はやりの病気
第230回(2022年10月) ポストコロナワクチン症候群~2022年版~
治験(臨床試験)の期間が充分でないことが分っていながら世界中で接種が開始された新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」)のワクチンを受けた後で、「倦怠感(だるさ)が取れない」、「痛みが消えない」といった副作用が続くという訴えが少なくなく、「コロナワクチンは他のワクチンとは異なる」ことを確信し、このサイトではちょうど1年前の2021年10月に「ポストコロナワクチン症候群」というタイトルで紹介しました。
その後多くの方から相談を受け、それは今も続いています。谷口医院の患者さんのみならず、私が主催するメルマガの読者や、私が連載するメディアの記事を読まれた人からも相談メールが届きます。
コロナに感染して生じる「ポストコロナ症候群」(後遺症)の患者さんも少なくなく、訴えられる症状は多岐に渡ります。多くの患者さんを診ているうちに、一言でコロナ後遺症といっても実に様々で、中には本当にコロナに感染したのか疑わしい例もあります。よって、そういった事例もひっくるめて「症候群」と呼ぶのがふさわしく、それらを分類した上で治療を進めるべきだというのが私の考えです。
今回は、感染後の後遺症ではなく、ワクチン接種後の後遺症(=ポストコロナワクチン症候群)について述べます。まずは私の「5分類」を紹介します。
短期軽症型:接種1週間程度で消失するすべての症状を含む。発熱、倦怠感、疼痛、リンパ節腫脹など。たとえ1週間寝込んだとしても回復すればこのタイプに含まれる。
短期重症型:接種1~2週間以内に入院を余儀なくされ、肢体不自由などの重篤な後遺症を残す。または死亡する
中期型:接種後1週間以上たっても症状が持続し、最長6か月まで続く。頭痛、動悸、倦怠感が比較的多い訴え。
長期型:接種後6か月以上持続。倦怠感、抑うつ症状、食思不振、体重減少などが主症状となる。ときにME/CFS(後述します)を発症したと考えられる。
持病再発型:しばらく落ち着いていた持病がワクチン接種を契機に再び発症。頻度が多いのが、ヘルペス(口唇ヘルペス、性器ヘルペス、あるいは他の部位のヘルペスも)、頭痛(特に片頭痛)、じんましん。帯状疱疹(及び帯状疱疹後神経痛)もこの分類に入れる
ではそれぞれを解説していきましょう。
まず「短期軽症型」はほぼ全員に起こります。どれだけしんどくても1週間たてば後遺症なく社会復帰できるのであればOKと考えるべきでしょう。後述するようにコロナワクチンの有効性が高いのは間違いないからです。
「短期重症型」の原因はワクチンの成分によるアナフィラキシーショックと、心筋炎(または心膜炎)が重要です。よって、アレルギーのエピソードがある人は充分な注意が必要で(接種前にかかりつけ医に相談しましょう)、まったく健康体の人であっても接種後1週間は激しい運動を控えるべきです。
ちなみに、私自身は3回目のワクチン接種を終えて3日後にジョギングをして激しい胸痛と動悸に襲われ、その動悸は1週間くらい続きました。今だから言えますが、当時(2022年1月)はちょっと怖かったです。心筋炎/心膜炎が起こるのは「若い男性」とされていたために、「まさか53歳のおっさんには関係ないだろう」と高を括っていたのが失敗でした。このときの睡眠の記録を見ると(Fitbitで管理しています)、眠れはしたものの心拍数は90BPM(日頃は50BPM程度)前後の状態が続いていました。しかし、1週間程度で完治しましたから「短期重症型」ではなく「短期軽症型」に入ります。その程度だったので、今では心筋炎/心膜炎ではなかったと考えています(と思うようにしています)。
「中期型」はそれなりの長期間、社会生活を制限されますからかなり辛いワクチン後遺症と言えます。頭痛、嘔気、食欲不振、めまい、関節痛、筋肉痛など症状は多岐に渡ります。不眠、抑うつ感などの精神症状も出現します。
「長期型」はその大半がME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)と見分けがつきません。ME/CFSとは、一言で言えば、「日常生活が制限されるような激しい倦怠感が6か月以上続く」慢性の疾患です。以前は単にCFS(慢性疲労症候群)と呼ばれていましたが、最近では国際的にME/CFSが一般的です。
