2013年7月23日 火曜日

2009年7月18日(土) 日本人の寿命がさらに長く

 厚生労働省が毎年公表している「簡易生命表」によりますと、日本人の平均寿命が男女とも過去最高となりました。(報道は7月17日の日経新聞など)

 日本人の平均寿命は女性が86.05歳、男性が79.29歳となっています。女性は24年連続の長寿世界一で、男性は2007年の3位から4位に後退しています。

 他の長寿国をみてみると、女性の2位は香港の85.5歳、男性の1位は、アイスランドの79.6歳、2位は香港とスイスの79.4歳で、今年はスイスに抜かれたことになります。

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 私がこのニュースを初めて知ったのは日本のマスコミではなく、タイの英字新聞であるBangkok Postのウェブサイトでした。同紙によりますと、日本人の長寿の原因は、a healthy traditional diet and active lifestyle(伝統的な食事と活発なライフスタイル)だそうです。

 海外からみれば日本人とはそのような健康的な民族に見えるのでしょうが、実際はどうでしょう。

 この統計は単なる”寿命”ですから、寝たきりになっていたとしても、生活の満足度が極めて低かったとしても、そういったことは考慮されません。医療現場にいると、生き生きとしたお年寄りはそれほど多くないことを実感せずにはいられません。

 単なる寿命だけではなく、国民の健康に対する満足度も加味した統計を見てみたいものです。

参考:医療ニュース 
2008年8月4日「長寿記録更新!女性は23年連続世界一」
2009年5月24日「WHOの統計でも日本人女性は世界一の長寿」

(谷口恭)

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2009年7月18日(土) アデノウイルスの新型が流行

 流行性角結膜炎やプール熱(咽頭結膜炎)などの原因ウイルスであるアデノウイルスに2種の新型が存在し、日本国内で流行していることが、北海道大学が中心の研究グループの調査によりあきらかとなり、7月16日に発表されました。(報道は同日の読売新聞)

 研究グループは、流行性角結膜炎を発症した患者からウイルスを分離・増殖させ、遺伝子の塩基配列を調べた結果、これまでにわかっていた4種類の型とは異なる型が2種類存在することをつきとめました。そして、4月にブダペストで開催された国際学会でこれら2種が新型であることが認定されたようです。

 さらに研究グループは、2000年から2008年に国内で流行したケースのウイルスを調査し、半数以上がこの新型2種のいずれかであることが判りました。

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 流行性角結膜炎は、毎年6~8月頃に流行し、国内では年間60~100万人が罹患すると言われています。

 アデノウイルスが原因の感染症には、流行性角結膜炎以外にも、咽頭結膜炎(いわゆる「プール熱」)、急性咽頭炎、乳幼児下痢症、急性出血性膀胱炎、(肝移植の後の)肝炎などがあります。

 アデノウイルスはこれまで51種類の型が確認されていましたから、今回の2種が加わり、合計53種が存在することになります。

 しかし、アデノウイルスという病原体に対しては、現時点では、ワクチンもなければ特効薬もありません。症状が出現すればそれを緩和させる治療(対症療法)しかないのが現実です。今回の新種発見がなんらかの治療につながることを期待したいと思います。

(谷口恭)

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2009年7月28日(火) 今年の自殺者、半年で1万7000人

 今年(2009年)1~6月の自殺者は17,076人(暫定値)で、前年同期より768人(4.7%)の増加・・・。

 7月27日、警察庁はこのような発表をおこないました。1月から6月のすべての月で前年を上回っており、このまま進めば年間の自殺者数が過去最悪になることもあり得ます。(これまでに自殺者数が最多となったのは2003年の約3万4千人です)

 自殺者数の内訳をみてみると、男性が12,222人で71.6%を占めます。都道府県別では、東京の1,569人が最多、以下、大阪(1,057人)、埼玉(971人)、神奈川(938人)と続きます。

 前年からの増加率が大きかったのは、沖縄(227人、51.3%増)、山口(237人、30.2%増)、高値(135人、21.6%増)などです。

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 以前、1月から4月の自殺者数が前年を上回っているとの情報をお伝えしましたが(下記ニュース参照)、5月、6月も上回ったことになります。

