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2019年10月27日 日曜日

2019年10月27日 片頭痛があればアルツハイマーのリスクが4.2倍

 片頭痛は脳梗塞のリスクであるという情報はかなり知れ渡ってきているようです。初診時の患者さんからこのことを聞かれることが少しずつ増えてきています。脳梗塞のみならず、心筋梗塞、脳出血、静脈血栓症、不整脈などのリスクが上昇することを示した研究も過去のニュース「片頭痛は心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓症のリスク」で紹介しました。

 今回報告するのは、おそらく脳梗塞以上に衝撃的だと思います。それは「片頭痛があればアルツハイマー型認知症のリスクが4.2倍にもなる」という研究です。

 医学誌『International Journal of Geriatric Psychiatry』2019年9月号に掲載された論文「片頭痛と認知症のリスク、アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症の前向き調査(Migraine and the risk of all‐cause dementia, Alzheimer’s disease, and vascular dementia: A prospective cohort study in community‐dwelling older adults)」で研究結果が報告されています。

 研究の対象者はカナダのある地域に在住する65歳以上の679人で、登録時には認知機能の異常がないことが確認されています。5年後に認知機能を評価しアルツハイマー型認知症及び脳血管型認知症の有無が調べられました。

 その結果、アルツハイマー型認知症のリスクは4.22倍にもなっていました。意外なことに脳血管性認知症のリスクは上昇していません。

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 この論文は非常に重要だと思います。まずこの研究は「前向き研究」でおこなわれています。以前にも述べたように前向き研究は「後向き研究」に比べて、エビデンスレベルがずっと高いわけです。

 次に、アルツハイマー型認知症の最大の要因は「遺伝」です。私の印象で言えば、この点が正確に世間に伝わっておらず、週刊誌やネット情報なども「〇〇を食べればリスク増大」「運動不足がリスクを上げる」「頭を使わないと…」「交友関係が少ないと…」などそのようなことばかり取り上げますが、最大の要因が遺伝であることは間違いありません(下記「医療ニュース」参照)。

 そして、片頭痛も遺伝の要因が強いことはほぼ間違いありません。ということは、片頭痛があり親族にアルツハイマー型認知症がいる人のリスクはかなり高いということになります。であるならば、片頭痛の治療と予防をしっかりおこなうことと、(エビデンスレベルが高くないとはいえ)認知症の予防として推奨されている食事や運動方法などを実践すべきということになります。

 それから(これは誰も言わないので私が言います)、リスクが高い人は認知症を恐れるのではなく、すぐに発症してもいいようにいろいろな”準備”をしておくことが大切です。例えば、預金や保持している金融商品を明確にして家族に伝えておくとか、自営業者の人なら早めに後継者を探すとか、そういったことが必要です。「自分は認知症のリスクが高いから早めに準備しています」という人はあまりいませんが、これは重要なことだと私は考えています。

参考:
はやりの病気第179回(2018年7月)「認知症について最近わかってきたこと(2018年版)」
医療ニュース2019年3月31日「親戚・身内にアルツハイマー、自身も高リスク」
医療ニュース2019年3月31日「ホルモン補充療法はアルツハイマーのリスク」
医療ニュース2018年2月26日「片頭痛は心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓症のリスク」

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2019年10月22日 火曜日

第194回(2019年10月) 電子タバコの混乱その2~イギリスが孤立?~

 米国では電子タバコで死亡者続出、英国では依然推奨されている……。

 これが現在の電子タバコに対する世界の実情です。いったい電子タバコは「死に至る危険な物質」なのでしょうか。それとも英国政府の言うような「安全で有効な禁煙ツール」なのでしょうか。電子タバコを使用した死亡者が米国で相次いでいるのは事実であり、因果関係が認められれば従来のタバコ以上に規制しなければなりません。

 今回は電子タバコ及び加熱式タバコについての最近の議論をまとめてみたいと思います。前回このテーマに触れたのは2017年8月ですからおよそ2年前になります。そのときのコラムのタイトルは「電子タバコの混乱~推奨から逮捕まで~」です。当時の各国の状況を簡単に振り返っておきましょう。

