half maximal Effective Concentration)」とも呼ばれ、「薬の効果が最大になる半分のときの濃度」で、分かりやすく言えば「EC50が小さいほどその薬の効果は大きい」となります。そのEC50がパキロビッドパックは78nM(ナノメートル)という論文があります。一方、ゾコーバは370nMという報告があります。この数字だけを比べると、ゾコーバが不利です。

 私が聞いたところによると、パキロビッドパックの処方に消極的な医師がそれなりにいて、その理由は「腎機能をチェックしてられない。自分が飲んでいる薬を理解していない患者もいるから相互作用が考えられない」だそうです。「これだけ面倒くさい薬には手を出したくない」という声もあるとか……。

 谷口医院の場合はこういった問題はほとんどありません。そもそも谷口医院の発熱外来は「かかりつけ患者のみ」(この方式を大阪府では「Bグループ」と呼びます)としているため、受診者の腎機能や内服薬はあらかじめ分かっています。また、以前から(過去は外国人に対してだけでしたが現在は日本人にも)抗HIV薬を積極的に処方していますから、飲み合わせに悩むことも(ほとんど)ありません。実はパキロビッドパックの飲み合わせが難しいのは成分の1つの「リトナビル」が複雑だからで、リトナビルはHIVの定番の薬なのです。

 ただし、製品が流通されないのなら元も子もありません。パキロビッドパックは2022年2月1日に200万人分がファイザー社から日本政府に供給されることが決まったはずです。この200万人分はすでに必要な患者さんに処方されたのでしょうか。それとも、どこかの倉庫に眠ったままなのでしょうか。ゾコーバの承認よりも、パキロビッドパックの流通を安定させてほしい、というのが私の個人的希望です。

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2022年9月11日 日曜日

2022年9月11日 減塩対策の「裏技」

 まずは2つの数字を思い出しましょう。1つは、WHO(世界保健機関)が推奨する1日の食塩摂取量、もう1つは日本人の平均食塩摂取量です。答えは次のようになります。

WHOの推奨する1日あたりの塩分摂取量:5g/日

・日本人の食塩平均摂取量:男性11.0g/日、女性9.3/日
(平成30年「国民健康・栄養調査」より)

 男女とも基準の約2倍を摂取しているというわけです。食塩量は味噌汁1杯で2g、ラーメン1杯7-8g、かつ丼1杯4g、梅干し1個2gくらいです。これらの数字をみただけで、1日5g未満を達成するのがいかに過酷かが分かるでしょう。

 では日本食を減らせば減塩できるのでしょうか。これは一理あるのですが、そう簡単ではありません。例えば、タイで現地の人たちと一緒にタイ料理を食べれば塩分がかなり少ないことが実感できます。唐辛子やコショウを上手く使って美味しく食べることができればいいのですが、それを長く続けていると和食に慣れた日本人は次第に物足りなくなってきます。タイに長く住んでいるとタイ料理に塩をかけたくなってくるのです。

 では、塩分の量を増やさずに塩味を得ることができるとすればどうでしょう。「代替塩」というものがあります。従来の「食塩」は塩(ナトリウム)が(ほぼ)100%ですが、ナトリウム75%・カリウム25%の代替塩が存在します。

 これを使った大規模調査が中国でおこなわれ論文として発表されています。医学誌「The New England Jpurnal of Medicine」2021年9月16日に掲載された「心血管疾患および死亡に対する代替塩の影響(Effect of Salt Substitution on Cardiovascular Events and Death)」です。

 研究の対象者は中国の約600の村の住民で、脳卒中を起こしたことがあるか60歳以上で高血圧がある20,995人です。10,504人には「ナトリウム75%・カリウム25%の代替塩」を、残りの10,491人には「ナトリウム100%の従来の食塩」を使用してもらいました。追跡調査の平均期間は4.74年です。

 結果、代替塩を使うと、脳卒中、心血管疾患、死亡のリスクが、それぞれ、14%、13%、12%低下していました。

 しかし、カリウムがたくさん含まれる代替塩を摂取すると、高カリウム血症を起こすのではないかという懸念が生まれます。しかし、この研究では高カリウム血症を含む有害事象は代替塩に認められませんでした。

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 2021年9月に発表されたこの研究、コロナ禍のせいで大きな注目はされませんでしたが、かなり衝撃的な内容です。というより、これを読めば、直ちに世界のスーパーマーケットの食塩売り場の棚を一掃すべきだ、と考えたくなります。

 しかし、ナトリウム75%・カリウム25%の代替塩はどうやって入手すればいいのでしょう。実は、日本にはこの代替塩よりもはるかに有用な(と考えられる)”代替塩”があります。そして、すでに過去の医療ニュース「2016年6月27日 米国の減塩対策と日本の減塩食品」で紹介しています。

 それは味の素の「やさしお」です。「やさしお」ならナトリウムが約50%で、残りはカリウムとマグネシウムでできています。はっきり言うと、この「やさしお」、非の打ちどころがない素晴らしい商品です。

 医師が特定の商品を絶賛するようなことは極力避けるべきですし、私はすでに過去のマンスリーレポート「2013年8月 この夏の暑さと塩と味の素」で「味の素」を褒めちぎってしまいましたから、同じようなことはしたくないのですが、「やさしお」はどう考えても誉め言葉以外の言葉が見つからない商品なのです。

 ただし、調べてみると、他にも2つ「代替塩」として推奨できる商品が見つかりました。

 1つは大正製薬の「減塩習慣」で「やさしお」と同様、ナトリウムが約50%で、残りはカリウムを中心に、リン酸カルシウムやクエン酸が含まれています。

 もうひとつはポッカの「ウレシオ」で、こちらもナトリウムは約50%です。ユニークなのはカリウムがわずかしか含まれておらず、炭水化物が残りの大半を占めていることです。「粉末レモン」が使われているようで、おそらくこの正体が炭水化物なのではないかと思われます。一般に、「粉末もの」の正体は炭水化物であることが多いからです。サイトをみると「塩化カリウム不使用」であることが強調されているので、もしかすると慢性腎臓病や腎不全の人のために開発されたものかもしれません。

 最後に、代替塩を使うよりももっと推薦できる方法を紹介したいと思います。その方法なら、費用がほぼかからず、安全で、(一部の人を除けば)誰もが簡単にできます。それは「運動で汗をかくこと」です。過剰に摂取したナトリウムは汗とともに対外に排出されます。そういう意味でも運動は大切なのです。

 というわけで「代替塩と日々の運動」という”裏技”で、過酷な塩分制限をしなくても美味しい食事を楽しむことができるのです。

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