A型肝炎ウイルス(HAV)とは

A型肝炎ウイルスは2018年にも流行しました。HBVが血液や精液・腟分泌液に含まれているのに対し、A型肝炎ウイルス(以下HAV)は口から感染し(経口感染)、糞便に排出されます。したがって、糞便を肥料にして栽培された生野菜が危険であると言われています。現在の日本では糞便の肥料はそれほど多くはありませんが、中国やインドなどでは地域によっては現在も一般的な栽培法となっています。  

 また、カキにも含まれていることはよく知られており、生カキには、毎年冬になると猛威をふるうノロウイルスと同様、HAVにも注意をしなければなりません。

 HAVウイルスが性感染症に含まれる理由は、肛門性交をおこなう人がいるからです。しかし、それだけではありません。肛門付近に付着しているウイルスが性行為の際、手に付いて、パンなどを手で食べるときに口の中に入って感染、ということが可能性としてはあります。

 潜伏期間は2週間から2ヶ月程度です。症状は急性B型肝炎のときと同じような、発熱、倦怠感、消化器症状などで、進行すれば黄疸が出現します。

 また、1%未満の確率ですが劇症化することもあります。ただし、慢性化することはなく、慢性A型肝炎という病気は存在しません。

参考:毎日新聞医療プレミア「急増A型肝炎の感染経路は「食べ物と性交渉」」

●HAVワクチン接種方法

過去に感染していないことが確実であれば、事前の検査をせずに初回からワクチンを接種します。感染した可能性、またはワクチンを接種した可能性があれば先に抗体検査を実施します。

ワクチンは2~3回接種します。筋肉注射です。2回目は1回目の2~4週後、3回目は2回目の4-5カ月後が標準です。
 
抗体検査は希望される場合はおこないますが、(HBVとは異なり)ほとんどのケースで抗体が形成されますから省略することもあります。

●Q&A

(1)HAVワクチンは接種すれば必ず抗体がつくの?

HAVワクチンは大変すぐれたもので、2~3回の接種でほぼ全員に抗体がつきます。


(2)HAVの抗体は生涯有効なの?

HAVのワクチンは比較的歴史が新しく(日本で認可がおりたのは1995年)、まだ長期間にわたるワクチン有効性の検証ができていないのが現状です。このため、現時点では、HBVワクチンのように生涯有効とは言い難いと思われます。

しかしながら、いったん抗体がつけば少なくとも5年から10年程度は有効であろうと考えられています。気になる方は抗体形成から5年くらいした後に、一度検査を受けてみてもいいかもしれません。

2019年10月23日更新