ブログ

2013年7月14日 日曜日

2010年7月2日(金) ビタミンB6とメチオニンが肺ガンを予防する?

 このところ、ビタミンB6が心臓病や大腸ガンの予防に有効という研究報告が相次いでいますが(詳しくは下記参照)、今度は肺ガンを予防するかもしれないという研究が発表されました。

 フランスの「国際ガン研究センター(International Agency for
Research on Cancer)」の研究者であるMattias Johansson氏が医学誌『JAMA』2010年6月16日号に研究結果を発表しています(下記注参照)。

 1992~2000年にかけて10ヵ国519,978人が対象におこなわれたガンと栄養素の研究にEPICというものがあるのですが、Johansson氏らの研究チームは、このEPICの対象となり血液採取データが残されている385,747人について追跡調査をおこないました。

 調査の結果、2006年までに肺がんを発症した人は899人でした。この899人の対象グループとして、国籍や性別、誕生日、血液採取日を合致させた1,770人を選び、両グループの血中の4種類のビタミンB(B2、B6、葉酸、B12)と、メチオニン、ホモシステイン濃度を比較し、肺がん発症率との関連を分析しています。

 その結果、血中ビタミンB6の濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べ肺ガンを発症する確率が0.44となっています。(グループを血中ビタミンB6の濃度に応じて4つのグループにわけ、最も高いグループと低いグループを比較し、最も低いグループに100人の肺ガン患者がいるとすると、最も高いグループでは44人しかいない、という意味です)

 また、血中メチオニンの濃度が最も高いグループは、最も低いグループに比べ肺ガンを発症する確率は0.52となっています。

 肺ガンについての調査ですから、喫煙の有無が気になりますが、今回の調査では喫煙に関係なく有意差が認められています。つまり、喫煙者、過去の喫煙者、非喫煙者のいずれにおいてもビタミンB6、メチオニンの血中濃度が高いほど肺ガンにかかりにくいという結果がでています。

************

 ならばビタミンB6を積極的に摂取しよう、ということになりますが、以前もお伝えしましたように、ビタミンB6が含まれている食品というのは、玄米、ニンニク、ソバ、鶏肉、豚肉、魚、などで、いずれも比較的普段から食べているもの、もしくはあまり大量には食べられないものです。日本人が比較的よく食べるものとしてはタコがあり、広島大学がタコから健康食品をつくることを検討しているそうです。

 メチオニンは必須アミノ酸の1種で、必須アミノ酸というのは人間が体内で合成することができず食品から摂らなければなりません。メチオニンには、血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素を取り除く作用があるとされ、そのため健康食品にはよく入れられています。

 メチオニンを多く含む食べ物としては、ニンニク、ホウレンソウ、グリーンピース、トウモロコシ、ピスタチオ、カシューナッツ、インゲンマメなどが代表ですが鶏肉や魚にも含まれています。

 やはり結局のところ、「バランスのよい食事を摂るのが一番」ということになると言えるでしょう。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは「Serum B Vitamin Levels and Risk of Lung
Cancer」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/303/23/2377?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Mattias+Johansson&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

参考:医療ニュース 
2010年4月30日 「ビタミンB6、葉酸などで心血管疾患のリスク低下」
2010年4月3日「やはりビタミンB6は大腸ガン予防に有効か」
2008年6月1日「心疾患の予防にはビタミンB6」
2007年8月4日「大腸がんの予防、男性ビタミンB6、女性はコーヒー」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月12日(月) 寝る前の携帯電話はNG

 就寝前に毎日携帯電話を使う中高生は、使わない生徒と比べて睡眠障害になるリスクが約1.4倍高い・・・

 これは、日本大学医学部公衆衛生学教室の研究結果で、7月1日から名古屋で開催されている日本睡眠学会第35回学術大会で発表されたそうです。(7月2日の読売新聞が報道しています)