英国:禁煙ツールとして推奨。英国保健省が「禁煙支援ツールになり得る」と正式に発表。電子タバコは従来のタバコに比べて有害性が95%も低いと主張。

米国:政府は正式な言及をしていないが、「米国での電子タバコ使用者の増加が、国民全体での禁煙率上昇に寄与している」とする論文が公開された。

タイ:所持しているだけで逮捕。実際、2017年7月には路上で電子タバコを使用していたスイス人男性が逮捕され6日間留置された。尚、「(iQOSなどの)加熱式タバコは電子タバコと異なる」という理屈は一切通用しないと考えるべき(と私見を述べた)。

カンボジア:タイと同様、所持しているだけで逮捕されるという法律がある(ただし、実際に逮捕されたという情報は入手できず)。

 では、その後の2年間の経過をみていきましょう。まずは近いところから。

 タイではその後逮捕者が続出しています。”逮捕”といってもほとんどのケースでは賄賂を払えば解放してもらえるはずですが、賄賂などというものに激しく抵抗する人もいます(注1)。私の経験でいえば正論にこだわり融通の利かないのはアメリカ人に多い印象があるのですが、プーケットで逮捕されたのはフランス人の女性でした。

 現地の新聞によれば、2019年1月30日、31歳の仏人女性が電子タバコを保持しているという理由でプーケットの警察官に逮捕されました。4人の警官が4万バーツ(約14万円)の賄賂を要求し仏人女性が拒否したところ、女性は警察署に連行され、その後バンコクの刑務所で3泊過ごすことになりました。罰金は827バーツだけでしたが、法定費用や旅費などで8千ユーロ(約100万円)かかったそうです。さらに、出入国管理局は「国外追放」を決めました。当然のことながら「賄賂を要求された」という女性の主張を警察は認めていません。

 尚、私の入手した情報によると、バンコクで加熱式タバコ(または電子タバコ)で日本人が警官に”逮捕”されたという話は多数あります。ですが、留置所や刑務所に入った日本人の話は聞いたことがありません。おそらく”賄賂”を渡して解放されているのでしょう。

 シンガポールでも動きがありました。現地の新聞によれば、2019年2月より電子タバコ使用者は2千USドル(約24万円)の罰金刑が課せられるようになりました。さらに常習者に対しては最大2万ドル(約240万円)または12ヶ月の禁固刑となるそうです。

 シンガポールはときに「明るい北朝鮮」と呼ばれるように、徴兵制度、入国制限などが厳しいことで有名です。一方、その逆にアジアで最も民主化が進んでいる国(地域)として挙げられることが多いのが台湾です。現時点でアジアで同性婚が合法なのは台湾だけです。しかし電子タバコについては、その台湾でも規制は厳しく、税関のサイトによると持ち込みが禁止されています。

 どうやらアジアに旅行するときには加熱式及び電子タバコは持って行かない方がよさそうです(どうしても持って行きたい場合はその都度領事館に確認するのがいいでしょう)。

 次は米国です。最近よく報道されている米国の電子タバコによる死亡者続出について情報をまとめておきましょう。

 2019年9月19日、CDC(米疾病対策センター)は、全米で8人目となる電子タバコが原因の死亡者が生じたことを報告しました(注2)。現地の新聞によれば、電子タバコにより呼吸器疾患を発症した患者は、疑い例も含めると全米38州および1属領で530人に昇ります。そして、マサチューセッツ州では4カ月間の期限付きとはいうものの、全種類の電子タバコの販売を禁止することが決まりました。現地の新聞によると、米国ではミシガン州とニューヨーク州では味のついた電子タバコ(vape flavors)の販売は禁止されていますが、全種の禁止を決定したのはマサチューセッツが初だそうです。

 電子タバコや加熱式タバコを有用とする意見は日本を含めてほとんどの国で取り上げられず、(ほぼ)唯一の例外となるのが英国です。先述したように、英国保健省は電子タバコの有害性は従来のタバコより95%も低いと断言しています。そして、これだけではありません。2015年の報告書には「問題は電子タバコが有害と考える人がいるせいで何百万人もの人が禁煙ができていない(The problem is people increasingly think they are at least as harmful and this may be keeping millions of smokers from quitting.)」と断言しているのです。まるで「喫煙者は禁煙するために全員が電子タバコに替えなさい」と言っているように聞こえます。

