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2013年7月17日 水曜日

2010年3月16日(火) 糖尿病とアルツハイマーが互いに悪影響

 糖尿病とアルツハイマー病は互いに影響しあい、発症を早めたり、症状を悪化させたりする・・・

 これは、大阪大学の研究チームがマウスの実験で得た研究結果で、論文は米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National
Academy of Sciences of the United States of America:PNAS)に掲載されています。(オンライン版で公開されたのは3月15日、詳細は下記URL参照)

 糖尿病を発症するとアルツハイマー病のリスクが上昇する(2倍以上になるとも言われています)ことは以前から知られていたのですが、今回の研究ではモデルマウスを使ってそれを証明することに成功しています。

 研究チームは、遺伝子操作により糖尿病とアルツハイマー病の双方を発症したマウスを作製し、このマウスでは、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの脳の血管への沈着が強く起きることを証明しています。アミロイドβの量そのものは、アルツハイマーのみを発症させたマウスと差はなかったそうです。

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 糖尿病の病態を端的に表現すると、「小さな血管がボロボロになる病気」と言えるかと思います。糖尿病で足が壊死する(腐る)のも足の小さな血管に血流がいかなくなることで起こりますし、網膜症となり失明するのも、網膜を走行する血管の障害が原因です。

 ここから考えると、糖尿病では脳の細い血管がボロボロになり、その結果、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβがボロボロになった血管に付着しやすくなるのだと思われます。

 糖尿病の多くは生活習慣の乱れから生じるものです。生活習慣の見直しをおこなうことによって、将来アルツハイマーとなるリスクも下げられそうです・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Diabetes-accelerated memory
dysfunction via cerebrovascular inflammation and A depositionin an Alzheimer mouse model with diabetes」で下記のURLでabstractを読むことができます。

http://www.pnas.org/content/early/2010/03/03/1000645107.abstract?sid=1ad46a54-b71d-456b-a505-86711e8275bf

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月23日(火) AED使用で3割が社会復帰!

 AEDの有用性はこのサイトでも何度か紹介しています。現在は世界の多くの国で公共の場に置かれており、日本でも次第に駅や空港などで目にする機会が増えているように思われます。AED(自動体外除細動器、Automated External Defibrillator)は、簡単に言えば心臓に電気ショックを与える器械のことで、2004年7月から一般市民でも使うことができるようになっています。

 京都大学保健管理センター(予防医療学)の石見拓助教授らの研究で、公共の場に置かれているAEDを市民らが使用することによって心停止患者が社会復帰できる割合が2倍以上に高まることが分かりました。医学誌『New England Journal of Medicine』オンライン版2010年3月18日号に論文が掲載されています。(下記URL参照)

 研究チームは、2005年から2007年の消防庁などの全国統計から、AEDが必要と考えられた18歳以上の心停止患者12,631人について分析しています。12,631人のなかでAEDが使用されたのは462人で、1ヵ月後に31.6%の146人が社会復帰していたことが分かりました。一方、AEDが使用されなかった12,169人のうち社会復帰できたのは13.7%の1,669人にとどまっています。

 AEDを使って電気ショックを与えるまでの時間が1分早まるごとに、社会復帰できる率が9%ずつ増加するといわれています。研究グループは、AEDが普及しだしたことを評価すると同時に、さらに設置台数を増やす必要があることを主張しています。

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 以前、私もAED普及の活動をお手伝いさせてもらっていたことがあるのですが、このニュースを書いていて石見先生にお世話になったことを思い出しました。日本のAEDは2004年以降、各地で急速に普及していますが、これは石見先生らの啓蒙活動によるところが大きいのは間違いありません。

 私個人としても、AEDがもっともっと普及し、そしてAEDを使いこなせる一般市民が増えることを願います。

(谷口恭)

注:上記論文のタイトルは「Nationwide Public-Access Defibrillation
in Japan」で下記のURLでabstractを読むことができます。

http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/362/11/994

参考:
医療ニュース2009年12月21日 「AEDの使用が3年連続で増加」
メディカルエッセイ第48回(2007年1月) 「あなたはAEDが使えますか」

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月24日(水) 米国の子供、アトピーの治療薬で46人がガンに

 プロトピックというアトピー性皮膚炎の治療薬をご存知でしょうか。プロトピックは日本では1999年に認可された免疫抑制剤の外用薬で、登場した頃は、かなり注目されており「ステロイドに代わる夢の治療薬」などともてはやされたこともありました。

