ブログ

2024年7月27日 べンゾジアゼピンは脳を萎縮させる

 これまで繰り返し紹介してきているように、ベンゾジアゼピンの長期使用は認知症のリスクになるのかならないのかは研究によって結果が分かれています。過去の医療ニュース「やはりベンゾジアゼピンは認知症のリスク」で紹介した大規模調査では、認知症のリスクが1.51倍となります。他方、リスクが上がらないとする研究もあります。

 今回紹介する研究も、一応は「ベンゾジアゼピンは認知症のリスクを上げない」とされています。しかし同時に、「脳を萎縮させる」という結果が出ています。

 論文は「BMC Medicine」2024年7月2日号に掲載された「ベンゾジアゼピンの使用と長期的な認知症リスクおよび神経変性の画像検査との関連:人口ベースの研究(Benzodiazepine use in relation to long-term dementia risk and imaging markers of neurodegeneration: a population-based study)」です。

 研究の対象者はオランダ人の男女5,443人(平均年齢70.6歳、女性57.4%)です。対象者のなかで2,697人(49.5%)が、調査開始前15年間のいずれかの時点でベンゾジアゼピン系薬剤を使用していました。平均11.2年間の追跡期間中に726人(13.3%)が認知症を発症していました。

 これらを分析した結果、ベンゾジアゼピンの使用で認知症発症リスクは統計学的には上昇していませんでした。

 しかし、脳MRIを調査した結果、ベンゾジアゼピンの使用により、海馬、扁桃体、視床が萎縮することが判りました。また、ベンゾジアゼピンを使い続けると、海馬が加速度的に委縮し、さらに扁桃体も海馬ほどではないにせよ萎縮していることが判りました。

************

 認知機能が統計学的に低下していなかったとしても、ベンゾジアゼピンの使用により記憶を司る海馬が萎縮することがはっきりしたわけです。

 やはり、ベンゾジアゼピンは初めから使わないのが最善であり、使用せざるを得ないにしても「依存性が強く、認知症リスクも否定できず、海馬は萎縮する」ということを認識した上で開始すべきです。

月別アーカイブ