マンスリーレポート
2026年4月 人類はもうすぐ確実に滅ぶのだから ~その2~
マンスリーレポート2022年11月号「人類はもうすぐ確実に滅ぶのだから」で、私は、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change=気候変動に関する政府間パネル)の勧告や、歴史学者ピーター・フランコパンの予測などを引き合いに出し、地球は近いうちに滅びるのは間違いないと述べ、だからこそ、「戦争をしたり、マスクの是非で言い合いをしたり、SNSでつまらない罵り合いをしたり、といったことに時間を費やしている暇はない」と述べました。
当時は新型コロナウイルス(以下「コロナ」)に伴う「マスク論争」が盛んで、賛成派、反対派が互いに相手を罵り合っていました。あれから3年以上が経ち、コロナは事実上「収束」し、マスクで人間どうしが醜い争いをするようなことはほぼなくなりました。では、人類は互いに手を取り合って仲良くしているのかというと、残念ながらその正反対に向かっています。
2022年2月24日にロシアが一方的にウクライナに侵攻して始まった戦争は今も終結の見通しが立ちません。ロシアが侵攻した2022年の時点で考えれば、いきなり戦争をしかけたロシアが悪いわけですが、視点を変えれば一方的にロシアに非があるとは言えません。2013年のユーロマイダン革命は「革命」とされていますが、当時のヤヌコーヴィチ大統領を失脚させたクーデターに他ならず、それを指揮していたのは米国だったという話もあり、ロシア・ウクライナ戦争はどちらが悪いか、という問いに対する答えは簡単には出せません。
ロシア・ウクライナ戦争勃発から4年が経過した2026年2月28日、今度は米国がイランに空爆を仕掛け戦争が始まりました。イランとしては米国と協力関係にある中東諸国を部分的にでも攻撃せざるを得ず、戦火が他国に広がりました。
特に、ドバイは甚大な被害を受け、裕福な外国人の移住で成り立っていた社会が事実上消滅しました。日本のメディアはドバイ当局に忖度しているのか控えめな報道しかしていませんが、たとえば英紙「Daile Mail」は「ドバイは終わった(Dubai is finished)」というタイトルで、外国人からドバイが見捨てられた現実を報じました。
ドバイ国際空港が被害を受け、ラグジュアリーホテルとして有名なフェアモントホテルも炎上しました。ドバイ当局は「空に響く大きな爆発音はUAEの防空システムが作動している証拠であり、我々の安全が守られている証拠だ」と苦し紛れの広報を出しましたが、高級ホテルが燃えているのを目の当たりにした外国人がこんな言葉を信じられるはずがありません。紛争勃発から数週間で数万人の住民と観光客が次々とドバイを離れ、「二度と戻らない」と宣言しています。スタンダードチャータード銀行やシティバンクなどの欧米系銀行の従業員は、イラン政府から次の爆撃目標とされるという脅迫を受け、すでにオフィスから退避しています。もはやドバイがつい最近までの栄光を取り戻すことはないでしょう。
尚、イランのペゼシュキアン大統領は、イランが湾岸諸国をミサイル攻撃の標的としたことに対して謝罪しています。
最も被害の大きい地域はもちろんイラン国内で、特に南部ミーナーブ(Minab)の女子小学校が爆破され175人が犠牲になった事件は胸が張り裂けるような痛ましい出来事でした。トランプ米大統領は、「イランの兵器は命中精度が低いからイランの仕業だ」と述べましたが、そんなはずがありません。実際、The New York Timesは「標的の誤りにより、この学校は米国のトマホークミサイルの攻撃を受けた」と報じています。
これから米国とイランが仲直りして首脳同士が心から歩み寄ることなどあり得ませんし、ドバイが栄光を取り戻すこともないでしょう。仮に米国がこの戦争に勝利したとしてもイラン国民を掌握することは不可能です。軍隊を地上に投入すれば、イラクやアフガニスタンと繰り広げた泥沼の二の舞になるでしょう。つまりイランと米国(及びイスラエル)にはハッピーエンドの解決はないのです。
