2013年7月18日 木曜日

2010年2月11日(木) メタボ腹囲を巡って報道に違いが・・・

 以前よりメタボリックシンドローム(内蔵脂肪症候群)の診断基準のひとつである腹囲を巡って様々な議論が展開されていました。現在の腹囲の基準は、男性85センチ以上、女性90センチ以上ですが、「女性が男性より多いのは国際的にみて異例」、「腹囲の基準を設ければやせていて高血糖や高血圧がある人を見逃してしまう」、あるいは「基準より腹囲が多い人でも健康な人は少なくない」、といった意見もあります。

 日本の診断基準では、腹囲が必須で、血糖・脂質・血圧の3項目のうち2つ以上の異常でメタボリックシンドロームの診断がなされることになっています。一方、米国では、腹囲(男性102センチ以上、女性88センチ以上)は、中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値を含めた5つの診断基準の一項目とされています。(日本の基準では、腹囲が「必須」なのに対し、米国では「一項目」とされているというわけです)

 2月9日、厚生労働省研究班は、腹囲の基準をめぐる大規模調査の結果を報告しました。調査では、全国12ヶ所の40~74歳の男女約31,000人について、心筋梗塞、脳梗塞の発症と腹囲との関連が調べられています。

 興味深いのはマスコミによって伝えられるニュアンスが異なっていることです。

 2月9日の読売新聞は、「腹囲の数値によって、心筋梗塞や脳梗塞の発症の危険性を明確に判断できない(と厚労省が発表した)」と報道しています。

 これに対し、2月10日の日経新聞は、「女性の腹囲を(現行の90センチから)80センチに厳しくすれば、より多くの脳卒中や心疾患を予防できる(と厚労省が発表した)」と報道しています。

 読売新聞では「腹囲の基準を設けるのは困難」とし、日経新聞では「女性の基準を厳しくすれば予防につながる」としているのです。

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 2つの報道機関で内容のニュアンスが異なっているのは興味深いですが、双方とも「(腹囲の基準を設けるべきかどうかは別にして)肥満が心疾患や脳卒中のリスクになりうる」という認識は一致しています。

 腹囲の基準は、国内でも議論が分かれ、国際的にもバラバラです。我々としては、いつ変更されるか分からない細かい数字に注目するよりも、「太りすぎはよくない」という常識的なセンスを忘れないことが大切でしょう。

(谷口恭)

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2013年7月18日 木曜日

2010年2月11日(木) ビタミンDが不足すると喘息が悪化

 喘息を持っている人のビタミンDの濃度が低くなると症状が悪化しやすい・・・

 これは医学誌『American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine』オンライン版1月28日号に掲載された論文で紹介されている研究報告です。(下記注参照)

 研究者らは、喘息患者54例のビタミンD濃度を測定し、肺機能、気道過敏性、ステロイド治療に対する反応を評価しています。血中ビタミンD濃度が低い患者では、肺機能および気道過敏性が濃度が高い患者に比べて悪いという結果が出ています。ビタミン濃度が30ng/mL未満の患者の気道過敏性は、それよりも高い患者のほぼ2倍となっています。(気道過敏性が高くなると喘息症状はでやすいと言えます)

 また、ビタミンD濃度は患者のステロイド系喘息治療薬に対する反応を予測できると研究者は言います。ビタミンDは、喘息患者に直接的に関与する形で免疫系あるいはステロイド反応を修飾する物質として作用すると思われる、と述べられています。

 さらに、研究では、「最も体重の重い患者ではビタミンD濃度が最も低かった」という結果もでています。

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 要するに、「ビタミンDの濃度が低いと喘息症状を悪化させるだけでなく、治療をしても改善しにくい」、という結論が導き出されたというわけです。そして、「肥満があると、ビタミンDの濃度が低くなってしまう」というわけです。

 つい最近も、ビタミンDを積極的に摂取すれば大腸ガンの予防になる可能性がある、というニュースをお伝えしたばかりですが、ビタミンDは今後さらに注目されることになるかもしれません。

