マンスリーレポート

2007年6月号 チャレンジシートと相乗効果

組織の質を高めていくには個々人の努力が不可欠ではありますが、いくら個々が努力を重ねてもそれぞれが別の方向を向いていれば相加効果すら発揮できません。例えば、ある組織に3人のメンバーがいて、仮にその3人の能力が優秀であったとしても、向いている方向が違えば、1+1+1が3に満たないこともあります。

 一方、組織のメンバーが各自で努力をおこない、なおかつそれぞれの目指すところが同じところを向いていれば、1+1+1が3ではなく、6にも9にも、あるいはそれ以上になることもあります。

 質の高い組織というものは、単に各自の能力が優れているだけではなく、メンバーの関係性のなかで相乗効果が発揮され、予想以上の力が結果として得られるものだと私は考えています。

 これは、スポーツのチームプレイを思い出せば分かりやすいと言えるでしょう。例えば、いくら能力の高いサッカー選手を集めても相乗効果が発揮できなければそれほど強いチームにならないことは多くの人が実感していることだと思います。

 さて、組織で活動するという意味では、サッカーチームもクリニックも同じであって、たとえ個々が優秀な能力を持っていたとしても、各自が異なる方向を向いていれば相乗効果が発揮できず、患者さんにとって満足のいく診療ができないことになります。

 すてらめいとクリニックはオープンして半年近くがたとうとしていますが、オープン当初に比べれば随分改善されたとはいえ、申し分のない相乗効果が発揮できているとは到底言えない局面もあります。

 そこで、一応は組織のリーダーである私は、クリニックのメンバー各自にチャレンジシートを書いてもらうことにしました。クリニックでは短時間のミーティングは毎日おこなっていますが、組織の性質上、なかなか全員が集まって時間を割いて定例会議を開くことができないこともあり、各自の努力の内容や目標を把握するにはチャレンジシートの作成が適していると考えたのです。

 チャレンジシートの項目は、①ミッションステイトメントをどれだけ遵守できたか、②半期を振り返ってよくやったと思うこと、③半期を振り返ってできなかったことと今後の取り組み、④自身の長所とその長所を今後どのように伸ばしていくか、⑤自身の短所とその短所をどのように克服していくか、⑥今後クリニックで取り組んでいきたいこと、の6つです。

 メンバー各自のチャレンジシートは、内容も量も様々で、「こんなことにまでこれほど考えていてくれたのか・・・」と思うようなものもあれば、「いまひとつ具体性に乏しくて分かりにくいかな・・・」と感じるものもありますが、メンバー各自が、クリニックに対してどのような思いを持っているかがよく分かり、各自の向いている方向が認識できました。

 チャレンジシートに書かれた文章の内容が、日頃私が考えていること、感じていることとほとんど同じものもあります。メンバーが書いたそういった文章を読むと、「ああ、この人とはかなりの部分で共感できるな・・・」と感じます。「共感」できるということは、それ自体で感動をもたらせてくれますが、その逆に、「ああ、こういう考え方もあるのか・・・」と自分が考えたことのない内容を目にしたときにも別の感動があります。

 メンバーそれぞれがまったく同じ考えをしているときには、組織はまとまりやすいですが、ともすると相加効果は発揮できても、相乗効果が得られないことになります。つまり、3人のメンバーからなる組織を例にとれば、1+1+1=3にしかなりません。

 けれども、例えば、ミッションステイトメントを遵守した上で、メンバーそれぞれが独自の考えを持っており、それが互いに尊重できるものであったとすれば、1+1+1>3となります。そういう意味では、自分の考えと異なる意見をもっているメンバーの考えを聞くことは組織を向上させていく上で非常に大切なことではないかと思います。

 今は、メンバーそれぞれと面談をおこなっている最中ですが、こういった作業は組織の質を高めていく上で不可欠であることを実感しています。

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 ところで、現在のすてらめいとクリニックの最大の問題点は、「患者さんの待ち時間が長い」ということです。

 いつも混雑しているわけではないのですが、時間帯によっては患者さんが集中して来られ、待ち時間が長くなってしまいます。ときには、「もうこれ以上待てない」と言って帰られる方もおられます。

 また、診察前の待ち時間だけでなく、診察後、薬を受け取って会計を済ますまでの時間が長いときもあり、患者さんには多大なるご迷惑をおかけしております。
 
 この点については、クリニックのスタッフも重々承知しており、ほとんどのスタッフは今回のチャレンジシートに「待ち時間の長さが現在のすてらめいとクリニックの最大の問題」と書いています。

 チャレンジシートの作成、各自との面談を通して、はっきりしてきたことは、現在のすてらめいとクリニックには解決すべき問題が数多く存在しますが、最大の”緊急を要する”課題は「待ち時間を減らすこと」であるということです。

 私が大変幸せだと思うことは、ほとんどのスタッフがこのことを強く認識しており、待ち時間を減らすために各自が努力を重ねていることが分かったことです。

 今後、患者さんの待ち時間を減らすことができるかどうか・・・

 これができるかどうかは、スタッフどうしの相乗効果をどれだけ発揮できるかにかかっていると言えるでしょう。

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