 さて、その英国当局は2019年2月27日に電子タバコに関する新しい見解を発表しました。そこには「入院している喫煙者に、電子タバコを勧めて禁煙を促すことを検討する(This will include the option for smokers to switch to e-cigarettes while in inpatient settings.)」と記載されています。やはり現時点でも電子タバコを強く推奨しています。

 ここで論文を参照してみましょう。医学誌『The Lancet』2016年1月14日号(オンライン版)に掲載された論文「電子タバコと禁煙のメタ分析(E-cigarettes and smoking cessation in real-world and clinical settings: a systematic review and meta-analysis)」によれば、「電子タバコで禁煙を試みたグループの禁煙成功率は、電子タバコを使用せずに禁煙に取り組んだグループよりも有意に低かった」という結果が出ています。メタ分析というのはこれまでに世界中で発表された複数の研究を総合的に解析する方法ですからエビデンス(科学的確証度)の高いものと言えます。つまり、高いエビデンスを持って「電子タバコでの禁煙は有効でない」と言っているわけです。

 しかし、その逆の結論の研究があります。医学誌『New England of Journal of Medicine』2019年2月14日号(オンライン版)に掲載された論文「電子タバコとニコチン代替療法の比較(A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy)」によると、電子タバコによる禁煙率が18.0%、ニコチン代替療法では9.9%であり、「電子タバコの有用性が有意差を持って高い」と結論されています。ニコチン代替療法というのは日本でも保険診療で実施できる「ニコチン貼付薬」(ニコチネル)や「バレニクリン」(チャンピックス)のことです。そして、この研究の対象となっているのはイギリス人です。ということは、イギリスでは日本でおこなわれている禁煙治療よりも電子タバコを使う方が禁煙成功率が高いという結論が出ているというわけです。

 電子タバコについては、どうもイギリスだけが孤立しているような印象があります。今後のイギリスの見解に注目していきたいと思います。現在禁煙を考えている人は、電子タバコを用いるのではなく、保険診療で禁煙治療を実施すべきでしょう。

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注1:念のために補足しておくと、私は「賄賂は当然」とか「賄賂は悪くない」と言っているわけではありません。ですが、私の経験から言ってタイでは賄賂が”日常化”しており、本来の「誠実」とか「正義」といったものとは分けて考えなければなりません。私の経験を紹介しておきましょう。バンコクで知人の日本人の車に乗せてもらっているとき、右折禁止を知らなくてたまたまそこにいた警察官に停められました。知人はパスポートに500バーツ紙幣(当時のレートで約1,500円)を挟み、それを警察官に渡すとものの数秒ですぐに”解放”となりました。知人によれば、「警察官も初めから逮捕するつもりはなく”賄賂”を求めている。この国ではこれで”経済”が回っている」とのことでした。

注2:さらにCDCの2019年10月17日の報告によれば、10月15日の時点で、電子タバコと大麻を蒸気で吸入する製品による肺損傷が全米で1,479件報告されており、33人の死亡が確認されています。

投稿者 医療法人 谷口医院 T.I.C. | 記事URL

2019年10月8日 火曜日

2019年10月 「医療はサービス業」という誤解~その2~

 職業に貴賤がないのは事実だとしても、医療者の仕事に対する考え方については他の職種と大きく異なる点がいくつかあります。一方、共通する点もあるわけで、私自身は医師になる前から、この「医師と他職種の共通点と相違点」について考えてきました。

 誰かに指示されたわけでもないのに、どうしてこのような(考えても仕方がないことかもしれない)ことを考え始めたかというと、きっかけは医学部入学前から繰り返し読んでいた稲盛和夫氏の著書の影響です。稲盛氏が言う「利他の精神」は、我々医療者が患者さんに対して考えていることと共通する部分があります。

 もしも「会社は誰のためのものか」という問いに「株主の利益のため」とか「社長と役員が(あるいは社員が)金を稼ぐため」と返されればすっきりします。「医療機関の目的とはまったく異なります」と言えるからです。そして、実際に「金儲けのために起業する」という人も少なくないでしょう。

 ところが稲盛氏のように「世のため、人のため」をモットーとし「利他の精神」を追求される姿勢は我々医療者のミッションと似ています。さらに、過去のコラム「動機善なりや、私心なかりしか」で取り上げた稲盛氏のこの言葉は私の座右の銘のひとつであり、何かを決断するときはいつもこの言葉を反芻してきました。そして、「動機善なりや、私心なかりしか」はこれからも私の行動の規範であり続けるでしょう。

