アトピーを治そう

アトピー性皮膚炎(以下アトピー)という疾患ほど、様々な治療法が氾濫している疾患もないと思われます。しかし、タクロリムス軟膏に加え、2020年からはコレクチム軟膏が、2022年6月からはモイゼルト軟膏が処方できるようになり、正しい使用法(プロアクティブ療法)を覚えれば、ステロイド外用は(頭皮を除けば)ほぼ使用する必要がなくなりました。

アトピーの治療で最近話題になるのは、高額な点滴デュピルマブ(デュピクセント)や飲み薬(オルミエント、リンヴォック、サイバインコ)ですが、これらは高額なだけでなく、強力な免疫抑制作用が全身に働くために使いにくいのが実情です。

アトピーの患者さんのなかには、痒みや痛みによる身体的症状だけではなく、心理的にも健康でなくなっている患者さんもいますし、なかにはアトピーのせいで就職、結婚、出産までも躊躇している人もいます。しかし、アトピーは、時間がかかることはありますし、再発することもありますが「治る病気」です。ここでは、アトピーに関するよくある質問にお答えしたいと思います。

Q1 アトピーは治らない病気なのですか

A1 私がまだ大学病院の皮膚科で研修を受けていた頃、ある先生はアトピーの患者さんに対して必ずこのように言っていました。「アトピーは治る病気なんですよ」 実際、時間がかかる場合もありますが、適切な治療を根気よく続ければアトピーは決して治らない病気ではありません。まずは「治る病気」だという認識をし、そして「治すんだ」という意識を持つことが重要です。

Q2 コレクチム、モイゼルト、タクロリムス、ステロイドの使い分けは?

A2 最大のポイントは「ステロイドを短期間で終わらせる」ということです。ほとんどのケースは1週間以内です。実際、当院の例でいえば「自分はとても重症です」と言って受診する人でも、ステロイド使用は最初の1週間だけで、その後は何年にも渡り一切ステロイドが不要になったという人も珍しくはありません。

2020年6月までのアトピーの基本治療は「ステロイド1週間→その後はタクロリムスのみ」でした。ただ、タクロリムスを適切に使うにはそれなりの知識が必要となることや、ニキビがすぐに起こってしまう人がいることなどから100%の人に効果的に使ってもらうのは困難でした。

コレクチムの特徴を一言で言えば「タクロリムスを使いやすくした薬」です。もしも費用がタクロリムスと同程度だとすれば、ほとんどの人がタクロリムスからコレクチムに変更されるかもしれません。現時点では費用がタクロリムスの3倍近くするのが欠点です。

コレクチムもタクロリムスも、原則は「痒み(炎症)が取れてから使用開始」と「プロアクティブ療法」です。プロアクティブ療法の実践方法は診察時に説明していますが、上記「はやりの病気」も参照ください。

尚、2022年6月から処方を開始しているモイゼルトは、イメージとしては「コレクチムとほぼ同様」です。

 外用薬の使用方法

外用薬の使用方法

参考:医療ニュース2021年3月31日「ステロイドは塗り薬でも骨粗しょう症のリスク増大」

しかし「アトピーを治す」ということにおいて薬よりもはるかに大切なことが少なくとも4つあります。Q3を参照ください。

Q3 「薬よりも大切な4つのこと」とは

A3 「とにかく薬を飲み忘れないことが最重要」という疾患もありますが、アトピーは薬よりもはるかに大切なことが少なくとも4つあります。

1)最も大切なのは「掻かないこと」!

ともかくこれが何よりも重要です。掻きたくなればそのときはステロイドをたっぷりと塗ります。痒みがとれてから「二度とステロイドを使わないようにするための治療」を考えることになります。

2)二番目に大切なのは「汗をすみやかに流すこと」!