 最近の自殺者数の増加は経済悪化が原因とみなされています。警察庁からのこの発表があった同じ日に日経平均株価が1万円を超えたとの報道がなされています。今後自殺者数は減少に向かうのでしょうか・・・。

 何度も紹介し、しつこいようですが、自殺が頭をよぎったら下記の相談窓口などを利用するのも方法です。

相談窓口の例

ライフリンクデータベース  
「いのちの電話」 
・東京自殺防止センター 
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会 

参考:医療ニュース 
2009年5月29日「今年の自殺、すでに11,000人超え」
2009年5月19日「自殺は若年層で増加」
2009年4月4日「2008年の自殺者またもや3万人超え」

(谷口恭)

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2013年7月23日 火曜日

2009年7月28日(火) 大阪市民はうつになりやすい?!

 大阪市民のうつ的傾向は、全国平均と比べ著しく高い・・・

 これは大阪市の調査で明らかになったことで7月27日の毎日新聞が報道しています。

 報道によりますと、大阪市は市内在住者10万人あたりの自殺者数が統計を取り始めた1997年以降、2004年を除いて2007年まで政令市でワースト1を記録しています。

 最新の調査は2008年9月に実施されています。20歳以上の市政モニター600人に調査票を送付し、同月末までに558人から回答を得ています。(回答率93%) この調査では、「何をするのも面倒」「憂うつだ」「集中できない」「眠れない」など心身に関する11項目について、「ほとんどない」「少しあった」「時々」「たいてい」の各選択肢に点数を付けるようになっています。合計点が高いほどストレスが強く、うつ傾向が高いことになります。

 その結果、大阪市の点数は、日本家族社会学会が全国約7千人を対象にした1999年の全国調査の平均4.54を1.61ポイント上回る6.15という数字になっています。うつ的傾向が非常に高く、全11項目で全国平均値を上回っています。男性より女性、高年齢層より低年齢層で高い傾向が出ています。

 このような結果に対し、関係者の一部は、「大阪市は中小零細企業が多く、金融危機や不況の影響を顕著に受けているのではないか」と分析しているそうです。

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 うつの原因が「中小零細企業が多く不況の影響を受けているから」であり、「男性より女性、高年齢層より低年齢層で高い」ということは、不況の影響を強く受けているのは”若い女性”ということなのでしょうか。

 7月27日に警察庁が発表した2009年の都道府県別の自殺者数は大阪が2位(1位は東京)です。うつ対策と同時に自殺防止の対策も、もっと積極的にすべきということでしょう。

(谷口恭)

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2009年7月30日(木) 日焼けマシンに発癌リスク

 人工的に紫外線をあてて肌を小麦色にする「日焼けマシン」の利用が、癌の発生リスクを著しく高めることは疑いない・・・

 WHO(世界保健機関)の国際癌研究機関(IARC)が7月29日にこのような発表をおこないました。(報道は7月30日の日経新聞)

 同機関は、日焼けマシンの発癌リスクを、タバコやアスベストに並ぶ最高度のリスクグループに分類しています。日焼けマシンの使用を30歳未満で開始した場合、皮膚癌(メラノーマ)のリスクが75%増加するとしています。

 この発表を受け、英国皮膚科学会は「発癌性を認定したことを歓迎する。子供にマシンを使わせないよう、日焼けサロン産業を規制する措置を取るべき時期だ」とコメントしているそうです。

 また、仏皮膚科学会は、「長年、政府に危険性を訴えてきた。法律で禁止するよりも人々に周知することが先決」と述べています。

 日焼けマシンは、仏、独、スウェーデンなど欧州各国で成人の25%近くに使用経験があるとの調査結果があり、特にドイツでは18~45歳の1,400万人(ドイツの人口は約8,200万人)が利用し、そのうち4分の1が17歳未満で使用を開始しているそうです。

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 現時点(7月29日)では、日本皮膚科学会など日本の学会はコメントを発表していないようですが、白人と(日本人を含む)黄色人種では発癌性に違いがないのか、といったあたりの研究を待ちたいと思います。

(谷口恭)

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2009年7月30日(木) スリランカ、デング熱が止まらない勢い

 世界的にデング熱が急増しているなかで、スリランカも今年になり急激に感染者・死者が増えているというニュースを最近お伝えしましたが(下記ニュース参照)、事態は相当深刻なようです。

