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2015年1月17日 土曜日
2015年1月16日 イソフラボンが潰瘍性大腸炎のリスクに
潰瘍性大腸炎という疾患は、厚労省から「難病」に指定されており、年々患者数が増加しています。現在日本では約12万人の罹患者がいると言われています。それほど珍しい疾患ではありませんが、安倍晋三氏が一度目の首相を退陣せざるをえなくなった原因疾患として報道されたときは世間の注目を浴びました。
潰瘍性大腸炎とは下痢や血便をきたす慢性の大腸の炎症性疾患ですが、原因はいまだにはっきりしていません。自己免疫が関与していると言われていますが、決定的な要因は不明です。しかし、万人が認めるわけではありませんが、女性ホルモンのエストロゲンが潰瘍性大腸炎発症に関与することが指摘されています。(このため、低用量ピルの内服を開始しだして下痢が生じれば一度は疑わなければなりません)
エストロゲンは更年期障害のホルモン補充療法の薬剤として用いられていますから、女性にとってはときに有用なホルモンということになります。ただし、ホルモン補充療法(つまりエストロゲンの投与)には副作用のリスクもあり、特に乳癌のリスクには充分注意しなければなりません。
エストロゲンのようなホルモンそのものを内服することには抵抗があるけれど、もっと安全なかたちでなら摂取したい、と考える人たちの間では大豆などに含まれる「イソフラボン」が人気です。イソフラボンは分子レベルでの構造がエストロゲンと似ているため、エストロゲンと同じような効果が期待でき、しかも安全性も高いのではないかと期待されていたのです。しかし、イソフラボンのサプリメントには有効とするデータはほとんどなく、摂取するなら大豆などを積極的に食べることを考えるべきです。(下記「医療ニュース」も参照ください)
さて、前置きが長くなりましたが、今回お伝えしたいのは「イソフラボンの摂取で潰瘍性大腸炎のリスクが上昇する」というものです。
医学誌『PloS one』2014年10月14日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、「日常の食事におけるイソフラボンの摂取が、とくに女性における潰瘍性大腸炎リスクを上昇させる」可能性があるようです。
研究の対象となったのは、合計126例の潰瘍性大腸炎を新たに発症した症例です。自己記入式質問票を用いて過去の食事内容を検討しています。その結果、潰瘍性大腸炎を発症していない人に比べて、発症した人は日頃の食事からイソフラボンの摂取量が多いことが判ったそうです。
**********************
潰瘍性大腸炎を発症した人は、イソフラボンのサプリメントでなく、大豆など通常の食事からイソフラボンをたくさん摂っていたということになります。大豆は高タンパクで栄養価に富んだすぐれた食品で、ほとんどの人が積極的に食べるべきです。しかし、積極的に食べると潰瘍性大腸炎のリスクが上昇するなら皮肉なものです。
ただし、この研究は、エストロゲンがリスクならイソフラボンもリスクになるとしているわけで、理論的には正しいといえるかもしれませんが、症例数がさほど多くないことと、「後ろ向き研究」でありますから、この論文を読んで大豆を控えるのは時期尚早でしょう。(より信憑性が高いのは「前向き研究」といって、発症していない人を数年にわたり追跡して食事と疾患のリスクを調べる研究です)
どれほど健康にいいとされているものも「ほどほどに」して、バランスよく多くのものを食べるのが重要です。今さら言うことでもありませんが・・・。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは、「Pre-Illness Isoflavone Consumption and Disease Risk of Ulcerative Colitis: A Multicenter Case-Control Study in Japan」で、下記のURLで全文を読むことができます。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0110270
参照:
はやりの病気第101回(2012年1月20日)「増加する炎症性腸疾患」
医療ニュース2011年9月5日「イソフラボンは骨密度にも更年期にも無効」
医療ニュース2010年2月8日「イソフラボンで肺ガンのリスクが低下」
医療ニュース2008年3月12日「イソフラボンで乳がん減少」
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|2015年1月13日 火曜日
2015年1月号 「総合」なるものの魅力(後編)
1987年の夏。それは私が関西学院大学理学部に入学できたものの、勉強に興味が持てなくて、というより授業についていけなくて、退学することを考えていた頃です。以前別のところで述べましたが、同じ大学の社会学部の先輩に、ひょんなことから集団力学というものについて話を聞いたことがきっかけで、私は社会学という学問に興味を持つことになりました。
その後社会学部への編入を考え、そして実行することになるのですが、編入学試験を受けるために社会学の勉強を独学で開始しました。集団力学というのは、集団における人間の行動を研究する学問ですが、私にとっては人間そのものを研究対象にするというのが斬新でした。私が在籍していた理学部では、わけのわからない実験をやらされたり、意味不明な数式を解かされたりしていたわけで、いったい何の役に立つものかがわかりません。人間そのものを研究する学問がとても魅力的にうつったのです。
社会学の勉強を開始しだしてまず驚いたのは、学問の対象としている領域があまりにも広いということです。社会学で取り上げているのは、法律、経済、宗教、政治、心理、家族、歴史、マスコミ、福祉、・・・、などなんでもかんでも研究対象にしています。これらは法社会学、経済社会学、宗教社会学、家族社会学、などと〇〇社会学と命名された比較的大きなサブグループがあり、また、社会心理学、社会人類学、・・、など社会〇〇学と命名されたものもあります。また、このようなサブグループとしては確立していないものの、社会学が取り上げる領域は、差別、同性愛、賭博、祝祭、犯罪・・・、など人間に関することならなんでもあり、という感じです。
これは面白い!、と直感した私は社会学に関する本をどんどんと読んでいきました。そして、社会学関連の本を読み進むにつれて、ものごとを多角的に考えるようなクセがついていきました。例えば経済を考えるときには、経済学の教科書には載っていないこと、例えば、人間の欲望や嫉妬心といった心理的な要因、あるいは宗教や政治といった社会的な要因も考察に加えるのです。関西学院大学の経済学部の知人たちは、卒論に、例えばケインズだけを深くとりあげた研究とか、ミクロ経済のある特定の領域を取り上げた研究などをしていましたが、社会学から経済をみると、視点はより幅広いものになるのです。
前回のコラムで、「総合診療医」は専門医か専門医の対極なのかという議論になるとき、私はある<懐かしい記憶>を思い出した、ということを述べましたが、この<懐かしい記憶>とは、私が社会学部に編入学を考えていたときの記憶なのです。私が考える「総合診療」とは、臓器を診るのではなく、その人のすべてを診て、必要あれば心理・社会背景にまで踏み込み、さらに場合によっては職場や家族での人間関係も考慮する医療のことをいいます。こういうと、それは「全人医療」ですか、と聞かれることがあるのですが、「全人医療」という言葉は手垢がついているというか、これまで様々な場面で使われてきた言葉なので私自身はあまり使っていません。まあ、言葉というのは定義によりますからあまりこだわらない方がいいのかもしれませんが。
また、「総合診療医」は専門医か専門医の対極なのかという議論になるとき、専門医は「理系」的であり、総合診療医は「文系」的である、という人がいます。後で述べるように、今はこの考え方に同意していますが、理系・文系という分類については、もともと私自身はあまり好きではなく、安易にそのような分類をすべきではない、と思っています。
