メディカルエッセイ
第180回(2018年1月) 私の英語勉強法(2018年版)
2011年に書いたコラム「私の英語勉強法」で、効果的であると私が考えている英語の勉強法を紹介したところ、たくさんの方から「参考になった」「もっと教えてほしい」といった連絡をいただきました。そのコラムで書いたように、私自身も20代前半の頃から英語の勉強は今も継続しているのですが、最近になってその方法が随分と変わってきました。そして改めて2011年当時のコラムを読み直してみると、改訂版をつくらなければ、という思いになり、今回2018年版を書くことにしました。
まずは2011年版で紹介した勉強法をまとめてみます。
(1) 英会話学校は役に立たない
(2) CD,ラジオではなくテレビ、インターネットが有効
(3) NHKのテレビプログラムは最強の英語勉強ツール
(4) NHK(正確にはNHK world)のウェブサイトでニュースを聴く
(5) ネイティブの講師をみつけてプライベートレッスンを受ける
この5つのなかで、今も継続して私が実践していて、そして他人に勧めているのは(4)だけです。(2)は部分的には変わっていませんが根本が異なります。そして、(1)(3)(5)は完全に撤回しなければなりません。
2011年の時点では、私はNHKを絶賛しており、複数の英語教育番組を録画して観るべきだ、と述べました。なにしろ90年代前半から20年間にわたり私が実践してきた方法です。当時のコラムには「私はNHKの英語教育プログラムを一生見ることになる」とまで書いています。ここまで書いて撤回するのは恥ずかしいのですが、真実を隠すわけにはいきません。
とはいえ、何もNHKの英語教育番組が劣化したわけではありません。プログラムの内容自体は素晴らしいものです。では、なぜ私がNHKから”卒業”したのか。それは現在ではもっといい方法があるからです。その方法は後で述べるとして、NHKの英語教育プログラムで1点だけ補足しておきます。「ニュースで英会話」という優れた番組があります。この番組を見たことがないという人には是非テレビも勧めたいのですが、インターネットを用いればこの番組をもっと効率よく利用することができます。番組のウェブサイトにアクセスし、会員登録をするとニュースの画像、音声、スプリクトの全てを得ることができます。しかも「音声」はゆっくりと読み上げる機能まであります。この機能が使えるとなるとテレビを見るよりも効果的な勉強ができます。
「ニュースで英会話」を私はデスクトップのパソコンを利用して勉強していますが、これはスマホでも可能です。そしてスマホこそが先に述べた私の勉強法が大きく変わってきた最大の理由に他なりません。スマホ依存症はいまや重大な疾患ですが、「スマホで英語勉強依存症」はむしろ目指してもいいかもしれません。
元々私は電話自体が好きでありませんし、スマホが登場したときも必要とは思いませんでした。(一方でiPADは比較的早くに買いました) ところが「iPhone 6 Plus」が発売されたときに、私の考えが大きく変わりました。「これは使える!」と直感したのです。以前の私は、あの小さな携帯電話(ガラケーと呼ばれているもの)で、文字をうっている人の気持ちが分かりませんでした。そんなに細かいことしなくても家か職場でパソコンでやればいいんじゃないの?と思っていたからです。スマホが登場したときも、こんなに小さい画面で入力なんて肩がこるだけ、と思っていたのです。しかし「Plus」のサイズがでたときにはその考えが変わりました。
スマホが英語の勉強に適しているのは「ニュースで英会話」が見られるからだけではありません。インターネットにつながるわけですからCNNでもBBCでもNHK worldでもなんでも見られます。ですが、スクリプトのでない放送をみても勉強になるとは限りません。私のおすすめは「voice of America learning English」(以下VOA)です。これについては、2011年のコラムでも紹介しましたが、英語の学習者用にゆっくりと読み上げてくれて、なおかつ一字一句正確なスクリプトが表示されます。
ここで「英語はネイティブのスピーキングの速さについていかなければ意味がない」という意見に答えておきます。これはたしかに一理あり、意味が分からなくてもBBCやCNNのキャスターの英語を聞くような勉強もすべきです。ですが、VOAのようにゆっくりと話してくれれば「シャドーイング」ができます。シャドーイングはここ数年英語の勉強の話題になるとよく出てくるキーワードで、英語を聞き取りながらわずかに遅れて同じ英文を話すことです。2011年時点では私はシャドーイングの有効性をそれほど重視していなかったのですが、現在は極めて有効な練習法と考えています。英語はいくら読み書きができて、ある程度リスニングができたとしてもスピーキングはうまくなりません。うまくなるにはこのシャドーイングが極めて有効なのです。