 早速、喘息がある人もない人もビタミンDをサプリメントで・・・、と言いたいところですが、ビタミンDは摂取しすぎると過剰摂取による弊害も考えなければなりません。何らかのガイドラインの制定を望みたいところです。

(谷口恭)

注 この論文のタイトルは「Vitamin D Levels, Lung Function and Steroid Response in Adult Asthma」で、下記のURLで全文を読むことができます。

http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/content/abstract/200911-1710OCv1?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=&author1=Sutherland&searchid=1&FIRSTINDEX=0&fdate=1/1/2010&resourcetype=HWCIT

参考:医療ニュース2010年2月1日「ビタミンDの不足は大腸ガンのリスク」

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2013年7月18日 木曜日

2010年2月15日(月) 大阪府、いきなりエイズが過去最多

 大阪府立公衆衛生研究所の報告によりますと、2009年に発症した「いきなりエイズ」は62人となり、2008年の51人を上回って過去最多となっています。(報道は2月13日の日経新聞)

 「いきなりエイズ」とは、エイズを発症して初めてHIV感染が判ることを言い、発症するまでの数年間の間に他人に感染させている可能性があります。「いきなりエイズ」となると投薬のタイミングが遅れてしまっていますから、命にかかわる状態になることもあります。

 ここ数年間は、当局のPRやキャンペーンが功を奏し、特に大阪府では検査件数は増えていました。その結果、まだエイズを発症していない状態でHIV感染が判明するケースが多く、適切なタイミングで治療を開始することができていました。

 ところが、2009年には検査件数が激減し、保健所などの公的機関でHIV検査を受けた人数が月平均で1,532人まで減少しています。(2008年は月平均1,769件、最も多かった9月は2,617件)

 大阪府での2009年の(エイズを発症していない)HIV抗体陽性者と新規でHIV感染が判ったエイズ患者(いきなりエイズ)の合計は233人で、これは2008年の238人を若干下回っています。ところが、検査件数がこれだけ減少しているわけですから、大阪府のHIV感染者は確実に増えていると考えて間違いないでしょう。

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 大阪府の関係者は、HIV検査件数が減少した原因を「新型インフルエンザが流行したから」と分析していますが、それだけではないと私は考えています。

 不特定多数とのunprotected sex(コンドームを用いない性交渉)の増加があり、さらに「自分だけはかからない」という何の根拠もない妙な自信を持っている人が増えてきているように私は感じています・・・。

(谷口恭)

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2013年7月18日 木曜日

2010年2月17日(水) 検査件数減少で新規HIV感染者も減少

 先日、大阪府では「いきなりエイズ」の患者数が過去最多になったというニュースをお伝えしました(下記医療ニュース参照)。この原因として、まだ症状がない状態で検査を受ける人が減ったことが考えられるわけですが、検査の減少は全国に及んでいるようです。

 厚生労働省は2月12日、2009年のHIV新規感染者(まだエイズを発症していない状態で新たにHIV感染が判った人)は1,008人(速報値)であることを発表しました。7年ぶりに前年を下回ったことになりますが、一方で検査件数も7年ぶりに減少しており、検査件数の減少が新規発見の減少につながったと同省はみています。

 同省によりますと、HIVの検査件数及び新規感染者数は1998年からの10年間でおよそ3倍に増加しています。2008年は検査数が177,156件、感染者が1,126人で、共に過去最高でした。ところが、2009年になり検査を受ける人が急減し、その結果、受検者は約15%、感染者は10%、2008年から減少しています。 

 尚、2009年に新たにエイズを発症した患者(いきなりエイズ)は全国で420人となっており、2008年より11人少なくなっています。

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 大阪府でも全国でも、検査件数が減少し、(まだエイズを発症していない)HIV感染者も減少していることは共通しています。ところが、「いきなりエイズ」は全国ではわずかに減少しているのに対し、大阪府では20%以上も増加しています。