ところで、なぜ人は学問に魅せられるのでしょうか・・・。勉強なんかに魅せられるわけがない!と感じる人がいるかもしれませんが、それは学問の面白くないところばかりを強要されるからであって、本来学問とは人間にとって大変魅力的なものです。なぜなら、学問とは「真実」を知るための手段だからです。多くの高校生からみたときには(私の高校時代を含めて)、教科書に書いてあることなんてムダなことばかり、と感じますが、これはつまらないことばかりが書かれているからです。
しかし、もしも高校時代に先生からこのように言われればどうでしょう。「人間とはいったい何なのでしょう。人はどこから来てどこへ向かおうとしているのでしょうか。いったい世の中の何が正しくて何が間違っているのでしょうか。真実とは何なのでしょうか。それを知るために学問があるのですよ。もちろん教科書に書いていないことで正しいこともたくさんあります。しかし、教科書に書かれていない正しいことを理解するためにも、まずは目の前のある学問に取り組みませんか・・・」
人生経験のない高校生のこのようなことを話しても理解されることはないかもしれません。私自身も自分が高校生のときにこのようなことを聞いても分からなかったと思います。しかし今なら分かります。そしてこれは私だけではないはずです。「歴史に学ぶ」ことの重要性に気付いて中高年になってから歴史の教科書を読み直す人や、高校時代に挫折した物理の入門書を読み出す人は少なくありません。
で、私が何を言いたかったのかというと、「真実を知る」ための手段が学問であり、初めから文系と理系を区別するのはナンセンスである、ということです。
しかし、最近ある新聞のコラムをみて、頑なに「文系・理系を区別すべきでない」とする私の考えも柔軟性を持たせなくてはいけないのかな、と考えるようになりました。
そのコラムとは、池上彰氏が日経新聞の月曜日に連載されているもので2014年12月8日の内容です。池上氏は東京工業大学の講義で、国内総生産(GDP)の2014年7~9月期の速報値が悪かったことを取り上げ、その原因として民間企業の在庫が減ったことを挙げ、GDPの数字は悪化したが、在庫減少はひょっとすると景気回復のサインかもしれない、という話をされたそうです。すると、学生から「在庫減少がGDPにどのように反映するか、その計算式を教えてください」という質問を受けたそうです。池上氏は「そこが気になったのか!」と、びっくりしたと書かれています。
私なら、そして多くの”文系”の人たちは、「GDPの悪化が景気悪化を意味するのか、あるいは回復の可能性があるのかを知るために、まずは他のファクターを取り入れて考えてみよう。そして、政治家、経済人、学者、外国のマスコミなど様々な視点からの意見を聞いてみよう」といった発想になると思います。しかし、「理系」である東工大の学生はまずは「在庫とGDPの計算式」なのです。
池上氏のこのコラムをみて、私が以前から主張している「文系・理系を区別すべきでない」という考えを変えるまでには至りませんが、「理系的な発想」が存在するのは認めざるを得ない、と思うようになりました。
そして、この「理系的な発想」がまさに、前回のコラムで紹介した「何でも診るということは結局何も診ないことと同じ」と主張する専門医の考え方だと思うのです。専門医というのは特定の臓器の、さらに特定の領域だけを診ます。多くの領域で治療が複雑化していますからこのように一つの小さな領域に特化した医師というのは絶対に必要ではあります。しかし、このような専門医だけでは医療が回りません。
最近私が経験した患者さんを紹介したいと思います。この患者さんは数年前から風邪、胃腸炎、湿疹、など様々なことで受診されていました。先日、ある2つの皮膚症状を話され、どちらも場合によっては入院しての高度な治療が必要と判断した私は、ある病院の皮膚科に紹介状を書きました。すると、返ってきた返事が「それら2つの皮膚症状は別々のものだから同じ医師が診ることはできない。別々に紹介状を書いてくれ」というものだったのです。患者さんからすれば、同じ皮膚なのになんで分けて受診しなければならないの?となるわけですが、一方医師から診たときには「専門医は専門分野しか診ない」というのも理解できることです。
文系・理系を区別すべきでない、という考えは変わりませんが、総合診療に取り組んでいる私は「文系的な発想」をしていることになるのかもしれません。そして、これからもこのように多角的な観点から物事を考えるクセは変わらないと思います。私は医学部に入学したときは、研究者として分子生物学を極めて真実にたどり着きたい、と考えていましたが、それを諦めた理由の一つが、分子レベルのミクロの世界の研究よりも人間全体を多角的な観点からみるのが好きということに気付いた(あるいは、思い出した)、というものです。そういう意味で、社会学に魅せられて編入学したことと、医学部でミクロの研究を断念し総合診療を志すようになったことは共通しているのではないかと考えています。
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|2015年1月9日 金曜日
2015年1月9日 食塩摂取の朝日新聞報道の混乱
2014年12月8日、朝日新聞は「日本人が1日にとっている食塩量は約13グラムとする推計を厚生労働省研究班がまとめ、英国の専門誌に論文が掲載された」と報道しました(注1)。
日本人の食塩摂取量については厚生労働省が毎年1 2月に発表しています。2013年12月19日に同省の健康局がん対策・健康増進課が公表したデータによりますと、「(2012年の)成人の食塩摂取量の平均値は男性11.3g、女性9.6gであり、前年と比べて、男女とも変わらない」とされています。
厚労省の表現では「男女とも変わらない」とされていますが、掲載されたグラフをみてみると過去10年間でゆるやかに減少していることが分かります(注2)。朝日新聞の報道は、タイトルに「1日2g多かった」としていますから、減少傾向が一転して増加したということになります。
ところが、です。朝日新聞の発表の翌日の2014年12月9日に厚労省が「平成25年「国民健康・栄養調査」の結果」をウェブサイト上で公開したのですが(注3)、食塩摂取量については、なんと「(2013年の)成人の1日の食塩摂取量の平均値は、男性11.1g、女性9.4gであり、男女ともに、10年間で減少傾向にある」、としているのです。
朝日新聞は、厚労省の研究班が「食塩摂取量が増加したことをまとめた」と報道し、厚労省のウェブサイトでは「減少傾向にある」とされています。いったいどちらが正しいのでしょうか・・・。
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厚労省は朝日新聞の報道に対して公的なコメントはしていないようですが、翌日という発表のタイミングを考えると、朝日新聞に抗議をしているのではないかと勘ぐりたくなります。
その後朝日新聞は(私の知る限り)この件になんのコメントも発しておらず、また「英国の専門誌」がなんと言う専門誌なのかについても発表していません。
閑話休題。私は報道のあり方や政治的な駆け引きをここで言いたいわけではありません。世界的には食塩摂取の基準は5~6グラムですし、国によっては3グラムを目標としているところもあります。それに比べて日本は11グラムでも13グラムでも高値であることには変わりません。
ですからみなさん、がんばって塩分を減らしましょう・・・、となるわけですが、事は簡単ではありません。和食中心の食生活では極めて困難なのです。私はこれまで何人もの栄養士に効果的な減塩レシピについて尋ねていますが、カロリーを減らすこと、野菜を摂る工夫、効果的な糖質制限、などについては熱弁をふるってくれますが、1日6グラム以下の食塩となると自信を持って答えてくれた人はいません。
『食塩1日6グラム未満でも美味しいレシピ』というタイトルで分かりやすい本を書いてくれる人が現れないでしょうか・・・(注4)。
注1:この記事のタイトルは「日本人の食塩摂取、1日2g多かった 尿測定で13g」で、下記URLで閲覧することができます。
http://www.asahi.com/articles/ASGD35SKCGD3ULBJ011.html
注2:この発表は下記URLで閲覧することができます。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000032813.pdf