汗自体はアトピーの悪化因子ではありません。むしろ汗はかく方がいいと考えられています。サウナで大量の汗をかいてアトピーがよくなった、という人もいます。問題は「かいた汗をそのままにしておくこと」です。これは確実にアトピーの悪化因子となります。

よって、汗をかくシーズンは、1日に10回以上シャワーをするのが有効なのですが、それは不可能でしょう。ですが、起床後、帰宅後、寝る前、の3回はシャワーができるはずです。それぞれほんの10秒程度でOKです。ただ、これではまだ足らないので、日中もぬれタオルやウエットティッシュを使って何度も汗をふくのが有効です。

石鹸は臭いのある汗がでる部位(首の後ろ、脇、陰部、足の裏など)以外はできるだけ使わないようにしましょう。石鹸の機能は「アブラをとること」です。アトピーの人の肌はたいてい皮脂が欠乏しています。そのような状態で石鹸を使えば貴重な皮脂を洗い落としてしまいます。「石鹸が普及するにつれてアトピーが広まった」という説もあるほどです。ときどき「保湿効果をうたった石鹸」がありますが、保湿をするならシャワーの後に保湿剤を塗ればいいわけですから、そのような石鹸の価値はありません。

石鹸が不要なのと同じ理由でタオルも不要です。手で充分です。間違ってもナイロンタオルには触れないでください。

3)保湿・加湿をしっかりと!

秋から冬にかけては保湿以外に「加湿」も必要です。加湿器だけでなく湿度計も用意してください。湿度は同じ部屋内であっても加湿器の近くと遠くでは異なりますから、湿度計は複数個置いておくのがいいでしょう。安いものなら1つ数百円で売られています。

湿度は50%を目標にすれば乾燥を予防できます。逆に夏は60%を超えると汗が出やすくなりますから、やはり50%を目標にするのがいいでしょう。

4)生活環境の見直しを!

自宅(と職場)の環境対策も絶対に必要です。床は原則フローリングにして、可能な限り、絨毯、カーペット、畳、ラグなどは除去しましょう。布のソファー、クッション、ざぶとん、座椅子、ぬいぐるみなども要注意です。

空気清浄器も多くの人にとって必須アイテムです。

ペットを飼っている人でその動物にアレルギーがある場合はできるだけ寝室には入れないようにして、ペットの毛が付着したかもしれない衣服は寝室の前で着替えるようにしましょう。他にも対策が必要になる場合があります。この点については患者さんごとに相談に応じています。

ダニ・ハウスダスト対策は下記コラムも参照ください。

参考:はやりの病気
第129回(2014年5月)「さっさとダニをやっつけよう」
第118回(2013年6月)「ダニほど誤解だらけの生物はいない」


食事については、甘いものや脂っこいものは炎症を惹起しやすくアトピーを悪化させることがあります。

ストレス軽減にもつとめましょう。多くの疾患がストレスが悪化因子になりますが、アトピーはその代表格です。就職して悪化した、失業して悪化した、上司が代わって悪化した、というケースは非常に多いと言えます。その逆に、親元を離れて改善した(特に、過保護の母親やアルコール依存症の父親など)、離婚してステロイドが不要になった、試験に合格して良くなった、という声もよく聞きます。不安やうつ、あるいは不眠といった精神状態が継続すると、アトピーだけでなく、消化器疾患(胃炎や下痢など)や呼吸器疾患(ぜんそくや長引く咳など)など他の疾患を引き起こすことがあります。このため、アトピー性皮膚炎を治療する際には、こういった精神状態にも注意する必要があり、治療が必要になることもあります。これらは患者さんごとに検討していくことになります。

Q4 ステロイドは使いたくないんですが・・・

A4 ステロイドは使用方法を誤らなければ有効な薬剤ではありますが、副作用が多いのは事実です。正確な知識を持たねばなりません。

外用のみであれば、よほど長期間使わない限りは、内服したときに起こるようなステロイド性糖尿病や、骨粗鬆症、顔が丸くなる、といった副作用が出ることはありません。しかし、適切に使用しなければ、ステロイドざ瘡(ニキビ)、酒さ様皮膚炎やステロイド潮紅(赤くなる)、皮膚萎縮、多毛、感染症などが起こりえます。皮膚科の研修時代に私が大変お世話になった大阪市立大学医学部皮膚科の石井教授の言葉に「ステロイド一錠減らすは寿命を十年延ばす」というものがあります。ステロイドは決して安易に使用されるものではなく、危険性を充分に認識した上で最小限にすべきです。