 スリランカ保健省は7月27日、国内のデング熱による死亡者が223人、感染者が19,713に上ることを公表しました。(報道は7月29日の共同通信)

 2008年全体では、死亡者が85人、感染者が4,156人ですから、今年に入り急激に増えていることになります。保健省によりますと、感染は学生などの若者を中心に広がっているようです。

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 WHO(世界保健機関)は、世界の人口のおよそ5分の2に当たる約25億人がデング熱に感染する危険にさらされており、世界の感染者は毎年5千万人に達する可能性があると推定しています。

 日本のマスコミはほとんど報道しませんが、東南アジアにはチクングニヤと呼ばれる、やはり蚊が媒介する感染症があり、例えばタイでは今年14年ぶりの流行をみせており、すでに2万人以上の感染者が報告されています。チクングニヤは死に至る病ではありませんが、重症化すれば1年以上も発熱や倦怠感に悩まされることもあります。

 また、タイでは新型インフルエンザによる死亡者が65人となり(7月29日現在)、国民の意識がかなり高くなってきています。

 一方、一時はマスクなしで外出している人を見かけないほど盛り上がっていたこの国のインフルエンザに対する意識はどうなってしまったのでしょうか・・・。

参考:医療ニュース 2009年7月12日「スリランカのデング熱対策」

(谷口恭)

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2009年7月31日(金) 「電子タバコ」はやはり危険!

 煙が出ないため他人に迷惑をかけないし、禁煙ツールとしても有効です!

 これは電子タバコ(別名「e-シガレット」)のメーカーなどがPRに使っているフレーズで、なかには「WHOお墨付」のような文言を用いて過剰な宣伝をしているものもあり問題になっていました。このウェブサイトでも以前電子タバコの危険性をお伝えしましたが(下記ニュース参照)、FDA(米国食品医薬品局)が電子タバコの危険性を正式に発表しました。(報道は7月22日のHealthDayNews)

 FDAが米国で販売されている2種類の電子タバコを分析したところ、1点から不凍剤の成分であるジエチレングリコールが検出されたほか、複数の標本からニトロサミンなどの発癌性物質が検出されたようです。電子タバコは主に中国で製造されており、「今回の結果から品質管理のずさんさが示された」と同局は指摘しています。

 さらに、WHO(世界保健機関)、CDC(米国疾病管理予防センター)、ACS(米国癌協会)などの専門機関が、電子タバコには安全性に問題があるだけでなく、若年者のニコチン依存を増大し、最終的には喫煙促進につながるリスクがあることを示しているそうです。

 電子タバコの販売元である米国のNJOY社は、FDAの報告を受けて声明を発表しています。同社は、2007年4月の発売以降健康被害の報告はされていないこと、未成年に販売しないよう十分な対策を講じていることなどを主張し、「今回のFDAの試験結果には驚いている」、とコメントしています。

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 日本でも、インターネットなどを通して電子タバコを購入する人は少なくないようです。年齢確認が徹底されていないことから未成年者が購入していることも問題となっています。有害物質が含まれていて、依存性があることはほぼ間違いないでしょうから、販売の基準をもう少し厳しくすべきではないかと個人的には思います。

参考:医療ニュース 2008年9月26日「「電子タバコ」に要注意!」

(谷口恭)

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2009年8月5日(水) 中国で肺ペスト、一帯を封鎖

 ペストという病気をご存知でしょうか。現代の日本にはない病気ですが(明治時代には報告があります)、致死率がおよそ5割、世界史の様々な場面で登場する恐ろしい感染症です。

 そのペストが、中国青海省海南チベット族自治州興海県で流行しつつあるようです。(現地新聞が伝えこれを8月4日の共同通信が報道しています)

 報道によりますと、この地区でペストが流行し、12人の感染が確認され、そのうち3人がすでに死亡しています。残りの感染者は隔離され、地元当局は一帯を封鎖して感染拡大防止に努めているようです。

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 肺ペストというのはペストのなかでも最重症型で、治療が遅れると致死率はほぼ100%です。

 私がペストという病気を大変不思議に感じているのは、世界史を変えるほどの大流行をみせたかと思うと、突然ぴたっとなくなることです。そして、時期をみて(?)再び流行するのです。