 そのプロトピックともうひとつの免疫抑制剤により、アメリカでは合計46人の子供がガンを発症していたことがFDA(米国食品医薬品局)の調査で発覚しました。(報道は3月23日の共同通信など)

 FDAによりますと、2004年1月から2009年1月の5年間で、46人の子供が白血病や皮膚ガンなどを発症し、そのうち4人はすでに死亡しているそうです。0~16歳でプロトピックを使用した15人、エリデル(日本未発売)を使用した27人、及び両方を使った4人の合計46人が皮膚ガンやリンパ腫、白血病などを発症しています。

 これら46人のうち、50%は添付文書で「使うべきでない」とされている2歳未満の子供のようです。さらに41%は1年以上の長期使用をしており、これも「安全性が確立していない」と注意喚起がされています。また、プロトピック使用後にガンになった子供の26%は、子供用のプロトピックではなく、濃度の高い「大人用」を使っていたそうです。

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 不適切な使用が多いとは言え、プロトピックの小児への使用は充分に注意すべきであることをこのニュースは物語っています。プロトピックを成人に使用する場合、ガンのような重度の副作用はなくても、ある程度長期で使えばニキビやヘルペスが起こりやすくなります。発売当初は、「夢のアトピー治療薬」のようにもてはやされましたが、実際は使いにくいケースもしばしばあります。また妊婦さんには使用できません。

 しかし、一方ではプロトピックが劇的に効いて(特に顔や首には有効な場合が多いといえます)、プロトピックが手放せなくなったという人もいます。(長期使用には充分な注意が必要ですが・・・)

 あまり期待しすぎるのも問題ですが、初めから副作用を怖がって使わないというのもおかしな話であり、患者さんごとに使用を検討すべきでしょう。

(谷口恭)

注:プロトピックは一般名を「タクロリムス水和物」といい、アステラス製薬から販売されています。

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月25日(木) 青魚を食べるとうつが改善?

 青魚を食べると心が落ち着き、うつが改善し攻撃性が低下する・・・

 2010年3月16日の読売新聞はこのような記事を掲載しています。同紙は、青魚に含まれるω3(オメガ3)系脂肪酸が、うつの改善に有効ではないかと述べています。

 ω3系脂肪酸とは不飽和脂肪酸の1つですが、ここで有機化学のおさらいをしておきましょう。

 まず、人間にとって必要な栄養素に「脂肪」があります。(脂肪は三大栄養素の1つで、あとの2つは炭水化物とたんぱく質ですね) 脂肪は体内でグリセリンと脂肪酸に分解されます。脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けることができます。(「飽和」とか「不飽和」というのは分子の結合様式を指すのですがこれ以上の深入りはやめておきます)

 飽和脂肪酸は、主に肉類に含まれている脂肪酸で、これは摂取しすぎるのはよくないとされています。一方、不飽和脂肪酸は、さらに細かく分類され、ω3系、ω6系、ω9系と分かれます。このうちω3系とω6系は、体内で合成することができず必ず食物から摂らなければなりません。これを必須脂肪酸と呼びます。一方、ω9系は体内で合成することができますから、あまり重要ではありません。

 さらに話を進めます。ω3系は魚介類、亜麻仁油、魚油などに多く含まれていて、ω6系は、紅花油、ひまわり油、大豆油、クルミなどに含まれています。近年注目されているのはω3系の脂肪酸で、たくさん摂取することによって心臓病が予防できると考えられています。サプリメントにもありますし(EPAやDHAのことです)、一部には医薬品として処方されているものもあります。

 さて、話を戻しましょう。読売新聞の報道では、「魚をよく食べる人は自殺企図が少ない」(日本、フィンランド、米国)といった疫学調査があり、さらに、「攻撃性や衝動性が減る」、「うつが改善する」といった研究報告もあるそうです。しかし、一方では効果がなかったという報告もあり、科学的な検証はまだ途上といったところでしょう。

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 ω3系の脂肪酸を積極的に摂取することでうつが改善し自殺予防になるのなら、精神疾患の患者さんに対してもっと積極的な摂取を推薦すべきでしょう。しかし、「魚をよく食べる人は自殺企図が少ない」との調査が日本とフィンランドであるというのは少し不思議な気がします。なぜなら、青魚をよく食べる日本もフィンランドも共に「自殺大国」として有名な国だからです。

