食物アレルギーの予防と治療:ゾレア、エピペン、Neffy
過去10年ほどで急激に増えている食物アレルギーは、単に増えているだけでなく、重症化する傾向にあります。治癒する場合もなくはありませんが、成人してから発症したケースではほとんど治癒が見込めません。ではどうすればいいか。「予防」「発症時の治療」を考えなければなりません。
〇検査
まず、数えきれないほど問合せのある「遅延型食物アレルギー」などというものは存在しないことに注意が必要です。「前医では高額な検査を勧められた」と嘆く人が少なくありません。基本的に自費のアレルギーの検査は受ける必要も意味もありません。
参考:医療ニュース2014年12月25日 「遅延型食物アレルギー」に騙されないで!
血液検査ですべてが分かるわけではなく、重要なのは「問診」です。問診で絞り込んでから検査をおこないます。いわゆる「セット検査」は値段が高いわりに精度が低くお勧めできません。
PFAS(花粉食物アレルギー症候群)の場合は、食べ物そのものでなく「花粉」の方を調べるべきことがあります。
参考:はやりの病気第173回(2018年1月) 急増するPFAS(花粉食物アレルギー症候群)
〇症状
食物アレルギーの特徴は「食べてすぐに出る」です。よって、「〇〇を食べた翌日は調子が悪い」は食物アレルギーではありません(ただし、「〇〇を食べて調子が悪くなる」は事実なのですから、それに対しては別のアプローチをおこないます)。ただし、例外がいくつかあります。
アニサキスアレルギー、納豆アレルギー、肉アレルギー、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーなどがその代表で、数時間から半日後に発症することがあります。
参考:はやりの病気第196回(2019年12月) “遅延型食物アレルギー”と「遅発型食物アレルギー」
〇予防
現在、日本では「原因食物を避ける」以外に方法はありません。一部の食品では減感作療法が試みられていますが、リスクが伴い、また必ずしも成功するわけではありません。そこで注目されているのが「ゾレア」(オマリズマブ)を使用する方法です。
医学誌「NEJM」に掲載された論文によると、ピーナッツおよび少なくとも他に2種の食物アレルギーを有する患者を対象とした前向き二重盲検試験(注射の間隔は2~4週、投与期間は16~20週)で、ゾレアが有意差をもって有効という結果が出ています。特に副作用も起こっていません。
当院ではこのゾレアを食物アレルギーの予防に用いています。ただし、保険適用がなく費用は高価となります(使用量に応じて値段は変わりますが、300mgを月に1本の場合、月額50,000円程度がかかります)
〇発症時の治療
基本的にはエピペンを使います。しかし、エピペンはアドレナリン含有量が1本あたり0.3mgしかなく、これでは不充分です。そこで当院では2~3本(大腿の脂肪の厚さによる)を携帯してもらっています。保険が適用されますから費用はさほど高くありません。
ただし、エピペンをためらうことなく自分の大腿に注射するのは思いのほか困難で、実際に必要な場面で使用できなかったという人が少なくありません。そこで、エピペンの点鼻型「Neffy」が注目されています。Neffyなら鼻に薬液を押し込むだけですから使用は簡単です。しかし、日本では未承認で高額になるのが欠点です(利用者が増えれば値段が下がりますが、現時点では1人分ずつをその都度発注しており、送料・保険料・通関手数料などがかかるために1人分で250,000円ほどかかります)
参考:How to use Neffy(ビデオは下の方にあります)