では日本は何をしているのか。中東在住の邦人保護には取り組んだものの、ドバイを含め中東諸国を守るような行動はなにひとつしていませんし、大勢の小学生が犠牲になった事件に対しても何もしていません(少なくとも報道されていません)。ちなみに、中国政府はイランの人道支援組織「Red Crescent Society」に20万ドルを寄付しました。
本稿執筆時点の4月9日現在、今後のホルムズ海峡の行方は分かりませんが、当分の間、原油入手困難な状況が続くでしょう。輸入に頼っているアジア諸国は国を挙げて節約の方向に舵を切っています。韓国では曜日ごとに公用車の使用を制限、スリランカでは1週間の給油量に上限を設けました。インドネシアでは公務員は毎週金曜日は在宅勤務とされ、フィリピンでは一部政府機関が週4日勤務となりました。翻って我が国がとった政策は、なんと「石油元売り会社への補助金」です。
今は国民が一丸となって節約に努め、そして国を超えて助け合わねばならないときです。日本は石油の輸入依存度が高いのは事実ですが、備蓄量がそれなりにあります。高市内閣はそれを自慢するかのように「我が国では年内は石油が不足することはない」などとアピールしているようですが、本来すべきは備蓄量が少なく困窮している国に対しその備蓄を供与することではないでしょうか。例えば、フィリピンやベトナムは備蓄量が極めてわずかしかないと言われています。こんなときに支援しなくてどうするのでしょう。
今、日本政府がすべきなのは石油の補助金をばらまくことではなく、国民に節約を呼びかけることです。すでに報道されているように、石油からつくられる商品が枯渇する可能性があり、特に影響を受けやすいのは医療業界です。医療用グローブや、注射器、点滴バッグなどは石油が枯渇すれば供給が止まります。たとえば透析を受けている人にとって、これらの供給不足は命を失うことを意味します。
2020年にコロナが登場したとき、反対意見はありましたが、政府は外出を控えるよう呼びかけ、飲食店の営業を禁じました。あのときできたことをもう一度やればいいわけです。夏の冷房費を削るわけにはいきません。しかし、外食や遊行など節約できることはたくさんあります。ならばなぜ政府はそれを言わずに、その逆に補助金をばらまくのか。はっきり言えば、総理大臣が人気を維持したいからでしょう。
ところで、米国はなぜイランに侵攻したのでしょう。たしかにイランの核兵器疑惑には不透明なところがありましたが、同国はIAEA(国際原子力機関)との対話は続けていました。2025年に一時中断されたのは、イランのせいではなくイスラエルと米国が戦争(いわゆる「12日間戦争」)を仕掛けたからです。トランプ大統領は「イランの核兵器の脅威を防ぐために必要な戦争だ」と言っているそうですが、IAEAのグロッシ事務局長は、「イランが核兵器を製造している証拠はない」と正式に述べています。
ではなぜ米国はこのタイミングで戦争を仕掛けたのか。イスラエルがトランプ大統領を焚きつけた、というのが一般の見方だと思います。特に、ユダヤ教徒である、大統領の娘婿Jared Kushner氏が大統領にけしかけた、とする説が有力視されています。
それもあると思いますが、私はもうひとつトランプ大統領を戦争に向かわせた理由があると思っています。そして、実はこちらの方が強いインセンティブになったのではないかと疑っています。それは「自身のエプスタイン疑惑から世間の目を逸らそうとする卑怯な手口」です。「エプスタイン関連文書にトランプ氏が未成年者を虐待したという主張が含まれている」と英紙The Guardianが報道したのが2月26日、米国がイランに爆撃を開始したのはその2日後です。これが単なる偶然だとは思えません。実際、戦争が開始されてから、トランプ氏のエプスタイン疑惑の報道は氏の思惑通りほぼなくなりました……。
大国の大統領が自らの恥ずかしい過去を消し去るために戦争を起こし、まあまあ大きな国の総理大臣が他国の窮状には見向きもせずに自らの人気維持のために補助金をばらまく……。これが人間の真実の姿なのだとすれば、そのうち全滅するのも時間の問題では?
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