注3:この発表は下記URLで閲覧することができます。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000068070.pdf
注4:分かりやすい本は見たことがありませんが、「塩を減らそうプロジェクト」というウェブサイトは有用だと思います。下記URLをご参照ください。
http://www.shio-herasou.com/
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|2014年12月27日 土曜日
2014年12月17日 認知症に効くサプリメント
サプリメントというのは以前考えられていたほど有用なものではなく、有効であることを示した研究はほとんどなく、逆に有害性の報告は少なくないために、摂取するメリットはほとんどないですよ、ということを私はよく患者さんに伝えています。私自身もサプリメントの摂取は10年以上前にやめています。
ただし私は、気に入って飲んでいるという人に対して「やめましょう」とまでは言いませんし、もしも有効であるとされる研究が出てくれば検討したいと考えています。
大豆レシチンから生成されたホスファチジルセリンとホスファチジン酸を配合したサプリメントが、高齢者の記憶・気分・認知機能を改善し、アルツハイマー病の症状改善にも有効である・・・
医学誌『Advances in Therapy』2014年11月21日号(オンライン版)にこのようなことを主張する論文(注1)が掲載されました。サプリメントを摂取したグループとしていないグループ(対照グループ)にわけて3ヶ月間の調査がおこなわれています。研究結果をまとめると以下のようになります。
・サプリメントを摂取したグループ(31人)は対照グループ(26人)に比べると、記憶力が改善し冬季うつ病の症状が改善した。
・アルツハイマー病の患者でサプリメントを摂取したグループ(53人)は日常生活機能が維持されたのに対し、対照グループ(39人)では生活機能が低下した。
・サプリメント摂取グループでは、日常生活機能が安定していたのは90.6%で、悪化したのが3.8%。一方、対照グループでは、安定が79.5%で悪化が17.9%。
・サプリメント摂取グループで全身状態の改善を自覚したのは49%で、対照グループでは26.3%。
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論文の著者は、このサプリメントで、「気分や認知機能が改善しアルツハイマー病の症状改善にも有効」としていますが、調査の規模がそれほど大きくなく、調査期間も短いために、これを普遍的なものと捉えるのは時期尚早と思われます。
しかし、有害性の報告もないようですから、度を超さない程度にこのホスファチジルセリンとホスファチジン酸のサプリメントを日常摂取することには問題ないと思います。ただし、サプリメントではなく大豆をいろんな料理から積極的に摂取する方がはるかに安全で美味しいのは間違いありません。これは大豆由来のイソフラボンについても同様です。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Positive Effects of Soy Lecithin-Derived Phosphatidylserine plus Phosphatidic Acid on Memory, Cognition, Daily Functioning, andMood in Elderly Patients with Alzheimer’s Disease and Dementia」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs12325-014-0165-1#page-1
参考:医療ニュース
2011年9月5日「イソフラボンは骨密度にも更年期にも無効」
2010年2月8日「イソフラボンで肺ガンのリスクが低下」
2008年3月12日「イソフラボンで乳がん減少」
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|2014年12月26日 金曜日
2014年12月26日 夜勤は肥満のリスク
「同じ時間に起きて同じ時間に寝る」ことの重要性はこのサイトで何度か述べていますし、日々太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)を受診される患者さんにも伝えています。
「同じ時間に起きて同じ時間に寝る」ことがなぜ重要かというと、まず生活習慣病の予防になります。規則正しい生活をするだけで血糖値やコレステロールの値が改善していく人は少なくありません。また、片頭痛が劇的に改善する人もいますし、うつ病は早起きして早寝するということを実践するだけで改善する人も少なくありません。
ただ、世の中には「同じ時間に起きて同じ時間に寝る」ことをしたくてもできない人もいます。それはシフト勤務の人です。谷口医院には片頭痛の患者さんが少なくありませんが、治療に難渋する代表的な職業が2つあります。それは(病院勤務の)看護師と客室乗務員です。この2つの職業はどうしても夜勤(や時差)を避けるわけにはいかず、片頭痛のコントロールがむつかしいのです。
「早寝早起き」という言葉は、私は小学生には用いますが、成人に対しては「早起き早寝」という表現を使います。成人の「早寝」は簡単でない場合があり、寝ようと思うと余計にプレッシャーになって眠れないということがよくあります。そこで、私は「まず早起きしましょう。前の晩眠れなかったとしても無理矢理にでも起きてみてください」とよく言います。その日1日は睡眠不足になりますが、そのおかげでその晩は早寝ができます。そして次の日も多少無理してでも早起きするのです。
前置きが長くなりましたが、今回紹介したいのは「夜勤をすると代謝が遅くなる」、つまり「夜勤は肥満の元」であることを示した論文です。
医学誌『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』2014年11月17日号(オンライン版)に掲載されています(注1)。
研究者らはボランティア14人に6日間研究所で暮らしてもらっています。最初の2日間は正常なスケジュール(朝起床夜就寝)で過ごしてもらい、その後、夜勤スケジュールに変更し、夜間に起きて日中に眠ってもらっています。食事は厳格に管理し毎日同じカロリーを摂取してもらっています。
その結果、夜勤スケジュールの日は消費カロリーが平均で3%低下したそうです。
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この研究は、被験者が少なく、調査期間が短いようですが、おそらく「シフト勤務が肥満を招く」というのは私が患者さんを診ている経験からいって間違いないと思います。
ただし夜勤シフトのある職場で働いている人が「太りたくないから夜勤のシフトから外してください」とは言えないでしょう。それに、看護師や客室乗務員だけでなく夜に働いてくれる人がいなければ社会は回らないわけで、誰かがやらねばなりません。
今やるべきことは、夜勤がどれだけ健康に害を与えるかという研究を広げ、ひとりあたりの夜勤の量を最小限にして、夜勤勤務者は日頃健康のことでどのようなことに注意すべきかについての指導を受ける、といったことだと思います。
(谷口恭)
注1:この論文のタイトルは「Impact of circadian misalignment on energy metabolism during simulated nightshift work.」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.pnas.org/content/111/48/17302.abstract?sid=4c4f3230-a9ae-4ffc-926a-535c2eac38ba
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|2014年12月25日 木曜日
2014年12月25日 「遅延型食物アレルギー」に騙されないで!
