2014年2月28日 金曜日

2014年2月28日 高齢女性の座りっぱなし、死亡リスクが上昇

 数年前から、「長時間の座りっぱなしは生活習慣病の危険因子となり死亡リスクを上昇させる。そしてこの弊害は運動をしても解消されるわけではなく、危険性は喫煙に匹敵する」ということがしばしば指摘されています。

 今回紹介する研究も似たような結論が導かれています。医学誌『American Journal of Preventive Medicine』2014年2月号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、座って過ごす時間が長い高齢女性は、活動的な女性に比べ、早期死亡のリスクが有意に高いそうです。

 この研究の対象は米国の閉経後の女性92,334人です。対象者は調査開始時点で50~79歳であり追跡期間の中間値は12年です。座りっぱなしで「非活動の時間」(注2)が、①4時間以下、②4~8時間、③8~11時間、④11時間以上の4つのグループに分けて死亡リスクが検討されています。

 分析した結果、④の1日11時間以上座っている女性は、①の4時間以下の女性に比べると、全原因による死亡リスクが12%高いということが判ったそうです。疾患ごとにみてみると、脳血管疾患、心疾患、ガンによる死亡率が、それぞれ13%、27%、21%高かったようです。

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 この研究でも、定期的な運動をしていたとしても長時間座りっぱなしのリスクを帳消しにはしてくれない、といったことが述べられています。これまで発表されている座りっぱなしが危険であることを示す研究は比較的大規模のものが多く、座りっぱなしが早期死亡のリスクになることはほぼ間違いないでしょう。我々ひとりひとりの対策が必要になります。

(谷口恭)

注1 この論文のタイトルは「Sedentary Behavior and Mortality in Older Women」で、下記URLで概要を読むことができます。
http://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797%2813%2900594-1/abstract

注2:原文ではsedentary timeとされています。

参考:
メディカルエッセイ第129回(2013年10月)「危険な「座りっぱなし」」
医療ニュース2013年4月2日「座りっぱなしの生活がガンや糖尿病のリスク」
医療ニュース2010年7月30日「座っている時間が長い人は短命?」

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2014年2月28日 金曜日

2014年2月28日 ビタミンDのサプリメントに有益性なし

  ビタミン剤のサプリメントは健康にいいどころか危険性が多く、安易に使用されるべきでないことが指摘されるようになってきていますが(それでもいまだに過剰な宣伝は一向におさまらず使用者は多いようです・・・)、そのビタミン剤のなかで比較的有益ではないか、とされていたのがビタミンDです。

 しかしそのビタミンDへの期待も”幻想”に過ぎなかったようです。

 医学誌『Lancet Diabetes & Endocrinology』2014年1月24日号(オンライン版)に掲載された論文(注1)によりますと、ビタミンDのサプリメントによる健康上の有益性はほとんどないそうです。

 この研究はニュージーランド、オークランド大学のMark J Bolland氏らによっておこなわれています。研究者は、これまでに発表されたビタミンDのサプリメントの効果を評価した複数の調査を総合的に分析(メタ分析)し、ビタミンDの有益性を改めて検討しています。

 分析の結果、虚血性心疾患(患者総数48,647例)、脳血管障害(患者総数46,431例)、ガン(患者総数48,167例)、骨折(患者総数76,497例)におけるビタミンDのサプリメントの効果は、カルシウムの併用をしていてもしていなくても、有意な効果は認められなかったそうです。別の見方をすると、ビタミンDのサプリメントを摂取しても、これら疾患のリスクは15%以上は減少しないことが判ったそうです。

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 ビタミンDのサプリメントの効果が「15%以上は減少しない」ということは「15%近くは減少する」ということでそれならば有益ではないか、という見方をしたくなりますが、これは効果を多く見積もって15%未満ということであり、実際は効果はほとんどないとみるべきでしょう。また、ビタミンDを過剰摂取したときの副作用にも注意しなければなりません。

 ただしビタミンDは危険なものでは決してなく人間には必要なものです。肉や卵に豊富に含まれていますからバランスよく食事をしていれば欠乏することはないのですが、ベジタリアンの人たちは不足しがちになります(注2)。ですから、ベジタリアン(特にヴィーガン)の人たちは肉や卵が食べられないならサプリメントでの摂取も検討すべきです。

 まとめると、ビタミンD欠乏症になればサプリメントも含めてビタミンDの積極的摂取を検討すべき、一方欠乏症でない人はサプリメントに有益性はほとんどないことを理解し、有害性に注意すべき、となると思います。

(谷口恭)

注1:この論文のタイトルは「The effect of vitamin D supplementation on skeletal, vascular, or cancer outcomes: a trial sequential meta-analysis」で下記の論文で概要を読むことができます。
http://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587%2813%2970212-2/abstract