薬局でステロイドを購入して自分の判断で外用するのは大変危険な行為です。ステロイドの外用は医師の指導のもとにおこなうべきです。一言でステロイドと言っても、種類や強さは様々ですし、塗り方にもコツがありますし、数種類の外用薬を身体の部分で使い分ける必要があるからです。

ただ、ほとんどの人はステロイドの使用は「初診から1週間程度のみ」でOKです。つまり、きちんと使えばほぼすべての副作用は起こらないのです。「ステロイドの副作用に苦しめられた」という人は少なくありませんが、そういう人たちの使用方法が不適切なのです(もちろん、その責任はきちんと使用法を説明していない医療者ではありますが)。

ステロイドの使用のコツはたいていの患者さんの場合初診時に時間をとって説明します。ここでは3つのTipsを紹介しておきます。

Tips1:ステロイドは「たっぷり」「短期間」

多くのケースは「初診時から1週間が生涯最後のステロイド」となります。

Tips2:面倒でも複数の種類を使い分ける

面倒ですが理解する必要があります。理由は、炎症の強さによってどの強さのステロイドを使うべきかが異なることと、もうひとつは、皮膚の部位によって吸収のされやすさが異なるからです。

よくある質問に「首は〇〇〇というステロイドでいいですね」というのがありますが、これも正しくありません。同じ人の同じ首でも〇〇〇が適していることもあれば、ときには△△△を使用すべきこともあります。

薬を使い分けなければならないと聞くと大変そうですが、理屈をおさえて慣れてしまえばそう難しくはありません。初診時に詳しく説明します。

Tip3:コレクチム/タクロリムス使用中に悪化すれば再び短期間ステロイド

理想は「1週間のステロイド→その後生涯にわたりコレクチム/タクロリムスのみ」です。ですが、プロアクティブ療法の薬を減らすスピードが速すぎたり、汗を洗い流すタイミングが遅れたりなどで再び炎症が起こることがあるかもしれません。もしも再び痒くなるようなことがあれば躊躇せずにステロイドに戻さなければなりません。そして、失敗の要因を分析し、今後同様のことが起こらないような対策を立てなければなりません。

Q5 保湿剤について教えてください

A5 乾燥が悪化因子となるアトピー性皮膚炎には保湿剤は不可欠です。しかし保湿剤は「薬」ではなくあくまでも「保湿剤」と考えるべきです。よって使用開始は(ステロイドで)炎症をとった後からです。

参考:はやりの病気第161回(2017年1月)「保湿剤の処方制限と効果的な使用法」

①ヘパリン類似物質

世間ではヘパリン類似物質というと「傷跡を治す塗り薬」として有名ですが、すぐれた保湿剤でもあります。保険適用がありますから、アトピーによる乾燥だけでなく、単に冬になると皮膚がカサカサになるという人にも重宝されています。当院のアトピーの患者さんの大半が使用しています。

欠点は保険診療上の「処方制限」です。副作用もまずありませんから、本当はたっぷりと使ってほしいのですが、月あたりの制限があるためそれほど多くは処方できません。そこで当院は、「OTC(薬局やネット通販で売られているもの)のヘパリン類似物質との併用」をすすめています。「OTCのヘパリン類似物質だとあまり効果がでない」という声が多いのですが、最近は非常に多くの会社が販売しており、試してみる価値はあると思います。


注:「ヒルドイド」でのかぶれ(接触皮膚炎)について
最近、「ヒルドイド」でかぶれた、という症例が増えてきています。その大半は、ヒルドイドに含まれるラノリンアルコールが原因だと思われます。ラノリンは下記の薬剤にも含まれていますのでヒルドイドでかぶれた人は注意してください。