食物アレルギーの患者数がここ10年ほどで大幅に増加しているのは間違いありません。2010年頃から注目されだした「茶のしずく石鹸」を使用したことにより発症した小麦アレルギーの被害者は2,100人以上に及びました。2012年12月には東京都調布市の市立小学校で小学5年生の女子生徒がチジミを食べてアナフィラキシー(食物アレルギーの最重症型)を発症し死亡するという痛ましい事故が起こりました。これらはマスコミでも大きくとりあげられました。
原因のはっきりしない蕁麻疹(じんましん)や湿疹が生じると、その原因が食べ物のアレルギーなのではないか、と考える人は少なくなく、太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)にもよく受診されます。食物アレルギーを患う患者さんが増えているのは紛れもない事実であり、重症化すると死亡することもあると聞けば、不安になるのも無理はありません。
谷口医院でも何らかの食物アレルギーの診断がつく患者さんは少なくありません。ただし、食物アレルギーの診断はそう簡単にできるものではありません。血液検査で食物アレルギーの有無が簡単に分かる、と考えている人が多いのですが、これは正しくありません。
食物アレルギーの診断に最も有用なのは、血液検査ではなく「食物負荷試験」です。これは実際にその食べ物を少量食べてもらい症状が出現するかどうかを調べる方法で、その食べ物を摂取することで重症化する可能性がありますから通常は入院が必要です。
次に診断に有用なのは、その症状と食べ物のエピソードを念入りに問診する、という方法です。当然のことながらこれには相当の時間がかかります。症状が出現する前に食べていたものを調味料のレベルまで検索しなければなりません。場合によっては(頻度は少ないですが)半日以上前に食べたものを聞くこともあります。
血液検査で調べる特異的IgE抗体の信頼度はその次となります。つまり、特異的IgE抗体が陽性というだけでは本当にその食べ物にアレルギーがあるのかどうかは分からないのです。特に小児の場合は、その食べ物を食べられないとなると成長に影響がでる可能性がありますし、アレルギーがある場合は、給食のメニューを変えないといけないですから、給食を供給する人たちや担任の先生は大変なのです。最近は学校関係者の方々の知識が豊富になり「特異的IgE抗体が陽性だけでは診断できないですよ」ということを父兄に教えてくれることもあります。実際、何の問題もなく食べているものも血液検査をすれば陽性になることは特に子どもの場合はよくあります。
谷口医院では現在小児の食物アレルギーは診察しておらず成人のみを診察・治療しています。成人の場合も、特異的IgE抗体の結果はあくまでも「参考」なのですが、小児と比べれば比較的実情を反映していると言えます。
アレルギーというのは様々なタイプがあり、そのものに触れて(食べて)すぐに症状が出るものもあれば、「遅延性」と呼ばれる2~3日してから症状が出現するものもあります。金属アレルギーや、マンゴーを食べた2~3日後に口の周りに湿疹が生じるアレルギーはこのタイプです。(これは食べたマンゴーが原因なのではなく口の周りに触れたマンゴーが原因であり食物アレルギーではなく「接触皮膚炎」となります) 一部の薬疹のように、薬を飲み終わってしばらくしてから症状が出現するタイプのアレルギーもあります。
ただし、食物アレルギーは「即時型」、つまり、食べてから数分~1時間程度で症状が出現します(注1)。食べてから丸1日以上が経過してから発症するような「遅延性」はないと考えられています。
ところが、です。ここ1~2年の間、谷口医院には次のような患者さんがときどき受診されます。
患者:血液検査でIgG抗体が陽性の遅延型食物アレルギーがあるからコメを食べないように言われて食べていないのですが、これからも食べてはいけないのでしょうか。
医師(私):コメを避けて変化はありましたか?
患者:何もありません。ニキビと下痢と湿疹が治るはずだって聞いたんですけど・・・。
医師(私):検査をしたところでは何と言われたのですか?
患者:IgG抗体が陽性だからとにかくコメを避けるべきと言われたのです。あたしが、前は普通に食べていたし、やめてからも何も変わりません、と言うと、じゃあ少しだけ食べますか、って言われました。あたしが、少しだけってどれだけですか、って質問すると、それは自分で考えてください、と言われました・・・。
この検査をしたところが医療機関かどうか不明ですし、返答したのはおそらく本物の医師ではないでしょう。しかし、このような患者さんが複数人受診されましたからこのような検査を実施しているところがあるのは事実です。
そもそもこの「IgG抗体が関与した遅延型食物アレルギー」というのは海外では昔から否定されているものです。日本のアレルギー関連の学会は公式な見解を発表していなかったために、そこを狙って悪徳業者が金儲けのために食物アレルギーに不安を抱く日本人をターゲットにしたのでしょう。
しかしついに2014年11月19日、日本小児アレルギー学会は、この検査を「推奨しない」と発表しました(注2)。日頃患者さんをみている我々医師からすると、「推奨しない」ではなく「禁止する」くらいに言ってほしかったのですが、学会の立場としては、そこまで強い表現はとれなかったのでしょう。(一般に「ない」ことを証明するのは困難だからです)
アレルギー関連の学会はいくつもありますが、そのなかで日本小児アレルギー学会という比較的小規模な学会がこのような注意喚起を発表したのは、成人よりも小児で被害が相次いでいるからだと思われます。先に紹介したコメ制限を命じられた患者さんのように、食物のIgG抗体は正常な人でも陽性になることがよくあり、IgE抗体のように「参考」にすらなりません。したがって、このようなものを指標にして食事制限するなどというのは愚の骨頂です。小麦や米、卵といった貴重な栄養をとらなくなり成長障害や栄養不良が起これば、いったい誰が責任を取るのでしょうか。
報道によりますと、この「遅延型食物アレルギー」のキットは3~5万円もするそうです。当たり前ですが当然保険適用はありません。(もちろん、通常のIgE抗体は保険で検査ができます)
注1:食べた後運動をしたときに発症する食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)は運動をする分だけ時間がかかりますが何時間もたってから発症するわけではありません。下記「はやりの病気」も参照ください。また、食物アレルギーに例外がないわけではなく、私の知る範囲では「納豆アレルギー」が遅発性(「遅延性」ではありません)です。この場合は半日くらいたってから発症することが多いと言われています。納豆アレルギーは大豆の特異的IgE抗体は陰性になります(注3)。他には、牛肉アレルギーも数時間経過してから発症すると言われています。
はやりの病気第94回(2011年6月20日)「小麦依存性運動誘発性アナフィラキシー」
注2(2019年12月15日付記):現在このページは削除されています。
付記(2015年3月1日):日本小児アレルギー学会に引き続き日本アレルギー学会も注意喚起を発表しています。下記URLを参照ください。