注2:ベジタリアンについては下記も参照ください。
メディカルエッセイ第126回(2013年7月)「我々はベジタリアンの道を進むべきか」

参考:医療ニュース
2014年1月28日「やはりビタミン・ミネラルのサプリメントは利益なく有害」
2010年2月1日「ビタミンDの不足は大腸ガンのリスク」
2010年2月11日「ビタミンDが不足すると喘息が悪化」

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2014年2月21日 金曜日

第133回(2014年2月) スタチンの功罪とリンゴのことわざ

 著名な医学誌『BMJ(British Medical Journal)』の2013年12月17日号(オンライン版)に「1日1錠のスタチンで医者知らず、ことわざとの比較研究」というタイトルの論文が掲載されました(注1)。(原題は「A statin a day keeps the doctor away: comparative proverb assessment modelling study」です)

 スタチンというのは、コレステロールを下げる薬として有名なもので日本を含め世界中で多くの人が毎日内服しています。今回はこのスタチンについて効果と副作用について紹介したいのですが、BMJのこの論文の「ことわざ」とは何なのかについて先に解説していきたいと思います。

 この論文でとりあげられている「ことわざ」は、「an apple a day keeps the doctor away」というもので、日本語にすれば「一日一個のリンゴで医者知らず」となります。これは大変有名なことわざで、英語を本格的に勉強したことのある人なら聞いたことがあると思います。(ちなみに私は、以前からthe doctorではなくa doctorにすべきではないのか、と感じているのですがtheが正しいようです。英語の冠詞は私にとって未だに本当にむつかしいものです。まあ、フランス語やドイツ語よりはましですが・・・。アジアの言語には冠詞という概念がほとんどありませんが特に問題はないわけで、冠詞って本当にいるのか、と思うことすらあります・・・)

 話を戻しましょう。 原題のA statin a day keeps the doctor awayは、このリンゴのことわざに”かけている”のです。スタチンは高コレステロール血症の治療として用いる場合は、その人の状態によって1錠であったり2錠であったりそれ以上であったりしますが、ここでいっているのはスタチンの「予防的投与」です。イギリスでは高コレステロール血症の予防薬としてシンバスタチン40mgの1日1錠服用が認められています。(ちなみに、日本で高コレステロール血症の治療にシンバスタチンを使用するときは5~10mgが標準で重症例でも20mgまでです。40mgというのは日本人の感覚からすればかなりの高用量です)

 今回の研究では、そのシンバスタチン40mg1日1錠を内服しているグループと、1日1個のリンゴを摂取しているグループとを比較し、どちらが心血管系疾患の死亡を減らせるかを検討しています。実際には、シンバスタチンを内服している人もリンゴを食べますし、リンゴ1日1個のグループも、ときには2個食べることもあるでしょうが、そのあたりは統計学的な処理をして調整されています。また総摂取カロリーも同等に調整されています。
 
 解析の結果、もしもイギリスの50歳以上の全国民にシンバスタチンを投与すると年間9,400人の心血管疾患による死亡が回避できることが分かりました。一方、リンゴを摂取すると8,500人が死亡を回避できるそうです。

 ただし、リンゴには副作用がなくスタチンにはあります。分析によると、スタチン摂取であれば年間1,200人が筋肉の障害を発症し、そのうち200人は横紋筋融解症というときに致死的になる重大な筋疾患に発展します。また、12,300人が糖尿病を発症します。
 
 興味深いことに、この研究ではスタチンとリンゴの費用も算出されています。50歳以上の全国民にスタチンを投与するとなると、1億8000ポンド(約306億円)が必要になるのに対し、リンゴであれば2億6000ポンド(約442億円)がかかります。

 お金のことは置いておくとして、スタチン、リンゴのどちらを選択すべきでしょうか。効果面だけをみればスタチンの方に軍配が上がりますが、副作用の問題は無視できません。特に、スタチンのせいで年間12,300人もの人が糖尿病を発症するなら意味がないのではないか、と思えます。

 実は、スタチンは随分と長い間、副作用の少ない有効で安全な薬とされていましたが、最近は糖尿病のリスクを上げるのではないか、ということがしばしば指摘されています。これに反論する報告、つまりスタチンは糖尿病のリスクを上げるわけではない、とするものもありますが、世界的には、スタチンの糖尿病リスクは次第にコンセンサスが得られているように私は感じています。

 ただし、一言で「スタチン」といっても様々な種類のものがあります。そして、スタチン間の比較検討をおこなった研究もあります。医学誌『Circulation』2013年7月9日号(オンライン版)(注2)によりますと、スタチンの種類によっては肝機能障害などの重篤な副作用のでやすいものもあり、安全性を総合的に評価するとシンバスタチンとプラバスタチンがより安全、という結果がでています。ただし、糖尿病についてはどのスタチンも同じようにリスクがあるようです。