〇ラノリンを含む外用剤
メサデルム、ビスダーム、フルコート、レダコート軟膏、アフゾナ、ネオメドロールEE軟膏、ドルマイコーチ軟膏、ジヒドリン軟膏、エキザルベ、アズノール、アンダーム軟膏、ヒルドイド、モビラート、アクロマイシン、ソフラチュール、レダマイシン軟膏、強力ポステリザン、プロクトセディル、タリビット眼軟膏、サブベートクリーム、チョコラザーネ、ザーネクリーム、メンソレータムのラブローションA、プリザS、コーンパット、ウオノメトール、グリテールパスタ、ユベラ軟膏、I・D・U眼軟膏、ベナパスタ

②セラミド配合のスキンケア製品

肌の角層細胞の間に存在する脂質「セラミド」は保湿力にすぐれています。医薬品ではなく誰でも薬局やインターネットで買うことができます。①のヘパリン類似物質とは作用機序が異なるために、当院では両者の併用を勧めています。

③尿素軟膏

尿素軟膏は固くなった皮膚をやわらかくしてくれます。このとき皮膚に存在する蛋白質を溶解させます。手や足の皮膚が固くてごわごわしているという人には喜ばれるのですが、アトピーの場合は少し注意が必要です。蛋白質が溶解することにより皮膚のバリア機能が損なわれ、ダニ抗原などが皮膚に侵入しやすくなるからです。当院ではアトピーの患者さんよりも、単に「手足がカサカサになる」という人に処方することが多い薬です。

④ワセリン

ワセリンを保湿剤として使うことができます。しかし「べとつく」という欠点があり、当院の患者さんにはあまり人気がありません。

Q6 よく効く「注射薬」があるって聞いたんですけど…

A6 アトピーの注射薬について問い合わせの多いのは次の4つです。

1)デュピルマブ(商品名は「デュピクセント」)

2018年4月に発売となった画期的な薬です。年間およそ50~60万円ほどかかることもあり、気軽に始められる薬剤ではありません。この薬を希望して受診する人も増えてきましたが、たいていはこの薬に頼らなくても標準的な治療でステロイドを断ち切ることができます。その一方でデュピルマブの添付文書には「ステロイド外用剤に上乗せ」したデータが掲載されています。デュピルマブを使いながらステロイドも使い続けるならステロイドが止められなくなります。デュピルマブを強く希望する人に対しては実施している病院を紹介することがありますが、当院で実施する予定はありません。

参考:はやりの病気第177回(2018年5月) アトピー性皮膚炎の歴史が変わるか

2)ヒスタグロビン1V+ノイロトロピン1mL

以前は年に1~2回程度でしたが、2017年前半よりなぜか問い合わせ件数が増えている治療法です。アトピーに効果があるというエビデンス(科学的確証)はないものの一部の人たちから人気があります。保険適用があり3割負担で1回460円、注射の頻度は週に一度、最長で3カ月となります。

3)オマリズマブ(ゾレア)

重症の喘息やじんましんに用いる薬で、アトピーにも理論上は効果が期待できますが、保険適用外であり、当院では実施していません。(ちなみに自費で実施すると、月に一度の注射で10万円以上かかります)

4)ケナコルトなどステロイド

今でも年に数名から問い合わせがありますが副作用のリスクが大きすぎます。当院では実施しません。尚、花粉症の治療としての問い合わせも毎年コンスタントにありますが、このような危険な治療はいくらお願いされても当院ではおこないません。

Q7 紫外線対策とサンスクリーン(日焼け止め)の選び方

A7 ほとんどの成人は紫外線対策が必須です。小児の場合は成長に日光が必要ですが、成人では紫外線をあびていいことは何もありません。ビタミンDの摂取をどうすべきかについては「はやりの病気第188回(2019年4月)「ビタミンDが混乱を招く2つの理由」」を参照ください。

成人してからの紫外線の皮膚への曝露は、皮膚を老化させ、シミやくすみ、しわなどの原因にもなりますし、アトピー性皮膚炎を含む湿疹があれば紫外線が色素沈着を促進することになります。

紫外線は3月の終わり頃から強くなりだします。実際、紫外線によるトラブルで医療機関を受診する人は真夏よりも4月初旬頃に多いのです。少なくとも3月終わりから10月頃までは湿疹のある人は紫外線対策をしっかりとする必要があります。肌質によっては真冬でも対策をした方がいいでしょう。

