マンスリーレポート
2008年8月号 会議の醍醐味と相乗効果
すてらめいとクリニックは、開院して、早いもので1年半以上が経過しました。
この1年半の間、患者さんが増え、スタッフが増えましたが、同時に対処しなければならない課題や問題も増えてきています。
長い待ち時間をどうするか・・・、予約制度に見直しの余地はないか・・・、スタッフが現在優先的に勉強すべきことは何か・・・、クリニックとして参加すべき学会やイベントは・・・、保険制度の変更や新しい法律などには対応できているか・・・、
これらは我々の前に次々と現れる課題の一部です。こういった課題や問題から逃げるわけにはいきません。我々はいつも最善の解決策を検討するようにしています。
というわけで、クリニックを開院してから時間がたつにつれ、次第に会議の回数や種類が増えてきています。
現在おこなっている会議をまとめてみると、まずは毎朝診察の前におこなっている「朝の定例会」があります。ここで前日の問題点を話し合い、その日来院予定の患者さんに関することなどをスタッフ全員で確認します。
毎週金曜日の昼休み(午後2時半から3時50分)には、医師と看護師中心の、主に疾患や治療法に関する勉強会(定例カンファレンス)を開いています。この時間には、すてらめいとクリニックでよく遭遇する疾患について、医師(私)が疾患の原因や検査法、治療法などについて講義をおこないます。また、現在治療に難渋している症例を取り上げてみんなでディスカッションをおこなうこともあります。
さらに、外部から専門家に来てもらって勉強会をおこなうこともあります。先日は、ある大学病院の感染症を専門とする先生にクリニックまでお越しいただき、院内感染についての講義をおこなってもらいました。現在、クリニックでは院内感染対策のマニュアルを作成中で、このマニュアルの監修もおこなってもらうことになりました。
月に一度の会議としては、「ホームページ会議」「仕入れ会議」「業務改善会議」「院内感染対策会議」があります。
「ホームページ会議」は、文字通り、すてらめいとクリニックのホームページについて検討します。ウェブサイトを作成してくれている外部の担当者にも来てもらって、毎回活発な議論が繰り広げられます。
「仕入れ会議」は、現在すてらめいとクリニックが扱っている薬品について、何がどの程度処方されているかを確認します。毎月のように新しい製品が出ますから、それらを導入するかどうかを決めたり、後発薬品(ジェネリック薬品)の見直しをおこなったりします。
すてらめいとクリニックには、様々な疾患を抱えた患者さんが来られますから、扱っている薬剤の種類が多く、(担当税理士によると)他のクリニックに比べると、会計的にみて在庫の額が多いそうです。医療機関は営利機関ではありませんが、税務上は一般企業と同じように会計をしなければならず税金が払えないとつぶれてしまいますから、健全な経営をしなければなりません。そのためには仕入れの量を減らさなければならないのですが、必要な薬剤はその場になければなりません(品切れさせてはいけません)。このバランスが非常にむつかしくて仕入れ会議ではそのあたりの議論が中心になります。
「業務改善会議」は、日頃の診察のなかで生じる問題点について話し合います。例えば、「待ち時間の長さをどうしていくか」、「予約システムをさらに改善するにはどうすればいいか」、「待合室においている雑誌は適切か」、「電話回線を増やす必要はないか」、「次に募集するスタッフにはどのようなことを求めるか」、・・・といったことについて話合います。
「院内感染対策会議」では、スタッフの手洗いが徹底されているか、採血・点滴や処置の仕方は万全か、現在使用している製品よりも安全性の高い製品はないか、新しいスタッフは(はしかやB型肝炎ウイルスなどの)ワクチンを接種しているか、などについて議論をおこないます。
ところで、私はすてらめいとクリニックの会議を楽しみにしています。
その理由は、「スタッフの意見を公正に聞けて相乗効果を発揮できるから」です。私はクリニックでの勤務時間の大半を診察室で過ごします。そのため、処置室では何が問題になっているか、受付にはどのような要望(あるいはクレーム)が寄せられているか、各スタッフが業務を遂行していくなかで新たに浮上した課題などについては分からないことがほとんどです。
会議では、各スタッフがそれぞれの立場から自由に発言をおこないます。これが私には(そしておそらくスタッフ全員にとっても)大変貴重な意見を聞く機会になっています。
すてらめいとクリニックの会議を「理想の会議」と私は考えていますが、それは「会議のルール」を全員が遵守しているからです。「会議のルール」にはいくつかあると思いますが、私が最も重視しているのは、「他人の意見を尊重する」ということです。会議によっては、声の大きな人の意見ばかりが通ったり、トップダウン形式で上の者の意見が絶対視されたりすることもあると思いますが、すてらめいとクリニックの会議はそうではありません(と私は思っています)。例えば、他人の発言をさえぎって意見をいうスタッフはいませんし、反論するときでも、まずは相手の意見を認めた上で(少なくともその意見の合理性を理解したことを相手に示したうえで)、自身の意見を述べるように全員がしています。
こういった「会議のルール」を遵守した上で、会議に参加するのは本当に楽しいものです。一見どうすることもできないような問題でさえも、みんなで検討することによって改善策がみえてくることはよくあります。
そして、これがすてらめいとクリニックのミッション・ステイトメントにもある「相乗効果」なのです!
「相乗効果」とは、例えば会議の参加者が8人だとすれば、1+・・・1=8になることではありません。(これは単なる合算で「相加効果」と呼ばれるものです) 相乗効果とは、1+・・・1>8になります。しかも、実感としては8より少し大きい程度ではなく、16にも24にも、あるいはそれ以上になることもあるのです!
大きな組織では、大きな組織なりの会議になってしまって、このような「相乗効果」は発揮しにくいのではないでしょうか。小さな組織で、なおかつスタッフ全員がミッションを共有しているときにのみ、真の相乗効果を発揮できるということを私は信じています。
明日の朝の定例会ではどの症例をとりあげようか・・・。次の業務改善会議ではどのような問題を提起しようか・・・。最近の私はいつもこのようなことを考えています。
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