https://www.jsaweb.jp/modules/important/index.php?content_id=51
注3(2016年9月付記):納豆アレルギーはサーファーに起こりやすいことからクラゲが原因と言われています。詳しくは下記を参照ください。
はやりの病気第157回(2016年9月) 最近増えてる奇妙な食物アレルギー
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|2014年12月23日 火曜日
第136回(2014年12月) 巻き爪はテーピングだけで大きく改善
あまり深刻な病気とは捉えられませんが「巻き爪」で悩んでいる人は少なくありません。ときに眠れないほど痛くなることもありますし、細菌感染を起こして抗菌薬が必要になる場合もあります。
巻き爪の治療というのは従来は手術が基本でした。最も古典的な治療法は「爪をすべて取ってしまう」という荒っぽい方法ですが、その後いろんな手術法が考案されています。実は、私自身が医師になり初めてひとりでおこなうことを許された手術が巻き爪の手術です。
私が形成外科で研修を受けていた頃、ほぼ毎日何らかのかたちで外科的な処置をさせてもらっていたのですが、自分ひとりで最初から最後まで手術をおこなうということはなかなか許してもらえませんでした。しかし、当時はどんなことでも勉強になりましたから、どのような手術でも補助的なことをさせてもらうために積極的に関わらせてもらっていました。
縫合にはいろんな方法があり、きれいに縫うためにはかなり訓練をつまなくてはなりません。技術がないのに患者さんの皮膚を縫うわけにはいきませんから、手術であまった糸をわけてもらい、縫合の練習用のシリコンシートと持針器やハサミを寮に持ち帰り練習していました。ある程度できるようになると、自分の当番のとき以外も深夜の救急外来に入らせてもらい、縫合が必要になる症例がくると「自分にやらせてください」と言って縫合の機会を増やしていきました。
不謹慎な表現と思われるでしょうが、当時の私は縫合が楽しくて仕方がありませんでした。転倒して頭から血を流している泥酔者や、リストカットをしてわめいている若い女性というのは、医療者からすると好まれないことが多いのですが、私はこういった患者さんもまったく苦にならずに喜んで縫合させてもらっていました。もっとも、私は他の研修医に比べると、泥酔者や精神錯乱をきたしている若い女性とのコミュニケーションもさほど苦痛に感じなかったので、こういった症例には向いていたのかもしれません。
傷を負って救急外来を受診される症例と、腫瘍摘出などの手術症例とはまったく異なります。手術は医師がメスで患者さんの皮膚に傷をつけるからです。そのため、皮膚腫瘍の手術を、最初から最後までひとりでおこなうことはなかなかさせてもらえないのです。
話が大きくそれてしまいました。巻き爪に話を戻します。私が初めてひとりでおこなうことを許された手術が巻き爪の手術で「フェノール法」という方法です。もっとも、この手術はメスを使わずに、麻酔をかけてハサミで爪を縦に切り「爪母」と呼ばれる爪の根元にフェノールを塗布して爪がはえないようにするという方法です。麻酔をかけて爪をハサミで切るだけの単純な処置ですから、手術と呼ぶほどのものではないかもしれません。しかし自分が初めて「執刀医」をした手術ですから今もそのときの様子は鮮明に覚えています。もちろん手術記録も残しています。
さて、巻き爪というのはありふれた疾患ですから、形成外科での修行を終えた後、大学の総合診療部に入ってからも私はフェノール法で巻き爪の治療をおこなっていくつもりでいました。
ところが、です。その後皮膚科や形成外科の研修を続けているうちに、フェノール法を含めて「爪を切る」という治療が最善でないことを知ることになりました。フェノール法以外には「鬼塚法」という術式があるのですが、この方法でも爪を縦に切ることになります。これらの術式であれば手術をすればすぐに痛みから解放され、術後の患者さんの満足度は高いのですが、数年から10年くらい経過すると再び残った爪が巻いてくることがあるのです。こうなると次は爪をすべて取ってしまわなければなりません。
足の親指の爪というのは意外に重要で、スポーツ選手などは爪がなくなるとパフォーマンスが大きく落ちるという人もいます。おそらく体幹のバランスをとるのに何らかの関与をしているのでしょう。そして、こういった点を考慮すると、フェノール法でも鬼塚法でも、あるいは他の方法でも巻き爪の治療で爪を切ること自体が適切でないということになります。
そこで、爪を温存したまま巻き爪を治す治療法について勉強することになりました。私が総合診療部に籍を置きながら勉強に行っていた皮膚科・形成外科のクリニックではVHO法という術式をおこなっていました。これは爪の両端に特殊なワイヤーをかけて曲がった爪をまっすぐにする方法です。非常によく考えられた方法ですが実践するのには訓練が必要でライセンスを取得しなければなりません。そこで私はメーカーが主催するセミナーに参加しライセンスを取得しました。
ただしVHO法は保険適用がなくコストが高くなりますので、もう少し安い治療法も検討すべきです。比較的簡単な方法に、形状記憶の金属プレートを爪に装着させる、と言う方法があります。専用の長方形のプレートを爪に接着させ、毎日患者さんに自宅でドライヤーを用いて熱を加えてもらうという方法です。熱が加われば金属はまっすぐになろうとし曲がった爪がまっすぐになるというわけです。
爪と皮膚の間にセルロイドのシートを置く、という方法もあります。これはレントゲンのフィルムのようなセルロイドのシートを食い込んでいる爪の下に置く方法で痛みが速やかに軽減されます。また、点滴に用いるチューブを1~1.5cmくらい切り取って縦にハサミを入れそれを巻いている爪を保護するようなかたちで留置する、という方法(これを「ガター法」と呼びます)もあります。
こういった方法を組み合わせれば、フェノール法をおこなわなくても、つまり爪を切らなくても治療ができるわけで、クリニックをオープンした年(2007年)にはそれなりにおこなっていました。
しかし、以前にも述べたことがありますが、大きな手術でないとはいえ、これらの処置には麻酔を要することも多くそれなりに時間がかかります。医師ひとりのクリニックでは到底おこなうことができず1年もたたないうちに中止せざるを得なくなりました。巻き爪だけでなく、オープンした当時は皮膚腫瘍摘出術なども積極的におこなっていましたが、巻き爪と同様、時間的な制約から続けることができなくなりました。
しかし巻き爪の患者さんは少なくありません。そこで私は患者さん自身に自宅でテーピングをおこなってもらう方法を伝えるようにしました。重症化するとこの方法では治りませんが、軽症から中等症くらいであれば多くの症例で、少なくとも痛みに関しては改善するのです。初診時には、手術が必要になるかもしれないと思える症例や難治性の症例でも適切なテーピングだけで痛みから改善され、見た目には劇的な改善をしていなくても治療を要するほどではなくなることも多いのです。