 リンゴが嫌いな人、あるいは嫌いじゃないけど毎日も食べられないという人はスタチンを1日1錠飲む方がラクと思われるかもしれません。しかし糖尿病を含めて副作用のリスクを抱えてまで、治療ならともかく予防的にスタチンを飲みたい、という人はそう多くはないでしょう。

 ところで、なんでリンゴなの?と思う人もいるのではないでしょうか。リンゴでなくて例えばみかんとか桃はダメなの?と感じる人もいるでしょう。なぜリンゴなのか、それは先に紹介したことわざにあるからですが、なぜこのようなことわざがあるかというと、ヨーロッパ人にとってリンゴが国民的フルーツであるからに他なりません。

 米原万里さんの『旅行者の朝食』 にこの話が少し出てきます。ウイリアムテルや白雪姫からもわかるようにヨーロッパ人にとってのリンゴというのは単なるフルーツ以上の意味があります。ニュートンが万有引力の法則を発見したのもリンゴがきっかけとされていますし、アダムのリンゴのことを考えれば、単にフルーツではなく「生命」に関する何かの象徴であるようにすら思えてきます。米原万里氏はこの本の中で日本人のリンゴに相当するものは「柿」ではないかと自説を述べられていますが、私は日本人の柿よりもヨーロッパ人のリンゴの方が遙かに果物以上の意味を持っているように感じています。

 話をスタチンに戻しましょう。私個人としてはスタチンの予防投与には賛成していません。効果があるのは事実ですが、副作用のリスクもあるわけですし、リンゴを毎日食べられなければ他の果物などでコレステロールを上昇させないものを探せばいいわけですから無理にスタチンを摂取する必要はありません。

 それにイギリスで予防的に摂取されているシンバスタチンには副作用以外にも「欠点」があります。それはスタチンの種類によっては「グレープフルーツを食べられなくなる(注3)」ということでシンバスタチンも該当します。実際には少量なら特に問題は起こりませんが、例えば毎朝コップ1杯のグレープフルーツジュースを飲むことを習慣にしているような人はシンバスタチンはやめておいた方がいいでしょう。この点では、シンバスタチンと同様に安全という結果がでたとされる「プラバスタチン」(注4)の方が安全です。

 スタチンという薬は世界で最も処方量が多い薬のひとつであり、医学及び薬学の歴史に残る薬です。そしてスタチンが発見されたのは1973年で日本人の学者によるものです。生化学者の遠藤章博士が青カビの培養液から最初のスタチンを発見したのです。この発見はノーベル化学賞に値する功績だと私は考えていますが、なぜかマスコミなどはあまり遠藤博士を取り上げていないような気がします。

 スタチンが医薬品として登場したのは1989年ですから、今年(2014年)で25年目ということになります。スタチンはコレステロールを下げること以外にも、最近は様々な利点や欠点が指摘されるようになり、例えば歯周病を減少させるという研究がありますし、欠点としては白内障のリスクを上げる可能性も指摘されています。

 私自身の結論を述べれば(この手の話題は毎回同じような結論になっていますが)、心血管系疾患を含むほとんどの非感染性の疾患については、薬に頼るのではなく、バランスのいい食事と適度な運動、ストレス軽減、禁煙、早寝早起きなどをまずは心がけるべき、というものです(注5)。

注1:この論文は下記URLで全文を読むことができます。
http://www.bmj.com/content/347/bmj.f7267

注2 この論文のタイトルは「Comparative Tolerability and Harms of Individual Statins」で下記のURLで概要を読むことができます。
http://circoutcomes.ahajournals.org/content/early/2013/07/09/CIRCOUTCOMES.111.000071.abstract

注3:グレープフルーツがダメなら他の柑橘系は?という疑問がでてくると思います。グループフルーツがスタチンに相性が悪いのは、果肉部分に存在するフラノクマリンという物質の特定のタイプのものが含まれているからです。これはピンクグレープフルーツにはあまり含まれていませんから、グレープフルーツを食べるならスタチンを内服している人はピンクグレープフルーツにしておくべきと言えるかもしれません。また、みかんやオレンジ、レモンなどにはこのタイプのフラノクマリンがほとんど含まれていません。一方、スウィーティー、ザボン、ハッサク、夏みかん、ブンタン、バンペイユ、ダイダイ、サワーオレンジには比較的多く含まれていますからグレープフルーツと同様の注意が必要です。