 この調査は、2008年10月から2009年3月にかけて、全国から無作為に抽出した合計92校の中学生40,151人と、合計80校の高校生55,529人を対象とし、アンケートに回答してもらうかたちをとっています。

 その結果、「就寝前に毎日携帯電話でメールをする」と答えたのは男子で18.9%、女子で27.8%となっています。そして、このように答えた生徒は、そうでない生徒と比べて「入眠障害」、「中途覚醒」、「早朝覚醒」などの睡眠障害を発症するリスクが約1.4倍高いということが分かりました。

 さらに、日中に過度の眠気に陥るリスクは、就寝前に毎日通話する生徒で1.17倍、就寝前に毎日メールする生徒では1.5倍も高くなっています。
 
 今回の調査では携帯電話の使用時間も調べられています。1日の携帯電話使用時間(1ヶ月平均)が2時間以上、と回答したのは、高2男子で35%、高2女子で45.8%!、となっています。

*********

 私自身は、携帯電話は持っていますが、現在は通話もメールもほとんどしていません。はっきり言って携帯電話は嫌いですし、携帯電話がなかった時代に戻りたいとさえ思うことがあります。この理由は、私が医師であることと無関係ではないでしょう。病院勤務の頃、いつ病院から呼び出されるかも分からないために携帯電話は常に持っていなければならず、また電波が届いているかどうかをいつも気にしていなければならなかったからです。まるで自分は携帯電話の奴隷のようだ・・・、と感じていました。今は、病院から呼び出されることはありませんから常にもっている必要はなく、基本的に私は携帯電話を携帯していません。

 ですから、私のような人間からすると、これほどまでに中高生が携帯電話を使っているということが信じられないのです。しかも高2男子の3人に1人以上、女子にいたってはほぼ2人に1人が2時間以上も使用しているなどというのは、別の世界の人たちのようにすら感じます。

 しかし、このような話をすると、中高生でなくても30~40代の大半の人たちからも、「信じられない・・・」という目で見られます。こと携帯電話に関しては、私は相当奇特な人間なのかもしれません。

 ところで、年齢を問わず睡眠障害を訴えてクリニックを受診する患者さんは数多くいるのですが、中高生だけでなく、大人たちも携帯電話のせいで睡眠障害が起こっているのではないでしょうか・・・。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月14日(水) 悪玉コレステロールが高い方が長生き!?

 7月13日の読売新聞に驚くべき記事が報道されました。

 同紙によりますと、日本脂質栄養学会は今年9月に、「LDL(悪玉コレステロール)が高い方が長寿に結びつく」との内容の指針を発表する方針だそうです。

 また、「(総)コレステロール値が高く、高脂血症と診断された人の方が、そうでない人よりも脳卒中の死亡率が低く、症状も軽くなる」、という調査結果を、東海大の大櫛陽一教授がまとめた、とも報道されています。

 今のところ、他のマスコミは同様の記事を報じていないようですし、この読売新聞の記事にしても論文に関する情報が述べられていないため、真偽の程を充分に検証することはできませんが、同紙はかなり断定的な表現を使っており、複数の専門家の声も載せているため、信憑性に高いのではないかと思われます。

 同紙の報道をもう少し詳しくみてみましょう。

 東海大の大櫛教授のグループは、動脈硬化が一因とされる脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)で入院した患者計16,850人を対象に、高脂血症の有無と死亡率、症状の強さを比較しています。

 その結果、脳梗塞で入院した患者のうち、高脂血症でない9,851人が入院中に死亡した割合は約5.5%、一方、高脂血症の2,311人の死亡率は約2.4%にとどまっていたそうです。脳内出血や、くも膜下出血でも、高脂血症があるグループで、死亡率は半分から3分の1だったそうです。

 また、脳卒中で入院した患者と患者でない人を比較した調査では、患者のほうが高脂血症の割合が低かったそうです。(高脂血症があれば入院しにくいという意味でしょうか・・・)

