マンスリーレポート
2010年3月号 大阪プライマリ・ケア研究会の「世話人」として
私は現在、医療法人太融寺町谷口医院の院長であると同時に、大阪市立大学医学部附属病院総合診療センターの非常勤講師という立場でもあります。その大学医学部附属病院総合診療センターが中心となって運営している研究会に「大阪プライマリ・ケア研究会」というものがあります。
同研究会の代表は、総合診療センター教授の廣橋一裕教授がつとめられているのですが、2月中旬、教授から私に、同研究会の世話人になるように、とのご連絡をいただきました。同研究会に対して私が貢献できることなど微々たるものではあるが、できる限りのことをやらねば……。そのように考えた私は、この「世話人」という役職を引き受けることにしました。
「世話人」はもちろん私だけではありません。私などよりはるかに立派な先生方が名を連ねており、私は一番下っ端の立場であります。当分の間、先輩の先生方のお手伝いをするのが私の使命だと考えています。
さて、プライマリ・ケアについてはこのサイトでも何度も紹介していますが、最近の医学界におけるプライマリ・ケア医の動向をここでまとめておきたいと思います。
まず、プライマリ・ケア関連の大きな学会が来たる2010年4月1日に誕生します。この学会は「日本プライマリ・ケア連合学会」といいます。「連合」という名前が付いているのは、既存の3つの学会が「合併」することになるからです。既存の3つの学会とは、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会です。
これら3つの学会は、少しずつ「違い」があるものの、総じて言えばプライマリ・ケア医の知識と技術を向上させることを目的としています。医学界全体でみると、3つの学会はいずれも小さすぎる学会ではありませんが、大きな学会ではありません。ならば、合併した方が会員にとって有益であることが期待できま。例えば、学術大会が大きくなることで、発表のレベルが高くなったり、海外から著明な講師を招待しやすくなったり、といった利点が考えられます。
私個人としては3つの学会が合併することには賛成です。これまで私は3つの学会それぞれに入会していて、どの学会の学術大会に参加すべきか悩んでいました(3つとも参加できるような時間的余裕はありません)。これからは連合学会の年に一度の学術大会に参加できるようにスケジュールを調節する予定です(実際は、クリニックの都合で参加できなくなる可能性もありますが・・・)。
興味深いことに、多くのプライマリ・ケア医が私と同じようにこの合併に賛成しているかというとそうではありません。合併に反対する意見もあるのです。
2月5日から6日にかけて、「日本病院総合診療医学会」の第1回総会が福岡市で開催されました。この学会は、日本総合診療医学会が日本プライマリ・ケア連合学会に合流することに反対した大学総合診療部の責任者が中心となって設立したものです。
「日本病院総合診療医学会」を設立した医師たちは、なぜ「連合学会」に賛同しなかったのかというと、おそらく連合学会が開業医や、あるいは地域で働く「家庭医」の育成を主たる目的としているのに対し、日本病院総合診療医学会はあくまでも大学病院など大きな病院での総合診療を目指しているからではないかと思われます。
以前、このサイトの「メディカルエッセイ」(下記注参照)で、大学病院の総合診療科が縮小方向にあるという話をしましたが、この傾向は現在も続いています。大学病院の総合診療科には、患者さんがそれほど多く集まらないのです(この理由については下記「メディカルエッセイ」を参照ください)。一方、中小の民間病院や診療所・クリニックには総合診療を担う医師(プライマリ・ケア医)が必要です。大学病院のような高次病院は専門医療を担う場所であって、小さな医療機関は幅広く多くの症状・疾患に対応すべきだからです。
しかしながら、大学病院の総合診療科のメリットもあります。このメリットは患者さんからみたときよりも、総合診療(プライマリ・ケア)を学ぶ医師の側からみたときのものが大きいと言えます。大学病院だからできる検査や治療もありますし、大学病院でおこなうカンファレンスだからこそ幅広い学術的な観点から議論ができる、というようなこともあります。
私がクリニックを開業する前は、大学の総合診療科で週に1回(毎週水曜日)外来を担当し、それ以外の日は、週に1~2回、大学の総合診療科の他の先輩医師の外来を見学させてもらっていました。そして、それ以外の日には、大学には行かず、他の診療所や病院に出向いて研修を受けたり、見学をさせてもらったりしていました。このような勉強の仕方をとると、クリニックから大学病院まで様々な医療現場を体験することができ、そして多くの科の勉強をおこなうことができます。
私の場合、月曜日は産婦人科の見学、火曜日は地域の診療所で小児科・内科の外来担当、水曜日に大学病院総合診療科の外来担当、木曜日は中小病院で皮膚科の外来、金曜日は整形外科クリニックで研修、土日は中規模病院の救急外来……と、このような感じでクリニックから大学病院まで、そして各科の勉強をおこなっていました。見学や研修というのは基本的には無給ですから、経済的にはかなり大変ですし、自由時間はほとんどありませんが、結果として私はこのような体験をして本当によかったと思っています。
さて、「大阪プライマリ・ケア研究会」に話を戻したいと思います。私はこの研究会の世話人として、若い医師たちにプライマリ・ケアの醍醐味を伝えていきたいと考えています。そして、勉強・研修の仕方としては、地域のクリニックで学ぶことのできる家庭医療に力を入れたプライマリ・ケアと、大学病院など高次医療機関で学ぶことのできるプライマリ・ケアの両方を勉強してもらいたいと考えています。
大阪プライマリ・ケア研究会は、大阪市立大学医学部附属病院が中心になっているわけですから、大学病院の総合診療を学ぶことができます。また、同研究会には地域の開業医や市中病院で活躍している医師も参加しており、家庭医療に重きを置いたプライマリ・ケアの勉強もできます。
同研究会は、今年から年に3回開催される予定です。研究会を充実させていくためには、まず多くの医師、特に若い医師の参加が不可欠です。そして、数多くの優れた発表の場としなければなりません。
6月に次回の研究会が開催されるので、そのときに何か発表できるように私も準備を開始するつもりです。まだ白紙の状態ですが、太融寺町谷口医院に特色のある内容にできればと考えています。太融寺町谷口医院は大阪市北区の繁華街に位置しており、プライマリ・ケアを実践していますから、働き盛りの若い患者さんが多く、症状や疾患も、例えば住宅街や農村地区のものとは大きく異なります。都心のプライマリ・ケアとして特徴的な内容を発表することを考えています。
そして、研究会を充実させるには多くの若い医師の参加が必要です。これを読まれている関西地区の医師の方がおられましたら参加を検討いただければと思います。
参考:
メディカルエッセイ第76回(2009年5月号)「大学病院の総合診療科の危機その1」
メディカルエッセイ第77回(2009年6月号)「大学病院の総合診療科の危機その2」
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