 これは、大阪府ではまだまだ感染に気づいていない人が大勢いる可能性を示唆しているといえるでしょう。

(谷口恭)

参考:医療ニュース2010年2月15日「大阪府、いきなりエイズが過去最多」

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2013年7月17日 水曜日

2010年2月22日(月) まつ毛エクステのトラブルが急増

 ここ数年間、女性の間で、まつ毛エクステ(ンション)が流行しているようです。これはまつ毛にボリュームをもたせるために、専用の接着剤を用いて、まつ毛に絹や化学繊維などで作られた人工毛を付ける一種のメイクです。

 このまつ毛エクステに関するトラブルが急増していることが国民生活センターの報告で分かりました。(同センターの報告は2月17日、報道は翌日の共同通信、読売新聞など)

 同センターには2004年4月から2010年2月5日まで合計156件の相談が寄せられています。相談件数は、2004年、2005年がそれぞれ2件、7件だったのが、2008年度と2009年度は50件に上るそうです。相談者の全員が女性で、接着剤や人工毛が目に入って充血した、炎症を起こしたというものが合計93件、目の周囲の皮膚にトラブルを起こしたケースが45件と報告されています。

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 接着剤や人工毛が目に入るのは危険ですし、皮膚に接触しただけでも、やけどの一種である化学熱傷や接触皮膚炎(かぶれ)が起こることがあります。

 共同通信によりますと、まつ毛エクステを実施するには、資格をもった美容師が美容師法上の「美容所」でおこなわなければならないそうです。しかし、実際はエステやネイルサロンなどでもおこなわれているケースがあります。被害を増やさないためには、法律を周知させることが先決のように思われます。

(谷口恭)

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2013年7月17日 水曜日

2010年2月22日(月) はしかワクチン追加接種は依然低迷

 国内でのはしか(麻疹)ワクチンの接種率が低すぎるということは、このサイトで何度も何度もお伝えしていますが、その傾向は一向に変わらないようです。

 はしかの予防接種は、以前は1歳頃に一度接種するのみでした。しかし、一度接種では充分な免疫力が得られないため、2006年から2回目を小学校入学前に接種することになりました。ただし、これではルール変更になる前の子供は一度しか接種できないことになりますから、5年間の時限措置として13歳と18歳の全員を対象として公費負担(無料)でワクチン接種がおこなわれています。

 13歳と18歳のワクチン接種率の目標を厚生労働省は95%としています。2009年3月末時点(2008年度最終)での18歳のワクチン接種率は全国平均で77.3%、13歳では85.1%で目標からはほど遠い数字となっています。

 2月18日、同省は2009年度のワクチン接種率の途中経過を発表しました。2009年12月末時点で、接種率の全国平均は18歳で56.6%、13歳で65.8%となっています。

 2009年度の対象者は3月末で公費負担による定期接種が受けられなくなってしまいます。(その後に受けると自費となります)

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 接種率が低いのは都市部で特に顕著のようです。特に、神奈川、東京、大阪では18歳の4割前後しか接種していないようです。3月末までもう少し時間がありますから、該当する人は忘れないようにしましょう。

参考:
医療ニュース2009年10月27日「はしかワクチン接種、目標に届かず」
はやりの病気第46回(2007年6月)「はしかの予防接種率はなぜ低いのか」

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2013年7月17日 水曜日

2010年2月22日(月) 神戸の9ヶ月男児がポリオを発症

 2月19日、神戸市が市内在住の9ヶ月の男児がポリオを発症したことを発表しました。(報道は同日の共同通信)

 厚生労働省によりますと、国内でポリオが発症したのは2008年12月の三重県での報告以来だそうです。

 神戸市によりますと、2009年11月にポリオワクチンの集団予防接種を実施しましたが、この男児は体調不良で受けていなかったとのことです。現在、男児には左足の麻痺(まひ)が認められるそうです。周囲への二次感染の可能性はないと神戸市はみています。