************

 コレステロールのなかでも、LDL(いわゆる悪玉コレステロール)が高ければ動脈硬化を起こしやすい、そして動脈硬化があれば脳卒中や心疾患をおこしやすく寿命を縮めやすい、というのは我々医療従事者からみれば<常識中の常識>です。今回の報道はそれを根底からくつがえすものですから、私はこの報道を見たとき、私が記事を読み間違えているか誤報に違いないと感じました。しかし、文章をよく読めば読むほど「総コレステロール(もしくはLDLが)高い方が長生き・・・」、とはっきりと述べられています。

 しかし、これまで国内外でコレステロール(とりわけLDL)の危険性については何度も信頼性の高い研究が報告されています。メタボリック・シンドロームの診断基準で、高脂血症の指標になっているのは、HDL(善玉コレステロール)が低すぎないか、あるいはTG(中性脂肪)が高すぎないか、です。メタボの診断基準にLDLが入っていないのは、「LDLが高いとそれだけで動脈硬化のリスク上昇は自明だから」、です。

 果たして今後、コレステロール、とりわけLDLについてはどのように解釈すべきなのでしょうか。現在、LDLが高い患者さんに処方している高脂血症の治療薬はやめてもらうべきなのでしょうか・・・。

 今後の報告を待ちたいと思います・・・。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月17日(土) 高齢になってからの体重増加も糖尿病リスク

 若年者もしくは中年者の肥満が糖尿病のリスクとなるのは言わば常識となっていますが、これまで高齢になってからの体重増加については充分な検証がなされていませんでした。

 65歳を越えてからの体重増加、特にウエストの増加が、(2型)糖尿病のリスクを上昇させる・・

 このような新しい研究結果が発表され、医学誌『JAMA』2010年6月23/30日号に掲載されています(注1)。

 この研究は米国ワシントン大学のMary Biggs氏によりおこなわれています。研究の対象者は1989~2007年に実施された心血管健康調査(Cardiovascular Health Study)に参加した65歳以上、約4,200人であり、各個人の詳細なデータが分析されています。調査開始当時、糖尿病と診断された人はなく、BMI(注2)、ウエスト周囲、ウエスト/ヒップ比などのデータが収集され、平均12年間追跡されています。

 その結果、研究開始時でこれらの数値が最も高い人では、糖尿病リスクが4.3倍であることがわかりました。さらに、65歳以上の男性でBMIが28.7を超えると、23.3未満の人よりも糖尿病リスクが5.6倍高く、女性では3.7倍高くなっていることがわかりました。

また、男性でウエストが104.6センチを超えると、89.1センチの人に比べ糖尿病リスクは5.2倍に上昇しています。女性ではウエスト101.1センチを超えると、78.6センチに比べリスクは3.6倍となっています。

 さらに、中年期の体重変化もリスクに大きく影響し、50 歳で正常体重の人が65歳時点またはそれ以降の体重増加が13~20ポンド(約6~9キロ)だと糖尿病リスクが1.3倍、体重増加が20ポンド(約9キロ)を超えるとリスクは3.2倍と上昇しています。50歳時点で過体重あるいは肥満があれば、この影響はさらに大きく、体重増加が多いほど糖尿病リスクが高まることもわかりました。

***********

 結局のところ、いくつになっても太りすぎは糖尿病のリスクがあがりますよ、というのが結論になりそうです。○○歳になったから太ってもいい、とはならないということです。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは「Association Between Adiposity in Midlife and Older Age and Risk of Diabetes in Older Adults」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/303/24/2504?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Mary+Biggs&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

注2:BMIはBody Mass Indexの略で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って算出します。例えば、体重88キログラム、身長2メートルの人であれば、88÷2の2乗=88÷4=22となります。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月17日(土) 「心の電話相談」が過去最多