注4:プラバスタチンは一般名であり、商品名は先発品では「メバロチン」です。後発品も様々なものがあり、当院でも基本的には後発品を処方しています。

注5:このあたりについては下記メディカルエッセイを参照ください。
メディカルエッセイ第129回(2013年10月号)「危険な「座りっぱなし」」

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2014年2月21日 金曜日

第126回 デング熱は日本で流行するか 2014/2/21

 今回は以前私がタイ渡航中にある日本人男性から聞いた話から始めたいと思います。

 西岡直也氏(仮名)は30代半ばの男性です。20代の頃からタイが大好きで、タイでの生活を楽しむために働いていた会社を退職し、時給のいい夜間の工場勤務を数ヶ月間おこない、まとまったお金ができるとタイで数ヶ月過ごし、お金が尽きると日本に戻り再び夜間の工場勤務、という生活を続けていたそうです。

 景気のいい頃はこのような工場勤務の仕事がいくらでもあったのにリーマンショック以降はピタっとなくなった、と西岡氏は言います。仕事の内容にこだわらなければ日本でも仕事がないわけではなかったそうですが、氏の選択した方法は、タイで仕事を探す、というものでした。

 とはいえ、景気が悪いのはタイも同じです。大学を卒業しておらず、特に何ができるというわけでもなく、英語は片言、タイ語については普通の日本人観光客よりはできますし日本企業のタイ駐在者よりも日常用語は話せますが、とてもビジネスに応用できるレベルではありません。そんな西岡氏が選んだタイでの仕事とは日本語教師です。

 日本語教師と聞けばハードルが高そうですが、東南アジアで日本語を教えている日本人は日本語を教える教育を受けているとは限りません。というより、そのような教育を受けている教師の方が少なく、実際は日本人であれば学校のレベルにこだわらなければほとんど誰にでもできる仕事だと言われています。(たしか沢木耕太郎氏の名著『深夜特急』にも、レベルの低い日本人の日本語教師がタイで登場していたような記憶があります)

 ただし日本語教師の給料は驚くほど安いものです。西岡氏はバンコクでの仕事をあきらめ、タイ人の友達のつてを頼ってバンコク近郊のある県の日本語の塾での仕事をみつけました。給料は安いけれど(日本円で月給2万円程度)、家賃も安く(5千円未満)、なんとか生きていくことはできるそうです。

 しかし、タイでお金がなくてもやっていける自信があった西岡氏は、あることに対する知識を充分に持っていませんでした。それは「蚊対策」です。

 ある日の朝、身体がだるく風邪でもひいたかなと思った西岡氏は、いつものように塾には行ったものの昼過ぎからは立っているのも辛くなってきました。塾長に付き添われて現地の公立病院を受診した結果、診断は「デング熱」でした。数日間でよくなるだろうと言われましたが、水分摂取もままならないほど倦怠感が強いため西岡氏は入院することになりました。主治医の話だと当初は1~2日で退院できるだろうとのことだったそうです。

 ところが、西岡氏の様態は急激に悪化していきました。意識が朦朧とし何日間寝ていたのかも分からなかった、と氏は回想します。そのときはタイ語も(西岡氏のタイ語レベルでは病気の話はできません)英語もできない氏は医師の説明がよく分からなかったのですが、後から日本語のできるタイ人(医療関係者)から、それは「デング出血熱」であったことを教えてもらったそうです。血小板が生命を維持する数値を大きく下回っていたと聞かされたと言います。幸運にも西岡氏は何の後遺症もなく回復しましたが、デング出血熱がここまで進行すると助からないことも珍しくありません。

 タイでデング熱にかかる日本人は少なくありません。私自身も過去に何度か、タイでデング熱にかかったという日本人にタイでも日本でも会ったことがあります。しかし、西岡氏のようにデング出血熱に進行したという例は初めて聞きました。

 ここでデング熱についておさらいをしておきましょう。デング熱はデング熱ウイルスに感染することで発症します。感染経路は「蚊に刺されること」です。ネッタイシマカやヒトスジシマカという蚊の体内にデング熱ウイルスが潜んでいることがあり、これらの蚊がヒトを刺すときにそのウイルスがヒトの体内に侵入してくるのです。

 タイではとてもありふれた感染症で、以前タイの医師から聞いたことがあるのですが、私が「デング熱は大変恐ろしい感染症だと思う」と言うと、意外そうな顔をしたその医師は「タイでは全然珍しくないよ。子どもの多くはかかるものだよ」と言いました。その医師によれば、そんなに重症化するものでもなく、マラリアとは質が違うと話していました。

 私はこのタイ人医師の話を聞いて「なるほど」と感じました。東南アジアの渡航者に対し、我々医師は蚊の対策について説明をします。長袖・長ズボンを着用すること、虫除けスプレーやクリームを使用すること(日本製でなく現地で調達することをすすめています)、夜間は窓を開けないこと、もしくは蚊帳を張ることを説明し、蚊取り線香などの利用を勧めることもあります。

