マンスリーレポート

2008年1月号 ワークライフバランス

2007年を振り返ると、クリニックにも他の病院にも学会や研究会にも行かずに、丸一日の休暇がとれた日は一日もありませんでした。夏ごろから勉強に費やす時間がほとんどなくなり、10月ごろからは新聞すらもろくに読めないという忙しさになりました。

 年末年始はGINAの関連でタイに渡航することを決めており、3月にすでにチケットを取っていたのですが、精神的に行き詰っていたこともあって、GINA関連の人に合うのは最小限にしてひとりでゆっくり過ごすことにしました。けれども、タイに渡航していた年末年始は、結局はタイの友達たちといろんなところに観光に行くことになり、あまりひとりの時間はつくれませんでした。

 (余談になりますが、私はタイ航空でマイルを貯めているので年末年始にもチケットが取れました。航空会社によってはお盆や年末年始の繁忙期にはマイルが使えないところもあって、そんなシステムなら多くの人がせっかく貯めたマイルが使えないのではないでしょうか・・・。私はタイ航空以外に、もうひとつ、主にショッピングでマイルを貯めている航空会社があるのですが、マイルは貯まるけれど実際には使えないという事態に陥っています。なんとかならないのでしょうか・・・)

 私は、毎年、年の始めにその年のテーマを決めることを習慣にしています。昨年は「貢献」、おととしは「勉強」、その前は「奉仕」でした。

 今年はバンコク行きの飛行機の中で、すでにテーマが決まっていました。

 2008年の私のテーマは、「バランス」です。

 昨年は「ワークライフバランス」という言葉をよく耳にしました。一般的には、仕事と生活の調和という意味で使われることが多いと思います。ほとんどすてらめいとクリニックのことが生活のすべてになっていた私にはこの言葉がとても魅力的に感じられました。

 すてらめいとクリニックがオープンした年ということもあって、私の2007年はクリニックがほとんどすべてになっていました。医師というのは患者さんと向き合っているときだけが仕事というわけではありません。診断のつかなかった患者さんのことで調べ物をしたり勉強をしたりといったことは毎日しなければなりませんし、レントゲンや血液検査のデータを見直したりといったようなタスクもあります。

 それに、これはクリニックを開院させて初めて分かったことですが、保険請求に伴う仕事や(詳細は、マンスリーレポート2007年7月号「私の一番キライな仕事」に紹介しています)、税務関係、労務関係の仕事、その他雑用も含めて、本来の医療以外の仕事にかなりの時間をとられます。

 郵便物だけでも毎日5通から10通近くが届きます。さらにFAXで送られてくる書類もありますし、メールも大量に届きます。郵便物、FAX、メールの処理だけで丸1日を使わせてほしいと思うほどです。

 すてらめいとクリニックは、木・日・祝が休診日ですが、昨年末まで休診日には他の病院や診療所で仕事をしていました。これらは、クリニックがオープンする前からしていた勤務をそのまま継続しておこなっていたものです。代わりの医師がなかなか見つからなかったために継続せざるをえなかったというのもありますが、経済的にしんどかったというのも理由のひとつです。(クリニックの利益だけでは自分の収入まではなかなかまかなえないのです。すてらめいとクリニックは待ち時間が長くていつも患者さんがいっぱいと思われている方もおられるでしょうが、それでも生活はギリギリなのです。「医師(開業医)は儲かる」というのは、ほとんど都市伝説のようなもので、実際はなんとか生活できているというのが実情なのです・・・)

 休日がまったくない状況で、医療以外の業務をおこなおうと思えば、平日の夜中しかありません。最後の患者さんが帰られてからはカルテの整理をおこなわなければなりませんが、これが終わる頃には日付が変わっています。それから様々な所用を開始するのですが、夜中までおこなってもとうてい終わりません。

 結局私の考えた方法は、木・日・祝のクリニックの休診日にそういった業務をこなすという方法です。(今、これを書いているのも1月20日の日曜日、場所はクリニックの診察室です)

 幸いなことに、木曜日の他院での外来は代わりの医師が見つかりましたし、日・祝の他院勤務も大幅に減らせることになりました。

 ワークライフバランスは、仕事と生活の調和を意味するものと思いますが、「生活」というのは人によって様々でしょう。”家族との語らい”であったり、”子育て”であったり、”趣味”という人もいるでしょう。

 私の場合は、まず、”医療行為以外の業務”とのバランスを取らねばなりません。このウェブサイトをもっと充実させることも早急にしなければならないことだと感じています。(実際、「医療ニュース」は最近ほとんど更新できていません・・・。これは早急に元の状態に戻すつもりです)

 それから、”GINAの業務”とのバランスを取らねばなりません。幸いなことにタイでの活動は、GINA関連の人々のおかげで成り立っていますし、日本での活動も新たなスタッフが支えてくれています。ただ、ウェブサイトの充実度は次第に低下してきており、このウェブサイトの「医療ニュース」と同様、「GINAニュース」の更新ができていません。タイでは、総数ではHIV陽性者はやや低下していますが、エイズ孤児や少数民族の陽性者の問題は深刻化していますし、新たな感染者の低年齢化という問題もあります。GINAが2008年にできることはまだまだあるはずです。

 さらに、”勉強”とのバランスは医師にとって大変重要です。現在では、毎月送られてくる複数の学会誌に目を通すことすらおぼつかなくなっています。学会や研究会、シンポジウムなどにも参加しなければなりませんし、私自身が講演を依頼されることも増えていくかもしれません。

 また、これは”勉強”というよりは私の”趣味”ですが、昨年の夏頃から語学の勉強がほとんどできていません。(年末年始にタイに渡航した時はタイ語、英語ともボキャブラリーが減っていることに気づいてショックを受けました)

 医療行為、クリニックの所用、勉強、語学、これらのバランスをとっていくのが私にとっての2008年の目標です。

 あとひとつ付け加えるなら、これら以外のプライベートの充実となりますが、ここまでは望むのは贅沢かもしれません・・・

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