 「勤労者心の電話相談」をご存知でしょうか。

 これは、厚生労働省が所管する独立行政法人である労働者健康福祉機構というところが、勤労者の心の悩みのためにおこなっている無料電話相談で、実際には全国19ヶ所の労災病院で専門のカウンセラーが対応しています。

 この電話相談は2000年から開始されているのですが、2009年度の相談件数が前年度より1,649件増え、過去最高の25,725件に上ったことを、7月8日に同機構が発表しました。(報道は7月9日の共同通信など)

 相談者の内訳をみてみると、男女比はほぼ1:1、年代では40代が27.1%で最多で、30代20.7%、50代13.4%と続きます。

 相談内容では、職場の問題としては「上司との人間関係」が最多の2,741件となっています。

 精神の問題という観点からみると、「将来に対する不安感」が9,947で最多ですが、これは前年度比で13%増加しています。「落ち着けない」が7,388件、「イライラ・不安定」が5,693件と続きます。「自殺願望」も597件あったそうです。

 同機構は、「不況で職を転々とせざるを得ない状況の中で、新しい環境になじめず、社内のいじめへの悩みや、高齢の労働者を中心に、リストラや派遣切りなどへの不安の訴えが増えている」としています。

*************

 「将来に対する不安」を口にする患者さんは太融寺町谷口医院でも少なくありません。逆に「将来の不安はありません」という人はほとんどみたことがありません。(そういう人は医療機関に来ることもないのでしょうが・・・)

 「将来に対する不安」と言われると医師にはなす術がなく困ってしまいます。心の電話相談をすればすぐに解決!、というわけにはいかないでしょうが、ひとりであれこれ悩むよりはカウンセラーに話を聞いてもらうのはいい方法だと思います。

「勤労者心の電話相談」については、
http://www.rofuku.go.jp/yobo/kokoro_kenko/tabid/365/Default.aspx
を参照ください。全国の労災病院の相談受付番号も紹介されています。

(谷口恭)

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月24日(土) メタボは腹囲よりも体重を重視すべし

 現在、メタボリック・シンドローム(以下メタボ)の診断基準は、日本では腹囲が必須になっています。つまり腹囲が正常であれば、血圧や血糖値に異常があってもメタボの診断がつかないのです。一方、アメリカの診断基準では腹囲は診断基準の1つにすぎず、腹囲が正常でも、メタボと診断されることがあります。また、腹囲を診断基準に加えること自体がナンセンスで、やせていても血圧や血糖に異常があれば動脈硬化をおこしやすいとする研究もあります。つまり、専門家の間でもメタボの診断基準について統一見解が得られていないのが現状というわけです。

 「日本人男性では、腹囲に関係なく体重が増えれば血圧や血糖が悪化する傾向が強い・・・」

 これは、新潟県長岡市の立川メディカルセンターの調査結果で、医学誌『Diabetes Care』2010年7月号に論文が掲載されています。(下記注参照。また、この調査については7月20日の毎日新聞でも紹介されています)

 この調査では、2008年~2009年に同センターの人間ドックを受診した風邪などをひいていない男性1,271人(平均51.6歳)を対象としています。メタボの診断基準である、血圧、血糖値、中性脂肪、HDLコレステロール(善玉コレステロール)と、体重変化との関係を、腹囲の異常があるグループとないグループにわけて分析しています。

 その結果、血圧と血糖値については、腹囲の異常に関係なく、体重が増加すれば悪化しているということが判ったようです。

 尚、HDLコレステロールは、腹囲の異常がないグループで体重増加によって悪化していることがわかり、中性脂肪は、腹部肥満があるグループで体重増加との関係がみつかったそうです。

***********

 冒頭で述べたように、現在メタボの診断基準は専門家の間でも意見が分かれているのですが、最近発表されている研究では、腹囲に関しては少なくとも必須条件からは外すべきではないか、とするものが増えています。

 (専門家ではない)一般の人は、診断基準がどう変更されるかに注目するよりも、体重を増やさず、規則正しい生活をするということを心がけていればいいのではないかと私は考えています。(適正体重がどれくらいか、という点についても議論がありますが・・・)