 男児は2009年12月28日に発熱があり2010年1月1日に医療機関を受診しています。その後、麻痺(まひ)が現れ1月7日に入院となり、2月5日にポリオウイルスが検出されたと報告されています。

 この男児から検出されたポリオウイルスを国立感染症研究所が調査したところ、野生株(自然界に生息しているウイルス)ではなく、ワクチン株(ワクチンとして使われている弱毒化したウイルス)であることが判明しています。感染経路は断定することはできないものの、他の乳児に実施した予防接種のワクチンに含まれていたウイルスが何らかのルートで感染した可能性が考えられています。

 神戸市は、「ワクチン未接種の男児がワクチン型に感染したまれなケース。集団で免疫を付けることが大事なので、集団予防接種はしっかりと受けてほしい」とコメントしているそうです。

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 現在国内でおこなわれているポリオのワクチンは経口ワクチン(シロップを飲むタイプ)です。このワクチンは弱毒化したウイルスを用いるため、ごく稀にポリオに感染したときと同様の副作用が出現することがあります。また、便から排出されたワクチン由来のウイルスが家族に感染することもあると言われています。(ただし麻痺などの症状が出現する確率は非常に低く、およそ580万回に1回との研究があるそうです)

 また、この経口ワクチンは成人では副作用の危険性が高まるため、原則として成人には投与(接種)できません。

 ポリオのワクチンは、今のところ経口生ワクチンが主流ではありますが、世界的には生ワクチンではなく不活化ワクチン(注射型)に切り替わりつつあります。例えば、米国では現在は不活化ワクチンのみ使用されるようになり、すでに経口ワクチンは過去のものとなっています。

 日本でも不活化ワクチンへの切り替えが検討されてもいいのではないでしょうか。

(谷口恭)

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月1日(月) 炭酸飲料水の飲みすぎは膵臓ガンのリスク

 週に2回以上炭酸飲料水を飲む人は、まったく飲まない人に比べて膵臓ガンの発症リスクが87%も高い・・・

 これは、医学誌『Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention』2月号に掲載された米国ミネソタ大学とシンガポール国立大学の共同研究の結果です。(注参照)

 研究では、中年以上の中華系シンガポール人60,524人を対象とし、炭酸飲料水の平均摂取量を算出し、対象者を14年間追跡し膵臓ガンの発症の有無を調べています。その結果、週に2回以上飲む人は、まったく飲まない人に比べて発症リスクが87%も高くなっていることが分かりました。

 炭酸飲料水を飲むとなぜ膵臓ガンが発生しやすくなるのか・・・。この理由について、研究者は、炭酸飲料による血糖値の上昇とそれによるインスリンの増大が、膵臓細胞の異常な分裂を促進するのではないかと推測しています。(膵臓はインスリンを分泌する臓器です)

 また、一般に炭酸飲料水には大量の砂糖が使用されており、これが肥満や糖尿病のリスクになり、これらが膵臓ガンと関係があるのではないかとの見方もあります。

 尚、この研究では炭酸飲料水以外にも、果汁摂取についても調べられていますが、果汁摂取とガンとの相関関係は認められなかったそうです。

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 最近はノンカロリーを謳った炭酸飲料水をよくみますが、東南アジアで流通するようになったのはごく最近ですから、今回の研究の対象者が日頃飲んでいたのは、従来型の大量の砂糖が入れられている炭酸飲料水だと思われます。

 しかしながら、ノンカロリーやダイエット関連の炭酸飲料水であればガンの発症リスクを上げないというデータがあるわけではなく、一概に砂糖の多さだけを悪者にするのは短絡的なように思われます。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Soft Drink and Juice Consumption and
Risk of Pancreatic Cancer: The Singapore Chinese Health Study」で、要約は下記のURLで読むことができます。

http://cebp.aacrjournals.org/content/19/2/447.abstract

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月16日(火) 糖尿病とアルツハイマーが互いに悪影響

 糖尿病とアルツハイマー病は互いに影響しあい、発症を早めたり、症状を悪化させたりする・・・

 これは、大阪大学の研究チームがマウスの実験で得た研究結果で、論文は米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National
Academy of Sciences of the United States of America:PNAS)に掲載されています。(オンライン版で公開されたのは3月15日、詳細は下記URL参照)