 例えば6世紀に東ローマで流行したかと思うと、いったんおとなしくし、およそ900年後の14世紀に突然猛威をふるいます。このときの死亡者は当時のヨーロッパの人口の3分の1から3分の2以上にもなると言われています。しかし、その後はぴたっと流行がやんで、17世紀になると再びイギリスで流行がみられました。

 ペスト菌はネズミの体内で生息し、ネズミを吸血したノミがヒトを刺すことによりヒトに感染します。ネズミの体内に潜んでいるペスト菌は、「そろそろヒトに流行させてやろうか・・・」、そんなたくらみを企てているのではないかと私は時々感じています。

(谷口恭)

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2009年8月9日(日) HIV陽性者、離職経験者は23%

 HIV陽性者(エイズ発症者を含む)のおよそ4人に1人が仕事を辞めた経験があり、離職経験者の約1割は、不当な理由で解雇されたことがある・・・

 これは、厚生労働省の障害者保健福祉推進事業のアンケート調査で分かった結果です。全国の15のエイズ拠点病院に通院するHIV陽性者2,000人に対し、今年の1月までに就労状況をアンケート調査し、およそ6割から回答を得ています。(報道は8月6日の読売新聞)

 HIV陽性を理由に仕事を辞めた経験があった人が全体の23%で、理由については「不当な理由での解雇」と回答している人が9%います。

 就労者に感染の事実を会社に伝えているか、については、全体の47%が「伝えていない」と答えています。

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 私がこの記事を読んだときの感想は、「あれっ、そんな程度なの?」というものです。私が関わっている(関わっていた)HIV陽性の人だけをみてみると、離職の経験者はとても4人に1人程度ではありませんし、それ以上に、会社に伝えていない人が47%、という数字は意外です。

 私は患者さんから、「HIV陽性であることを会社に伝えるべきですか?」と尋ねられることがよくあります。HIVは(性交渉以外の)日常生活では感染しませんから、本来は他人に隠さなければならない感染症などではありません。しかし差別や偏見がこの国で根強く残っているのは事実ですから、「会社に堂々と言えばいいんですよ」とは医師として言えるものではありません。

 このニュースを裏からみると、「全体の53%の人が会社にHIV陽性である旨を伝えている」ということになります。これは、日本でHIVに対する差別や偏見が減少しつつある、と考えていいということなのでしょうか・・・。

(谷口恭)

参考:NPO法人GINA「GINAと共に」第37回(2009年7月) 「HIVを特別視することによる弊害 その2」   

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2009年8月9日(日) 日本と韓国は”法則”の例外

 社会・経済が発展すると、晩婚・出産の高齢化が進み出生率はいったん減少するが、発展がある段階を超えると出生率は再び増加に転じる。しかし、日本と韓国はこの法則の例外である・・・

 これは、米国ペンシルバニア大学などの研究チームが科学誌「ネイチャー」に発表した研究です。(報道は8月6日の日経新聞、共同通信、読売新聞など)

 この調査は世界で豊かとされる24か国が対象となっています。「人間開発指数」と、1人の女性が生涯に産む子供の人数(合計特殊出生率)との関係が調べられています。

 すべての国において、人間開発指数の上昇に伴い、出生率がいったんは減少して少子化が顕著になります。しかしほとんどの国では、人間開発指数がある程度上昇したところで出生率は底を打ち、以後は上昇に転じています。

 この”法則”の例外となっているのが日本と韓国であり、人間開発指数が一定以上に上昇しても出生率は上がっていないというわけです。

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 「人間開発指数」について補足しておきます。「人間開発指数」とは、経済的な尺度だけでは測れない国民生活の豊かさを示す値として、UNDP(国連開発計画)が「人間開発報告書」の中で国ごとに発表している数値です。平均寿命や就学率、成人識字率、1人当たりのGDP(国内総生産)などから割り出します。2007年の発表では1位はアイスランドで、最下位はシェラレオネです。日本は8位、米国は12位となっています。

 上記の研究では、その人間開発指数が、平均寿命75歳、1人あたりのGDP25,000USドル、などの目安となる0.9あたりを越えたあたりから、ほとんどの国で出生率が上昇に転じているるけれども、日韓は例外である、ということになります。

(谷口恭)

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