 しかしよく考えてみると、ここまでの対策をタイ人の子どもがやっているとは到底思えません。タイの地方に行けば、長ズボンどころか靴もはいておらず短パンに裸足で生活している子どもたちもいます。そんな子どもたちが蚊に刺されてデング熱ウイルスに感染しても何の不思議もありません。実際に大勢の子どもたちが感染していると思われます。しかし、このタイの医師によれば、子どもが感染してもあまり重症化はしないそうです。そういえばA型肝炎ウイルスも、水や食べ物からタイでは幼少時に感染することが多いのですが、幼少時の感染であればそれほど重症化せず、発症しても軽症ですみます。ちなみに、日本も戦後しばらくまでは現在のタイと同じような状況であり、現在70歳以上くらいの人のA型肝炎ウイルスの抗体を調べるとけっこうな確率で陽性になります。

 話をデング熱に戻しましょう。デング熱は子どもに感染しても軽症ですむことが多く、成人でも1回目の感染であれば、普通の風邪よりははるかにしんどいですが、必ずしも入院しなければならないわけではありません。怖いのは「デング出血熱」となった場合です。通常、初めてデング熱ウイルスに感染したときにデング出血熱になることはないとされています。デング熱ウイルスは4つのタイプに分類できるのですが、2回目に最初に感染したときと別のタイプのウイルスに感染したときにデング出血熱ウイルスを起こすことがあるとされています。

 西岡氏の場合、タイに長年住んでいることで、おそらく本人は気付いていなかったけれども(通常の)デング熱に一度罹患しており、そして後に別のタイプのウイルスに感染しデング出血熱を発症したのでしょう。西岡氏は後から振り返ると、そういえば数年前に微熱と原因不明の皮疹が数週間続いたことがあった、と言います。

 デング熱ウイルスは、ここ数年間、毎年のように東南アジアや太平洋地域のどこかではやっています。最近では東ティモールで流行があったことが報道されています。地球温暖化と共に発生地域が北半球では北上してきており、台湾でもここ数年は問題になっています。沖縄に上陸するのも時間の問題か・・・、と私は考えていたのですが、意外なことに、日本に旅行に来たドイツ人の女性が関東地方で罹患した可能性があるとの発表を厚生労働省が2014年1月におこないました(注1)。

 その後厚労省は追加の発表をおこなっておらず、ここから先はネット上の情報になりますが、どうもそのドイツ人女性は他国を経由して日本に入国出国したわけではなく、往路も復路もドイツ・日本の直行便を利用していたそうです。となると、日本での感染を疑わざるを得ず、滞在したとされている長野、山梨、東京のどこかで感染したことになります。そして、出所は不明ですがネット上の情報によれば、このドイツ人女性は「8月21日から24日の間に滞在していた山梨県笛吹市で蚊に刺された」と証言しているそうです。

 ただ、私自身はこのドイツ人女性の感染に疑問を持っています。数十年も日本で報告されていない感染症がごく短期間日本に滞在した外国人だけに感染、しかも地域の蚊の調査ではウイルスが検出されていない、という状況を考えると、本当に日本で感染したのかと疑いたくなります。例えば、ドイツから日本へ直行した飛行機が、その前のフライトではアジアを飛んでいてそこで機内に蚊が侵入した、という可能性はないでしょうか。とはいえ、私も自分が厚労省の役人なら、わずかでも可能性がある限りは、日本での感染が否定できないという発表をおこなうでしょう。

 当分の間、国内でも蚊に対する注意が必要でしょう。また、台湾、香港を含めたアジア方面に旅行に行く人にとって充分な蚊対策が必要なのは言うまでもありません。

注1:詳細は下記医療ニュースを参照ください。

医療ニュース2014年1月27日「デング熱は本当に日本で感染したのか」

参考:
はやりの病気第60回(2008年8月)「虫刺されにご用心」
医療ニュース2009年1月27日「マレーシアでデング熱が急増」
医療ニュース2008年7月24日「デング熱は蚊を駆除すると重症者が増加!?」
医療ニュース2008年4月3日「ブラジルでデング熱と黄熱が大流行」
医療ニュース2008年2月19日「タイでデング熱が急増」

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2014年2月10日 月曜日

2014年2月号 医療費を安くする方法~前編~

  昨年(2013年)に太融寺町谷口医院(以下「谷口医院」)を受診された患者さんのなかで印象に残っているのは、やはり難治性の疾患の告知をしなければならなかったケースです。なかでもガンとHIVは、病名を告げたときに「まさか・・・」という顔をされる患者さんも少なくなく、病気を受け入れるのにそれなりの時間がかかります。

