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開業10年目に向けて(2016年1月)
2016年の1月で太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)は10年目に入ることになります。
谷口医院の基本方針、つまり、「どのような場合にも相談に応じるプライマリ・ケアの実践」は2007年1月のスタート以来まったく変わっていません。
谷口医院は都心部にありますから、患者さんの層としては、近くに住んでいる人よりも近くに職場がある、という人が大半です。また、大阪に出張中、あるいは旅行中という関西以外の方もよく来られます。東日本大震災以降減少していた外国人の患者さんも再び少しずつ増えてきています。
ちょうど1年前に立てた2015年の目標で最も重要なものは「患者さんにセルフメディケーションを促していく」ということと「チュージング・ワイズリーの考え方を取り入れてムダな医療がないかを見直す」というものでした。
セルフメディケーションについては、この言葉自体が世間に少しずつ浸透していることもあり、患者さんにも理解されやすくなってきたのではないかと感じています。正しい知識を持ってもらい、予防に努めてもらうことで、医療機関の受診を減らすことができますから、これからも伝えていきたいと考えています。
ただ、セルフメディケーションの具体的な方法について、症状別、あるいは疾患別に、文章にしてウェブサイトに掲載することを考えていましたが、これはいまだにできていません・・・。
「チュージング・ワイズリー」というのは、本当に必要な検査や治療のみをおこない無駄な医療行為をなくしていく、という考えです。これについては、診察室で個々の患者さんに説明をしており、理解してくれることが増えてきました。しかしながら、なかには「お金払うって言っているのに何で検査してくれないの??」と言い理解をしてもらえない患者さんも依然います。これは私の説明不足にあり、こういった主張をされる患者さんはたいてい初診の方です。ならば、ウェブサイトを通して「チュージング・ワイズリー」の重要性を訴えていくべきで、実は昨年の初頭から企画していたのですが、いまだにできていません・・・。
なんだか言い訳ばかりの新年の言葉になってしまいました・・・。
昨年の私の出来事としては、リハビリが思いのほか順調に経過したということがあげられます。2014年8月、左上肢の麻痺を伴う頸椎症に対し「全身麻酔下頸椎後方除圧及び椎弓形成術」という手術を受けました。術後は順調に経過し、術前や手術直後は左腕を挙げることすらできませんでしたが、現在は5kgのダンベルで筋トレができるほどに回復しました。また、手術直後は腕が振れないために長距離のウォーキングができませんでしたが、現在は20kmくらいまでであればジョギングもできるようになりました。ここまでくれば症状出現前と比べて8~9割は回復していると言えます。
クリニック以外での社会活動として、産業医/労働衛生コンサルタントの仕事、大学での講義、NPO法人GINAでの活動以外に、縁あって、2015年7月から毎日新聞の「医療プレミア」というウェブサイトの医療ページに連載を持たせてもらうことになりました。
この連載では「実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-」というタイトルで感染症についてのコラムを書いています。私が以前から主張している病気の予防法は、まず感染症とそれ以外を分け、感染症は知識で防ぎ、感染症以外の疾患については「10の習慣」で防ぐというものです。(「10の習慣」は、「3つのEnjoy、3つのStop、4つのデータに注意して」というものです。詳しくはメディカルエッセイ第129回(2013年10月)「危険な「座りっぱなし」」を参照ください)
「医療プレミア」に掲載するコラムは感染症だけのものですが、日頃診ている症例や、世界の論文で紹介されている新しい研究結果なども交えて、わかりやすく世間に伝えていきたいと考えています。こうすることが、少なくとも感染症領域においては「セルフメディケーション」「チュージング・ワイズリー」の双方にも有用だと思うのです。
「医師のもつ知識や技術は公共のもの」というのが私の考えです。しばらくの間は、当院ウェブサイトのみならず、「医療プレミア」も利用させてもらい、私のもつ知識を大勢の方に知っていただく努力をしていきたいと考えています。
2016年1月1日 東南アジアのある港にて
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