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Weight Reduction May Be Beneficial for Japanese Men
With Cardiometabolic Risk Factors Even if They Are Not
Abdominally Obese」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://care.diabetesjournals.org/content/33/7/e95.full?sid=3bca8ea8-b5a0-4d0f-b221-309e9f27b1a4

参考:医療ニュース
2010年4月12日 「やせていてもメタボには注意を」
2010年2月11日 「メタボ腹囲を巡って報道に違いが・・・」
2009年5月1日 「高血圧はメタボより危険!」
2009年3月10日 「メタボ腹の基準をめぐって」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月27日(火) 熱中症の死者多数、半数以上が屋内で

 全国的に猛暑が続くなか、ここ数日間は毎日のように死亡例が報告されています。7月17日から25日の夕方に、熱中症が原因の死亡者は全国で81人にものぼります。さらに、特筆すべきは、そのうちの半数以上の45人が自宅など屋内で死亡しているということです。(7月26日の読売新聞)また、17日から23日までの1週間で、熱中症で救急搬送された人は5,896人にもなるそうです。(7月24日の読売新聞)

 熱中症は高齢者に多いのが特徴ですが、若い人も油断してはいけません。実際今年は埼玉県熊谷市の22歳の女性や埼玉県川口市の27歳の男性も亡くなっています。ちなみに、上記81人の死亡者のうち、実に38人が埼玉県内と報道されています。

**************

 このシーズンは、屋内にいてもクーラーをつけて温度を下げなければなりません。また外出するときも、外出時間をずらしたり、短縮したりするなどの工夫が大切になります。だ。

 「環境省熱中症予防情報サイト」(http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/)が大変有用ですので(携帯電話でも見ることができます)、暑い日には参照してみてください。

(谷口恭)

参考:はやりの病気第14回 「熱中症」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月28日(水) 日本人の寿命がさらにさらに長く

 厚生労働省が7月26日に公表した「簡易生命表」によりますと、日本人の平均寿命が昨年に引き続き過去最高を更新しました。(報道は7月27日の共同通信など)

 同省によりますと、日本人の平均寿命は女性が86.44歳で、これは4年連続で過去最高を更新し、25年連続で世界一ということになります。一方、男性は79.59歳で、こちらも4年連続で過去最高を更新しています。しかし、共同通信が伝えている世界ランキングでは、昨年の4位(一昨年は3位)から5位に後退しています。

 共同通信の報道から他の長寿国をみてみると、女性の2位は香港の86.1歳、3位はフランスの84.5歳となっています。男性は1位がカタールで81.0歳、2位は香港の79.8歳で、3位はアイスランド(昨年1位)とスイス(昨年2位)の79.7歳となっています。

 寿命がさらに延長したことに対して同省は、「主に心疾患や肺炎で死亡する割合が下がっていることが平均寿命の延びにつながっている」と分析しているようです。

*************

 男性の1位がカタールというのは本当なのでしょうか。7月27日の共同通信はそのように報道していますが、国連統計部(United Nations Statistics
Division)のサイト(http://unstats.un.org/unsd/demographic/products/socind/health.htm)ではカタール人男性の平均寿命が76歳(2010年6月)と、共同通信の報道とは5歳も異なっています・・・。

 カタールがどうであれ、日本人の平均寿命が伸びているのは事実です。男女差は6.85歳で、これは昨年より0.09歳広がったことになります。同省は「心疾患や肺炎で死亡する割合が下がっている」ことを平均寿命の延びの原因として説明していますが、これが正しいとすれば、今後喫煙者が減少することによりさらに寿命が延びる可能性があります。日本では圧倒的に喫煙者は男性に多いですから、もしも日本人の大半が一斉に禁煙に取り組めば男女差は縮小するのではないでしょうか・・・。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2009年7月18日 「日本人の寿命がさらに長く」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年7月30日 座りっぱなしの時間が長い人は短命?