 こういった疾患の告知をした場面というのは私の心の中にも長く残ります。患者さんの言葉、例えば「数ヶ月前の健康診断では何も異常がないと言われていたのに、まさかガンだなんて・・・」とか、「思い当たることがないわけではないけれど、まさかあの程度のことでHIVに感染するなんて・・・」、といった言葉はふとしたときに私の頭をよぎります。

 昨年一年間に受診された患者さんのなかで、このような難治性の疾患を告知したわけではないのだけれど大変印象に残った患者さんが一人います。その患者さんは30代の女性で、自宅はそれほど近くないものの、何年も前から健康上のことで何かあったときに谷口医院に相談されているという人です。

 その患者さんはある慢性疾患を有しており、ときどき薬が必要になります。そのときは別のことで受診されていたのですが、その「ときどき必要になる薬」も処方してほしいと言われました。その薬は大変すぐれた薬なのですが、欠点は値段が高いことです。しかし、その薬の後発品(ジェネリック薬品)が近いうちに発売になる予定だったため、私は「次回からは安くなりそうですよ」と言いました。

 すると思いもよらぬ言葉が返ってきました。なんと、その患者さんは、「ならば今の症状は我慢してその後発品が発売になったときにまた受診します」と言ったのです。

 私はこの言葉に大変驚きました。後発品は先発品に比べて4割くらいは安くなりますが、改めて受診されるとなるとまた診察代も必要になります。それに、薬は1種類であろうが10種類であろうが、その都度「処方代」というものがかかりますから、複数の疾患や症状がある場合は、まとめて薬を処方する方が患者さんの負担は低くなるのです。

 私はそのことを伝えて、実際にいくら差が出るのか電子カルテを使ってその場で計算してみました。結果は550円の差でした。550円というのは昼食1回分以上に相当、と考えれば大きな金額かもしれませんが、その間にその症状が悪化するかもしれない、というリスクがあります。それにこの患者さんは自宅が谷口医院から近いわけではありません。谷口医院まで受診する時間と交通費を考えると、550円を節約する意義はほとんどないと私には思えました。

 しかしこの患者さんは私の説明にすぐには納得しません。しばらく考えた結果、「ではやっぱり今日処方してください」となり、この日はこれまで通り先発品を使うことになりました。

 この日の夜、診察が終わってからもう一度この患者さんのことを考え直してみました。この患者さんは数年前からときどき受診されています。最初の頃は、皮膚疾患を中心に、その後は風邪や禁煙治療、胃炎、膀胱炎、やけど痕の相談、などで度々受診されていました。いつも綺麗な格好でやって来られ、それほどお金に困っているようには見えませんでした。たしかに、保険証は国民健康保険ですから正社員ではないのでしょう。しかし、それにしても普通に日常生活を送っている30代の女性が550円を節約するために、症状を我慢して時間をかけて改めて受診することを検討する、というのは私には理解しづらいことでした。

 今、私はこう考えています。もちろん全員ではありませんが、医療費を数百円でも、いえ数十円でも節約したい、と考えている人はきっと大勢いるに違いない。新聞の報道では、景気が良くなり失業率も低下している、とされているが実態は必ずしもそうとは言えないのではないか。実際、谷口医院には依然として「仕事が見つからない」「お金がない」と言っている患者さんは少なくありません。

 それによく考えてみると、私自身も、貧困に悩んでいるわけではありませんが、例えば休日にスーパーに行くことがあれば、お総菜に「20円引き」のシールが貼られる夕方以降を狙って行きますし、本を読みたくなったときは、(最近私は読書をするときはできるだけiPADでkindleを利用しています)、無料の本を読むことが多いのは事実です。(話がそれますが、最近は著作権の切れた古い本がAmazon(kindle)で無料で読めます。私はこれはものすごく画期的なことだと思うのですが、なぜかマスコミなどではあまり取り上げられません。誰の利益にもならないからでしょうか・・・)

 話を戻しましょう。私がこの患者さんの考えていることが最初理解できなかったのは、今の症状を緩和するためにその薬は必要でありその薬の価値はその金額以上のものである、と無意識的に思い込んでいたからです。しかし、よく考えてみると、550円は550円であり、それがお総菜にあてられようが書籍代として消費されようが、薬代に費やされようが貨幣価値は同じです。

 私は勤務医の頃、薬の値段も検査の費用もほとんど知りませんでした。必要なものは必要でありお金の話をするのはおかしい、と思い込んでいたのです。そして今も多くの勤務医は以前の私と同じように費用のことをそれほど考えていないと思います。私は開業医となって初めて薬の料金がこれだけ違うことを知りました。例えば、勤務医の頃、同じように処方していた2種類の抗生物質が、一方は1錠10円、もう一方は1錠400円なんてこともあるのです。

