慢性B型肝炎の生活上の注意と指導
「結婚してはいけないと思っていて20代の頃から恋愛は諦めています」と話した40代の女性、一度の浮気で感染し離婚することになり「性感染するなんて知らなかった」と泣きながら訴えた30代の男性、「これで試合に出られないんですか?」と訴えてきたプロボクサーを目指しているという20代の男性…。次々に有効な核酸アナログ剤が登場し、最近は後発品まで普及してきたHBV。薬はあっても、正確な知識が伝わっていないことが多すぎます。危険性を強調しすぎるのはNGですが、一方で2002年の佐賀県保育所集団感染のようにごく些細な接触で感染することがあるのも事実です。正確な知識を理解してもらい、日常生活の注意点を伝えるのは思いのほか苦労します。
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先日、B型肝炎キャリアの患者さんから、「HBVはコンドームを通過するか」「唾液で感染するのか」「箸や皿を他人と共有してもよいか」「イボ痔からの浸出液がある場合は温泉のイスなど共有してよいか」といった細かい質問が看護師に対してありました。そのような質問に対して看護師一同困惑しました。なぜなら、医療者として指導していかなければならない立場であるとともに、その人の生活や人生に関わることになるので責任重大だからです。B型肝炎にはHBs抗原・抗体、HBc抗体(IgM、IgG)、HBe抗原・抗体、HBV-DNA、ジェノタイプと、肝炎の病態把握や予後の推定などをおこなう上で様々な検査がありますが、私自身、理解するのが難しく、日々勉強し復習している状態です。2002年の佐賀県保育所集団感染の事件が示したように唾液や汗などでも感染する可能性があるのは事実ですが、キャリアの方やときには医療者ですら、血液や精液のみで感染すると思っている人もいます。だからといって、強く指導しすぎると神経質になりすぎてしまうかもしれませんし、パートナーや家族には告げる必要がありますが、職場などで差別など起こってしまっては…などと考えると、指導の上で言葉を選ばないといけません。現在私が実践し力を入れているのは次の点です。
・キャリアの人には、抗体の有無やウイルス量、また遺伝子型などを検査で知ってもらい、感染力はどの程度強いのかについて学んでもらう。
・血液や精液のみで感染すると思っている人には、(血中ウイルス量が多い場合)唾液や汗などでも感染しうるということを意識して生活してもらう。
・性交渉については、パートナーがいればキャリアであることを告げて、ワクチン接種をしてもらうことで感染を防げることを説明。また、不特定多数との性交渉は避ける。
今後もこれらを中心に指導していこうと思います。(看護師・林比加里)