 座りっぱなしの時間が長い人ほど寿命が短くなる・・・
 
 これは、米国アトランタの米国ガン協会(American Cancer Society)に所属するAlpa Patel博士らによる研究結果で、医学誌「American Journal of Epidemiology」2010年7月22日号に掲載されています。

 この研究では、特に病歴のない成人(男性53,440人、女性69,776人)を対象として1993年から2006年にかけて14年間追跡調査がおこなわれています。調査期間中に、男性11,307人、女性7,923人が死亡しています。

 BMIや喫煙による影響を取り除いた調査の結果、1日6時間を座って過ごす人は、座る時間が3時間未満の人に比べて、死亡リスクが女性で34%、男性で17%高くなっていることがわかりました。

 さらに、長い時間座って過ごし、なおかつ運動をあまりしない人に限ってみれば、座る時間が短い人に比べて、女性で94%、男性で48%死亡リスクが高くなっていたそうです。

 また、今回の研究では、死因としてガンよりも心疾患の比率が高かったようです。

***********

 この研究で興味深いのは、「運動をすれば死亡リスクをいくぶん軽減することはできるものの、運動(physical activity)を考慮に入れても死亡リスクへの影響は依然として有意である」、ということです。

 つまり、座る時間の長い人は、禁煙して肥満に気をつけて定期的な運動を取り入れたとしても、座る時間の短い人に比べると死亡リスクが高くなる、というわけです。

 今のところこの原因はわかりませんが、座りっぱなしで運動時間(特に脚の運動時間)が短いことで寿命に影響を与える生物学的因子があるのではないかと推測されています。

 この研究結果が普遍的なものだとすれば、職種によって寿命に差がでるはずです。例えば、事務職は(外回りの)営業職に比べて短命、とか、(長時間立ちっぱなしの)脳外科医や心臓外科医は(座りっぱなしの)精神科医より長生き、とかです。周りを見渡してそのような傾向があるようにも思えないのですが、実際はどうなのでしょうか・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Leisure Time Spent Sitting in Relation to Total Mortality in a Prospective Cohort of US Adults」で、下記のURLで概要を読むことができます。

http://aje.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/kwq155v1?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=Alpa+Patel&searchid=1&FIRSTINDEX=0&resourcetype=HWCIT

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

2010年8月3日(火) ヘルパンギーナが増加中

 ヘルパンギーナという病気をご存知でしょうか。子育ての経験がある方ならきっと一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 ヘルパンギーナはいわゆる「夏風邪」のひとつです。高熱と咽頭痛(かなり痛がります)の他に、口の中に赤いブツブツがでたり、それがただれた状態(潰瘍)になったりすることもあります。

 今年はそのヘルパンギーナが全国的に増加しているようです。

 国立感染症研究所感染症情報センターによりますと、全国の小児科定点医療機関当たりの患者報告数が、7月12~18日の週は6.51で、前週より0.69ポイント増え、これにより10週連続で増加したことになります。(過去5年間の同時期の平均は3.75だそうです)

 都道府県別では富山(12.43)が最も多く、宮城(12.02)、神奈川(11.58)、山形(11.48)、埼玉(10.91)と続いています。

************

 ヘルパンギーナは、ほとんどは一般的な対処療法(水分補給と必要に応じて解熱剤)だけで充分ですが、重症化すれば無菌性髄膜炎を起こすこともありますから注意が必要です。

 今年は手足口病も流行していますし、インフルエンザも再び不気味な動きを見せていますし、O157を含む感染性胃腸炎も続いていますし、春先にはA型肝炎も流行りましたし、海外に目を向けるとアジア諸国や中南米ではデング熱が異常に増加していますし・・・、と、感染症には要注意の年となりそうです。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2010年5月10日 「A型肝炎と手足口病が流行中」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

月別アーカイブ