 では、稲盛氏の考えと医療者に全く違いはないのかというとそういうわけではありません。稲盛氏は京セラの次に第二電電(現KDDI)を設立され、その後もグループ会社を増やし、従業員を増やし、利益を伸ばしています。稲盛氏の視点から言えば、この利益は私欲によるものではなく社会によい製品やサービスを届けているわけで、それは「利他的」なのでしょう。そして自社の社員の経済的地位や満足度も向上させていて、これも「利他的」と呼んでいいと思います。稲盛氏は不況のときも従業員を解雇しなかったことを自著で述べています。

 医療の世界はどうでしょうか。医療者全員とは言えないかもしれませんが、私自身のことでいえば、太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)を大きくしようと考えたことは一度もありません。谷口医院がまだ2~3年目の頃、何軒かのコンサルタント会社から「分院をつくりましょう」という営業が来ました。「これだけ患者数が増えて待ち時間が長いのだから、先生(私のこと)のコンセプトを広げて社会貢献しましょうよ」などともっともらしいことを言うわけです。なかには薬局も運営しているある会社から「全額負担するから分院をつくってほしい」と言われたこともあります。

 私はすべてのオファーを断りました。医師不足のなか(そうでないとする意見もありますが私の実感としてはまだまだ医師不足です)、簡単に分院をまかせられる医師が見つかるとも思えません。今でこそようやく「総合診療」という言葉が少しずつ普及してきましたが、当時はまだまだ「縦割り」の医療が通常であり、私のように幅広い領域を診るつもりで研修を受けてきた医師はそう多くなかったのです。そのような状態で分院をつくれば、患者さんにもスタッフにも迷惑がかかるだけです。それに、今診ている患者さんに割く時間が減ることを避けねばなりません。谷口医院を大きくすることはまったく考えず、現在の患者さんの診察やスタッフの教育に時間をもっと取りたい、というのが私の考えで、この考えは今も変わっていません。稲盛氏は「良き製品やサービスを社会に供給して”大勢の人の”生活向上に貢献したい」と思われているでしょうから、この点が私の考えとは異なります。

 次に異なるのは、少なくとも谷口医院では「検査や処方を最小限とし、今後受診しなくてもいいような診療をおこなう」という方針を開院以来取っていることで、これを極限すると「患者数ゼロが究極の目標」ということになります。実際、過去にあるメディアの取材を受けたときに「究極の目標は「失業」」と答えたことがあります(参照:「私が総合診療医を選んだ理由 ・後編」)。

 このサイトで何度も紹介している「choosing wisely」も、おそらく稲盛氏の考えとは異なるでしょう。choosing wiselyは残念ながらまだまだ世間に普及しているとは言えませんが、私は草の根レベルで他の医療者や患者さんに話をするようにしています(興味がある方は当院ウェブサイトの該当ページを参照ください)。choosing wiselyでは無駄な医療を減らすために検査や処方をいつも最小限とすることを心がけています。一般の方にchoosing wiselyについて話すと、きまって「それでは医療機関が儲からないではないか」と言われますが、医療機関はそもそも営利団体ではないわけです。このサイトで何度も指摘しているように日本医師会の「医師の倫理要綱」の第6条は「医師は医業にあたって営利を目的としない」です(参照:「医師に人格者が多い理由」)。

 このサイトで「「医療はサービス業」という誤解」というタイトルのコラムを書いたのは2008年の9月、今から11年以上前です。書くきっかけとなったのは患者さんからの数々のクレームでした。当時、開業して1年が経過した頃から「待ち時間が長い」というクレームが相次ぎ、その挙句に「待たされたんだから希望する薬を処方してほしい」と言われることが何度もあり「それは違いますよ」と言わねばならない機会が増えたのが執筆のきっかけのひとつでした。また、待ち時間とは関係なく、「お金を払うんだから……」とか「検査を希望したのになんでできないんだ……」という声も連続して聞かれるようになり、いつの間にか谷口医院は「クレームの絶えないクリニック」になってしまいました。