 谷口医院を開業してからは医療にかかる費用についてかなり勉強したつもりでしたが、患者さんの本当の気持ちまでは理解できていなかったのではないかと、先に紹介した患者さんの言葉を聞いて思いました。

 ここからは医療費を安くする方法を提案していきたいと思います。

 まず押さえておきたい基本的なことは、診察代も薬代も検査代も、同じ内容であれば原則として日本全国どこの診療所・クリニックでも同じ、ということです。ときどきこの点を理解していなくて、「こちらのクリニックが安いって聞いたんですけど・・・」と言って受診される人がいますが、それは谷口医院が(おそらく)後発品中心の処方をしているからそのように思われただけであって、診察代を安くしているわけではありません。ただし(大きな)病院の場合は紹介状がなければ数千円から1万円程度の別料金が徴収されます。最初に受診するのは診療所・クリニックが適しているのはそういう理由もあります。

 診察代はどのような診察内容でも変わりませんから、節約を検討するなら薬代と検査代、ということになります。(手術については術式が同じで麻酔薬など手術時に使う薬が同じなら原則として同じ料金になります) 薬については「できるだけ安い薬にしてください」と診察室で医師に伝えればいいと思います。谷口医院にも「少々副作用の眠気が出てもいいから安い薬を処方してください」とか「きちんと薬を飲みますから1日1回型の高い薬よりも1日3回でも4回でもいいですから安い薬にしてください」とか話される患者さんがいます。ただし、症状や病気の種類によっては、高い薬しかない、もしくは安い薬だと治るのに時間がかかるかもしれない、といったことはありえます。そのあたりの説明は納得いくまで聞かれればいいと思います。

 検査については必要最低限のものに絞っていけばいいと思います。特にCTはお金がかかるだけでなく被爆の問題もあります。東日本大震災以降はこの点がクローズアップされているようで「レントゲンだけでなくCTを撮影してください」という患者さんが以前に比べると減っているような印象があります。

 医師の側からすると、「現段階ではこれ以上の検査は不要です」と言うと、「せっかく受診したんだから検査してください」と言われることがあり(私自身も数え切れないくらい言われています)、「お金を払うって言ってるでしょ!」と患者さんに怒られた経験もあるために(これも何度もあります)、「緊急性はありませんが検査しましょうか」と言うこともあります。(ただし、まったく不要と思われる検査はいくらお願いされてもできません) 医療費を節約したいと考えている場合は、医師から検査をすすめられたときに「どうしても今しなければならないですか」と尋ねてみるのがいいでしょう。

 次回に続きます・・・。

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2014年2月8日 土曜日

2014年2月8日 HPVワクチンの副作用は「心身の反応」のせい??

 子宮頸がんや尖圭コンジローマのワクチン(以下、HPVワクチン)について、厚生労働省は、2013年6月、「子宮頸がん予防ワクチンの接種を受ける皆さまへ」というタイトルの注意勧告(注2)を出し、「現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません」と記載されています。

 なぜこのような注意勧告がおこなわれたかというと、HPVワクチンを接種した女子生徒に副作用の出現が相次いだからです。なかには持続的な痛みに悩まされ、日常生活もままならない生徒もいるそうです。しかし、一方ではHPVワクチンは世界の多くの国で定期接種に組み込まれるようになってきており日本だけが遅れるのはいかがなものか、という意見もあります。

 2014年1月20日、厚生労働省の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全調査会は合同会議を開き、HPVワクチンの副作用は、「心身の反応により惹起された症状が慢性化したものと考えられる」と結論付けて、これを公表しました(注1)。

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 さて、ここから先は報道されていませんが、この結論が発表された直後から多くの反対意見が寄せられたことが推測されます。なぜならいったん発表したサイトが現在は閲覧できなくなっているからです。

 毎日耐えがたい痛みと戦っている女子生徒やその親御さんからすれば、これだけの苦しみが「心身の反応」と言われて納得できるはずがありません。このような発表をするならば、たとえ心身の反応が原因であったとしても、被害者の方への配慮が絶対に必要です。被害にあった女子生徒の学校の友達はどう思うでしょうか。「な~んだ。ワクチンのせいで学校に来れなくなって気の毒だと思ってたけど、ずる休みだったのか」と誤解される可能性も考えられます。

 私自身はHPVワクチンが普及することに賛成の立場です。ワクチンを接種しても絶対に子宮頚ガンにならないわけではなく定期的な検診が必要であることには変わりありませんが、それでも7割程度のガンは予防できるのです。それに4価ワクチン(ガーダシル)であれば尖圭コンジローマというやっかいな病気をかなりの確率で防ぐことができるわけです。私自身はHPVワクチンというのは医学の歴史に残る画期的なワクチンだと思っています。

