マンスリーレポート
2005年7月号 2005/07/06
7月がやってきました。
私はなぜか毎年7月になるとワクワクします。これは小学生の頃から変わってません。小学生の頃の一学期の終業式なんて、もう楽しくて楽しくて・・・。長い夏休みの幕開け・・・、この感覚が私は大好きです。この感覚は、サラリーマンをしていた頃の金曜日の午後の気分に似ているかもしれません。土日とも休めることはあんまりありませんでしたが、土日に連休がとれるようなときには、金曜日の午後には、かなりハイテンションになっていて、どれだけ嫌な仕事でもワクワクしてすることができました。
一方で、夏休み最後の日というのはかなり憂鬱だったのを記憶しています。夏休みの宿題はできていない、毎日遅くまで寝ていたので明日から朝起きられる自信がない、お昼のテレビが見られなくなる・・・、とイヤなことだらけでかなり辛かったわけです。サラリーマンのときも、日曜日の晩がとにかくイヤでイヤで・・・。
よく言われるように、日曜日の夜のテレビ番組、例えば「サザエさん」を見ていると、うつな気分に襲われる、というのは私にも当てはまります。医師としての仕事は、楽しいことの方が圧倒的に多いので、今では日曜日の夜にイヤな気持ちになることはありません。けれども、今でも条件反射のような思考回路ができていて、サザエさんの、特に終わりの音楽を聞くと、なんともいえないイヤな気分になってしまいます。
さて、そんな話はいいとして、最近の活動をご報告したいと思います。まず、先月お伝えしたように、6月は、ふたつの発表(講演)の機会がありました。ひとつは、「大阪STI研究会」という研究会での発表、もうひとつは「羽衣学園」という大阪の学校での受験についての講演でした。前者は約10分間の発表でしたから、それほど緊張もしなかったのですが、後者の受験についての講演は、さすがに緊張しました。中高生の生徒さんとその親御さんの前で話すわけで、そして私は、中高と決して優等生なんかではなく、できそこないの生徒でしたから、そんな元不良生徒が話していいのかな、と申し訳ない気持ちもありました。
どんなことを話したかというと、まあ、だいたいは私が拙書のなかで述べていることなのですが、「偏差値が低くても受験を諦める必要はない」、「勉強とは本来楽しいものであり受験は勉強のなかでもかなり特殊なひとつ」、「受験勉強はたしかに辛いものかもしれないが、短期間であって楽しむこともできる」、などといったことです。
「講演するのは楽しいですか」などと聞かれることがたまにあります。楽しいかどうかはその内容にもよるのですが、勉強や受験に関して言えば、私の考えは「多くの人が受験について誤った理解をしている。本当は偏差値が低くても諦める必要はまったくないし、やりたいことならやればいい!」というものですから、悔いのない人生を送るためにも、私の意見を参考にしてもらえればと考えています。だから、私の意見を聞いていただき、それに同意してもらったり、あるいは反論してもらって意見を交換することは本当に楽しいことなのです。
というわけで、私の本を読んだり、このホームページのエッセイなどを読まれたりして、ご意見やご質問のある方はどんどんメールをいただければと思います。
さて、7月は私にとって大きなイベントがふたつあります。
ひとつは、7月1日から4日まで神戸で開催される、「ICAAP(アジア太平洋国際エイズ会議)」です。これは、いわゆる学会のひとつなのですが、普通の学会が、その出席者の大半が医師で、看護師や薬剤師などのパラメディカルが少し、というのに対して、この学会は、医師も参加しますが、医師よりもむしろパラメディカル、あるいはNPO法人のスタッフの方が多く、さらにHIV陽性の患者さんも参加されます。そして、HIV陽性の人のみが参加できるフォーラムも開催されます。
HIVやエイズは、日本でも患者数が増えているのにもかかわらず、世間の関心はそれほど高くありません。しかしながら、この学会ではアジア中からHIVやエイズに関心のある人が集まってきます。そして各自がそれぞれの研究や活動をおこなっており、それらを発表する場であります。
私はこの学会を通して、多くのHIVやエイズに関することがらを学びたいと考えています。
もうひとつのイベントは、タイ国渡航!です。7月28日から8月3日までタイに行くことになりました。もちろん本当はもっと長期で行きたいのですが、日本での仕事もありますから、これが精一杯の日程です。この間に、チェンマイに行って「バーン・サバイ」を訪問し、ロッブリーに行って「パバナプ寺」を訪れます。それからバンコクでは、去年パバナプ寺で仲良くなった、タイで公衆衛生学を学ぶ大学生と会って、日本タイでの共同研究の打合せをする予定です。かなりのハードスケジュールです。
先日、「バーン・サバイ」の早川さんから手紙をいただきました。(「バーン・サバイ」はチェンマイにあるエイズ患者さんのシェルターです。)早川さんによると、私が昨年お会いした患者さんは、抗HIV薬がよく効いて元気に生活されているそうです。またこの患者さんにお会いできると思うと今からすごく楽しみです。
一方ロッブリーのパバナプ寺では、去年私が一ヶ月間滞在したときにいた患者さんは、特に重症病棟におられた患者さんはほとんどが亡くなられているそうです。亡くなられた患者さんについては、HIV感染がもっと早期に発見され、適切なタイミングで適切な投薬がおこなわれていれば今も元気にされていたかもしれません。このことを考えると、我々医療従事者がしなければならないことはまだまだたくさんあるように思います。
家族や地域社会から見放されてパバナプ寺で生活されている、治療が遅れたために余命いくばくもない患者さんの苦しみを取り除くことに努力するのも医師の務めですし、一方でエイズの早期発見の重要性を訴えて、検査を促進することもしなければなりませんし、また、HIV感染を予防するための正しい知識を普及させることにも努めなければなりません。
私はこれからもどんどんHIV/AIDSに、医師として様々な観点から取り組んで行きたいと考えています。
「日本タイでの共同研究」というのは、私が知り合ったタイの大学生がとても熱心な学生で、タイでのHIV/AIDSについてすごく興味をもっています。そんな学生と一緒に、「主に若い世代のHIVやエイズに対する関心」や「性感染症について、あるいはコンドームの使用についての意識」をアンケート調査をすることによって比較してみようという試みを考えています。この調査をおこなうことによって、互いの国でどういう意識が欠落しているか、とか、どういう啓蒙活動をすべきか、といったことを分析できればいいなと考えています。
次回のマンスリーレポート(8月号)は、ICAAPのことを中心に報告したいと思います。
受験生の方にとっては、ワクワクするような夏ではないかもしれませんが、それでも2005年の夏はもう二度と来ないわけですから、悔いのないシーズンにしましょう!
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