さらに、話す・聴くで有効な勉強法を紹介しましょう。2011年に私は英会話学校を否定し、自分でプライベートレッスンを受けられる講師を探すことを提案しましたが、これより遥かに有効な方法があります。それは、フィリピンの英語教師からマンツーマンのレッスンを受けるという方法です。2011年の時点で私は知りませんでしたが、ちょうどその頃からフィリピンに短期間渡航し、マンツーマンの英会話学校に入る人、さらにスマホを用いて日本にいながらプライベートレッスンを受ける人が続出しました。そして、これが信じられないくらいに安いのです。
私も4日間の超短期間ですが、実際にフィリピンに渡航し体験してみました。学校や講師によっては勉強にならないという意見もあるようですが、そんなことはまったくなく私にはとても勉強になりました。そもそも彼(女)らの英語のレベルは少なくとも日常会話でいえばほとんどの日本人より上です。講師によっては、例えば医学で用いる単語を知らない、ということはありましたし、仮定法過去の使用がおかしい講師もいましたが、そんな講師でも発音は私とは比較にならないほど上手ですし、あまり話さない講師なら、こちらから一方的にがんがん話をして、間違っている発音を訂正してもらうという勉強もできます。私のように4日程度なら、”元”をとれないかもしれませんが、1週間以上の時間がとれるならLCCなどを利用すればかかった費用の何倍もの価値があるはずです。
もちろん日本にいながらスマホを用いて講師の顔をみながらレッスンを受けてもかまいません。ただ、私自身はスマホのスクリーン越しに他人と話すのに慣れておらず抵抗があるので、これはおこなわずに、先述したVOAとNHK worldをメインとした勉強にしています。VOAでは、ニュース以外に「Let’s learn English」、「English in a Minute」、「News Words」、「Everyday Grammar」など、英語勉強用の1~数分のすぐれたプログラムが多数用意されています。
スマホといえばアプリですが、私は過去数年間で30以上の様々な英語学習用アプリを試してみました。そのなかでひとつ推薦するとすれば「English Central」です。このアプリでもマンツーマンレッスンも申し込めますが、それをしなくても多数のビデオを字幕付きで見ることができます。ビデオの時間は1~数分で、内容が多岐にわたり、初心者から上級者向けまで様々なものが用意されていて無料です。これを毎日続ければ少なくともリスニングとスピーキングに関しては飛躍的に伸びると思います。
また、読み書きなら誰でもすぐに始められる簡単な勉強法があります。まずスマホの設定を「英語」にします。これでほとんどのアプリが英語版になります。そしてLINEやFacebookやtwitter、メールを可能な限り英語で送信するのです。私はSNSは登録のみで自分から何かを発することはありませんが、たとえばtwitterではトランプ大統領のツイートがほぼ毎日入ります。(返信はしたことがありませんが、すれば読んでもらえるのでしょうか…)
ここで私の英語勉強法2018年版をまとめておきます。
(1) スマホは最強の英語勉強ツール(もちろんPCでもOK)。アプリも充実している。
(2) NHKの英語教育番組は依然高品質だがテレビを観なければならないのが難点。
(3) NHKの「ニュースで英会話」はテレビよりスマホが効果的。スマホならゆっくり読み上げてくれる機能がある。
(4) 「Voice of America learning English」のゆっくり読み上げてくれる機能はリスニング及びシャドーイングに最適。
(5)英会話学校はマンツーマンレッスンをフィリピンで受けるのがいい。費用は驚くほど安くLCCを利用して渡航すれば1週間でも元がとれる。
最後に、拙書『偏差値40からの医学部再受験』でも述べた英語学習の”特徴”を繰り返しておきます。それは、英語というのはしばらくの間はやってもやってもまったく伸びず、ある日突然理解できるようになり、また停滞して、再びできるようになり…、という感じで階段状に上達していくということです。現在行き詰っていたとしても決して諦めないでください。
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