 けれども、ω3系脂肪酸が心血管系にいいのは間違いないでしょうから、コレステロールやメタボリックシンドロームが気になる人は積極的に摂取すべきですし、たとえうつの治療や自殺予防の効果はそれほど強くなかったとしても、規則正しい食生活が心身にいい影響を与えるのは間違いないでしょうから、<あまり期待しすぎないで積極的に摂取する>くらいの気持ちでいればいいのではないかと思われます。

(谷口恭)

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月25日(木) 5キロ以上の体重減少で高い死亡リスク

 太り気味が長生きする、という意外な研究結果が相次いでいるということを1年ほど前から何度かお伝えしていますが、今回お伝えする情報も少し似ているかもしれません。

 中年以降に5キロ以上体重が減ると、体重の変動のない人に比べ、死亡リスクが男性で約4割、女性では約7割も上昇する・・・

 これは、3月23日、厚生労働省研究班が発表した疫学調査の結果です。(報道は同日の日経新聞、共同通信など)

 この調査では、ガンや循環器疾患にかかったことのない健康な40~69歳の男女約8万人を対象としています。調査開始時点で体重を測定し、5年後に再び体重を計測しています。この間の体重変化をもとに、男女別に、①大幅減少(5キロ以上)、②小幅減少(2.5~4.9キロ)、③変動せず(2.4キロ以内の変化)、④小幅増加(2.5~4.9キロ)、⑤大幅増加(5キロ以上)の5つのグループに分類しています。

 2回目の体重測定後およそ9年間の追跡調査がおこなわれ、この期間中に合計4,232人が死亡しています。体重変化と死亡リスクとの関係を調べた結果、「③変動せず」に比べ、「⑤大幅増加」の死亡リスクは男性で1.29倍、女性で1.31倍となり、「①大幅減少」は男性で1.43倍、女性で1.7倍となっています。

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 この結果をまとめると次のようになります。

 中年以降の体重の変動はない方がよい。体重が5キロ以上増えても減っても死亡リスクは上昇する。しかし、体重が減ることの方が増えることよりもリスクが高くなる。そしてこの傾向は男性よりも女性で強く認められる。

 この調査から見えてこないのは、体重が減少した人は、食べても減っていったのか、減らそうとして(ダイエットをして)減ったのかということです。また、調査開始の時点の体重が適正だったのか、もともと太っていて体重減少により適正体重となったのか、またもともとやせていたのがさらに体重が減ったのか、ということも分かりません。

 当たり前のことですが、「中年にさしかかる前に適正体重を保ち、それ以降も極端な体重の増減がないように注意するべし」ということは間違いなさそうです。

(谷口恭)

参考:医療ニュース
2010年2月8日 「70歳以上の太っている人は寿命が長い?」
2009年10月13日 「「太りすぎ」が長生き?」
2009年6月11日 「やはり長生きするのは太り気味か…」
2009年4月30日 「太った方が長生きする!?」

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月31日(水) 大阪府、少なくない危険な「飛び込み出産」

 「飛び込み出産」とは、妊婦検診をほとんど受けずに、出産直前になり妊婦さんが医療機関に飛び込んでくる出産のことを言います。大阪府では、2009年1年間に152件もの「飛び込み出産」があったことが、大阪府と府産婦人科医会の調査で分かり、3月27日の読売新聞が報道しています。

 報道によりますと、152件のうち約7割に相当する105件が、早産や仮死状態で赤ちゃんが産まれる「ハイリスク出産」に相当したそうです。46件(30%)は赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入れられることになり、これは通常分娩のおよそ10倍にも相当します。体重2,500グラム未満の低体重時は40件(26%)、死産も3件あったようです。また、なかには母親が薬物に汚染されており、薬物中毒の状態で産まれた赤ちゃんもいたそうです。

 妊婦検診を受けなかった理由については、約3割が「お金がない」と答えています。他には、「妊娠に気づかず」「多忙」「複雑な家庭事情」などが続いています。

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 年別の統計データが(私の手元に)ないのではっきりしたことは言えませんが、このような危険な飛び込み出産は年々増えているのではないでしょうか。太融寺町谷口医院にも、おなかが痛い、おなかがはる、などという理由で受診され、「すでに妊娠後期、しかし患者さんは妊娠にまったく気づいていない」という症例がときどきありますし、「お金がないから受診ができない」というのは、妊婦さんに限らず若い男女では珍しくありません。