そして、巻き爪にはテーピングが有効であるということをまとめた論文が最近発表されました。『The Annals of Family Medicine』という家庭医(総合診療医、プライマリ・ケア医)向けの医学誌の2014年11月12月号に掲載されており(注1)、執筆したのは日本の医師です。この論文が皮膚科・形成外科の専門誌でなく家庭医向けの医学誌に掲載されたということは、テーピングによるこの方法が有効であるというだけでなく、簡単におこなえるということを物語っています。
論文を執筆した医師は、テーピングを指導した合計541例(男性182例、女性359例)の症例を分析しています。2ヶ月が経過した時点で、約半数の44.5%で爪の形が改善したそうです。残りの半数では他の治療が必要となったものの、それでもほとんどの症例ではテーピングだけで痛みが改善したそうです。
では、どのようにテーピングをおこなうかですが、これを文章にするのは困難なので、この論文に掲載されている写真を参照してみてください(注2)。
ところで巻き爪は治療よりも大切なことが2つあります。1つは「爪を切りすぎない」ということで、実際巻き爪の原因のほとんどが爪の切りすぎです。足の爪については多くの人が切りすぎています。手の指は少々深爪をしても問題になりませんが、足の指は要注意です。どれくらいが適切かというと、足の裏からみて爪が見える程度、靴下をはくときに爪がひっかかってはきにくいと感じる程度がいいと私はよく患者さんに話しています。
もうひとつ大切なことは、もしも爪の水虫があれば速やかに治療をおこなうということです。爪の水虫は爪が濁ってきますから、それを取り除こうとしてついつい爪を切りすぎてしまいます。また水虫に侵されることで爪がボロボロになり切らなくても爪が短くなっていくことがありこれも巻き爪のリスクになります。
では巻き爪をまとめておきましょう。
・巻き爪の原因のほとんどは「爪の切りすぎ」であり、多くの人が切りすぎている。(つまり、多くの人が巻き爪になるリスクがある)
・爪の水虫があると巻き爪をおこしやすい。速やかな治療を検討すべき。
・巻き爪で手術をおこなうと将来再発することが多い。VHO法、ガター法など手術の前に検討すべき治療法がいくつもある。(ただしこれらの一部は保険適用外の治療です)
・医療機関で治療をおこなわなくても自身でおこなうテーピングで改善することが多い。
注1:この論文のタイトルは「Patient-Controlled Taping for the Treatment of Ingrown Toenails」で、下記URLで全文を読むことができます。
http://annfammed.org/content/12/6/553.full
注2:下記URLで写真を見ることができます。
http://annfammed.org/content/suppl/2014/11/07/12.6.553.DC1/Tsunoda_Supp_App.pdf
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|2014年12月22日 月曜日
■インフルエンザワクチン終了のお知らせ(2014年11月17日)
2014年11月17日をもってインフルエンザワクチンが終了いたしました。現時点では新たに入荷する予定はありません。
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|2014年12月20日 土曜日
第143回(2014年12月) STAP細胞”誕生”の理由
私にとって2014年に最も印象深かった言葉は「STAP細胞」です。毎年12月1日に発表される「現代用語の基礎知識」がおこなっている「流行語大賞」に、私は「STAP細胞」が間違いなく選ばれると思っていたのですが、結果はトップ10にも入っていませんでした。
しかし、広告業界のポータルサイトの「AdverTimes(アドバタイムズ)」が選んだ「2014年のワースト謝罪会見」(注1)の第1位に、理化学研究所(以下「理研」)の小保方晴子氏がおこなった釈明会見が選ばれていました。(謝罪はしておらず「謝罪会見」のランキングに選ばれるのはおかしいような気がしますが・・・)
私自身は研究者とは呼べませんし、これからもこのような研究に関与することはありませんが、当初理研(というか小保方氏)が発表していたように、いったん分化した細胞が未分化細胞に戻るということが、酸にさらすといった単純な方法で起こりうるのなら、これは大変なことになると感じ「複雑な思い」を抱きました。
「複雑な思い」というのは、2014年1月にこの発表を聞いたとき、「そんなことが起こるはずがない」と感じたからです。しかし、これは「仮説」ではなく実験で証明されており科学誌『Nature』にすでに掲載されており、理研の優秀な研究者たちのおこなった研究なのです。後から手のひらを返したように小保方氏をバッシングしだした科学者たちも当初はこの業績を絶賛していました。医師のメーリングリストでも称賛を讃えるコメントのオンパレードだったのです。
理研は2014年11月末を期限にSTAP細胞の再現実験をおこない、その結果作製に成功しなかったことを12月19日に発表しました。「ない」ことを理論的に証明することは困難ですが、これで事実上STAP細胞は存在しないとみなされることになります。
STAP細胞については、実に様々な人たちが、それは一般のネットユーザーから科学者までが、いろんな議論をし尽くしていますから、もう話すべきことはないかもしれませんが、なぜSTAP細胞が生まれたのかについて私はひとつ主張しておきたいことがあります。
STAP細胞”誕生”の経緯を報道などから簡単にまとめておくと、まず幹細胞の研究者でもあるハーバード大学教授のチャールズ・バカンティ氏の研究室に小保方氏が留学し、STAP細胞の存在に興味をもち研究を開始しました。帰国後、小保方氏は理研の客員研究員として若山照彦氏の研究室で本格的な研究に取り組みます。その後、理研の研究ユニットリーダーに就任し、(後に自殺することになる)笹井芳樹氏をメンター(上司)として研究を重ねSTAP細胞の作製に”成功”するのです。
この経緯のどこに「問題」があったのでしょうか。STAP細胞などというものは、私も含めて科学や医学を少しでも勉強した者にとってみれば「突拍子もないありえない物」です。ですからこんなもの初めから研究すること自体がおかしい、という声もあるでしょう。しかし、私はこの点はむしろ小保方氏は”素敵”だと思います。誰も考えつかないような突拍子もないものを研究するこの態度と行動は個人的には応援したくなります。
では、実際にはないものを「ある」と狂信的に信じて研究を重ねたことはどうかというと、私はこの点についても小保方氏の行動を非難したくありません。実験というのは、手順をまず決めてそのとおりにしていると”たまたま”世紀の大発見ができたなどというのはほとんどが「嘘」です。ニュートンがリンゴが木から落ちるのをみて万有引力の法則を発見したというのはおそらく後からつくりあげた話です。よしんばそれが事実だったとしても、ニュートンは万有引力の法則があることを初めから確信していたはずです。