 そのときに私が気づいたのが「患者さんは医療機関をサービス業と思っているからこのようなことを要求するんだ!」ということです。そして、そのコラムを書いてから10年以上が過ぎました。患者さんの目の前で「医療はサービス業ではありません!」と強い口調で言うようなことは余程のことがない限りしませんが(そこまで言うときは「もう帰ってください」いう私の意思表示です)、「医療機関では検査や薬を最小限にすることをいつも考えているんですよ」と多くの患者さんに伝えています。私の言い方が上達したのかどうかは不明ですが、怒り出す患者さんは次第に減ってきています。むしろ、好意的に受け取ってくれる人が年々増えています。初診時から「他院で処方されている薬を減らしたい」「デパス依存症を治したい」などと言って、先にこのサイトを読んでから受診される人も増えてきています。

 ですがその一方で、「なんで希望する検査をしてくれへんの!?」と声を荒げる人が今もいるのも事実です。

 最近私が懸念している社会現象があります。それは医師の開業を支援するコンサルタント会社がおかしな方向を向いていることです。こういう会社は医師の名簿をどこかで入手して一斉にダイレクトメールを送信しますから、すでに開業している私のところにも頻繁にメールが届きます。その内容をみてみると「集患アップ」とか「患者を増やすには」とか、もっとひどい場合は「他院の患者を奪うには」という表現すら見受けられるのです。

 コンサル会社は医療のニーズをまったくわかっていないようです。どれだけ多くの人が自身の健康のことを相談できるかかりつけ医をもっておらず、サプリメントや健康食品、あるいは民間療法にすがっているか知らないのでしょう。また、(これは医療者側に責任があるのですが)いいところがみつからないといってドクターショッピングを繰り返している人がどれだけ多いのかも知らないのでしょう。もしもコンサル会社が今のように「集患アップ」(そもそも「患い」を「集める」という言葉がよくありません)などと謳っていると、これから医師を目指す若い人たちにも「医療もサービス業なんだ」と誤った認識を持たせてしまうかもしれません。

 医療はサービス業ではありません。これを認識することが健康になる最大の秘訣と言ってもいいと思います。なぜなら、気になることがあれば、サービス業をしていない、つまり検査・薬を最小限として患者さんにお金と時間を使わせないように努めているかかりつけ医に相談することが、結果的に費用と時間を最小限とし早く元気になれるからです。そして(反論したくなる人もいるかもしれませんが)「検査・薬は最小限」を基本としている医療機関は少なくありません。Choosing Wiselyに関心を持つ医師が増えてきているのも事実です。かかりつけ医からは、治療よりもむしろ「予防」について学び、医療機関受診を最小限とする努力をすることが大切なのです。

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2019年10月7日 月曜日

2019年10月7日 大阪で日本脳炎ウイルス、北海道出身者は要注意

 2019年9月12日、大阪府八尾市保健所は「同市東部で採取したコガタアカイエカから日本脳炎ウイルスが見つかった」と発表しました。大阪府によれば2003年の調査依頼、府内でウイルスが見つかったのは初めてです。

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 日本脳炎は発症すれば、3分の1が死亡、3分の1が後遺症を残します。つまり「死に至る病」のひとつです。ワクチンを接種していれば防げるのですが、問題はしていない人が少なくないことです。

 最も注意が必要なのは北海道出身の人です。北海道にはコガタアカイエカが棲息してないことから長年ワクチンが定期化されておらず、ようやく定期接種に位置付けられたのは2016年からです。

 また、中年以降の人も注意が必要です。北海道以外の地域でも正式に「定期予防接種」に指定されたのは1994年です。また2005年から2010年の間は「積極的勧奨の差し控え」となっていました。下記は日本の日本脳炎ワクチンの簡単な時間的推移です。

1954年 不活化ワクチンの勧奨接種が開始
1976年 臨時の予防接種に指定
1994年 定期予防接種に指定
2005年 積極的勧奨の差し控え
2010年 新型ワクチンによる積極的勧奨再開

参考:
はやりの病気
第63回(2008年11月)「日本脳炎を忘れないで!」
医療ニュース
2016年10月8日「対馬での日本脳炎「集団感染」の謎」
毎日新聞「医療プレミア」
「来夏の東京五輪で「日本脳炎」の患者が急増する心配」2019年5月5日
「日本脳炎のワクチンが今必要なわけ」2016年12月18日
「日本脳炎の大流行を危惧する二つの理由」2016年12月11日

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