 糖尿病を発症するとアルツハイマー病のリスクが上昇する(2倍以上になるとも言われています)ことは以前から知られていたのですが、今回の研究ではモデルマウスを使ってそれを証明することに成功しています。

 研究チームは、遺伝子操作により糖尿病とアルツハイマー病の双方を発症したマウスを作製し、このマウスでは、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの脳の血管への沈着が強く起きることを証明しています。アミロイドβの量そのものは、アルツハイマーのみを発症させたマウスと差はなかったそうです。

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 糖尿病の病態を端的に表現すると、「小さな血管がボロボロになる病気」と言えるかと思います。糖尿病で足が壊死する(腐る)のも足の小さな血管に血流がいかなくなることで起こりますし、網膜症となり失明するのも、網膜を走行する血管の障害が原因です。

 ここから考えると、糖尿病では脳の細い血管がボロボロになり、その結果、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβがボロボロになった血管に付着しやすくなるのだと思われます。

 糖尿病の多くは生活習慣の乱れから生じるものです。生活習慣の見直しをおこなうことによって、将来アルツハイマーとなるリスクも下げられそうです・・・。

(谷口恭)

注:この論文のタイトルは、「Diabetes-accelerated memory
dysfunction via cerebrovascular inflammation and A depositionin an Alzheimer mouse model with diabetes」で下記のURLでabstractを読むことができます。

http://www.pnas.org/content/early/2010/03/03/1000645107.abstract?sid=1ad46a54-b71d-456b-a505-86711e8275bf

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2013年7月17日 水曜日

2010年3月23日(火) AED使用で3割が社会復帰!

 AEDの有用性はこのサイトでも何度か紹介しています。現在は世界の多くの国で公共の場に置かれており、日本でも次第に駅や空港などで目にする機会が増えているように思われます。AED(自動体外除細動器、Automated External Defibrillator)は、簡単に言えば心臓に電気ショックを与える器械のことで、2004年7月から一般市民でも使うことができるようになっています。

 京都大学保健管理センター(予防医療学)の石見拓助教授らの研究で、公共の場に置かれているAEDを市民らが使用することによって心停止患者が社会復帰できる割合が2倍以上に高まることが分かりました。医学誌『New England Journal of Medicine』オンライン版2010年3月18日号に論文が掲載されています。(下記URL参照)

 研究チームは、2005年から2007年の消防庁などの全国統計から、AEDが必要と考えられた18歳以上の心停止患者12,631人について分析しています。12,631人のなかでAEDが使用されたのは462人で、1ヵ月後に31.6%の146人が社会復帰していたことが分かりました。一方、AEDが使用されなかった12,169人のうち社会復帰できたのは13.7%の1,669人にとどまっています。

 AEDを使って電気ショックを与えるまでの時間が1分早まるごとに、社会復帰できる率が9%ずつ増加するといわれています。研究グループは、AEDが普及しだしたことを評価すると同時に、さらに設置台数を増やす必要があることを主張しています。

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 以前、私もAED普及の活動をお手伝いさせてもらっていたことがあるのですが、このニュースを書いていて石見先生にお世話になったことを思い出しました。日本のAEDは2004年以降、各地で急速に普及していますが、これは石見先生らの啓蒙活動によるところが大きいのは間違いありません。

 私個人としても、AEDがもっともっと普及し、そしてAEDを使いこなせる一般市民が増えることを願います。

(谷口恭)

注:上記論文のタイトルは「Nationwide Public-Access Defibrillation
in Japan」で下記のURLでabstractを読むことができます。

http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/362/11/994

参考:
医療ニュース2009年12月21日 「AEDの使用が3年連続で増加」
メディカルエッセイ第48回(2007年1月) 「あなたはAEDが使えますか」

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