野口英世は梅毒の病原体の培養に”成功”したと発表しましたが、その後誰も成功していません。野口は狂犬病の病原体も発見したと発表しましたが、これは後に完全に誤りであることが分かりました。狂犬病の病原体はウイルスであり、野口が寝食を惜しんで覗いていた顕微鏡では見えないのです。野口は金と女性にだらしなく人間的に尊敬されるべき人物ではないかもしれません(注2)。しかし、そのような私生活があり、研究成果を残せなかったのは事実だとしても、それでも科学者として研究に取り組む態度は尊敬に値します。
存在するはずないと(普通の科学者なら)誰もが思うSTAP細胞の研究に小保方氏が寝食を惜しんで(見たわけではありませんが)取り組んだことについては、私は氏に尊敬の念すら感じます。
しかし、あるはずと信じていたSTAP細胞が作製できなかったとすればそのときはどうすべきだったのでしょうか。『Nature』に論文を発表した2014年1月、そして釈明会見をおこなった4月にも、小保方氏はSTAP細胞の存在を信じていたと私は思います。しかし同時に、STAP細胞が”まだ”きちんと証明できていないことも知っていたはずです。
一部の評論家や精神科医は、虚偽の研究成果を堂々と述べる小保方氏にはもともと人格障害があったなどと言っているようですが、私には他に理由があるように思えます。私は氏の精神異常やパーソナリティ障害の有無を論じる立場になく、そのようなことはできませんが(実際に診察したわけでもないのにマスコミの報道だけから推測で病名を公表する精神科医が私には理解できません)、たとえパーソナリティの問題が氏にあったとしても、それ以上に彼女の暴走の原因となった「問題」があります。
その「問題」は早稲田大学にあります。小保方氏は2002年に早稲田大学理工学部応用化学科に入学し、その後大学院に進み2011年には論文が評価され博士の学位を取得しています。しかしこの論文に不正がありました。
2014年7月17日に発表された早稲田大学の調査委員会の報告書によると、「(小保方氏の論文は)著作権侵害行為であり、かつ創作者誤認惹起行為といえる箇所が11カ所もある」とされています。つまり、他人の論文から勝手に拝借した箇所が多数あったことを大学が正式に認めたのです。11箇所と聞いてもどれだけのものかわかりにくいですが、発表によればなんと論文全体の2割にも相当するそうです。論文の2割が他人が書いたものを拝借していたとは・・・、私に言わせればこれは「学問に対する冒涜」以外の何物でもありません。
他の論文からわずかでも拝借するとそれだけで学問に対する冒涜になるのか、という反論があるかもしれません。私自身も、関西学院大学理学部に在籍していた頃、実験のレポートが書けなくて同じ班のメンバーにレポートを見せてもらっていました(注3)。しかし完全な丸写しはしていませんし(自慢になりませんが・・・)、実験のレポートと博士論文では重みが違いすぎます(これは説得力がないかもしれませんが・・・)。
学生時代に同じ班のメンバーにレポートを見せてもらっていた私には小保方氏を非難する資格はないかもしれません。しかし、そんな私も早稲田大学には強く抗議をしたいと思います。私の母校のひとつの関西学院大学はキリスト教に基づいた大学ということもあり、不正には厳しい処罰が下されていました。私がしたような他人にレポートを見せてもらうというくらいではあまり問題にならないでしょうが(それでも「丸写し」すれば即留年でしょう)、論文に一部でも他の文献からコピーしたところがあったり、テストでカンニングをおこなったりすれば、悪ければ退学、よくてもその年の単位すべて取り消し、さらにキャンパス内の教会で牧師さんの前に跪いて懺悔をしなければなりません。
一方、早稲田大学では、小保方氏の博士論文に対し大学側が正式に不正を認めているのにもかかわらず、「博士号の取り消しには当たらず猶予期間中に論文が再提出されれば学位を維持する」としたのです。まともに考えれば不正が発覚した時点で即博士号取り消しにすべきです。
早稲田大学グローバルエデュケーションセンターのウェブサイト(注4)をみてみると、「レポートにおける剽窃行為について」というタイトルで不正行為の処分についての記述があり、「不正行為が発覚した場合(中略)、その時点で履修しているすべての科目の無効、停学を含む厳しい処罰が下されます」とされています。なぜ小保方氏には再提出の猶予が認められるのでしょうか。
さらに私が不思議なのは、早稲田の卒業生や在学生がなぜ大学側のこの対応に黙っているのか、ということです。論文に不正がみつかっても再提出すればお咎めなし、でOKなら、不正が見つからなければやってもいいんだ、と考える学生が出てくるに違いありません。卒業生は周囲から「お前も不正で卒業したんじゃないのか」と思われるかもしれません。
このような杜撰な環境の大学で研究を続けていれば、「しょせん学問なんていい加減なもの、論文の作成なんてどうにでもなるんだ」、という意識が芽生えても不思議ではありません。「『Nature』に提出した論文が少々いい加減でも咎められることはないだろう。STAP細胞は確実に存在するんだから、そのうちに追随者がもっときちんとしたデータをつけてSTAP細胞の存在を確固としたものにしてくれるに違いない。みなさんがんばってね!」と小保方氏は考えていたのではないでしょうか。
STAP細胞が”生まれた”理由のひとつは早稲田大学の杜撰な教育体制。それが私の考えです。
注1:下記URLを参照ください。
http://www.advertimes.com/20141204/article176736/
注2:野口英世のこういったエピソードについては下記コラムで触れています。
マンスリーレポート2014年6月号「渡辺淳一氏の2つの名作」
注3:レポートと同じ班のメンバーに見せてもらっていたことは下記コラムで紹介したことがあります。
マンスリーレポート2013年10月号「安易に理系を選択することなかれ(前編)」
注4:下記URLを参照ください。
http://www.waseda.jp/gec/about/info/academic/info_report/
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|2014年12月12日 金曜日
2014年12月号 「総合」なるものの魅力(中編)
前回は、私が研修医1年目のときに訪れたタイのエイズホスピスで、ボランティアに来ていたGP(総合診療医)のベルギー人医師から「総合診療」の魅力を感じ取ったこと、研修期間を終えてから再びエイズホスピスに訪問し、そのときにボランティアをしていたアメリカ人のGP(総合診療医)からも多くのことを学んだこと、帰国後に大学の総合診療科の門を叩き、複数の医療機関の複数の科で勉強させてもらうようになったこと、などを述べました。
その後自分はどのような道を歩むべきなのかについては随分と悩みました。流れに身をまかせるなら、そのまま大学病院に勤務するという道になりますが、この選択肢は比較的早い段階で消しました。
というのは、大学の総合診療科の外来には、たしかに「どこの科に行っていいか分からない・・・」とか「これまでいくつもの病院を受診したけど診断がつかなくて・・・」といった患者さんも来られ、このような患者さんの診察に私はやりがいを感じますが、多くは診断がつけばそれで終わりになり「この次からは近くの診療所を受診してください」となります。これが大学病院のあるべき姿ですから仕方がないのですが、私としては「気になることがあればまたいつでも相談してくださいね」という医師でありたいのです。