ME/CFSは、周囲の人たちから(ときには家族からも)理解されないことが多く、ひどい場合は「単に怠けているだけだろ」とか「精神的なものやから精神科に行け」などと言われて傷ついている人もいます。たしかに、単純疲労やうつ病の場合も倦怠感は伴いますが、これらの場合、散歩など軽度の運動で改善することが多いと言えます。他方、ME/CFSの場合は、軽度の散歩程度であっても、その翌日あたりから体を動かせなくなるほどの激しい倦怠感が数日続くこともあります。これを「運動後倦怠感(post-exertional malaise, PEM)」と呼びます。
ME/CFSの話をしだすとかなり長くなりますのでいずれ改めて紹介したいと思います。ここでは、ポストコロナワクチン症候群の「長期型」はME/CFSそのものかもしれない、ということだけ押さえておきましょう(といっても、これらはすべて私の「私見」ですが)。
「持病再発型」は上に述べた通りで、いつ治るかは人それぞれですが、谷口医院の経験で言えば長くても6か月以内にはおさまります。
では、なぜこのような副作用が起こるのでしょうか。はっきりしたことは分かりませんが、反ワクチン主義者の人たちがよく言う「スパイク蛋白が悪さをしている」というのはひとつの答えかもしれません。
コロナのmRNA型ワクチンが登場したとき、政府も学者も感染症専門医も「ワクチンで体内に入ったmRNAはすぐに分解され、スパイク蛋白が長期間体内に存在することはない」と言っていました。実際、厚労省のサイトには今もそう書かれています。
ですが、最近はそうとも言えないことが分ってきています。ドイツの70代の男性がワクチン接種後に死亡し、大量のスパイク蛋白が脳と心臓から見つかったという事例が報告されています。また、ワクチン接種した妊娠中の女性11人のうち5人の母乳からワクチンのmRNAが検出されたという報告もあります。
さて、ワクチンの副作用をこれだけ列記すると「そこまでして打たないといけないの?」という気持ちになる人も多いでしょう。その答えは「国民全体としては接種すべき」となります。国際的な研究では医学誌「The Lancet」に掲載された論文が有名で、この研究によればコロナワクチンのおかげで世界の1440万人が命を救われています。身近なところで言えば、大阪府が公表しているデータを見てもワクチンの有効性は明らかです。4回接種者と未接種者では重症化率、死亡率がまったく異なっているのがよく分かります。また、因果関係のはっきりとしている(と厚労省が言っている)重篤な副作用はごく僅かであるのも事実です。
ただし、ワクチンが有効なのは「全体として」です。いくらそのように役人や偉い学者から言われたとしても、あなた自身やあなたにとって大切な人が重篤な副作用に苛まれるのならば接種したくないのは当然です。
では、あなたやあなたの大切な人がワクチン接種を受けるべきかどうかはどのように決めればいいのでしょうか。答えは「かかりつけ医に相談する」です。谷口医院の場合、患者さんから相談されたとき「ではうちましょうか」となることも「今は控えておきましょうか」となる場合もあります。
ちなみに私がメディアに記事を書くと、「ワクチン絶対肯定派」からも「ワクチン絶対反対派」からもクレームが来ます。「ワクチンに賛成なのか反対なのかはっきりしろ!」とお叱りの言葉をいただくこともあります。私の答えは「その人にとって受けるべきか否かは異なる。だからかかりつけ医が存在している」です。
最後に最も大切なことを言っておきましょう。ポストコロナワクチン症候群はときに難治性となります。そのため「藁にもすがる思い」となり、高額な自費診療を受けさせられた被害者が続出しています(多いのは「グルタチオンの点滴を数千円で受けさせられた」、「イベルメクチンを高額で買わされた」、など)。時間がかかるのは事実ですが、あくまでも保険診療で治療をすべきだ、と私は言い続けています。
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