マンスリーレポート

2010年6月号 「朝活ブーム」がブームでなくなる日はくるか

突然ですが、「日中(日本と中国)について語る若手として最も有名な日本人」、とは誰のことか分かるでしょうか。

 この「最も有名な日本人」は、若手政治家でもベンチャー企業を立ち上げた青年実業家でもなく、またスポーツ選手やタレントでもありません。日経新聞2010年4月10日に掲載された特集記事によりますと、この「最も有名な日本人」とは、加藤嘉一氏という北京大学の大学院生、年齢は25歳です。

 加藤氏は、大学院で国際関係論を学ぶ傍ら、中国の雑誌やネットに載せるコラムを書き、テレビに出演し、家の前で待つ記者の質問に答える日々を送っているそうです。昨年(2009年)の中国メディアからの取材は318回、コラムは200本、といいますから、「最も有名な日本人」と呼ばれても不思議ではありません。中国では「加藤現象」なる言葉も誕生しているそうです。

 加藤氏がどのような記事やコラムを書き、何を主張したいのかをここで紹介したいわけではありません。2ヶ月も前の新聞記事(これを書いているのは6月10日です)のことがずっと頭に残っているのは、加藤氏のライフスタイルに私が興味をもったからです。

 加藤氏は、夜10時に寝て朝4時に起きることを日課にしているそうです。加藤氏は記事やコラムを書くのも、テレビに出演しインタビューに答えるのもすべて中国語でおこなうそうですが、まだ25歳という若さで、読み書きだけでなく、あの難解な発音をマスターして中国語で議論しているわけですから、語学の勉強は相当おこなっているはずです。おそらく、勉強したり物を書いたりするのに朝が適していることに加藤氏は気づいているに違いありません。

 このコラムの2007年4月号 「働いている人は早朝の勉強を!」 で、私は朝早く起きて勉強をおこなうのがどれだけ効率がいいか、ということを述べました。朝の勉強は、単に集中できて効率がいい、というだけの話ではありません。ウソのような”利益”もある、ということをそのコラムでは紹介しました。

 しかし、このコラムの評判はそれほどよくなかったようで、私のところには医学部受験や他の受験勉強をしている人からよくメールをいただくのですが、「勉強がんばっています」という内容のものは多いものの、「早朝から勉強するようにしました」というメッセージはほとんどありません。

 私は今も朝5時の起床を続けており、仕事や勉強は集中して早朝におこなっているのですが、そんななか、中国在住の加藤氏が朝4時に起きている、という記事を読んで少し嬉しくなったのです。(「勉強している」とは新聞記事には書かれてないので私の想像と実際は異なるかもしれませんが・・・)

 さて、早朝から勉強や仕事をおこなうのはかなりの少数派だろうと思っていたのですが、最近になり、早朝から活動している人が増えている、というマスコミの報道をしばしば目にするようになりました。

 最近は、フィットネスクラブや英会話教室などにも朝から通う人が増えてきているそうです。早朝に勉強というのも流行ってきているようで、東京には「丸の内朝大学」が、大阪には「西梅田朝大学」というものができていて、どちらも人気があるそうです。講座の内容も、「伝統学部」「環境学部」「コミュニケーション学部」といったかなり本格的な学問もあれば、「心体学部」「美人学部」といった美容に重点を置いたようなものまで様々なことを学べるようです。

 また、早朝から会社に出勤して、就業時間の前までにメールやFAXをチェックし返信を済ませておくことを日課にしている社員も増えてきているそうです。就業時間の前に出社して仕事をしても残業代はおそらくつかないでしょうから、早朝から出社している人たちは残業代以上の利点があることに気付いたに違いありません。

 このように朝から活動を開始することを「朝活」と呼ぶそうです。なんでも、最近では「朝活」をすすめる自己啓発書のようなものも発刊されているそうで、こうなれば「朝活ブーム」と呼ぶべきかもしれません。

 改めて「朝活」のメリットを考えてみると、通勤電車がすいている、朝は仕事の能率がよい(これには夜型の人からの反論もあるでしょうが、朝は夜に比べるとオフィスが静かで電話が鳴らないのは事実です)、他の社員が出社したときには自分はある程度の仕事が済んでいてスタートダッシュに成功している、などが挙げられます。

 デメリットは・・・、特に思いつきません。しいて言えば、深夜番組が見られないことでしょうか。しかしこれはビデオをセットしておけば済むことですし、他に夜間でなければできないことというのはそう多くはないでしょう。(深夜に小さな子供に起こされることがある、深夜帰宅する娘を叱るために起きて待っている、とか、終日介護が必要な親と同居していて深夜に起きていなければならない、ということはあるかもしれませんが・・・)

 「朝活」に難点があるとすれば、デメリットがあることではなく、「メリットは分かるんだけど実行するのはちょっとしんどそうで・・・」、という思いではないでしょうか。

 しかし、この点は大丈夫です。実は、私は元々朝が起きられなくて、高校生の頃はよく遅刻をしていましたし、大学の1時間目というのは初めから諦めてできるだけ2時間目以降のクラスを選択するようにしていたくらいです。

 会社に就職した1991年、22歳のとき、英語の勉強時間をなんとしても捻出できなければ永遠に仕事ができない、と追い込まれて初めて私は朝5時起床を始めました。最初の数日はかなりつらかったのですが、それでも「私には早朝勉強法しかない」と自分を追い込むことで続けてみました。すると、しばらくして、「こんなにも効率がいいものなのか・・・」ということに気付いたわけです。つまり、【「朝活」のメリット>>早朝起床のつらさ】、ということに私は気付いたのです。もちろん、いろんな生活方法があるべきで、他人から強制されるようなものではありませんから、私としては「朝活」を他人に押し付けるつもりはありませんが、一度試してみて「朝活」のメリットを体験することは悪くないと思います。

 「朝活」はしんどいが故に長続きしないのでは・・・、このように考える人もいるでしょう。たしかに、何かのきっかけで(深夜まで続いた宴会とか、新しい恋人ができて夜中までの電話が日課になったとか、悩み事ができて朝まで眠れなくなったとか・・・)、「朝活」があっけなく終わってしまうこともあります。

 けれども、「朝活」は何度でもやり直せるのです。禁煙の経験がある人ならわかると思いますが、吸いたくて吸いたくて理性を失いそうになるあの苦しさなどに比べると、「朝活」を続けるしんどさなどささいなものです。禁煙は一度失敗すると、次に開始するときまでにある程度時間を置くのが普通ですが、「朝活」は失敗してもまた翌日から開始することができます。そして、「朝活」によって何かが達成できると、それが励みになり、気がつけば「朝活」をしないことがなんだかとても”損”をするような感覚になります。

 ですから、「朝活」はごく気軽に始めてもかまわないのです。明日失敗すれば、またあさってから始めればいいのです。実は、「朝活」を始めるのは、日の出時間が早くて寒くないこの季節が最適です。同じ「朝活」でも冬はしんどさが倍増します。

 さあ、あなたも早速明日からいかがでしょう。まずはあなた自身のなかで「朝活ブーム」を起こしてみませんか・・・。

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