 言うまでもなく妊娠・出産というのは妊婦さんひとりでおこなうことができず、家族、親族、地域社会、行政などの協力が必要です。飛び込み出産と聞くと、「無責任な母親が・・・」という議論になりがちですが、安心して子供を妊娠・出産できる環境がつくれるように、ひとりひとりに何ができるかを考えるべきでしょう。

(谷口恭)

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2010年4月2日(金) 喫煙率は「東高西低」

 喫煙率は東が高く西は低い・・・

 国立がんセンターがん対策情報センターが、3月26日に公表した都道府県別の成人喫煙率からこのようなことが言えそうです。

 最新の2007年のデータでは、喫煙率が最も高い都道府県が北海道の31.5%、最も低いのは島根県で21.0%と実に10%以上の差があることが分かりました。

 この調査は、厚生労働省がおこなっている「国民生活基礎調査」で、2001年から3年に一度調査している喫煙状況で「毎日吸う」と「時々吸う」と答えた人を集計し分析しています。

 喫煙率の全国平均は2001年には30.5%でしたが、2007年には25.6%と大きく下がっています。2007年の喫煙率が高いトップ3は、北海道、青森、宮城で、低いのは、島根、鹿児島、奈良の順です。

 男女別では、男性は青森、北海道、福島、女性は北海道、東京、神奈川となっています。

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 この調査の詳細は、

http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics06.html

でみることができます。

 全国の喫煙率をよくみてみると、最も目立つのが北海道の女性です。女性の全国平均が12.7%なのに対して、北海道は20.6%です。2位の東京が14.9%ですから、いかに北海道の女性の喫煙率が高いかがわかります。

 寒い地域ではタバコが恋しくなるのでしょうか。参考までにG8の国別喫煙率(2002年)をみると、男性では、1位がロシアで63.2%です。(2位は日本の52.8%です)

 また、暖かい地域ではタバコがなくてもやっていける人が多いのでしょうか。きちんとしたデータはみたことがありませんが、一般にアフリカでは喫煙率が低いと言われています。もっとも、アフリカにはカート(チャット、カットなどとも呼ばれることがあります)があり、1日中カートの葉を噛んで中毒になっている人が大勢いますが・・・。

注:「国民生活基礎調査」は1986年から厚生労働省が毎年実施している世帯ごとの調査ですが、3年に一度大規模調査がおこなわれ、そのなかで保健、医療、福祉、介護なども調べられています。最新の大規模調査は2007年に実施されました。

(谷口恭)

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2013年7月17日 水曜日

2010年4月2日(金) 睡眠障害の自殺リスクは28倍

 睡眠障害がある人が自殺する危険性は、ない人に比べて28倍も上昇する!

 これは、厚生労働省の研究班が調査した結果で3月18日の読売新聞などが報道しています。

 報道によりますと、調査は、2007年12月から2009年12月に自殺をした76人(年齢は15歳~78歳)の生前の様子について、遺族から聞き取り調査を実施し、対象者(一般人)145人と比較しています。

 その結果、睡眠障害があれば28倍も自殺のリスクが上昇するという結果がでたそうです。睡眠障害以外のリスクとしては、「飲酒行動に問題がある人」が3倍、「うつ病などの気分障害」が6倍、「死に関する発言」が4倍、などとなっています。

 この調査に対するマスコミの報道は毎日新聞もおこなっていますが(3月17日)、同紙では、自殺者の半数が医師から処方された向精神薬を過量摂取していたことに注目しています。自殺予防のためには、処方薬の乱用を防ぐこと及び医師の質の向上も必要というわけです。

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 読売新聞の記事を読むと、一度でも睡眠薬を使ったことがある人は不安に思われるかもしれません。しかし、これは睡眠障害があるから自殺のリスク、ではなく、自殺のリスクがある人には睡眠障害が伴いやすい、という可能性もあるわけです。

 しかしいずれにしても、睡眠障害を抱えている人が周りにいるという人は注意すべきかもしれません。同時に、毎日新聞の主張のように、我々医師がもっと自殺に注意すべきでしょう。私の診察室にも、毎日のように「眠れなくて・・・」という人が来られますが、全員に充分な時間をとって自殺のリスクを検討できているかどうか・・・。私にも反省すべき点がありそうです。