再びタイに渡航してタイのエイズホスピスでボランティアを続ける、という選択肢も現実的でないという気持ちが強くなってきました。ボランティアを続けるにはどこかでお金を稼がなければなりません。例えば、日本の病院で何ヶ月か働いて、お金が貯まれば再びタイに、という方法はできなくはありませんが、こういう働き方であれば深夜や土日の救急外来のアルバイトや健康診断のアルバイトで稼ぐことになり、このようなことだけをやっていると自分の勉強にはあまりならずに医師として成長できません。医師としてまだまだ勉強しなければならないことがあるのに、このような働き方をしてしまうと結果として患者さんに貢献できなくなります。
そこで私が最終的に下した結論は、大学に籍を置きながら自分自身のクリニックを開設する、という方法です。この方法なら継続して患者さんを診ることができて「気になることがあればいつでも相談してくださいね」という医療を実践することができます。国内(外)の学会や研究会に参加することもできますし、大学での仕事も続けられますし、研修医や学生をクリニックに招いて研修を受けてもらうこともできます。タイのエイズ患者さんの支援については、年に1回はタイに渡航し、患者さんの直接支援は困難になりますが、エイズ孤児やHIV陽性の人たちをケアしている組織や施設、地域社会を支援することならできます。
今の私の生活は丸1日休める日は年に10日程度しかありませんし、朝7時前にはクリニックで仕事を開始し、クリニックを出ることができるのは午後9時前後、遅ければ10時を回ります。昼休みもカルテ記載などで休憩時間は食事の時間を入れて20分程度しかありません。労働時間だけをみると明らかに「過重労働」で、身体的にも精神的にもストレスを感じているのは事実ですが、それでも「やりがい」を感じることができています。医学生や研修医から「プライマリ・ケア(総合診療)の醍醐味は何ですか?」と聞かれると、「患者さんからどんなことでも相談を受ける、患者さんから最も近い医者であること」と答えています。
総合診療が好きでないという医師からよく聞くセリフに「何でも診るということは結局何も診ないことと同じ」というものがあります。たしかに総合診療医は、大きな手術はしませんし、心臓カテーテル検査もおこないません。分娩をおこなうこともありませんし、虫歯の治療もしなければコンタクトレンズの処方もしません。
では「何も診ていない」のかと言えばもちろんそんなわけはなくて、受診された患者さんの95%くらいは治療をおこなうことができます。この数字は世界どこでも共通しているようで、現在太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)を受診する患者さんに対して、専門病院を受診するよう助言し紹介状を作成するのは全体の5%未満です。しかも紹介状を書けばそれで終わり、というわけではなく専門的な検査や治療が終われば大半の患者さんは再び戻ってこられます。
ただし、コモンディジーズ(よくある病気)については、可能な限り自分が診るべきだ、という考えはありますから、谷口医院(当時は「すてらめいとクリニック」)を開院した当時は、簡単な皮膚の手術はしていましたし、時間をとったカウンセリングもおこなっていました。また、結局実施することはありませんでしたが、関節疾患に対する関節内注射や骨折に対するギプス固定、小児のアレルギー検査などもおこなう予定をしていました。(さすがに分娩や中絶手術は初めから考えていませんでした。しかし、離島や僻地などでは総合診療医がこれらもおこなっています)
ところが、実際にクリニックを始めてみて「現実」を思い知ることになります。最も問題となったのは「時間」です。ギプス固定や手術、カウンセリングなどはそれなりに時間がかかり、また看護師や他のスタッフの人手も必要になります。結局、医師ひとりのクリニックでできることは限られているという現実を思い知らされ、次第に診療内容を狭めていくことになりました。
ただ、よく考えてみると、普段当院を受診している人が明らかな骨折をすればまず当院を受診するよりも初めから救急対応をしてくれる医療機関を受診した方が早いですし、谷口医院のように都心部に位置したクリニックであれば周囲に専門機関がありますから、例えばカウンセリングが必要な症例はそちらにお願いするのが現実的です。手術については、皮膚のできものを取る程度のものや巻き爪の手術は開院当初は実施していましたが、そのうちにすべての手術症例を近くの外科対応してくれる病院にお願いするようになりました。
現在の谷口医院は「どんなことでも相談してください」というスタンスは崩していませんが、受診される患者さんの層にはいくらかの特徴があります。大半の患者さんは働く若い世代であり、小児や高齢者はあまり多くありません。総合診療医の多くは在宅医療や看取りまでしていますが、谷口医院ではこれらに対応していません。
谷口医院で多い疾患は、まず風邪や胃腸炎、膀胱炎などの急性感染症、ついで喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー疾患、その次が生活習慣病になるでしょうか。ただし、「高血圧などの生活習慣病があって、それに花粉症もあって、そられは落ち着いているけど今日は風邪で受診」といった人が多く、むしろ何かひとつの疾患単独で受診している人の方が少ないと言えます。長引く倦怠感、原因不明の熱、不眠や不安、抑うつ状態といったことで受診される患者さんは開院以来常に多く、HIVを含む性感染症の治療や感染したかもしれないので相談に来た、という人も少なくありません。
総合診療医の対局にあるのが「専門医」であり、現在の医療はより専門的な知識や技術が要求されますから専門医は絶対に必要です。例えば、私はこの夏(2014年8月)に自身の変形性頚椎症に対して手術(全身麻酔下観血的後方除圧及び椎弓形成術)を受けましたが、これは極めて高度な手術であり、執刀してくれた先生はこの道一筋の名医です。椎弓形成に必要な人工骨を自ら開発されているような先生ですから専門医のなかの専門医です。
総合診療医と専門医は対極の関係にあるということができます。しかし、総合診療医は総合診療の「専門医」という考え方もあり、この考え方も間違ってはいないと思います。実際、2017年から始まる新しい専門医制度では「総合診療専門医」というものをつくることが決まっています。
この話を聞いたとき、つまり、総合診療医は専門医か専門医の対極なのかという議論になるとき、私はある<懐かしい記憶>を思い出しました。そしてもうひとつ。総合診療医のように「どんなことも診るべき」と考える医師と、「専門分野だけを診たい」と考える医師がいるのがなぜなのかについて、私は最近新聞に掲載されたあるコラムをみて、なるほど、と思いました。次回はそのあたりについてお話いたします。(<懐かしい記憶>については今回述べる予定でしたが、字数がオーバーしてしまいましたので次回に回すことにしました)
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