 しかし女子中学生全員に接種するという考えには同意できません。なぜなら性交渉を介してしかHPVは感染しないからです。中学を(あるいは高校を)卒業するまでカレシができてもプラトニックラブを通す(だからワクチンは不要)と考えている生徒がいるとすれば、その考えを尊重すべき、というのが私の考えです。

 このサイトで何度も述べていますが、B型肝炎ウイルス(HBV)や水痘(みずぼうそう)や流行性耳下腺炎(これら3つはいずれも性交渉のような緊密なコンタクトがなくても感染します)のワクチン接種が不十分であるこの国の状況のなかで、なぜHPVだけを急いで全員に接種しなければならないのか、私にはその理由がどうしても理解できないのです。

(谷口恭)

注1:この発表のURLは下記のとおりでした。「でした」というのは現在見られなくなっているからです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000035220.html%20target=

参考:はやりの病気第119回(2013年7月)「VPDを再考する」

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2014年2月3日 月曜日

2014年2月3日 車の運転に注意しなければならない薬

 この薬を飲めば車を運転してはいけません。

 薬の説明を受けるときにそのようなことを言われたことがある人も多いと思います。代表的な薬は「風邪薬」です。これは医療機関で処方されるものよりも薬局で買える薬の方がむしろ注意が必要です。医療機関で処方される薬で運転に注意しなければならない代表は精神安定剤や抗うつ薬の類です。また、ここ数年は禁煙治療薬であるチャンピックス処方時に運転できないことを聞いたという人も少なくないでしょう。実際、チャンピックス服用で意識低下が起こり交通事故につながったケースが何例か報告されているそうです。

 PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が最近立て続けに、これまであまり注意を払われていなかった薬について運転時の注意勧告をおこないました。勧告は2013年11月26日と2014年1月7日におこなわれており、該当する薬は下記の通りです。(かっこの中が商品名です)

アルツハイマー型認知症治療薬 ドネペジル(アリセプト)
抗不整脈薬          ピルジカイニド(サンリズム)
抗不整脈薬          ベプリジル(ベプリコール)
抗不整脈薬          プロパフェノン(プロノン)
動脈閉塞症・肺高血圧症治療薬 ベラプロストナトリウム(ドルナー、プロサイリン、ケアロード、ベラサス)
抗菌薬            アジスロマイシン(ジスロマック)
抗菌薬            オフロキサシン(タリビッド)
抗菌薬            メシル酸ガレノキサシン(ジェニナック)
抗菌薬            レボフロキサシン(クラビット)
抗ウイルス薬         アシクロビル(ゾビラックス)
抗ウイルス薬         バラシクロビル(バルトレックス)
抗ウイルス薬         ファムシクロビル(ファムビル)
抗ウイルス薬         テラプレビル(テラビック)
糖尿病治療薬          アカルボース(グルコバイ)
糖尿病治療薬           ボグリボース(ベイスン)
糖尿病治療薬           ミグリトール(セイブル)
糖尿病治療薬           ピオグリタゾン(アクトス)
糖尿病治療薬          シタグリプチン(ジャヌビア,グラクティブ)
糖尿病治療薬           アログリプチン(ネシーナ)
糖尿病治療薬           アログリプチン・ピオグリタゾン配合剤(リオベル)
糖尿病治療薬          リナグリプチン(トラゼンタ)
糖尿病治療薬           アナグリプチン(スイニー)
糖尿病治療薬           サキサグリプチン(オングリザ)
糖尿病治療薬          リラグルチド(ビクトーザ)
糖尿病治療薬          リキシセナチド(リキスミア)

**************

 少し解説しておくと、糖尿病治療薬は薬が効きすぎて低血糖発作を起こす可能性があるからで、抗菌薬や抗ウイルス薬は稀ですが意識低下の副作用の報告があるからです。

 これらを少しでも服用すれば絶対に車の運転ができないか、と問われれば、そうするのが望ましいのは事実ですが、実際には主治医と相談して決めることになります。

 もう少し補足しておくと、上記薬剤のなかには注射薬もあるということ(注射のときにはその後運転していいかどうかを尋ねる必要があるでしょう)、かっこのなかの名前は先発品の商品名であり、上記のいくつかは後発品が普及していること、があげられます。

 副作用がない薬はなく、どのような薬を飲むときにも注意は必要です。しかし、軽度のむかつきや下痢などであれば大きな問題にはなりませんが、運転中に意識低下が起こり交通事故を起こすようなことは避けなければなりません。上記以外の薬についても、医療機関で薬を処方してもらっている人は主治医に確認しておいた方がいいでしょう。

(谷口恭)

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