(谷口恭)

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2013年7月17日 水曜日

2010年4月2日(金) 肥満児の早期死亡率は2倍

 肥満児では、正常体重児に比べ、55歳未満での早期死亡リスクが2倍も高くなる・・・

 これは医学誌「New England Journal of Medicine」オンライン版の2月11日号に掲載された論文です。研究はスウェーデンのウメア大学病院(Umea University Hospital)のPaul W. Franks教授を中心としたチームでおこなわれています。

 研究では、1945~1984年に生まれた米国先住民の小児4,857例のデータから、体重、血糖、血圧、血中コレステロール、55歳未満の死亡との相関関係が分析されています。およそ24年の期間中での死亡者数は166人です。

 分析の結果、小児期に肥満のあった人では、55歳未満で死亡するリスクが肥満のなかった人の2倍であることが分かりました。小児期に高血糖だった人も、最も低い血糖レベルだった人に比べると、早期死亡リスクが73%増大していました。血中コレステロールと血圧については将来の死亡との有意な関連は認められませんでしたが、高血糖に高血圧を合併した場合は、やはり早期死亡につながる可能性が指摘されています。

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 肥満があれば早死にするリスクが2倍、と言われると小さい頃からの体重コントロールが大切になってきます。まだダイエットなどに関心がもてない幼少児に親の教育が大切ということになるのでしょうか・・・。

 この論文のタイトルは「Childhood Obesity, Other Cardiovascular Risk Factors, and
Premature Death」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0904130

(谷口恭)

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2010年4月3日(土) やはりビタミンB6は大腸ガン予防に有効か

 男性はビタミン6の積極的摂取で大腸ガンが予防できるかもしれない、という調査結果が日本の厚生労働省から発表されたというニュースを以前お伝えしましたが(下記医療ニュース参照)、スウェーデンでの研究でも似たような結果が出たようです。

 ストックホルムのカロリンスカ(Karolinska)研究所のSusanna C. Larsson氏らは、ビタミンB6と大腸ガンの関連性についての過去の研究結果のメタ分析(注)をおこないました。その結果、大腸ガンのリスクは、ビタミンB6の摂取量が多いほど低く、血中ビタミンB6の濃度が高ければそれだけリスクが低下する、という結論が導かれています。

 分析は、米国の5つの研究、欧州の2つの研究、アジアの2つの研究の合計6,064例が対象とされています。ビタミンB6は、食事もしくはサプリメントと食事によって摂取されており、サプリメントのみの調査はありません。

 分析を通して分かったこととして、ビタミンB6を多く摂取している人は、高齢、身体活動量が多い、喫煙者は少ない、アルコールの摂取が少ない、という特徴があったことがあげられます。

 したがって、研究者は、「ビタミンB6の摂取は健康的な生活と関連する傾向があり、それが大腸ガンの発生予防に働いている可能性もある」、と述べていますが、「それを取り除いても、ビタミンB6の摂取及び血中濃度が高ければ高いほど大腸ガンのリスクは下がることが分かった」、と結論付けています。

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 この論文のタイトルは、「Vitamin B6 and Risk of Colorectal Cancer」で、下記のURLで一部を読むことができます。

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=185551

 ビタミンB6は、大腸ガンだけでなく心疾患にも有効とする疫学的調査もあり、今後さらに注目されることになるかもしれません。では、どのような食品を積極的にとればいいのかというと、例えばビタミンCなら野菜や果物、ビタミンAならレバー、のような分かりやすいものがありません。

 ビタミンB6が比較的多く含まれている食品は、玄米、ニンニク、ソバ、鶏肉、豚肉、魚、などですが、いずれも比較的普段から食べているもの、もしくはあまり大量には食べられないものであり、結局は「バランスのいい食事をとりましょう」、ということになります。ではサプリメントでビタミンB6を摂ればどうか、という点が気になりますが、これについては充分な研究がない、というのが現状です。

(谷口恭)
 
注:メタ分析とは、過去に行なわれた複数の研究結果を統合し、より信頼性の高い結果を求めることを目的とした分析を言います。

参考:医療ニュース
2007年8月4日「大腸がんの予防、男性ビタミンB6、女性はコーヒー」
2008年6月1日「心疾患の予防にはビタミンB6」

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