サンスクリーン(日焼け止め)の有効成分は「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」に分類できます。アトピー性皮膚炎がある場合や敏感肌の人は、紫外線散乱剤だけでつくられているサンスクリーンを選択する必要があります。ただし、大半のサンスクリーンには紫外線吸収剤が含まれています。

肌が弱くない人は紫外線吸収剤を用いていいと思いますが、吸収剤として最も使用されている物質のひとつであるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルが2021年からハワイのビーチで使えなくなります。下記医療ニュースを参照ください。

2014年あたりから「日焼けを防ぐサプリメント」が話題になっていますが、こういったものに日焼けを防ぐ効果は証明されていません。下記医療ニュースを参照ください。

紫外線散乱剤だけでつくられているサンスクリーンで、昔から医療機関で推薦されているのは「NOV」のシリーズです。当院ではNOVだけを推薦しているわけではありませんが、NOVのサンプルをお渡しすることがあります。


参考:
医療ニュース2023年3月13日「日焼け止めを使ってはいけない7つの地域」
医療ニュース2018年5月25日「日焼け止めが禁止されてもサプリメントはNG」
医療ニュース2018年7月30日「ハワイの日焼け止め禁止の続報~多くの日本製も禁止に~」
はやりの病気第15回(2005年8月)「日焼け -日光皮膚炎-」
参考:紫外線環境保健マニュアル

Q8 よく効く「飲み薬」があるって聞いたんですけど…

A8 アトピーの内服薬について問い合わせの多いのは次の4種類です。

1) オルミエント(一般名バリシチニブ)、リンヴォック(一般名ウパダシチニブ)、サイバインコ(一般名アブロシチニブ)

最近これら内服薬に対する問い合わせが急激に増えています。これらはJAK阻害薬と呼ばれるカテゴリーに分類されるもので、わかりやすく言えば「コレクチムの飲み薬版」です。ここまでを患者さんに説明すると「是非飲みたいです!」とたいていは言われるのですが、次に費用をお伝えすると一気にトーンダウンします。下記の通りです。

オルミエント:1錠5274.9円
リンヴォック:1錠4972.8円(2錠まで可)
サイバインコ:100mg1錠5221.40円、200mg1錠7832.30円

これらを使用すれば薬代だけで、3割負担で年間約60万円から100万円ほどかかります。この金額を負担できる人はそう多くないでしょう。副作用の懸念もあります。「コレクチムと同じ……」と言うと、「副作用もないっていうことですよね」と言われるのですが、やはり外用と内服は異なります。白血球減少や間質性肺炎といった重篤な副作用が起こり得るために定期的に採血やレントゲン撮影をしなければなりません。その費用もかかってくるわけです。また、これらを開始すると生ワクチンが金輪際接種できなくなります。「外用は使いやすく、内服は使いにくい」というのはタクロリムスなどの免疫抑制剤にも共通しています。

これらの薬を希望される人はこの薬を処方している病院を紹介する予定をしていますが、今のところ該当者はいません。非特異的IgEが6万IU/mLを超えているような人でも内服や注射をせずに、もちろんステロイド外用を使用せずにコントロールできているからです。

2) シクロスポリン

重症例に使われることもあるのですが、定期的に採血・採尿と胸部レントゲン撮影が必要であり、実際に副作用もそれなりの頻度で出ます。そもそも免疫抑制剤ですから感染症に対しても脆弱になるために、最近はあまり使用されません。当院で処方することはほとんどありません。

3) ステロイド

前医では「少量のステロイドの内服を続けるよう言われていた」という患者さんがときどき受診されます。いろんな考えがあっていいとは思いますが、当院では原則としてステロイド内服の定期服薬はおこないません。その必要がないからです。またステロイド外用も上記で述べたように、ほとんどのケースで使用ゼロにできます。

4) 抗ヒスタミン薬・抗ロイコトリエン拮抗薬

アレルギー性鼻炎や喘息と合併する場合は用いることもありますが、アトピー性皮膚炎単独の場合は必ずしも使用する必要はありません。
更新:2022年6月1日